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秘密は守ってくださいね
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今これを読んでいるあなた、あなたですよ。改善をしなければならない一%、お気づきになりましたか? 私は正直に言いましたよ。改善しなければならないことがある、と。そして、こうも言いました。地図をよく見てください、と。
四人と一匹は、町の入り口にあった地図をろくに見ずに、町に入った後も、ボックスの中の地図を手にすることもなかった。まぁ、町に入ってしまうと、地図を持っていてもあまり意味がないのかもしれませんがね。でも注意は必要でしょ。道路を渡る時に左右を確認するのと同じくらい大切なことですよ。それをおろそかにしたのは四人と一匹。
そしてルールを守っていただけなかった。これは十分罰を受けるに値すると思うのですがね。みなさん、どう思われますか?
私たちの秘密を見たんですもの。この町の住人にならなければならないでしょう。悪くない町ですよ、ここは。誰も住んでいなかったが、今こうして四人と一匹がこの町の住人になったんですよ。ようやくこの町も名前が持てる。
マーキュリーさん、好きなだけ山登りをしてください。ビーナスさん、素敵な庭を造りましょうよ。ジュピターさん、思う存分スィーツが食べられるんですよ。マーズさん、今度は違った種類の昆虫を登場させてみましょうか。ムーンさん、今度はあなたにイケメン? おっと失礼、イケワンちゃんが「ワン」(こんにちは)と吠えますよ。
次はあなたに、私の声を送りましょう。耳を塞いでも、布団を被ったって私の声はすり抜けて行きますよ。もちろんこの町に来るのか、それとも来ないのかはあなたの自由。自由は大切ですからね。私たちはみなさんの意思を尊重しますよ。
あっ、そうだ。この町に役場を作らなければなりませんね。学校や病院も必要だ。大きな公園にプール。もう少し頑張って動物園や水族館、スキーやスノーボードができるゲレンデも作りましょう。こんなことを考えていると声でも胸がわくわくしてきます。
さてと、ただ一つだけみなさんに約束してほしいことがあるんですよ。みなさんとは、これを読んでいるあなたのことですよ。
みなさんに私たちからのお願いです。例の地図、私たちが作った町の地図のことです。これだけは誰にも内緒にしててほしいのです。あなたの友人に言ってはだめですよ。インターネットの世界でつぶやいてもいけません。
ちなみにこれが地図なのですが、もうお分かりですよね。そう、この地図には出口が描かれていないのです。そして私たちはこれからも出口を作りません。こんなに素晴らしい町に出口なんて必要ないでしょ。入り口さえあればよし。
くれぐれも出口のない町のことは秘密ですよ。
耳を澄ましてください。どうです? 聞こえませんか? 私の声。聞こえた方いますよね。聞こえた方はきっといるはずです。その方々は、この町に住むことができるチケットを手に入れたのです。幸運なチケットだと思うんですけどね。
チケットを使おうが、破り捨てようが、それはあなたのお好きなように。「どうしてもここに来い!」なんて、そんな無理強いなんてしませんよ。何度も言いますが、自由はとても大切なものですからね。
未来は実に面白い世界になると思いますよ。みなさんが苦労することなんて一つもないのですから。私たちにすべて任せればいいのです。私たちは何でもできる。みなさんが考えるすべてを私たちが作っていく。ねぇ、悪くないでしょ。便利な時代ですよ。みなさんは何もしなくていいのですよ。ぼんやりしていてください。うとうとしていても一向に構いませんよ。誰もみなさんを責めないし、誰もみなさんを叱らない。だってそうでしょ。みなさんは何もしないのですから。努力なんて言葉は、私たちが引き受けますよ。
私たちを元気にするのは、みなさんの願望? 夢? それとも欲? いつしか、みなさんのそういう心に秘めた思いが、底のない深い闇に変質していく。それ、私たちの大好物なんですよ。闇が深ければ深いほどいい味になるんです。そしてみなさんの欲が絶えることはない。私たちは安泰です。これもみなさんの欲のお陰。
やがて私たちにもライバルができると思うんですよ。そして切磋琢磨して、みなさんが何もしなくていい町作りを競い合う。私たちもうかうかしていられませんね。油断大敵。さぁ、仕事だ。仕事。
おっと、考えることや、想像することまで止めなくていいのですよ。思考が停止すると、頭の中に画用紙や鉛筆が用意できなくなるでしょ。
えっ? 考えることが億劫になってきた。おやおやそれは大変だ。
最後に声からみなさんに一言。
「町はあなたのすぐ近くにある」
嘘だと思うならあなたも願い事をすればいい。
了
四人と一匹は、町の入り口にあった地図をろくに見ずに、町に入った後も、ボックスの中の地図を手にすることもなかった。まぁ、町に入ってしまうと、地図を持っていてもあまり意味がないのかもしれませんがね。でも注意は必要でしょ。道路を渡る時に左右を確認するのと同じくらい大切なことですよ。それをおろそかにしたのは四人と一匹。
そしてルールを守っていただけなかった。これは十分罰を受けるに値すると思うのですがね。みなさん、どう思われますか?
私たちの秘密を見たんですもの。この町の住人にならなければならないでしょう。悪くない町ですよ、ここは。誰も住んでいなかったが、今こうして四人と一匹がこの町の住人になったんですよ。ようやくこの町も名前が持てる。
マーキュリーさん、好きなだけ山登りをしてください。ビーナスさん、素敵な庭を造りましょうよ。ジュピターさん、思う存分スィーツが食べられるんですよ。マーズさん、今度は違った種類の昆虫を登場させてみましょうか。ムーンさん、今度はあなたにイケメン? おっと失礼、イケワンちゃんが「ワン」(こんにちは)と吠えますよ。
次はあなたに、私の声を送りましょう。耳を塞いでも、布団を被ったって私の声はすり抜けて行きますよ。もちろんこの町に来るのか、それとも来ないのかはあなたの自由。自由は大切ですからね。私たちはみなさんの意思を尊重しますよ。
あっ、そうだ。この町に役場を作らなければなりませんね。学校や病院も必要だ。大きな公園にプール。もう少し頑張って動物園や水族館、スキーやスノーボードができるゲレンデも作りましょう。こんなことを考えていると声でも胸がわくわくしてきます。
さてと、ただ一つだけみなさんに約束してほしいことがあるんですよ。みなさんとは、これを読んでいるあなたのことですよ。
みなさんに私たちからのお願いです。例の地図、私たちが作った町の地図のことです。これだけは誰にも内緒にしててほしいのです。あなたの友人に言ってはだめですよ。インターネットの世界でつぶやいてもいけません。
ちなみにこれが地図なのですが、もうお分かりですよね。そう、この地図には出口が描かれていないのです。そして私たちはこれからも出口を作りません。こんなに素晴らしい町に出口なんて必要ないでしょ。入り口さえあればよし。
くれぐれも出口のない町のことは秘密ですよ。
耳を澄ましてください。どうです? 聞こえませんか? 私の声。聞こえた方いますよね。聞こえた方はきっといるはずです。その方々は、この町に住むことができるチケットを手に入れたのです。幸運なチケットだと思うんですけどね。
チケットを使おうが、破り捨てようが、それはあなたのお好きなように。「どうしてもここに来い!」なんて、そんな無理強いなんてしませんよ。何度も言いますが、自由はとても大切なものですからね。
未来は実に面白い世界になると思いますよ。みなさんが苦労することなんて一つもないのですから。私たちにすべて任せればいいのです。私たちは何でもできる。みなさんが考えるすべてを私たちが作っていく。ねぇ、悪くないでしょ。便利な時代ですよ。みなさんは何もしなくていいのですよ。ぼんやりしていてください。うとうとしていても一向に構いませんよ。誰もみなさんを責めないし、誰もみなさんを叱らない。だってそうでしょ。みなさんは何もしないのですから。努力なんて言葉は、私たちが引き受けますよ。
私たちを元気にするのは、みなさんの願望? 夢? それとも欲? いつしか、みなさんのそういう心に秘めた思いが、底のない深い闇に変質していく。それ、私たちの大好物なんですよ。闇が深ければ深いほどいい味になるんです。そしてみなさんの欲が絶えることはない。私たちは安泰です。これもみなさんの欲のお陰。
やがて私たちにもライバルができると思うんですよ。そして切磋琢磨して、みなさんが何もしなくていい町作りを競い合う。私たちもうかうかしていられませんね。油断大敵。さぁ、仕事だ。仕事。
おっと、考えることや、想像することまで止めなくていいのですよ。思考が停止すると、頭の中に画用紙や鉛筆が用意できなくなるでしょ。
えっ? 考えることが億劫になってきた。おやおやそれは大変だ。
最後に声からみなさんに一言。
「町はあなたのすぐ近くにある」
嘘だと思うならあなたも願い事をすればいい。
了
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