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番は特別らしい
7 ハナの始まり
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その大型犬は、アイスグレーの目をおずおずと向けた。
その目を見た途端、ハナはこの人が自分を殴らないとわかった。
"父ちゃん達"みたいな気持ち悪いギラつきも、濁ったのもその目には無かった。
あの赤鬼って、こんな人だったの?
戸惑いでハナは落ち着かなかった。
怒鳴ってやりたかった。
叫ぼうと思ってた。
レンちゃんは危機を脱したけれど、今も眠ったままだ。
番とかっていうのを一方的に押し付けてくる赤鬼に、近付くなって絶縁宣言してやりたかった。
なのに、
なんで叱られた犬みたいなの?
こっちがいけなかったのかしらって思わせる顔してるの?
その赤鬼がどんな人かはわからない。
ただ私を殴る人じゃないと、本能的にわかった。
ついてっちゃいけない人。
人前だと心配そうで、でも何もしてくれない人。
怒鳴るけれどこっそり食べ物をくれる人。
外から見えないそんな事は、レンとハナは本能的に察していた。
その本能がこの赤鬼の男は、ハナを好きで好きでたまらない。
ハナを大事にしたくてたまらないと思ってる、と言っていた。
声を掛けたくて、でも怖がらせてしまうと悩んでいるのが見えていた。
ハナはすっと背筋を伸ばした。
サンドロはたとえ拒絶でも声が貰えると顔を上げる。
大きい。
今まで守ってくれたレンちゃんの、縦も横も1,5倍はありそうだ。
肩幅も大きくて、マッチョっていうの?
レンちゃんが目指して鍛えてた感じ。
よく見るとイケメンだ。
赤鬼としか見えなかったのに。
緊張でむしろ白い。
すっと通った鼻は、彫りが深くて外国人って感じ。
いや、外国じゃ無くて異世界だけどね。
それがこっちの言葉を待って。
緊張のあまり唇を噛んで。
ちょっと潤んだ目を向けてる。
そんな情け無い顔してるって、
なんか反則なんですけど。
ハナは目の前の状況に混乱していた。
自分達はこの世界に結婚する為に召喚された。
こっちには番というものがあるそうだ。
魂の半分で、命を別ける者。愛しい者。
異世界に生まれてしまったその番を呼ぶ為に、この召喚があったって言う。
どれだけ綺麗事言ってても、国が人攫いしてるんだもの。
お金掛けてるだろうし、こっちの事情は考えないだろうって思う。
それでも皆んないい人で、この赤鬼だっていい人そうで。
レンちゃんにあんな事したのに、目の前であんな事したのに。
なんかこの人といたら優しくなれそうって思えてくる。
それって、番ってことだから?本当に私の番なの?
…母ちゃんみたいに、沢山の父ちゃんがいるのは番じゃないんだよね。
たった一人の魂の相手が番なんだよね?
私が番と一緒になったら、大事にされて幸せになれるのかしら。
レンちゃんも私の世話が無くなって、自分の事だけを考えられる様になるのかしら。
酷いと泣くことも。
あっちへ行ってと言うことも。
始め、赤鬼に会ったらぶつけてやりたいと思ってた言葉だけど。
なんか、相応しくない気がした。
だってレンちゃんの痛みはレンちゃんが解決する事だから。
なんでこんな事をしたのか聞くけれど、勝手に責めるのは違うと思う。
「私はハナといいます。
兄のレンと召喚されました。」
せめて真っ直ぐ目を見て。
ハナはサンドロに声を掛けた。
その目を見た途端、ハナはこの人が自分を殴らないとわかった。
"父ちゃん達"みたいな気持ち悪いギラつきも、濁ったのもその目には無かった。
あの赤鬼って、こんな人だったの?
戸惑いでハナは落ち着かなかった。
怒鳴ってやりたかった。
叫ぼうと思ってた。
レンちゃんは危機を脱したけれど、今も眠ったままだ。
番とかっていうのを一方的に押し付けてくる赤鬼に、近付くなって絶縁宣言してやりたかった。
なのに、
なんで叱られた犬みたいなの?
こっちがいけなかったのかしらって思わせる顔してるの?
その赤鬼がどんな人かはわからない。
ただ私を殴る人じゃないと、本能的にわかった。
ついてっちゃいけない人。
人前だと心配そうで、でも何もしてくれない人。
怒鳴るけれどこっそり食べ物をくれる人。
外から見えないそんな事は、レンとハナは本能的に察していた。
その本能がこの赤鬼の男は、ハナを好きで好きでたまらない。
ハナを大事にしたくてたまらないと思ってる、と言っていた。
声を掛けたくて、でも怖がらせてしまうと悩んでいるのが見えていた。
ハナはすっと背筋を伸ばした。
サンドロはたとえ拒絶でも声が貰えると顔を上げる。
大きい。
今まで守ってくれたレンちゃんの、縦も横も1,5倍はありそうだ。
肩幅も大きくて、マッチョっていうの?
レンちゃんが目指して鍛えてた感じ。
よく見るとイケメンだ。
赤鬼としか見えなかったのに。
緊張でむしろ白い。
すっと通った鼻は、彫りが深くて外国人って感じ。
いや、外国じゃ無くて異世界だけどね。
それがこっちの言葉を待って。
緊張のあまり唇を噛んで。
ちょっと潤んだ目を向けてる。
そんな情け無い顔してるって、
なんか反則なんですけど。
ハナは目の前の状況に混乱していた。
自分達はこの世界に結婚する為に召喚された。
こっちには番というものがあるそうだ。
魂の半分で、命を別ける者。愛しい者。
異世界に生まれてしまったその番を呼ぶ為に、この召喚があったって言う。
どれだけ綺麗事言ってても、国が人攫いしてるんだもの。
お金掛けてるだろうし、こっちの事情は考えないだろうって思う。
それでも皆んないい人で、この赤鬼だっていい人そうで。
レンちゃんにあんな事したのに、目の前であんな事したのに。
なんかこの人といたら優しくなれそうって思えてくる。
それって、番ってことだから?本当に私の番なの?
…母ちゃんみたいに、沢山の父ちゃんがいるのは番じゃないんだよね。
たった一人の魂の相手が番なんだよね?
私が番と一緒になったら、大事にされて幸せになれるのかしら。
レンちゃんも私の世話が無くなって、自分の事だけを考えられる様になるのかしら。
酷いと泣くことも。
あっちへ行ってと言うことも。
始め、赤鬼に会ったらぶつけてやりたいと思ってた言葉だけど。
なんか、相応しくない気がした。
だってレンちゃんの痛みはレンちゃんが解決する事だから。
なんでこんな事をしたのか聞くけれど、勝手に責めるのは違うと思う。
「私はハナといいます。
兄のレンと召喚されました。」
せめて真っ直ぐ目を見て。
ハナはサンドロに声を掛けた。
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