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カナキリ
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天地が目を覚ました時には、幡多も天地も能力協会のベッドに寝かされていた。
『『母さんッ!!』』
「うッ!!」
「!?」
すぐ傍で小さな悲鳴と血飛沫が上がり、天地は動揺する。
ベッドの傍で天地が目を覚ますのを待っていたラ矢は血液が流れる腕を手で押さえる。
「天地。叫ぶな!! 能力協会が崩れる!!」
「は、はい……」
天地は精神状態が不安定で、力のコントロールできなくなっている。
天地が不安がっていると、聖唖と病み上がりの幡多が天地の寝かされる部屋へ入ってくる。
「大丈夫だ」
聖唖がそう言って頭をなでると、天地は安心したように目を瞑り、眠りについた。疲れがあったのだろう。
「ラ矢、緑龍子だ」
幡多がそう言ってラ矢の傷ついた腕にクリーム状の緑龍子を塗る。
幡多の顔面にラ矢の肘がめり込んだ。
「触るな」
「酷い」
二人の様子を見て微笑んでいた聖唖が「そういえば……」と顔を顰める。
「天地が叫ぶ時、魔法陣の出現がなかったな」
「魔法陣?」
「普通カナキリは叫ぶ時に力をコントロールできる魔法陣が地面に現れるんだが……」
「そんなのあるか?」
その質問にはラ矢が答える。
「ディーヴァにも出現する。でも光の粒が集まってできる魔法陣だから昼間は分かりづらい」
「へえ……聖唖には昼間でも見えてるってことか?」
「うん。ちなみにハインやシインは赤色だ」
「うお、さすがに街を破壊するだけある」
でもなぜ天地にはそれがないのかと疑問に思っていた時だった。
「大変だ聖唖!!」
ジェキシインが扉を開け放ち、部屋に飛び込んでくる。
「何事ですか」
幡多が問えば、ジェキシインが息を荒げながら言った。
「ヒグナルから宣戦布告だ。能力協会とヒグナル……戦争になるぞ」
◇◇◇
閻夏供家は来聖学園の南側、超高層ビルの中にある。
ビルの中に屋敷が建っており、ビルの壁はなく、上のビルは合計四本の柱で支えられる屋敷の外に出たら直接外を眺めることもできる。これも緑龍子のなせる業だ。
風は酷く吹き付けられている。
成はそんな風を浴びながら、ビルの床に植え付けられる芝生に正座していた。
屋敷の前に立つ、一人のお婆さんが言った。
「ヒグナルと能力協会は近々戦争になるだろう、カナキリを大量に殺せるチャンスだ。今度こそ失敗は許されんぞ」
「はい。かならず使命を果たして見せます」
「國哦伐の者にも協力を願っておいた。仲良くしなさい」
「はい……」
真黒との一件を知っているのか、そんな忠告をされる。
お婆さんがいなくなると、真黒が屋敷の中から団子を咥えながらやってくる。
「俺は客だってのにこんなしけた菓子だしやがって。なあなああありいい。お前が何か用意しろよ」
肩を抱いてくる真黒に、何もせず黙ってされるがままになる成。
真黒はにやりと口角を上げて、団子を芝生に捨てて、寂しくなった口のために成の唇に噛みついた。
吸い付かれ、しゃぶられるが成は抵抗しない。
「つまんねえ女だな。お前」
「…………っ」
真黒は去り、成は涙目になる。
カナキリは敵だ。成の両親を殺した、憎むべき相手だ。
成は歯を食いしばる。
たとえ知り合いでも友人でも殺してきた。今更後悔してはいない。
だが……天地の言葉が今更胸に来る。
私は人殺しなのだ、と。
◇◇◇
「戦争になる前にカナキリを保護してくる。ちょうど拠点を3か所潰す任務がある。少しでも戦力を削ぐ」
「今からってえげつねぇ……」
幡多と聖唖は慌ただしく廊下を歩いていた。
「カナキリを保護できたら彼らもいち早く修行させ、戦力にしよう」
幡多がそれを聞いて、待てよ、と呼び止める。
「それじゃあいつ等を武器として扱う奴らと一緒じゃないか!」
聖唖は歩みを止め、幡多に向き直る。
「彼等は私達の保護下にある、だがいつでも私達が守ってやれるわけじゃない。私達はコントロールする術を教えて人間として暮らせるようにしてやるだけなのか。戦い方も教えてやらないと、自分の身を守ると言うことを教えてやらないと生き残れないぞ」
「聖唖……」
「だがそれは一歩間違えば殺人だ。身を守るために殺すのではなく、倒す。本当にカナキリを自由にしてやるには敵を倒すしかない。自分と同じ者を助けるしかない。無理にとは言わない。協力を頼み込むだけだ。否定はしない、幡多、私達は化け物だ。人間として暮らそうとしようと、人間じゃないんだ。狙われ続けるだろう、力を過信して飲まれるかもしれない、そうしてカナキリは怯えて生きているんだ。ヒグナルはそんな奴等を増やして道具として扱っている。どちらにせよ、全面戦争となれば多くのカナキリを保護することになる。全員を保護するには同じ境遇のカナキリの数も支えられる協会員の数も足りない」
「道具としてでなく、俺達は人員として補充するって事だな」
「彼らの意思を尊重する。戦争だ、死人も出る。幡多、君も決めるんだ、この戦争に参加するかどうか」
「聖唖はどうするんだ?」
「私は助けると約束したからな」
「そうかよ。じゃあ俺もじゃん」
「バカなんじゃないのか」
「お前こそ、バカなんじゃねえの?」
町の住民を避難させ、急遽たてられた作戦が実行される。
聖唖がヒグナルの拠点からカナキリたちを奪うのだ。
その際、聖唖はハインと鉢合わせていた。
「君様が言っていた、まさか向こう側から戦争を挑まれるとは思わなかったと」
「そりゃそうだろう、君たちから仕掛けるつもりだったのだから」
「こうも言っていた」
「……?」
聖唖は首を傾げる。
「戦争が始まる」
『『母さんッ!!』』
「うッ!!」
「!?」
すぐ傍で小さな悲鳴と血飛沫が上がり、天地は動揺する。
ベッドの傍で天地が目を覚ますのを待っていたラ矢は血液が流れる腕を手で押さえる。
「天地。叫ぶな!! 能力協会が崩れる!!」
「は、はい……」
天地は精神状態が不安定で、力のコントロールできなくなっている。
天地が不安がっていると、聖唖と病み上がりの幡多が天地の寝かされる部屋へ入ってくる。
「大丈夫だ」
聖唖がそう言って頭をなでると、天地は安心したように目を瞑り、眠りについた。疲れがあったのだろう。
「ラ矢、緑龍子だ」
幡多がそう言ってラ矢の傷ついた腕にクリーム状の緑龍子を塗る。
幡多の顔面にラ矢の肘がめり込んだ。
「触るな」
「酷い」
二人の様子を見て微笑んでいた聖唖が「そういえば……」と顔を顰める。
「天地が叫ぶ時、魔法陣の出現がなかったな」
「魔法陣?」
「普通カナキリは叫ぶ時に力をコントロールできる魔法陣が地面に現れるんだが……」
「そんなのあるか?」
その質問にはラ矢が答える。
「ディーヴァにも出現する。でも光の粒が集まってできる魔法陣だから昼間は分かりづらい」
「へえ……聖唖には昼間でも見えてるってことか?」
「うん。ちなみにハインやシインは赤色だ」
「うお、さすがに街を破壊するだけある」
でもなぜ天地にはそれがないのかと疑問に思っていた時だった。
「大変だ聖唖!!」
ジェキシインが扉を開け放ち、部屋に飛び込んでくる。
「何事ですか」
幡多が問えば、ジェキシインが息を荒げながら言った。
「ヒグナルから宣戦布告だ。能力協会とヒグナル……戦争になるぞ」
◇◇◇
閻夏供家は来聖学園の南側、超高層ビルの中にある。
ビルの中に屋敷が建っており、ビルの壁はなく、上のビルは合計四本の柱で支えられる屋敷の外に出たら直接外を眺めることもできる。これも緑龍子のなせる業だ。
風は酷く吹き付けられている。
成はそんな風を浴びながら、ビルの床に植え付けられる芝生に正座していた。
屋敷の前に立つ、一人のお婆さんが言った。
「ヒグナルと能力協会は近々戦争になるだろう、カナキリを大量に殺せるチャンスだ。今度こそ失敗は許されんぞ」
「はい。かならず使命を果たして見せます」
「國哦伐の者にも協力を願っておいた。仲良くしなさい」
「はい……」
真黒との一件を知っているのか、そんな忠告をされる。
お婆さんがいなくなると、真黒が屋敷の中から団子を咥えながらやってくる。
「俺は客だってのにこんなしけた菓子だしやがって。なあなああありいい。お前が何か用意しろよ」
肩を抱いてくる真黒に、何もせず黙ってされるがままになる成。
真黒はにやりと口角を上げて、団子を芝生に捨てて、寂しくなった口のために成の唇に噛みついた。
吸い付かれ、しゃぶられるが成は抵抗しない。
「つまんねえ女だな。お前」
「…………っ」
真黒は去り、成は涙目になる。
カナキリは敵だ。成の両親を殺した、憎むべき相手だ。
成は歯を食いしばる。
たとえ知り合いでも友人でも殺してきた。今更後悔してはいない。
だが……天地の言葉が今更胸に来る。
私は人殺しなのだ、と。
◇◇◇
「戦争になる前にカナキリを保護してくる。ちょうど拠点を3か所潰す任務がある。少しでも戦力を削ぐ」
「今からってえげつねぇ……」
幡多と聖唖は慌ただしく廊下を歩いていた。
「カナキリを保護できたら彼らもいち早く修行させ、戦力にしよう」
幡多がそれを聞いて、待てよ、と呼び止める。
「それじゃあいつ等を武器として扱う奴らと一緒じゃないか!」
聖唖は歩みを止め、幡多に向き直る。
「彼等は私達の保護下にある、だがいつでも私達が守ってやれるわけじゃない。私達はコントロールする術を教えて人間として暮らせるようにしてやるだけなのか。戦い方も教えてやらないと、自分の身を守ると言うことを教えてやらないと生き残れないぞ」
「聖唖……」
「だがそれは一歩間違えば殺人だ。身を守るために殺すのではなく、倒す。本当にカナキリを自由にしてやるには敵を倒すしかない。自分と同じ者を助けるしかない。無理にとは言わない。協力を頼み込むだけだ。否定はしない、幡多、私達は化け物だ。人間として暮らそうとしようと、人間じゃないんだ。狙われ続けるだろう、力を過信して飲まれるかもしれない、そうしてカナキリは怯えて生きているんだ。ヒグナルはそんな奴等を増やして道具として扱っている。どちらにせよ、全面戦争となれば多くのカナキリを保護することになる。全員を保護するには同じ境遇のカナキリの数も支えられる協会員の数も足りない」
「道具としてでなく、俺達は人員として補充するって事だな」
「彼らの意思を尊重する。戦争だ、死人も出る。幡多、君も決めるんだ、この戦争に参加するかどうか」
「聖唖はどうするんだ?」
「私は助けると約束したからな」
「そうかよ。じゃあ俺もじゃん」
「バカなんじゃないのか」
「お前こそ、バカなんじゃねえの?」
町の住民を避難させ、急遽たてられた作戦が実行される。
聖唖がヒグナルの拠点からカナキリたちを奪うのだ。
その際、聖唖はハインと鉢合わせていた。
「君様が言っていた、まさか向こう側から戦争を挑まれるとは思わなかったと」
「そりゃそうだろう、君たちから仕掛けるつもりだったのだから」
「こうも言っていた」
「……?」
聖唖は首を傾げる。
「戦争が始まる」
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