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第48話「リグベイル・ウォルゾン」
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模擬戦も終わり領事館に帰宅した。相変わらずパーティーをロビーでする様だ
(まだ職員さんとかが出入りしてるんだけど?)
受付から丸見えなので良いのだろうか?と考えてると声がかかる
「エルさん、先にお風呂に入ってね。セラフィア様も」
とイサベル様
「はい」
「あ・・あの、セラとお呼びください」
「そんなに堅くならないで?」
「い・・いえ、我が家は名ばかりの貴族ですので・・」
「領民の為に尽くす者同士、対等でありたいと思っているのよ?」
「そ、それなら様付けはおやめください」
「そお?じゃあセラフィアさんで?」
「は、はい。よろしくお願いしますイサベル様」
「私はさん付けで呼んでくれないの?」
「す・・すみません、イサベルさん」
「それじゃあ、さっさと汗を流してきてね」
と言って手を叩く
「エディ、いこ」
と言ってエルはエディの手を引く。
エディがお風呂に行くと自動的に付いてくるロランとセレス。
「コールもいこ」
セレスはコールの手を引く
「え?あ、あの?」
有無を言わさずコールも連れて行った
ーーーーー
脱衣所でセラは固まっていた
「えっと、エディ君もいるの?」
エルとロランとセレスは、何を言ってるの?な顔をしている。
セラはコールを見る。普通に服を脱いでいた
コールは弟妹が4人いるのでエディの年齢なら平気である。
(ま・・まだ子供だからいいか)
顔を赤くしながらセラも脱ぎだした
(すげえ・・銭湯だ・)
広いお風呂に目を輝かせるエディ。エルも初日は驚いていた
「エディ、こっち」
久しぶりにエディはエルに洗ってもらった
ーーーーー
エディは湯船でバシャバシャと泳いで?いる。脳内も3歳児になっていた
付き添っているエルを見ながらセラがつぶやく
「全勝するような子には見えないわね・・」
「エルは努力家だよ?」
とコール
「私も努力したんだけどなあ・・」
「血統の違い?」
とロラン
「あのエルザさんの娘なんだよね?」
「父親はエディットよ」
「英雄の息子・・」
エディは飽きて皆の所に戻ってきた
「ん?なに?」
「ううん。エディ君達って英雄の孫だったんだ」
(みんなじいちゃんを英雄って呼ぶな)
「なんでえいゆうなの?」
「知らないの?王都を混乱させようとした奴らを捕まえたからよ」
「そうなの?」
「収穫祭に乗じて北にある山脈から魔獣を呼び寄せようとしてた人が居て・・」
「そんなことできるの?」
「どうやったか知らないけど、奴隷を餌にして魔獣を引き寄せたの」
「えさ・・」
「ええ。確か60人ぐらいの奴隷が食われたそうよ」
(ひどいな・・)
「それで外壁の外は魔獣が溢れたのだけど、この国の軍隊なら問題なく駆逐出来るわ」
「うん」
「でも王都を出入りしてた人を守るために、王都の警備が手薄になってしまったの」
「うん」
「それでラフィット様は本命は王城だと目星をつけて・・」
「うん」
「仲間達と王都で破壊工作をしていた人を見つけて、片っ端から捕らえたの」
「へえー」
「その功績で勲章を貰ったのよ」
「・・それでえいゆうなの?」
「アオキの改革以降、勲章を授与されたのはラフィット様とその仲間だけなの」
「そうなの?」
セラは溜息をつく
「昔、貴族はお金で勲章を買っていたのよ。名誉欲に溺れる様な貴族は、今の時代にも居るわ」
「へー」
「この王都はよく狙われるからね。祭りに外国人を無条件で受け入れてるのも、敵と味方を判断するためよ」
(なるほど)
「負けないじしんがあるんだね」
「そうね」
エディは嬉しそうな顔をする。じいちゃんの活躍を聞いて機嫌が良いのだ
「エディ君は理解できたの?」
「うん」
「当然よ。エディは誰よりも大人びているわ」
とロラン
「・・そうね。闘技場でもそうだったわ」
「闘技場?」
「エディ君に慰めてもらったの。棄権しようか考えていたけど、エディ君のおかげで最後まで戦えたの」
「そうなの?」
とロランはエディを見る
「うーん・・かも?」
と首を傾げる
「ふふ。あなたやお姉さんが居るから、エディ君は良い子なのね」
エルが言い返す
「それ逆だよ?」
「え?」
「今の私がいるのはエディのおかげなんだよ」
エルはまっすぐセラを見る
「そうなの?」
「冒険者になれたのも、魔法を覚えれたのもエディのおかげなんだよ」
「ねえちゃん・・」
そしてエルはエディにキスをした
ロランも笑顔になって続ける。と言うかセラがエディを褒めるので気分がいい
「私も毎日楽しいのはエディのおかげ。エディが居なかったらその日暮らしだったわね」
そしてロランもエディにキスをした
セレスが続く
「わ、わたしもエディが家族になってくれて楽しいの」
「家族?」
そしてセレスもエディにキスをした
あっけにとられたセラは笑みを見せる
「ふふ・・エディ君、モテモテなのね」
「えーと」
セラはエディを引き寄せ、唇にキスをする
(!?)
2~3秒間、セラの唇は少し震えていた
(ファーストキスなのかな?)
そして4人はコールを見る
「え?」
驚いたコールは、ぶつぶつと何かつぶやいている
(・・・)
そして覚悟を決めたコールは、エディの両肩に手を置いた
(コールさんや、無理しなくてもいいですよ?)
「わ、私も、エディ君が居なかったら、毎日草取りだけの生活だったわ」
そしてコールもエディにキスをした
ーーーーー
服を私服に変え、パーティー会場に向かった。礼服は不要と言われたので普段着だ。
メイドさんに席へ案内してもらった。一つのテーブルに6人が座って食事を始める。
(うめえ)
パクパクと食事しながら出入りする人を眺める。アオキのパーティーは来る者を拒まず。
ここでもそうであった
(また貴族かな?)
子息を連れてやってくる男性達。イサベルとロレインが対応していた
(派手なお嬢様だな)
10歳ぐらいの少女が派手に着飾っている。明らかにロレインが目当てだと分かった
(あれではロレインの目を引けないな)
エディはロレインの好みをある程度分かっているし、そもそもロバルデューには超絶美少女のリーサが居る
「あ!」
と一言残してセレスがイサベルの方に向かう
(ん?)
入り口を見てエディは唖然となった
「はでなローブ」
真っ赤なローブを着た、初老の男性が入ってくる。後ろには若い家族も居る
「ん?」
同じテーブルに居るセラが口をあんぐりと開けていた
「知ってるの?」
「リグベイル・ウォルゾン様」
「こうしゃくさま?」
「そうよ」
「なんでローブなの?」
「宮廷魔術師よ」
「へー・・だいじんじゃ無いの?」
「ウォルゾン家は直接政治に関わらないわ。影響が大きすぎて」
「なんで?」
「実質はこの国で最高位。ウォルゾン家が居ると貴族派閥が強くなるから」
「はばつ?」
「国政に関わってる者の半数は平民よ。それが気に入らない貴族も居るの」
(なるほど)
リグベイルが挨拶した後、若い夫婦とエディ程の子供がイサベルに挨拶する
(お姉様とか言ってるけど、領主様の妹ってあの人なのか)
眺めていたらいつの間にかエルの傍にリグベイルが来ていた
「初めましてエル嬢。私はリグベイル・ウォルゾン。あなたのお爺様にお世話になった者です」
「は、はじめまして。エルです」
「緊張なさらなくて結構です。私の事はお爺様とでもお呼びください」
(おじいさま?)
エディは若い家族を見る。エディと同じ歳ぐらいの男児が居た
(いやいやいやいや・・)
エディは飛び出し、リグベイルとエルの間に入って睨みつける
「ねえちゃんはあげません」
「おや、とんだナイトが居ましたな」
リグベイルはエルの方を見る
「えっと、弟のエディです」
「なるほど君が・・エディ君も近代魔法を?」
エディは頷く
「ロバルデューの未来は明るいですな」
エディとエルは首を傾げる
「王都では、あと40年もすれば近代魔法の使い手が居なくなってしまうものでね」
(若い使い手が居ないのか)
何を言おうか考えるエルの左手にある指輪を、リグベイルは発見する
「おっと、お手付きですか。もしかしてロレイン君かな?」
「え?あ、はい」
リグベイルは心底残念そうにする
「そうですか・・近代魔法を教わったのは?」
「ろらんだよ」
そう言ってエディはロランを見る
「ふむ。聞いていた通りなのかな?」
「聞いていた?」
ロランは聞き返す
「ああ。近代魔法の知識を全て持っていると?」
ロランは微妙な顔をする。実際に覚えていたが、封印された近代魔法は知らないので答えるのに困った
「王都や他の地に行く予定はあるのかな?教師の立場ならいくらでも融通しますよ?」
「私はエディの傍にいます」
「ふむ」
リグベイルはエディを見る
「ねえちゃんといっしょ」
今度はエルを見るが、指輪を見て溜息をつく
「しかし、よくリンドレイ伯爵は貴女を手放しましたな」
「パパを知ってるの?」
「ええ。国際会議の場でお会いしましたよ」
(ん?)
「きゅうていまじゅつしも会議にでるの?」
エディは聞いてみる
「王族の護衛も務めますからね」
「へー」
「うむ。聞いていた通り、エディ君はかなり思慮深い様だ」
(まあ・・3歳児の質問では無いか)
「エディ君は将来の事は考えているのかな?」
「うーん・・ふつうがいい」
「普通?」
「ふつうに仕事して結婚して年取って・・ふつうのぼうけん者でもいい」
「その歳ならもう少し大きな夢を見そうだが」
(前世ではその普通が出来ませんでしたから)
「しごとがあるのはしあわせだと思う」
「・・・そうだね」
リグベイルはエディを見つめる
「ん?」
「学園には通うのかな?」
「わかんない」
「そうですか。将来、王都でも我が領地でも、いつでも仕事を斡旋しますよ。
必要でしたら声をお掛けください」
「ろらんがほしいの?」
「はっはっ、見透かされているな」
「ろらんはだめー」
エディは腕をクロスする
(姉ちゃんの為にロランは必要です)
「私が侯爵の立場で強引に迎える事も出来ますよ?」
「そしたら隕石がふってくるよ?」
「一撃で山一つ分の森を破壊したと聞いているな。それは怖い、やめましょう」
「・・・おうとには使い手いないの?」
「それなりには居ますが・・エル嬢の様な戦い方を出来る者は皆無でしょうね」
「そうなの?」
「私も学びましたが、あの様な戦い方が出来る魔法は知りませんでした」
「へー」
「もちろん、あれでも近代魔法のごく一部なのは知っている。
全てを学んだロランがどうしても欲しいのですよ」
(正直だな・・)
「商会のまほうしさんでは無理なの?」
「彼らはマジックバッグが作れる様に勉強しただけです。それだけで一生安泰ですから」
(そういう物か)
「それに全てを覚えるには最低でも10年。それだけ打ち込むにも、内容が難しすぎる」
(ロランの場合は特殊だしな。天才だからできた事・・あれ?)
「ろらん?」
「なに?」
「ろらんは誰にならったの?」
「途中からは自分で勉強したわよ?教えられる人が居なかったから」
「へ、へえー」
エディとリグベイルは驚く
「本物の天才だな。今アオキに一番近いのは、間違いなくロランだな」
「エディが居ないと届かないよ」
「ああ、確かにそうだな」
(え?もしかして、この人知ってる?)
その時セラが席を立ち、リグベイルの後ろに立つ男性に頭を下げる
「おっと、長話ししすぎたな。それじゃ、私もパーティーを楽しませてもらうよ」
リグベイルは頭を下げ、フロストが居る方に向かって行った
(なんか疲れた・・)
エルに挨拶に来た貴族はセラの知り合いだった様で、エディはセラに丸投げした。
エディが席に着くと、ロランは椅子をぴったりと付けてくる
「うん?」
「エディ、ありがとう」
「え?」
「守ってくれたし」
そう言って腕を組む
(あれで守ってって・・どこの乙女だよ?)
ーーーーー
パーティーも終盤になり、エディは睡魔に襲われていた
「エディ、もう寝る?」
とロラン
「うん」
ロランに立たせてもらって手をつないで歩くとコールが来た
「エディ君」
「なに?」
「私、5番目でも10番目でも良いからね?」
「へ?」
そして席に戻って行った
(わけがわからないよ)
イサベル様に声を掛けて部屋に戻った。ロランに着替えさせてもらってベッドに入るとロランも入ってくる。
「ろらんも寝るの?」
「うん。おやすみエディ」
「おやすみ」
ーーーーー
エディとロランが退席するのを眺めていたリグベイル
(全く、ロバルデューにはどうしてこうも良い人材が集まるのか・・)
リグベイルは、アオキの時代にラフィッド・ウォルゾン公爵が残した手記を思い返す
(あの二人でアオキに匹敵するなら、再び世界が変わる程の改革が行われる)
現在、ジャンが声を掛けている領地は4か所。全ての領主が良い人間と限らないので厳選している
(次は王都の近くになるはず・・どの地を選ぶのだろうか?)
国内、みんな仲良くとはいかない。人口には限界があり、領地間の競争も激しいのだ。
魅力のある土地に人は集まり、人が集まれば発展する。
今、ジャンが作り上げているのは魅力の部分。これに乗り遅れた地は、おこぼれしか貰えない。
そして他国も挙って協力し、さらに発展を続ける事になる。
(次に決まった地との関係も、強固な物にしなければならない。
イサベル殿との会合は、まだまだ続けないとな)
全ては領民の未来の為に。共に歩んできた民達を失望させない為に・
(まだ職員さんとかが出入りしてるんだけど?)
受付から丸見えなので良いのだろうか?と考えてると声がかかる
「エルさん、先にお風呂に入ってね。セラフィア様も」
とイサベル様
「はい」
「あ・・あの、セラとお呼びください」
「そんなに堅くならないで?」
「い・・いえ、我が家は名ばかりの貴族ですので・・」
「領民の為に尽くす者同士、対等でありたいと思っているのよ?」
「そ、それなら様付けはおやめください」
「そお?じゃあセラフィアさんで?」
「は、はい。よろしくお願いしますイサベル様」
「私はさん付けで呼んでくれないの?」
「す・・すみません、イサベルさん」
「それじゃあ、さっさと汗を流してきてね」
と言って手を叩く
「エディ、いこ」
と言ってエルはエディの手を引く。
エディがお風呂に行くと自動的に付いてくるロランとセレス。
「コールもいこ」
セレスはコールの手を引く
「え?あ、あの?」
有無を言わさずコールも連れて行った
ーーーーー
脱衣所でセラは固まっていた
「えっと、エディ君もいるの?」
エルとロランとセレスは、何を言ってるの?な顔をしている。
セラはコールを見る。普通に服を脱いでいた
コールは弟妹が4人いるのでエディの年齢なら平気である。
(ま・・まだ子供だからいいか)
顔を赤くしながらセラも脱ぎだした
(すげえ・・銭湯だ・)
広いお風呂に目を輝かせるエディ。エルも初日は驚いていた
「エディ、こっち」
久しぶりにエディはエルに洗ってもらった
ーーーーー
エディは湯船でバシャバシャと泳いで?いる。脳内も3歳児になっていた
付き添っているエルを見ながらセラがつぶやく
「全勝するような子には見えないわね・・」
「エルは努力家だよ?」
とコール
「私も努力したんだけどなあ・・」
「血統の違い?」
とロラン
「あのエルザさんの娘なんだよね?」
「父親はエディットよ」
「英雄の息子・・」
エディは飽きて皆の所に戻ってきた
「ん?なに?」
「ううん。エディ君達って英雄の孫だったんだ」
(みんなじいちゃんを英雄って呼ぶな)
「なんでえいゆうなの?」
「知らないの?王都を混乱させようとした奴らを捕まえたからよ」
「そうなの?」
「収穫祭に乗じて北にある山脈から魔獣を呼び寄せようとしてた人が居て・・」
「そんなことできるの?」
「どうやったか知らないけど、奴隷を餌にして魔獣を引き寄せたの」
「えさ・・」
「ええ。確か60人ぐらいの奴隷が食われたそうよ」
(ひどいな・・)
「それで外壁の外は魔獣が溢れたのだけど、この国の軍隊なら問題なく駆逐出来るわ」
「うん」
「でも王都を出入りしてた人を守るために、王都の警備が手薄になってしまったの」
「うん」
「それでラフィット様は本命は王城だと目星をつけて・・」
「うん」
「仲間達と王都で破壊工作をしていた人を見つけて、片っ端から捕らえたの」
「へえー」
「その功績で勲章を貰ったのよ」
「・・それでえいゆうなの?」
「アオキの改革以降、勲章を授与されたのはラフィット様とその仲間だけなの」
「そうなの?」
セラは溜息をつく
「昔、貴族はお金で勲章を買っていたのよ。名誉欲に溺れる様な貴族は、今の時代にも居るわ」
「へー」
「この王都はよく狙われるからね。祭りに外国人を無条件で受け入れてるのも、敵と味方を判断するためよ」
(なるほど)
「負けないじしんがあるんだね」
「そうね」
エディは嬉しそうな顔をする。じいちゃんの活躍を聞いて機嫌が良いのだ
「エディ君は理解できたの?」
「うん」
「当然よ。エディは誰よりも大人びているわ」
とロラン
「・・そうね。闘技場でもそうだったわ」
「闘技場?」
「エディ君に慰めてもらったの。棄権しようか考えていたけど、エディ君のおかげで最後まで戦えたの」
「そうなの?」
とロランはエディを見る
「うーん・・かも?」
と首を傾げる
「ふふ。あなたやお姉さんが居るから、エディ君は良い子なのね」
エルが言い返す
「それ逆だよ?」
「え?」
「今の私がいるのはエディのおかげなんだよ」
エルはまっすぐセラを見る
「そうなの?」
「冒険者になれたのも、魔法を覚えれたのもエディのおかげなんだよ」
「ねえちゃん・・」
そしてエルはエディにキスをした
ロランも笑顔になって続ける。と言うかセラがエディを褒めるので気分がいい
「私も毎日楽しいのはエディのおかげ。エディが居なかったらその日暮らしだったわね」
そしてロランもエディにキスをした
セレスが続く
「わ、わたしもエディが家族になってくれて楽しいの」
「家族?」
そしてセレスもエディにキスをした
あっけにとられたセラは笑みを見せる
「ふふ・・エディ君、モテモテなのね」
「えーと」
セラはエディを引き寄せ、唇にキスをする
(!?)
2~3秒間、セラの唇は少し震えていた
(ファーストキスなのかな?)
そして4人はコールを見る
「え?」
驚いたコールは、ぶつぶつと何かつぶやいている
(・・・)
そして覚悟を決めたコールは、エディの両肩に手を置いた
(コールさんや、無理しなくてもいいですよ?)
「わ、私も、エディ君が居なかったら、毎日草取りだけの生活だったわ」
そしてコールもエディにキスをした
ーーーーー
服を私服に変え、パーティー会場に向かった。礼服は不要と言われたので普段着だ。
メイドさんに席へ案内してもらった。一つのテーブルに6人が座って食事を始める。
(うめえ)
パクパクと食事しながら出入りする人を眺める。アオキのパーティーは来る者を拒まず。
ここでもそうであった
(また貴族かな?)
子息を連れてやってくる男性達。イサベルとロレインが対応していた
(派手なお嬢様だな)
10歳ぐらいの少女が派手に着飾っている。明らかにロレインが目当てだと分かった
(あれではロレインの目を引けないな)
エディはロレインの好みをある程度分かっているし、そもそもロバルデューには超絶美少女のリーサが居る
「あ!」
と一言残してセレスがイサベルの方に向かう
(ん?)
入り口を見てエディは唖然となった
「はでなローブ」
真っ赤なローブを着た、初老の男性が入ってくる。後ろには若い家族も居る
「ん?」
同じテーブルに居るセラが口をあんぐりと開けていた
「知ってるの?」
「リグベイル・ウォルゾン様」
「こうしゃくさま?」
「そうよ」
「なんでローブなの?」
「宮廷魔術師よ」
「へー・・だいじんじゃ無いの?」
「ウォルゾン家は直接政治に関わらないわ。影響が大きすぎて」
「なんで?」
「実質はこの国で最高位。ウォルゾン家が居ると貴族派閥が強くなるから」
「はばつ?」
「国政に関わってる者の半数は平民よ。それが気に入らない貴族も居るの」
(なるほど)
リグベイルが挨拶した後、若い夫婦とエディ程の子供がイサベルに挨拶する
(お姉様とか言ってるけど、領主様の妹ってあの人なのか)
眺めていたらいつの間にかエルの傍にリグベイルが来ていた
「初めましてエル嬢。私はリグベイル・ウォルゾン。あなたのお爺様にお世話になった者です」
「は、はじめまして。エルです」
「緊張なさらなくて結構です。私の事はお爺様とでもお呼びください」
(おじいさま?)
エディは若い家族を見る。エディと同じ歳ぐらいの男児が居た
(いやいやいやいや・・)
エディは飛び出し、リグベイルとエルの間に入って睨みつける
「ねえちゃんはあげません」
「おや、とんだナイトが居ましたな」
リグベイルはエルの方を見る
「えっと、弟のエディです」
「なるほど君が・・エディ君も近代魔法を?」
エディは頷く
「ロバルデューの未来は明るいですな」
エディとエルは首を傾げる
「王都では、あと40年もすれば近代魔法の使い手が居なくなってしまうものでね」
(若い使い手が居ないのか)
何を言おうか考えるエルの左手にある指輪を、リグベイルは発見する
「おっと、お手付きですか。もしかしてロレイン君かな?」
「え?あ、はい」
リグベイルは心底残念そうにする
「そうですか・・近代魔法を教わったのは?」
「ろらんだよ」
そう言ってエディはロランを見る
「ふむ。聞いていた通りなのかな?」
「聞いていた?」
ロランは聞き返す
「ああ。近代魔法の知識を全て持っていると?」
ロランは微妙な顔をする。実際に覚えていたが、封印された近代魔法は知らないので答えるのに困った
「王都や他の地に行く予定はあるのかな?教師の立場ならいくらでも融通しますよ?」
「私はエディの傍にいます」
「ふむ」
リグベイルはエディを見る
「ねえちゃんといっしょ」
今度はエルを見るが、指輪を見て溜息をつく
「しかし、よくリンドレイ伯爵は貴女を手放しましたな」
「パパを知ってるの?」
「ええ。国際会議の場でお会いしましたよ」
(ん?)
「きゅうていまじゅつしも会議にでるの?」
エディは聞いてみる
「王族の護衛も務めますからね」
「へー」
「うむ。聞いていた通り、エディ君はかなり思慮深い様だ」
(まあ・・3歳児の質問では無いか)
「エディ君は将来の事は考えているのかな?」
「うーん・・ふつうがいい」
「普通?」
「ふつうに仕事して結婚して年取って・・ふつうのぼうけん者でもいい」
「その歳ならもう少し大きな夢を見そうだが」
(前世ではその普通が出来ませんでしたから)
「しごとがあるのはしあわせだと思う」
「・・・そうだね」
リグベイルはエディを見つめる
「ん?」
「学園には通うのかな?」
「わかんない」
「そうですか。将来、王都でも我が領地でも、いつでも仕事を斡旋しますよ。
必要でしたら声をお掛けください」
「ろらんがほしいの?」
「はっはっ、見透かされているな」
「ろらんはだめー」
エディは腕をクロスする
(姉ちゃんの為にロランは必要です)
「私が侯爵の立場で強引に迎える事も出来ますよ?」
「そしたら隕石がふってくるよ?」
「一撃で山一つ分の森を破壊したと聞いているな。それは怖い、やめましょう」
「・・・おうとには使い手いないの?」
「それなりには居ますが・・エル嬢の様な戦い方を出来る者は皆無でしょうね」
「そうなの?」
「私も学びましたが、あの様な戦い方が出来る魔法は知りませんでした」
「へー」
「もちろん、あれでも近代魔法のごく一部なのは知っている。
全てを学んだロランがどうしても欲しいのですよ」
(正直だな・・)
「商会のまほうしさんでは無理なの?」
「彼らはマジックバッグが作れる様に勉強しただけです。それだけで一生安泰ですから」
(そういう物か)
「それに全てを覚えるには最低でも10年。それだけ打ち込むにも、内容が難しすぎる」
(ロランの場合は特殊だしな。天才だからできた事・・あれ?)
「ろらん?」
「なに?」
「ろらんは誰にならったの?」
「途中からは自分で勉強したわよ?教えられる人が居なかったから」
「へ、へえー」
エディとリグベイルは驚く
「本物の天才だな。今アオキに一番近いのは、間違いなくロランだな」
「エディが居ないと届かないよ」
「ああ、確かにそうだな」
(え?もしかして、この人知ってる?)
その時セラが席を立ち、リグベイルの後ろに立つ男性に頭を下げる
「おっと、長話ししすぎたな。それじゃ、私もパーティーを楽しませてもらうよ」
リグベイルは頭を下げ、フロストが居る方に向かって行った
(なんか疲れた・・)
エルに挨拶に来た貴族はセラの知り合いだった様で、エディはセラに丸投げした。
エディが席に着くと、ロランは椅子をぴったりと付けてくる
「うん?」
「エディ、ありがとう」
「え?」
「守ってくれたし」
そう言って腕を組む
(あれで守ってって・・どこの乙女だよ?)
ーーーーー
パーティーも終盤になり、エディは睡魔に襲われていた
「エディ、もう寝る?」
とロラン
「うん」
ロランに立たせてもらって手をつないで歩くとコールが来た
「エディ君」
「なに?」
「私、5番目でも10番目でも良いからね?」
「へ?」
そして席に戻って行った
(わけがわからないよ)
イサベル様に声を掛けて部屋に戻った。ロランに着替えさせてもらってベッドに入るとロランも入ってくる。
「ろらんも寝るの?」
「うん。おやすみエディ」
「おやすみ」
ーーーーー
エディとロランが退席するのを眺めていたリグベイル
(全く、ロバルデューにはどうしてこうも良い人材が集まるのか・・)
リグベイルは、アオキの時代にラフィッド・ウォルゾン公爵が残した手記を思い返す
(あの二人でアオキに匹敵するなら、再び世界が変わる程の改革が行われる)
現在、ジャンが声を掛けている領地は4か所。全ての領主が良い人間と限らないので厳選している
(次は王都の近くになるはず・・どの地を選ぶのだろうか?)
国内、みんな仲良くとはいかない。人口には限界があり、領地間の競争も激しいのだ。
魅力のある土地に人は集まり、人が集まれば発展する。
今、ジャンが作り上げているのは魅力の部分。これに乗り遅れた地は、おこぼれしか貰えない。
そして他国も挙って協力し、さらに発展を続ける事になる。
(次に決まった地との関係も、強固な物にしなければならない。
イサベル殿との会合は、まだまだ続けないとな)
全ては領民の未来の為に。共に歩んできた民達を失望させない為に・
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