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《11/27》

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《11/27》

昼食の主菜に、異物混入が判明。弁当の中に入っていたらしい。
今回も、調理担当は私、弁当盛り付け担当は上司T。
何とまぁ相性の良いことで・・・。

どの時点で混入したかはハッキリしていないのに、上司Tはイラついて、私の背後に設置されている、11月でも暑い調理側の扇風機を止めたり、調理側のゴミ箱のゴミを押し込んだり、さも調理側で異物混入したんだと言わんばかりの態度でバタバタと動いている。
確かにその可能性もあるが、上司T側から混入した可能性も大いにある。確率としては五分五分。というのも、異物はビニール片のようで、どちらもビニールに触れる仕事をしているからだ。
仕込みの野菜はものによってビニール袋に入って納品されるし、仕込み済みの食材や冷凍食品(グリンピース・コーンなど、主に野菜)を計ったものは、業務用ビニール袋に入れて結ぶか、100均で購入したプラスチック製の袋とじクリップを使用する。そして調理する際、調理担当者の手でビニール袋を開封する。殆どがクリップを使用しているのであまりしないのだが、キツく結んだビニール袋は、自分の手で開封する。ビニールには裂けやすい部分があるので、そこから裂くと、破片が生じる事無くキレイに開封出来るので、私はその方法をとっていた。ビニール袋の結び目をほどく方法もあるが、キツく縛っているものをほどこうとすると、かえって破片が発生しやすいため、結びの緩い物しかほどかない。冷凍食品の袋は、分厚くて手で開封出来ないため、よく切れるハサミか、無ければよく切れる包丁の刃先を当てて一気に切る(破片防止には役立つが、包丁に良くないのでオススメはできない)。

こうして改めて振り返ってみると、双方気をつけてビニール袋を開封していたとしても、完璧なんてこの世にはないので、やはり上司Tも私も五分五分だ。ビニール片を見ても何のビニール片かは不明だし、どちらのミスかなんて分からないのだから決められない。決める必要もない。
私も上司Tもビニール袋に触れていて、調理・盛り付けをしていたのだから、ミスした者をどうしても決めたいというのなら、私と上司Tの2人だ。そしてその責任を負うのが、店長である上司Tだ。それが嫌なら店長なんて辞めてしまえ。

上司Tは、相変わらず不機嫌な態度で物に当たって作業中の私を威圧して、自分に落ち度はなく、調理側で混入したんだと周りにアピールするような行動をとっていた。
嫌でもその姿が視界に入り、私は溜め息をついた。

現場の従業員は、異物混入が判明した場合、どこで入ってしまったか、何をしたことで入ってしまったかを、各自それぞれ自身の行動を、同じ事を繰り返さないためにも思い返すものだ。異物によっては、患者が口にしてしまったら、命に関わる可能性だってある。
上司Tは、自身の行動を思い返す事よりも、まず自分の保身の為に、部下への罪のなすりつけ行為を優先した。

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