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第五章 真実への道
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「これ、どんな状態で見つかったんです?」
「これが、押収時の写真だ」
誠の質問に応じて、沖田がまたタブレット端末を操作する。
「新聞紙にくるまれていた……」
七美が映像を拡大しながら言う。
「しかも、新聞紙にはウォッカが染みこませてあったんだとさ。床にこぼれたウォッカを吸ったんじゃない。こんなふうに、意図的に上からかけられたとみていいそうだ」
沖田が、ボトルで酒をかけるまねをする。それなら、全体に染みていて当然だ。
「つまり、こいつは犯人にとって燃えてしまってほしいものだった……」
誠が、白い物体が入った袋を灯に透かしながら推理する。
「もしかして、ラバンスキーさんのロッジからも同じ物が見つかりませんでした?」
「よくわかったな。こいつだ。ベランダに落ちてた」
速水が少年の質問に応じて、別の袋を取る。確かに、白いチップが入っている。同じ物のようだ。
「犯人が落したんでしょうね……。でも……なんなんだろう……?」
いくら凝視しても、それがなんなのかわからない。
「あれ……ちょっと待って……。これってもしかして……」
七美が袋に顔を近づける。
「やっぱり……。これ生理用品ですよ」
少女がスマホを操作し、生理用品の紹介ページを読み出す。
「なんだって?」
速水がスマホに目を近づける。
「なるほど……吸収剤ってそういうことか……。確かに、これを細かく切ればこいつになるわけだ」
沖田が、白い物体とその原型を交互に見比べる。
「七美、具体的に言って、誰が使ってる物かわからないか?」
誠が身を乗り出す。幼なじみと顔が近い。生理用品が誰の物かわかれば、物証になる可能性も出てくる。
「うーん……。誰がなにを使ってるかまではちょっと……」
七美が考え込んで、やはりわからないという顔をする。
「それに……確かメインロッジにも備え付けのがあるはずだよ。タンポンもナプキンも、銘柄もいくつか」
「それ、持ち出せる人間は?」
今度は、速水が身を乗り出す。体育会系の顔が暑苦しい。
「ご自由にお使いください、って書いてある棚に入ってますから……。ロッジの中なら誰でも……」
七美の返答に、男三人が『あちゃあ』という顔になる。犯人が女に絞れるかも知れない。そんな希望的観測さえも砕かれた。
「あれ……鑑識の誰も、こいつが生理用品だって気づかなかったの……?」
誠が、警察の痛いところを突く。沖田と速水が顔を見合わせる。
「男社会だからなあ……」
「女性の鑑識もいることはいるんだが……」
二人揃って情けない顔になる。確かに、警察の失態だ。素人の女子校生に指摘されるまで気づかないとは。
「まあ、そこはしょうがないんじゃないかな……? 私もすぐにはわからなかったし……。ねえ……」
七美が精一杯フォローする。が、当の警察には慰めになっていない。沖田と速水が泣きそうになる。
「こういう知識にもアンテナ張る必要があるってことか……」
そう断じた誠は、生理用品の紹介ページを開く。親切にも動画つきだ。
(あれ……これって……。もしかして……。こうすれば可能じゃないか……?)
動画を見ている内に、誠はある可能性に行き当たる。
「沖田さん、速水さん、これ、一、二個借りていいかな? 実験したいことがあるんだ」
誠が、細切れの生理用品を指さす。
「押収物だし……ちょっとなあ……」
速水が難色を示す。
「うーん……。よし、じゃあ七美、買ってきてくれないか? できるだけこれに近いやつを。それも、銘柄違いをいくつか」
「おう、それがいい。費用はこっちで持つから」
誠に同意した沖田が、財布から五千円札を取り出す。
「わかりました。すぐに戻ります」
少女は金を受け取ると、その場を後にする。
「これが、押収時の写真だ」
誠の質問に応じて、沖田がまたタブレット端末を操作する。
「新聞紙にくるまれていた……」
七美が映像を拡大しながら言う。
「しかも、新聞紙にはウォッカが染みこませてあったんだとさ。床にこぼれたウォッカを吸ったんじゃない。こんなふうに、意図的に上からかけられたとみていいそうだ」
沖田が、ボトルで酒をかけるまねをする。それなら、全体に染みていて当然だ。
「つまり、こいつは犯人にとって燃えてしまってほしいものだった……」
誠が、白い物体が入った袋を灯に透かしながら推理する。
「もしかして、ラバンスキーさんのロッジからも同じ物が見つかりませんでした?」
「よくわかったな。こいつだ。ベランダに落ちてた」
速水が少年の質問に応じて、別の袋を取る。確かに、白いチップが入っている。同じ物のようだ。
「犯人が落したんでしょうね……。でも……なんなんだろう……?」
いくら凝視しても、それがなんなのかわからない。
「あれ……ちょっと待って……。これってもしかして……」
七美が袋に顔を近づける。
「やっぱり……。これ生理用品ですよ」
少女がスマホを操作し、生理用品の紹介ページを読み出す。
「なんだって?」
速水がスマホに目を近づける。
「なるほど……吸収剤ってそういうことか……。確かに、これを細かく切ればこいつになるわけだ」
沖田が、白い物体とその原型を交互に見比べる。
「七美、具体的に言って、誰が使ってる物かわからないか?」
誠が身を乗り出す。幼なじみと顔が近い。生理用品が誰の物かわかれば、物証になる可能性も出てくる。
「うーん……。誰がなにを使ってるかまではちょっと……」
七美が考え込んで、やはりわからないという顔をする。
「それに……確かメインロッジにも備え付けのがあるはずだよ。タンポンもナプキンも、銘柄もいくつか」
「それ、持ち出せる人間は?」
今度は、速水が身を乗り出す。体育会系の顔が暑苦しい。
「ご自由にお使いください、って書いてある棚に入ってますから……。ロッジの中なら誰でも……」
七美の返答に、男三人が『あちゃあ』という顔になる。犯人が女に絞れるかも知れない。そんな希望的観測さえも砕かれた。
「あれ……鑑識の誰も、こいつが生理用品だって気づかなかったの……?」
誠が、警察の痛いところを突く。沖田と速水が顔を見合わせる。
「男社会だからなあ……」
「女性の鑑識もいることはいるんだが……」
二人揃って情けない顔になる。確かに、警察の失態だ。素人の女子校生に指摘されるまで気づかないとは。
「まあ、そこはしょうがないんじゃないかな……? 私もすぐにはわからなかったし……。ねえ……」
七美が精一杯フォローする。が、当の警察には慰めになっていない。沖田と速水が泣きそうになる。
「こういう知識にもアンテナ張る必要があるってことか……」
そう断じた誠は、生理用品の紹介ページを開く。親切にも動画つきだ。
(あれ……これって……。もしかして……。こうすれば可能じゃないか……?)
動画を見ている内に、誠はある可能性に行き当たる。
「沖田さん、速水さん、これ、一、二個借りていいかな? 実験したいことがあるんだ」
誠が、細切れの生理用品を指さす。
「押収物だし……ちょっとなあ……」
速水が難色を示す。
「うーん……。よし、じゃあ七美、買ってきてくれないか? できるだけこれに近いやつを。それも、銘柄違いをいくつか」
「おう、それがいい。費用はこっちで持つから」
誠に同意した沖田が、財布から五千円札を取り出す。
「わかりました。すぐに戻ります」
少女は金を受け取ると、その場を後にする。
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