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第四章 縛りと役目

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 カイとレイは俺に擦り寄ってくると、まさかの母様に威嚇をし始めた。その瞬間、表情が一切動かない母様はニヤリと笑って、挑発するようにただ一言「来い」と口に出すと、カイとレイは母様に噛み付いた。


「これは凄いな。どうやら本当に、リンは立派な獣の王になったらしい。普通の犬でも俺に襲い掛かってきたぞ。すまなかった……カイ、レイ、俺はルシアン。リンの母親だ。お詫びにリンと一緒に天界へ来れるようにするから、どうか牙を収めてくれないか??」


 カイとレイは満足そうに俺の所へ来ると、褒めて欲しいのかお座りをして待っている。


「カイ、レイ……守ろうとしてくれたの?? ありがとう。でもあの人はダメだよ。ぶっ飛んでるから……」


「凛くん、それ聞こえとるで。ほんま耳打ち下手くそやなあ」


「凛……ブハッ、アカン……笑ってまう。なんで普通にそんな事、カイとレイに言おうとすんねん」


「まさか、リンにぶっ飛んでるなんて、思われてたとはな……お前の方がぶっ飛んでんだよ!! このバカ息子。ジン、お前が居たのに、リンに耳打ちすら教えなかったのか??」


 母様によって記憶を戻してもらった陣は、自分は関係ないみたいな表情で、ずっと父さんとお兄ちゃんに挟まれて聞いていた。


「母様、それよりも話の続きは?? ないなら、俺はユラの事で凛に謝りたいんだけど。凛に嫌われるのは耐えられない」


「陣、俺は陣を嫌いになったりしない。ユラの事だって、ユラが悪いわけじゃない」


「アレはリンを狙ってる魔族のカケラだな。悪魔の上位種で、リンに執着してる魔族のうちの一人だ」


「魔族……だから俺じゃ分からなかったのか。嫌な予感はしてたんだ……ユラも焦ってたし、一生懸命訴えてくれていた……なのに……俺がもっと早く面倒見てれば……ごめん」


 リュカさんは、落ち込んだ様子で俺達に謝ってくるが、別にリュカさんも誰も悪くない。それに、母様は俺に執着してるうちの一人だって……これじゃ複数居る事になる。


「さて、本題に入ろうか。まずゼンとゼルには、あっちの世界の知識を頭に叩き込んで貰う。ジュリとジョン、リュカにそれは任せよう。そしてゼンとゼルは水星として一部の役目を与える。水星は基本的に、天界での役目となるけど、一部は地上で行う。そしてリンも獣の王……獣王としてゼンとゼルについて行く事。あっちは今、魔物が増えすぎてるからね……定期的に、あっちに行って魔物狩りをし、魔物の魂は地獄に送ってあげる事。長生きしすぎた魔物が獣ならば、リンの配下に加えてあげる事。魔物は悪魔や魔族に利用されやすいんだ。こっちで言う動物と同じだから、下手に長生きさせるより、定期的に地獄に帰してあげた方が彼等の為になる。長生きしすぎた子は、神が保護してあげるけど、リンが居るならリンにお願いした方がいい」


「アカン、俺チンプンカンプンや。ゼル、今の分かったか??」


「いや、全く頭に入ってこんかったから、一応メモしてある」


 俺もちょっと自信ないな。取り敢えず、ゼンとゼルと一緒に魔物狩りをしろって事だよね?? あとは俺が長生きした子を保護してあげる。でもさ、別にゼンとゼルじゃなくてもいいんじゃないの??


「母様、なんでその役目は水星じゃないとダメなの?? 別にあっちでも狩はするでしょ??」


「死導神の大鎌は、死神の大鎌と違って、逝くべき場所に導いてやれるんだ。彷徨う事がないから、彷徨った魂を悪魔や魔族に利用されないで済むし、ヒトにも悪用されない。あっちの世界は、こっちよりも大分危険だ。だから眷属を一人、連れて行ってもいい。俺はリュカをおすすめする。もしリュカが行くなら、リュカが守る扉はジンが守れ。記憶を戻してやったんだから出来るだろ??」


「分かった。リュカさんにもユラの事で迷惑をかけたし、凛達を危険に晒した。俺が扉は守るよ」


 陣は今回の事をかなりに気にしているのか、扉の守りを引き受けてくれて、リュカさんが俺達についてきてくれる事になった。洸はこっちでスイセンやカイとレイを見ててくれるらしい。


「あ……忘れてたけど、あっちに勇者召喚された奴等も止めてくれると助かる。あれはリンの知り合いだろ?? リンの名前叫びながら暴れ回ってるから……こっちには狂った奴が多いのかい?? 正直アレがヒトだとは思わなかったよ」


 そんな事する人……俺一人しか知らないんだけど……まさかだよな??


「愁か?? でもあいつ、練習には居ったよな?? その後にっちゅう事か??」


「愁さんか……放っといても良さそうやな」


「まあ……愁しかいないだろうね。俺も放っておいていいと思うよ」


 ゼン、ゼル、リュカさんに続くように、みんなが放っておいて問題ないと、何故かやたらと落ち着いていて、母さんとお義父さんも後回しでいいだろうと言ってしまった。


「なんだい?? あのヒトの子は、そんなに変人なのか?? 面白くなるなら、少しは放っておいてもいいけど、仕事が増えるのは水星だからね。それくらい暴れ回ってるから……それも二人。召喚されてしまった以上、ヒトはこっちには戻せないし、せめて落ち着かせてくれると助かるな」


「え……セッター居なくなるじゃん。耀、頑張ってファルコンに来てね。洸も頑張るって言ってたし……」


「ブハッ……愁の奴……これ聞いたらどうするんやろうな」


「愁さん、意地でも凛とバレーする為に、何かやらかしそうやない??」


 怖い事言わないでくれ。あの人、本当に何かしそうで怖いから。


「それじゃ、そろそろ俺は帰るよ。あまりこっちに長居すると、バランスが崩れてしまうからね。当たり前だけど、さっきの天界の話はここに居る者だけだからな。リン、ジン、何かあったら必ず呼びなさい。それと全員……早めに帰ってくるんだよ。今の天界は寂し過ぎるからね」


 そう言った母様は、俺とジンの頭を撫でると天界に帰ってしまった。




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