8 / 26
第一章 異世界に来ました(一年前)
八、ナンパですか?
しおりを挟む
食料品店に入ろうとしたところで声をかけられて、後ろから肩をぐっと掴まれて驚いた。恐る恐る後ろを振り向いたら、そこにはうっすらと笑みを浮かべた金髪の若者が立っていた。
身長百五十八センチの私よりも頭一つ分は高いから、身長は百七十五センチくらいで年は二十才くらいだろうか。目が青い……これが金髪碧眼ってやつなのか。若干垂れ目だが睫毛が長くて顔立ちが整っている。一般的にいうところの所謂イケメンなのかもしれない。
耳の下くらいの長さの癖のある金髪からはチャラチャラとエメラルドっぽいピアスが覗いている。肩に載せられた手の指には宝石のついたのやゴテゴテした指輪が嵌っている。服装は何というか……いかにも貴族ですって派手さだ。
(この馴れ馴れしさ……。絵に書いたようなチャラ男だな)
若者は私の肩に手を載せたままニヤニヤと私を見ている。背負い籠を抱えているから何か売っているとでも思われたんだろうか。ていうか手をどけてほしい。
「……何ですか」
「珍しい毛色の猫がいると思ってねぇ。なかなかかわいい顔をしているじゃないか、黒猫ちゃん」
「はぁ?」
――うわっ、なんだこいつ、面と向かって黒猫ちゃんて! キモいっ! 馴れ馴れしい! もしかしてこれがナンパってやつ? もっとドキドキするもんかと思ってたけど嬉しくもなんともないな。
私は憮然とした態度でキッと男を睨みつけた。父さんと海翔からは知らない人と口きくなって言われてたけど、話しかけられたら無視するわけにもいかない。
「イイねぇ、その挑戦的な目。ますます気に入ったよ~。ねえ、僕の屋敷に来ない?」
「知らない人についていっちゃ駄目って言われてますから」
「僕の名前はエルヴィンっていうんだよ。これで知り合いだよね。さあ、行こう」
エルヴィンと名乗る男は私の手を掴んで強引に引っ張っていこうとする。私はその手を振り払ってエルヴィンを睨みつけてはっきりと言い放った。
「嫌」
「はあ~? 僕の誘いを断る女性がいるなんて信じられない。僕の屋敷に来たら贅沢し放題だよ?」
「行かない」
――金持ちのボンボンか。贅沢って言葉で女がホイホイついていくと思うなよ。
常識的に考えて知らない男の甘言についていくバカがいるわけがない。こんな世界だ。奴隷だの愛玩動物だの言って平気で他人を意のままにしようとする常識があるのかもしれない。こんなのについていったら一瞬で自由を奪われてしまうに決まってる。こんな奴についていくなんてよっぽど危機管理の低い幼児くらいしかいないだろう。
「え~、美味しいものもたくさん食べさせてあげるのに」
――ピクッ。
「……美味しいもの?」
「うん、肉料理に甘~いデザートも食べ放題だよ? 最後は別の甘~いデザートもあるよ?」
――あー、最後のひと言で冷静になったわ。危ない危ない。食いしん坊は身を亡ぼすな。
エルヴィンはもう一押しで落ちると思ったのか、ニヤニヤしながら私の返事を待っている。私は気を引き締め直して、もう一度エルヴィンをキッと睨みつけた。
――だ、誰がそんな甘言に落ちるか、ばーかばーか。
「ぃ、行かない。私、用事があるから。じゃあね」
私がプイッと顔を背けてその場を立ち去ろうとすると再び腕を掴まれた。そしてエルヴィンの顔がみるみる真っ赤に染まっていった。恥ずかしがっているのではなく怒っているようだ。
「なんだって……? 僕の言うことが聞けないっていうのか……? フン! なつかない猫なら躾け甲斐もあるっていうものだ。さあ、来い! 僕が可愛がってやる!」
エルヴィンは嫌がる私の腕を無理矢理引っ張って連れていこうとした。
身長百五十八センチの私よりも頭一つ分は高いから、身長は百七十五センチくらいで年は二十才くらいだろうか。目が青い……これが金髪碧眼ってやつなのか。若干垂れ目だが睫毛が長くて顔立ちが整っている。一般的にいうところの所謂イケメンなのかもしれない。
耳の下くらいの長さの癖のある金髪からはチャラチャラとエメラルドっぽいピアスが覗いている。肩に載せられた手の指には宝石のついたのやゴテゴテした指輪が嵌っている。服装は何というか……いかにも貴族ですって派手さだ。
(この馴れ馴れしさ……。絵に書いたようなチャラ男だな)
若者は私の肩に手を載せたままニヤニヤと私を見ている。背負い籠を抱えているから何か売っているとでも思われたんだろうか。ていうか手をどけてほしい。
「……何ですか」
「珍しい毛色の猫がいると思ってねぇ。なかなかかわいい顔をしているじゃないか、黒猫ちゃん」
「はぁ?」
――うわっ、なんだこいつ、面と向かって黒猫ちゃんて! キモいっ! 馴れ馴れしい! もしかしてこれがナンパってやつ? もっとドキドキするもんかと思ってたけど嬉しくもなんともないな。
私は憮然とした態度でキッと男を睨みつけた。父さんと海翔からは知らない人と口きくなって言われてたけど、話しかけられたら無視するわけにもいかない。
「イイねぇ、その挑戦的な目。ますます気に入ったよ~。ねえ、僕の屋敷に来ない?」
「知らない人についていっちゃ駄目って言われてますから」
「僕の名前はエルヴィンっていうんだよ。これで知り合いだよね。さあ、行こう」
エルヴィンと名乗る男は私の手を掴んで強引に引っ張っていこうとする。私はその手を振り払ってエルヴィンを睨みつけてはっきりと言い放った。
「嫌」
「はあ~? 僕の誘いを断る女性がいるなんて信じられない。僕の屋敷に来たら贅沢し放題だよ?」
「行かない」
――金持ちのボンボンか。贅沢って言葉で女がホイホイついていくと思うなよ。
常識的に考えて知らない男の甘言についていくバカがいるわけがない。こんな世界だ。奴隷だの愛玩動物だの言って平気で他人を意のままにしようとする常識があるのかもしれない。こんなのについていったら一瞬で自由を奪われてしまうに決まってる。こんな奴についていくなんてよっぽど危機管理の低い幼児くらいしかいないだろう。
「え~、美味しいものもたくさん食べさせてあげるのに」
――ピクッ。
「……美味しいもの?」
「うん、肉料理に甘~いデザートも食べ放題だよ? 最後は別の甘~いデザートもあるよ?」
――あー、最後のひと言で冷静になったわ。危ない危ない。食いしん坊は身を亡ぼすな。
エルヴィンはもう一押しで落ちると思ったのか、ニヤニヤしながら私の返事を待っている。私は気を引き締め直して、もう一度エルヴィンをキッと睨みつけた。
――だ、誰がそんな甘言に落ちるか、ばーかばーか。
「ぃ、行かない。私、用事があるから。じゃあね」
私がプイッと顔を背けてその場を立ち去ろうとすると再び腕を掴まれた。そしてエルヴィンの顔がみるみる真っ赤に染まっていった。恥ずかしがっているのではなく怒っているようだ。
「なんだって……? 僕の言うことが聞けないっていうのか……? フン! なつかない猫なら躾け甲斐もあるっていうものだ。さあ、来い! 僕が可愛がってやる!」
エルヴィンは嫌がる私の腕を無理矢理引っ張って連れていこうとした。
0
あなたにおすすめの小説
『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』
宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜
具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」
居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。
幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。
そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。
しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。
そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。
盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。
※表紙はAIです
この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜
具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです
転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!?
肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!?
その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。
そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。
前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、
「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。
「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」
己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、
結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──!
「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」
でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……!
アホの子が無自覚に世界を救う、
価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!
聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。
そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来?
エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。
騎士団寮のシングルマザー
古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。
突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。
しかし、目を覚ますとそこは森の中。
異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる!
……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!?
※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。
※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる