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第七話「狙われた翼 後編」
第二章「共闘」・⑥
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ティータが視ていた通り・・・あの島で会った怪獣・オラティオンは、ザムルアトラの一部と化していた。
か弱い我が子の頭を撫でていた掌は無情にも鋏に貫かれ、優しい微笑みを浮かべていた口元からは際限なく涎を垂らし、苦悶の叫びを上げ続けている。
「ひどい・・・!」
「・・・チッ!」
惨状を目にして、クロが絶句し、カノンが舌打ちする。
一方の僕は・・・正直、胃から込み上げてくるものを抑えるのに必死だった。
・・・けど、ここまで来て情けない所は見せられない。
喉元を灼こうとしたそれを、弱気と一緒に無理やり飲み込み、前を向く。
球体の下方に視線を向けると・・・ティータは空中に静止したまま、左瞳を光らせていた。
その力の向かう先は、ザムルアトラの──正しく言えばそれに捕らわれているオラティオンの体のようだ。
ザムルアトラに侵食されている頭部と両拳が、薄く赤に光っている。
おそらく、囚われたオラティオンだけを引っ張り上げようとしているんだろう。
・・・しかし、ティータの瞳の光は昨夜よりも弱く、チカチカと明滅している。
クロと同じで、まだ体力が回復しきっていないんだ・・・!
と、そこで・・・ティータの真下──地面の一部が、音を立てて隆起するのが見えた。
「! 危ないッ! 下だッ‼」
<ッッ⁉>
咄嗟に出た一言が、ギリギリで届いてたらしい。
赤い残光を引きながら、ティータが素早く後退すると──
たった今開けた空間を、地面から飛び出して来た数本の「槍」が貫いた。
<キキキ・・・クキキカカ・・・ッ!>
何度耳にしても慣れない駆動音が聴こえると、鉄の槍は途端にその硬さを失くして、蛇に似た動きでうねりながら地中に戻っていく。
見れば、ザムルアトラの後脚の一部が、触手のように細長く変化して、すぐ足元の地面に刺さっていた。
ティータの目を欺くために、地中を伝わせたんだ・・・!
<この声は・・・ハヤト・・・⁉>
後退したティータがキョロキョロと頭を動かすと、すぐにこちらと目が合って──
<貴方たち・・・! どうして・・・どうして来たの・・・ッ‼>
直後、彼女は責めるような口調で叫んだ。
<アレの力は昨夜思い知ったはずでしょう⁉ とにかく、早くここから離れて───>
「ティータちゃんっ‼」
しかし・・・その声を、クロが遮る。
二色の瞳は、驚いているようにも見えた。
「・・・昨日は、ごめんなさい。せっかく任せてもらったのに、私の力が足りないばかりに・・・私、ティータちゃんを守れませんでした」
そして、クロはぺこりと頭を下げてから──もう一度、ティータへ向き直る。
「だから・・・もう一度、チャンスを下さい。今度は、一緒に戦いましょう・・・! 一緒に、オラティオンさんを助けましょうっ!」
<・・・だけど・・・昨日とは違うの・・・! 今のアレは私だけじゃなく、クロまで捕らえようとしているのよ‼ わざわざ此処に攻めてきたのも、貴女を誘い出すためなのよ・・・‼>
「だから貴女は逃げて!」と、ティータは必死に訴えかけてくる。
───が、それでもなお・・・クロは食い下がった。
「・・・私、記憶がなくて、まだ色んな事をわかってないんだと思います。・・・だけど・・・! 「記憶がないから」で、納得したくないんです! 何かを諦める理由にしたくないんですっ!間違ったり・・・傷ついたりしても・・・それでも前に進みたいんです・・・っ‼」
握っていた拳を開いて・・・彼女は、じっと自らの掌を見つめた。
「ハヤトさんが言ってくれたんです・・・! ヒーローは、ヒーローとして生まれてくるんじゃなくて・・・勇気と明日を信じる者だけが、ヒーローになるんだって!」
<・・・クロ・・・貴女は・・・・・・>
───そこで俄に、クロの体がオレンジ色に発光し始める。
暖かな光の源・・・シルフィは、どこまでも優しい眼差しで、クロを見ていた。
「だから私、戦います・・・‼ ティータちゃんを守るために! ティータちゃんが守りたいものを守るために! ───自分がなりたい自分に、なるために・・・‼」
再び、強く拳を握り、橙色の瞳で真っ直ぐに前を見据え・・・力の限り、叫ぶ。
「ティータちゃんは──「ひとりじゃない」ですっ‼」
光そのものと化したクロは、球体から飛び出し、空へ。
土砂と爆煙とで塞がれていた夜空を、突如として現れた太陽が照らす。
<ギギ・・・ギィッ───オオォ・・・アァ・・・・・・!>
舞い降りる光を前にして・・・苦しみ続けていたオラティオンの呻きが、一時、止んだ。
※ ※ ※
<グオオオオオオオオォォォォォッッッ‼>
聴き慣れてしまった咆哮が響き渡り──戦場の空気が、変わる。
・・・初めてこの横須賀基地でヤツを目にした時には、こんなに何度も目にする事になろうとは想像も出来なかった
『新たな高エネルギー反応・・・No.007ですッ‼』
松戸少尉の声が聞こえるのと同時、白い光は形を変え、ネイビーの装甲に身を包んだ巨大な竜がその姿を現す。
・・・そして、No.011と共に、No.013に対峙した。
卯養島での一件を見れば一目瞭然ではあったが・・・やはり。
中尉の予想した通り、No.007とNo.011は仲間同士だったと言う事だろう。
「・・・松戸少尉。現在の避難状況は?」
『50%・・・といったところです』
「了解した。・・・総員、待機だ。我々は漁夫の利を狙う」
尤もらしい言い方をしたものの・・・実のところ、乱入する方がリスクが高いというのが現時点での判断だ。
・・・二体のジャガーノートが「共闘」するなど、初めての事なのだから。
<ギギギギギャアアアアアアアアアッッ‼>
枯れた喉を更にいたぶるような悲鳴が上がり、No.013の巨大な四つの脚が進撃を始める。
対するNo.011は、キュルキュルと不可思議な音を発した。・・・すると、頷くような仕草をしたNo.007が、前屈みになって両腕を開いて構える。
・・・どうやら今のが、サイクラーノ島でやったという、ジャガーノートと対話する能力のようだ。
<グオオオオオッッッ!>
なおも真っ直ぐに進んでくるNo.013に対して、No.007もまた真っ向からぶつかろうと突進する。
このまま行けば、前面に磔にされているNo.012と激突してしまうが───
<キュルルルルル・・・ッ!>
そこで、No.011に動きがあった。
左の複眼が赤く光るのと同時・・・No.013が歩行のために持ち上げた右の前脚が同じ色の光に包まれ、空中で静止したのだ。
勢いそのまま、No.007が金縛りにあっている鋼の前脚に飛びつき、ホールドする。
No.013がNo.012の腕を操って、それを振りほどこうとすると・・・次は反対側の前脚が赤い光に包まれ、ひとりでに大きく外側へ滑った。
<キクカカカ───⁉>
ズシン!と大きな音がして、両前脚の支えを失ったNo.013は前方に倒れ込む。
背中全体を無理やり接着されているような状態のNo.012も、本体の動きに合わせてつんのめった。
その隙を見逃さず、No.007は右前脚の根元を掴み直すと、体中に真っ赤な模様を浮かび上がらせる。
血管に似た模様は、脈動しながらヤツの両腕へと集まっていった。
───成程。まずはヤツの脚を熱で捩じ切って、動きを封じるつもりか・・・!
感心するのと同時に、その知能の高さに恐ろしくもなる。
・・・ヤツらが人類に牙を剥く時には、ただの獣でなく、巨大な人間を相手にするのと同様に考えなければなるまい。
<オオオオオオオオオオオッッ────>
再度の咆哮を合図に、鋼の体から白煙が上がった。
高熱だけでなく、No.007の膂力も加わり、ブチブチと内部の鋼線が引き千切れる音が聴こえてくる。
取った! と、そう確信した・・・その時───
<ギギギギギャアアアアアアアアアアアアアアッッッ‼>
No.012の悲鳴が、耳をつんざく──
見れば、No.013はNo.012の腕を操って、赤熱化したNo.007の体にあてがったのだ。
・・・当然、この声を上げさせるために、だろう。
<・・・グルルル・・・ッ!>
必死に守ろうとしているものが、自分のせいで苦しんでいる・・・
動揺したNo.007に生まれた隙を、No.013が見逃すはずもなかった。
<クキキキキイイイイイィィィッッ‼>
耳障りな駆動音が鳴り響くのと同時・・・No.013の両前脚から、いくつもの鋼線が飛び出し、絡みつき、No.007の全身を縛る。
瞬く間に、ネイビーの鎧は鈍色の繭に変わってしまった。
すぐに繭の所々から白煙が上がるが・・・糸の量が多く、すぐには溶かしきれないようだ。
もがくNo.007を嘲笑うように、歪な悪魔の全身から、紫色の光が放たれ始める。
「まずい──! アレが来る・・・ッ‼」
出来る限り射線から外れつつ、<サンダーバード>を近くに引き寄せておく。
<ギギギギイイイイイッッ‼ ギギャアアアアアアアアアッッッ‼>
紫の光がその光量を増していく中 ──
再び、No.0012の悲鳴が轟くと・・・その両手の指先全てが、上下にぱっくりと割れ・・・その中から、「砲口」が姿を現した。
『・・・これじゃあまるで・・・拷問だ・・・!』
普段は冷静に分析に徹している柵山少尉でさえ、この凄惨な仕打ちには怒りを感じずにはいられなかったようだ。
・・・他の者は皆、声さえ出せずにいる。
<グオオオオッッ‼ グオオオオオオオオォォッッ‼>
No.007は全身を振り乱し、拘束から逃れようとするが──間に合わない。
円形ではなく、横に広い穴の空いた十の砲口が、No.007の体に向けられる。
紫に染まった球体と宝石とが一際明るく輝き、死の光が放たれようとして───
<キュルルルルル───ッッ‼>
甲高い鳴き声が、戦場に響き渡った。
No.011は体を90度横に倒し、地面に対して垂直になった体勢のまま、立ち込める砂煙を切り裂いて凄まじいスピードで飛んでくる。
再び、左の複眼が赤い光を放ち──発射の直前に、No.012の両腕が上方向にずれた。
<オオオオオオオオオオオッッ‼>
しかし、出力不足だったのか──
完全に逸らす事は出来ず、板状になった閃光のいくつかはNo.007の装甲をかすめ、その表面を斬り裂いていた。真っ赤な鮮血が飛び散る。
砲口の穴の形は、ウォータージェットのように対象を断つためのものだったのか・・・‼
か弱い我が子の頭を撫でていた掌は無情にも鋏に貫かれ、優しい微笑みを浮かべていた口元からは際限なく涎を垂らし、苦悶の叫びを上げ続けている。
「ひどい・・・!」
「・・・チッ!」
惨状を目にして、クロが絶句し、カノンが舌打ちする。
一方の僕は・・・正直、胃から込み上げてくるものを抑えるのに必死だった。
・・・けど、ここまで来て情けない所は見せられない。
喉元を灼こうとしたそれを、弱気と一緒に無理やり飲み込み、前を向く。
球体の下方に視線を向けると・・・ティータは空中に静止したまま、左瞳を光らせていた。
その力の向かう先は、ザムルアトラの──正しく言えばそれに捕らわれているオラティオンの体のようだ。
ザムルアトラに侵食されている頭部と両拳が、薄く赤に光っている。
おそらく、囚われたオラティオンだけを引っ張り上げようとしているんだろう。
・・・しかし、ティータの瞳の光は昨夜よりも弱く、チカチカと明滅している。
クロと同じで、まだ体力が回復しきっていないんだ・・・!
と、そこで・・・ティータの真下──地面の一部が、音を立てて隆起するのが見えた。
「! 危ないッ! 下だッ‼」
<ッッ⁉>
咄嗟に出た一言が、ギリギリで届いてたらしい。
赤い残光を引きながら、ティータが素早く後退すると──
たった今開けた空間を、地面から飛び出して来た数本の「槍」が貫いた。
<キキキ・・・クキキカカ・・・ッ!>
何度耳にしても慣れない駆動音が聴こえると、鉄の槍は途端にその硬さを失くして、蛇に似た動きでうねりながら地中に戻っていく。
見れば、ザムルアトラの後脚の一部が、触手のように細長く変化して、すぐ足元の地面に刺さっていた。
ティータの目を欺くために、地中を伝わせたんだ・・・!
<この声は・・・ハヤト・・・⁉>
後退したティータがキョロキョロと頭を動かすと、すぐにこちらと目が合って──
<貴方たち・・・! どうして・・・どうして来たの・・・ッ‼>
直後、彼女は責めるような口調で叫んだ。
<アレの力は昨夜思い知ったはずでしょう⁉ とにかく、早くここから離れて───>
「ティータちゃんっ‼」
しかし・・・その声を、クロが遮る。
二色の瞳は、驚いているようにも見えた。
「・・・昨日は、ごめんなさい。せっかく任せてもらったのに、私の力が足りないばかりに・・・私、ティータちゃんを守れませんでした」
そして、クロはぺこりと頭を下げてから──もう一度、ティータへ向き直る。
「だから・・・もう一度、チャンスを下さい。今度は、一緒に戦いましょう・・・! 一緒に、オラティオンさんを助けましょうっ!」
<・・・だけど・・・昨日とは違うの・・・! 今のアレは私だけじゃなく、クロまで捕らえようとしているのよ‼ わざわざ此処に攻めてきたのも、貴女を誘い出すためなのよ・・・‼>
「だから貴女は逃げて!」と、ティータは必死に訴えかけてくる。
───が、それでもなお・・・クロは食い下がった。
「・・・私、記憶がなくて、まだ色んな事をわかってないんだと思います。・・・だけど・・・! 「記憶がないから」で、納得したくないんです! 何かを諦める理由にしたくないんですっ!間違ったり・・・傷ついたりしても・・・それでも前に進みたいんです・・・っ‼」
握っていた拳を開いて・・・彼女は、じっと自らの掌を見つめた。
「ハヤトさんが言ってくれたんです・・・! ヒーローは、ヒーローとして生まれてくるんじゃなくて・・・勇気と明日を信じる者だけが、ヒーローになるんだって!」
<・・・クロ・・・貴女は・・・・・・>
───そこで俄に、クロの体がオレンジ色に発光し始める。
暖かな光の源・・・シルフィは、どこまでも優しい眼差しで、クロを見ていた。
「だから私、戦います・・・‼ ティータちゃんを守るために! ティータちゃんが守りたいものを守るために! ───自分がなりたい自分に、なるために・・・‼」
再び、強く拳を握り、橙色の瞳で真っ直ぐに前を見据え・・・力の限り、叫ぶ。
「ティータちゃんは──「ひとりじゃない」ですっ‼」
光そのものと化したクロは、球体から飛び出し、空へ。
土砂と爆煙とで塞がれていた夜空を、突如として現れた太陽が照らす。
<ギギ・・・ギィッ───オオォ・・・アァ・・・・・・!>
舞い降りる光を前にして・・・苦しみ続けていたオラティオンの呻きが、一時、止んだ。
※ ※ ※
<グオオオオオオオオォォォォォッッッ‼>
聴き慣れてしまった咆哮が響き渡り──戦場の空気が、変わる。
・・・初めてこの横須賀基地でヤツを目にした時には、こんなに何度も目にする事になろうとは想像も出来なかった
『新たな高エネルギー反応・・・No.007ですッ‼』
松戸少尉の声が聞こえるのと同時、白い光は形を変え、ネイビーの装甲に身を包んだ巨大な竜がその姿を現す。
・・・そして、No.011と共に、No.013に対峙した。
卯養島での一件を見れば一目瞭然ではあったが・・・やはり。
中尉の予想した通り、No.007とNo.011は仲間同士だったと言う事だろう。
「・・・松戸少尉。現在の避難状況は?」
『50%・・・といったところです』
「了解した。・・・総員、待機だ。我々は漁夫の利を狙う」
尤もらしい言い方をしたものの・・・実のところ、乱入する方がリスクが高いというのが現時点での判断だ。
・・・二体のジャガーノートが「共闘」するなど、初めての事なのだから。
<ギギギギギャアアアアアアアアアッッ‼>
枯れた喉を更にいたぶるような悲鳴が上がり、No.013の巨大な四つの脚が進撃を始める。
対するNo.011は、キュルキュルと不可思議な音を発した。・・・すると、頷くような仕草をしたNo.007が、前屈みになって両腕を開いて構える。
・・・どうやら今のが、サイクラーノ島でやったという、ジャガーノートと対話する能力のようだ。
<グオオオオオッッッ!>
なおも真っ直ぐに進んでくるNo.013に対して、No.007もまた真っ向からぶつかろうと突進する。
このまま行けば、前面に磔にされているNo.012と激突してしまうが───
<キュルルルルル・・・ッ!>
そこで、No.011に動きがあった。
左の複眼が赤く光るのと同時・・・No.013が歩行のために持ち上げた右の前脚が同じ色の光に包まれ、空中で静止したのだ。
勢いそのまま、No.007が金縛りにあっている鋼の前脚に飛びつき、ホールドする。
No.013がNo.012の腕を操って、それを振りほどこうとすると・・・次は反対側の前脚が赤い光に包まれ、ひとりでに大きく外側へ滑った。
<キクカカカ───⁉>
ズシン!と大きな音がして、両前脚の支えを失ったNo.013は前方に倒れ込む。
背中全体を無理やり接着されているような状態のNo.012も、本体の動きに合わせてつんのめった。
その隙を見逃さず、No.007は右前脚の根元を掴み直すと、体中に真っ赤な模様を浮かび上がらせる。
血管に似た模様は、脈動しながらヤツの両腕へと集まっていった。
───成程。まずはヤツの脚を熱で捩じ切って、動きを封じるつもりか・・・!
感心するのと同時に、その知能の高さに恐ろしくもなる。
・・・ヤツらが人類に牙を剥く時には、ただの獣でなく、巨大な人間を相手にするのと同様に考えなければなるまい。
<オオオオオオオオオオオッッ────>
再度の咆哮を合図に、鋼の体から白煙が上がった。
高熱だけでなく、No.007の膂力も加わり、ブチブチと内部の鋼線が引き千切れる音が聴こえてくる。
取った! と、そう確信した・・・その時───
<ギギギギギャアアアアアアアアアアアアアアッッッ‼>
No.012の悲鳴が、耳をつんざく──
見れば、No.013はNo.012の腕を操って、赤熱化したNo.007の体にあてがったのだ。
・・・当然、この声を上げさせるために、だろう。
<・・・グルルル・・・ッ!>
必死に守ろうとしているものが、自分のせいで苦しんでいる・・・
動揺したNo.007に生まれた隙を、No.013が見逃すはずもなかった。
<クキキキキイイイイイィィィッッ‼>
耳障りな駆動音が鳴り響くのと同時・・・No.013の両前脚から、いくつもの鋼線が飛び出し、絡みつき、No.007の全身を縛る。
瞬く間に、ネイビーの鎧は鈍色の繭に変わってしまった。
すぐに繭の所々から白煙が上がるが・・・糸の量が多く、すぐには溶かしきれないようだ。
もがくNo.007を嘲笑うように、歪な悪魔の全身から、紫色の光が放たれ始める。
「まずい──! アレが来る・・・ッ‼」
出来る限り射線から外れつつ、<サンダーバード>を近くに引き寄せておく。
<ギギギギイイイイイッッ‼ ギギャアアアアアアアアアッッッ‼>
紫の光がその光量を増していく中 ──
再び、No.0012の悲鳴が轟くと・・・その両手の指先全てが、上下にぱっくりと割れ・・・その中から、「砲口」が姿を現した。
『・・・これじゃあまるで・・・拷問だ・・・!』
普段は冷静に分析に徹している柵山少尉でさえ、この凄惨な仕打ちには怒りを感じずにはいられなかったようだ。
・・・他の者は皆、声さえ出せずにいる。
<グオオオオッッ‼ グオオオオオオオオォォッッ‼>
No.007は全身を振り乱し、拘束から逃れようとするが──間に合わない。
円形ではなく、横に広い穴の空いた十の砲口が、No.007の体に向けられる。
紫に染まった球体と宝石とが一際明るく輝き、死の光が放たれようとして───
<キュルルルルル───ッッ‼>
甲高い鳴き声が、戦場に響き渡った。
No.011は体を90度横に倒し、地面に対して垂直になった体勢のまま、立ち込める砂煙を切り裂いて凄まじいスピードで飛んでくる。
再び、左の複眼が赤い光を放ち──発射の直前に、No.012の両腕が上方向にずれた。
<オオオオオオオオオオオッッ‼>
しかし、出力不足だったのか──
完全に逸らす事は出来ず、板状になった閃光のいくつかはNo.007の装甲をかすめ、その表面を斬り裂いていた。真っ赤な鮮血が飛び散る。
砲口の穴の形は、ウォータージェットのように対象を断つためのものだったのか・・・‼
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