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第一章 出会い
39 ☆
しおりを挟む~sideゼル~
「兄貴、もっかい録音頼むわ。何あったか知らんけど、俺だけ断られるとか、避けたいやん」
「自分のでやれや。これは俺のや。ゼルだろうと、オッケーする瞬間のやつ、残しとくわけないやろ」
「それもそうやな……凛くん、なんかポヤポヤしとらん?」
こいつほんと目敏いわ、とか思っとるんやろなあ。でも、ほんまなんでこんなエロいんや??
「今は凛くんの本音聞けるチャンスやで。さっきなんか、自分からチュウしてきよって、ほんま可愛かったわ。凛くん感じやすくて、エロかったなあ」
チッ……ベロ突っ込んだって事やんか。しゃーないけど腹立つわ。
「凛くん、俺ん事分かる?」
「ゼル……? ゼル、ゼル……すきぃ」
近づくと、半裸状態の凛くんに、嬉しそうに抱きつかれて、それだけで昇天しそうになった。けど凛くんの攻撃はそれだけでは終わらず、顔をグイッと掴まれてキスされる。
うわ、マジやったんかいな。それに何これ、呼び捨てやし、甘えん坊やし、めちゃくちゃ可愛いやん。ベロ入れてもええんよな?
兄貴もやったというのを聞いては、もう我慢する事も出来ず、少し強引に舌を絡ませにいく。
「ンあ……ゼ……はぁ、はぁ……ンむ……ゼル」
「おい、ゼル。凛くんが苦しそうや、我慢できないんは分かるけど、今凛くん熱あるんやで?」
熱という言葉に、ハッとして慌てて唇を離すと、凛くんは肩で息をして、汗もかいてるせいか、やたらエロさを増していた。
「凛くんごめん!! 苦しかったな」
「凛くん、身体拭いて服着ようなあ」
そう言って兄貴は凛くんの身体を拭き始め、それに対して時々感じてる凛くんは、我慢してる俺には目の毒だった。
少し喘いどる凛くんも録音したいし、今既成事実作っといてもええよな。
「凛くん、俺も凛くんが好きや。大好きや。凛くんが嫌言うても、兄貴に負けんくらい愛しとる。せやから俺とも、恋人になってくれん?」
「いいの? 俺……ゼル怒らせた」
「ええで。言いたい事いっぱい言えばええやん。喧嘩したってええやんか。それでも好きならしゃあないやん。付き合う以外の選択肢ないやろ? 我儘きいて甘やかすんは兄貴の仕事、溜め込んだストレスの相手するんは俺の仕事や。凛くんが思っとる以上に、俺と兄貴は凛くんにぞっこんなんやで」
「……ンッ……俺も……ゼルの事好き……ゼンも好き……だから、二人の恋人にして?」
んー、結局俺にだけの返事録れんかったわ。でもええか、凛くんから告白してもろたし。
「するに決まっとるやん」
兄貴は凛くんの身体を拭き終わり、服を着せて毛布を被せてやる。
「凛くん、もう寝た方がええよ。寝れんかったら、陣くん呼んでこよか?」
「やだ。ゼンとゼルに居てほしい」
かわえぇ。なんやこの生き物。こんな状態の凛くんと、兄貴はよく一緒に居れたな。
「分かった。ここに居るから安心し」
兄貴がそう言うと、凛くんは何故か俺の方を見る。
「ゼル……どっか行く?」
なんや俺からも言って欲しかったんかいな!! 可愛すぎる。兄貴なんか悶えてもうてるやんか。
「俺もここに居るよ」
それを聞いた凛くんは、ふわっと笑ってすぐに眠りについた。
「可愛いすぎん!? なんや今の!! フワッフワのポヤッポヤやないか!!」
「ゼル、興奮するんは分かるけど、もう少し声量落とし。凛くん起きてまうやろ」
コンコン
凛くんが寝たのを見計らったかのように、ノック音の後、陣が入ってきた。
「凛寝ました? いつもと違すぎて驚きましたよね」
「凛くんいつも、熱出すとあんななん?」
今日ずっと一緒に居た兄貴が、陣に少し厳しめの表情で聞く。
「そうですね、いつも幼児返りしますよ。まあキス要求してたのは初めてですけど。基本甘えん坊になって、ガチギレの時とは逆に、ネガティブな方向に思ってる事をぶち撒けます。あとは離れるとすぐ泣くし、安心しないと寝ないし、本当面倒な奴なんですよ。まあ兄としては可愛いですけど……中学でリベロとして、コートに入るようになってからですね。こんな風になったのは」
まさかチュウしとったん聞いてたんか。ほんっとコイツ……凛くん大事なんやな。ちょこちょこ様子見に来とったんやろな。
それより、凛くんのは幼児返りやったんか。それにこんな反動ある程って、よっぽど中学時代が辛かったんやろな。
「陣くんなら、佐良さんから聞いとるかもしれんけど、脳震盪で退場した試合、俺見とったんよ。アレ以外にもなんかあったん?」
「あぁ、聞きました。それで二人に凛を任せろって言われてます。脳震盪は辞めるキッカケにすぎなくて、普段から暴力受けたり、酷い時は数人に……って言っても、後ろに突っ込まれてはいなくて、口で……」
「もうええわ。胸糞悪い……悪かったな。陣くんも言いたなかったやろ」
やばい……今兄貴が止めんかったら、俺陣の事殴っとったかもしれん。こいつは関係ないのに、殴ってでもその先を聞きたなかった。
「いや、二人に聞かれたら、ちゃんと説明しとけって、母さんに言われてたんで。それで幻滅するような奴等じゃないけど、嫌悪するようなら、引っ越しと凛の転校も考えるって言ってました」
「そんなん、するわけないやん!! 海外の血ぃと関西出身の愛情深さ舐めんといてや!!」
「それは分かってます。というかイタリアの人って、確か愛情表現が凄いですよね。多分母さんが二人を選んだ理由は、それもあると思います。付き合ったら思いっきり愛してやってほしいって事だと思いますよ。記憶を上書きできるくらいに」
「ゼル、陣くんにキレても無駄や。一旦落ち着き。なあ、凛くんがブチギレる時、倒れて熱出るんはどうにかならんか? 幼児返りは、正直めっちゃ気入っとんねん。でも熱出るんは可哀想やんか」
怒らせなきゃ、ええんとちゃうん? いや、ストレスは放っといても溜まってまうか。
「ストレス発散させたり、言いたい事言い合える相手が居れば……ブチギレの回数は減ると思います。ただ凛は精神科に通ってたので、相談してきたら静かに聞いてあげて、安心させてあげるのも、一つの手かもしれません」
「ほんなら、さっき凛くんにも言うたけど、俺が言い合い担当、兄貴が慰め担当でええんちゃう? ストレス発散は、セッ○スするんが1番やろ!!」
「お前は!! 確かにセッ○スはストレス発散なる!! 正直俺は毎日でもセッ○スしたい!! けどセッ○スは凛くんの身体の負担になるやろが!! それにセッ○スはストレス発散やなくて、愛し合う為にやる行為や!!」
「兄貴はセッ○スセッ○スうっさいねん!! ほんならストレス発散はどうすんねん!!」
俺と兄貴で言い合っていると、突然後ろから拳骨をくらった。それもかなり痛い。
「二人とも……恥ずかしいからやめてくれ。陣も笑ってないで止めろよ。どうせ俺が寝てる間に、中学時代の話でもしたんだろ?」
陣は凛くんが起きたのに気づいてたのか、ケラケラ笑っていた。
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