心の悪魔は真夜中に呟く…

ゆきもと けい

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4章

心の悪魔は真夜中に呟く…

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 3か月…半年と過ぎた。

 私の身に特に変化はなかった。健康診断の結果もいつもとほぼ同じだった。
 あの日の出来事も次第に自分のせいではなく、偶然が重なっただけだ、と思うようになっていた。自分は何もしていないのでから…それでもあの屋台の恐ろしさは変わらない…
 時のいうのは残酷で、会社の社員たちも、課長のことはほぼ全員が忘れ始めていた。
 悲しいかな、会社なんてものはそんなものだ。誰かが抜けたところで会社が回らくなることは、特殊なケースを除いてほぼない。

 仕事が妙に忙しくなった。大手企業が新規顧客になったからだ。残業も多くなり、終電で帰るのは当たり前、場合によっては土・日も出勤しなければならない日もあった。しかし、あの屋台には行っていない。

「最近、ずっと忙しいみたいね。今度の土曜日も出勤でしょう?」

 妻は最近、私の仕事が忙しくなったせいか、不機嫌になることが多い。ストレス解消なのか、時々昔の友達と女子会なるものやって夜の帰りが遅くなることもあるようだ。しかし私の帰りよりは早い。それくらいのストレス発散は仕方ないだろう。夜中に帰っても疲れていて、まともに妻の話し相手もしてあげられない。原因の一端はこちらにもあるのだから…

 たまたまその日は、得意先の訪問キャンセルで早く帰えるようになった。妻に電話しようかと思ったが、突然早く帰って驚かすのも悪くないかと黙って家路についた。家に着いたのは8時を少し回った頃だった。こんなに早く帰るのは何日ぶりだろう…手には2つのショートケーキが入っている可愛らしい小箱を持っていた。ショートケーキは妻の好物だ。せめてもの日頃の償いの気持ちだった。

 呼び鈴を鳴らし、鍵を開けた。家には誰もいない。灯りも点いていない。

(あれ?今日、帰りが遅くなるって言っていたかな?)

 帰りが遅くなる時はいつも事前に言って行くが、私が生返事をしているせいか、よく忘れる。

 妻が帰ってきたのは10時を過ぎた頃だった。普段の私ならまず帰っていない時間だ。

「あら、あなた今日は早かったのね」

 妻は少し驚いた様子で言った。

「たまたま早く仕事が終わったんだ。ケーキでも食べようと思って買ってきたんだ」

 私は冷蔵庫から可愛らしい小箱に入ったケーキを取り出した。妻が出かけていたことはあえて訊かなかった。女子会だろう…

「夕飯は?」
「カップラーメンと残っていたごはんで食べた」
「そう、早く帰ってくるなら電話くれればよかったのに…」
 妻は少し不機嫌そうに言った。
 私はそれが妙に引っかかった。最近は不機嫌になることが多い。だが、それとは少し違う違和感あった。何てことないことだが一緒に暮らしていると、そんなことでも気にかかることがある。 
 それは夫婦でなければわかない感覚だろう。
 ケーキを食べたが何となく美味しさが感じられなかった。

 それ以来、私は妻の行動を気にするようになっていた。
 たまに早く帰ると、妻が出かけている事があった。

「早く帰ってくるなら連絡してよ」

 ちょっと苛立って言った事がある。

 今まで全く気にしていなかった細かい事が以前とは違うことに気づいた。例えば、以前とは微妙に違う髪型や洋服の色など…

「最近、髪型とか読服の趣味とか変わったのか?」
「同じ…あなたは忙しいから見ていないだけよ…」

 確かにその通りだが、私はなんとなく確信した。浮気をしているかどうかはわからいないが、男友達がいるのではないか…と…

 それでも私の仕事の忙しさは相変わらずだった。終電帰り、休日出勤…ただあの日以来、妻ともぎくしゃくしている…

 ここ数日は特に忙しく、8連日の出勤となってしまった。
もうヘロヘロの状態だ…

 帰りの駅のホームで終電を待っていると、目の前が突然真っ暗になり、意識が薄らいでいくのがわかった。
 課長にイタズラした報いか…それとも闇からの誘いか…私はたぶん倒れた。

4章 完
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