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【1章】晶乃と彩智
16.初めてデジタル一眼レフを持った日も終わり
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青い空が広がっている。しかし日は西の方にかなり傾き、太陽の光はオレンジ色がかなり含まれている。ベンチに腰掛け、その空に向けてレンズを向けた晶乃は、ほぉっと息を吐く。横には彩智が座り、両手にカメラを持って、小さな欠伸をしていた。
遊具は一つもないがそれなりに広い公園には小さな子供を連れた母親の姿が目立つ。ここに来た時には、こういうところは気を付けないと……と、晶乃は少し警戒していた。もしも、「うちの子を勝手に撮って」などと言いがかりをつけられたら面倒なことになりそうだ。などと思う晶乃は、少々毒されすぎだろうか。
結果的には警戒するようなことは何もなく、結構な時間、誰にも邪魔されることなくシャッターを切ることを楽しむことが出来た。
まずは、カメラに慣れるために花壇の花を撮影した。赤い花と白い花と淡い水色の花がある。晶乃はあまり園芸には興味がないので何の花なのかは知らない。全部機械任せのAUTOモードで撮影してみる。まずは全体を撮るためにズームレンズを回す。花壇全体が写真に納まった。
次に、その中の一つの白い花弁に狙いを定める。ズームレンズを先程とは逆に回すと白い花びらが近づいてきた。そしてその花にピントを合わせてシャッターを切る。
「実はこのレンズには簡易マクロがついているのだよ」
と何故か胸を張った彩智が言った。
「マクロ?」
「そう、マクロレンズっていうのは被写体を大きく撮ることが出来るレンズなの。このレンズの焦点距離は28㎜から80㎜でテレ端の80㎜の時に、側面についている切り替えのスイッチでノーマルとマクロとを切り替えられるのよ」
さっそく試してみる。
確かに、さっき望遠で撮影した時よりも、気持ち寄ってきているようにも思える。先程、彩智は四季に対して大したことのないレンズのように言っていたが、これ一本で色んな撮り方が楽しめて面白い。
それから、樹木の下で彩智をモデルに写真を撮ったり、逆に晶乃がモデルになったりと、代わる代わるに撮り手を務めながら写真を撮った。
晶乃にとっては撮影も初体験だが、こんなに撮られたのは初めてだった。中学の頃のバスケの試合の時や新聞に全員写真が掲載されたときなどでそれなりに撮られているのを意識していたから、写真に撮られること自体には多少慣れていると思うが、こんなふうに正面から、レンズと向き合って、ポーズを決めたりしながら撮影されるのは、あまり経験がない。
撮られているうちに楽しくなってきて、自分で手の位置や足の運びなどを工夫したり、くるりと回って動きを付けたりした。
実を言うと、彩智が撮った自分の写真を、晶乃はまだ見ていなかった。気分が高揚した状態で、普段ならしないであろうポーズまで付けて撮影されたので、冷静になったら見せてもらうのが気恥ずかしく感じて仕方ない。
「ちょっと意外だった」
と、撮影の後、ベンチに並んで座っていると彩智に言われた。
「晶乃って、もっとクールな人だと思ってた」
クールっぽいというのは中学の頃にもよく言われた。確かに、それなりに物事に動じないタイプではあると自分でも思う。しかし、どっちかと言えば鈍いのであって、胆が座っているというわけではないのだろうとも思っている。
「それは、クールって言葉の意味を履き違えているよ」
晶乃は笑いながら自分が撮影した写真を背面の液晶に映し出してみる。晶乃が撮った彩智の写真はアップが多かった。今日覚えた人の撮り方は、せいぜい正面からアイレベルで撮るということだけだ。どれも変わり映えのしないものに見えて、ちょっと……かなり残念に思う。
そう言えば、彩智の方は晶乃を中心に場所を変えたりしゃがんで下から撮ったりして、工夫しながら撮っていた。自分も、もっと工夫して撮ってみれば良かったと晶乃がカメラを持って初めての後悔を覚えた。
「ね。何か食べに行かない?」
晶乃が撮った画像を再生しながら考え込んでいると、彩智がそんなことを言い出した。お腹が空いて頭を抱えていると思われたのかもしれない。スマホで時間を確かめると列車の時間ギリギリになりそうだけれどちょっとパフェでも食べるくらいの時間はありそうだった。
「いいね」
……次は、もっといろいろと試してみたいな。次の約束はまだしていないけれど。
晶乃は電源をOFFにして立ち上がると、一日が終わるのを名残惜しく感じながら掌でお尻を払う。
遊具は一つもないがそれなりに広い公園には小さな子供を連れた母親の姿が目立つ。ここに来た時には、こういうところは気を付けないと……と、晶乃は少し警戒していた。もしも、「うちの子を勝手に撮って」などと言いがかりをつけられたら面倒なことになりそうだ。などと思う晶乃は、少々毒されすぎだろうか。
結果的には警戒するようなことは何もなく、結構な時間、誰にも邪魔されることなくシャッターを切ることを楽しむことが出来た。
まずは、カメラに慣れるために花壇の花を撮影した。赤い花と白い花と淡い水色の花がある。晶乃はあまり園芸には興味がないので何の花なのかは知らない。全部機械任せのAUTOモードで撮影してみる。まずは全体を撮るためにズームレンズを回す。花壇全体が写真に納まった。
次に、その中の一つの白い花弁に狙いを定める。ズームレンズを先程とは逆に回すと白い花びらが近づいてきた。そしてその花にピントを合わせてシャッターを切る。
「実はこのレンズには簡易マクロがついているのだよ」
と何故か胸を張った彩智が言った。
「マクロ?」
「そう、マクロレンズっていうのは被写体を大きく撮ることが出来るレンズなの。このレンズの焦点距離は28㎜から80㎜でテレ端の80㎜の時に、側面についている切り替えのスイッチでノーマルとマクロとを切り替えられるのよ」
さっそく試してみる。
確かに、さっき望遠で撮影した時よりも、気持ち寄ってきているようにも思える。先程、彩智は四季に対して大したことのないレンズのように言っていたが、これ一本で色んな撮り方が楽しめて面白い。
それから、樹木の下で彩智をモデルに写真を撮ったり、逆に晶乃がモデルになったりと、代わる代わるに撮り手を務めながら写真を撮った。
晶乃にとっては撮影も初体験だが、こんなに撮られたのは初めてだった。中学の頃のバスケの試合の時や新聞に全員写真が掲載されたときなどでそれなりに撮られているのを意識していたから、写真に撮られること自体には多少慣れていると思うが、こんなふうに正面から、レンズと向き合って、ポーズを決めたりしながら撮影されるのは、あまり経験がない。
撮られているうちに楽しくなってきて、自分で手の位置や足の運びなどを工夫したり、くるりと回って動きを付けたりした。
実を言うと、彩智が撮った自分の写真を、晶乃はまだ見ていなかった。気分が高揚した状態で、普段ならしないであろうポーズまで付けて撮影されたので、冷静になったら見せてもらうのが気恥ずかしく感じて仕方ない。
「ちょっと意外だった」
と、撮影の後、ベンチに並んで座っていると彩智に言われた。
「晶乃って、もっとクールな人だと思ってた」
クールっぽいというのは中学の頃にもよく言われた。確かに、それなりに物事に動じないタイプではあると自分でも思う。しかし、どっちかと言えば鈍いのであって、胆が座っているというわけではないのだろうとも思っている。
「それは、クールって言葉の意味を履き違えているよ」
晶乃は笑いながら自分が撮影した写真を背面の液晶に映し出してみる。晶乃が撮った彩智の写真はアップが多かった。今日覚えた人の撮り方は、せいぜい正面からアイレベルで撮るということだけだ。どれも変わり映えのしないものに見えて、ちょっと……かなり残念に思う。
そう言えば、彩智の方は晶乃を中心に場所を変えたりしゃがんで下から撮ったりして、工夫しながら撮っていた。自分も、もっと工夫して撮ってみれば良かったと晶乃がカメラを持って初めての後悔を覚えた。
「ね。何か食べに行かない?」
晶乃が撮った画像を再生しながら考え込んでいると、彩智がそんなことを言い出した。お腹が空いて頭を抱えていると思われたのかもしれない。スマホで時間を確かめると列車の時間ギリギリになりそうだけれどちょっとパフェでも食べるくらいの時間はありそうだった。
「いいね」
……次は、もっといろいろと試してみたいな。次の約束はまだしていないけれど。
晶乃は電源をOFFにして立ち上がると、一日が終わるのを名残惜しく感じながら掌でお尻を払う。
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