リクゴウシュ

隍沸喰(隍沸かゆ)

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コノカ

22 ※GL匂わせあり

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 意識が戻った時には暗闇の中にいた。エンジンの音や振動で車の中であると分かる。
 車の中には4人の男が乗っていた。レッドミラーのサングラスを掛けた無精髭の男と、坊主で目と首に傷のある男、黒いバンダナの白眼の男、それから運転席に座っている男だ。
「ああ。そうカ。ヒグナルの手先カ」
 男達は息を呑み、無精髭の男が少年に銃口を向ける。
「どこでその話を聞いた」
「5年前からお前達の動向は調べてイタ。最近俺の周りを調べていたこともダ。さあ連れて行くとイイ。お前達が俺で何をしたいカ、調べに行ってやロウ」
「調べに行く? その必要はない。手前は餓鬼を産むのを手伝うだけだ」
「餓鬼とは何ダ?」
「操る者と飛ぶ者のハイブリッドだよ」
 化け物同士で交配させているのか。最近のラジオはめっぽう人攫いのニュースばかりが流れている。
「興味深いじゃないカ。繁殖は好調ダロウナ? 俺は面白いことを調べたいんダ。詰まらないことは嫌いダ」
 坊主の男が手で押さえ銃を下ろさせる。
「抵抗する気はねえってことか。やけに肝の据わった餓鬼だぜ」
「自棄になってるだけだろ。放っておけ」
 運転手の男が呟くと、車内はしんと静まり返った。
 彼が此の中で一番階級が高いらしい。
「其の仮面の下は見せてくれないのカ」
「…………」
 質問が悪かったのか男は返事をする気は無いらしい。其の代わり隣の白眼の男が耳打ちする。
「見せられるモンじゃねえから隠してるのさ。」
「貴方のバンダナもそうなのカ」
「此れはお洒落だろ?」
 不思議そうに答える男に言ってやりたい。其の顔に其の柄は3割り増しで極悪に見えるだけだと。
 そんな彼らの目的地に着いた時だった。
「何ィ!? お前飛ぶ者じゃないのか!?」
 ある施設に入る直前、入り口のシャッターが開いている時にそれは判明した。
「俺はコノカダ」
「何てこった。此奴どうするよ?」
「決まってんだろ、報告して始末する」
 少年はそんな話を聞いても逃げようとする素振りすら見せない。そこへ、彼らのボスがやって来た。後にここでまた会うこととなるアリシアの父親――ヒグナル・バルマディッジだ。
「始末なんて物騒なことを言うのはやめてくれ。その子は必要だよ。家族が増えるのはいいことだ」
「お前と家族になるつもり等毛頭ナイ」
「うん。いいよ」
 ヒグナルと言う男は何を考えているか分からない男だった。
到着したのは地下都市だった。マグマのエネルギーを吸収して稼働させていると無精髭の男が言った。
 ヒグナルにベッドのある個室に連れて行かれて待機していると、扉から可愛らしい女の子が現れる。真紫の髪と赤い瞳の女の子だ。
 女の子は突然少年を押し倒し、服を脱がして来た。
「な、何をすル……!」
「私が貴方の子供を産むのよ」
「ぬァっ!? にィ……を言っていル!」
 少年は観察するのは好きだが自分がそれになるのは嫌だった。
それにやり方が分からナイ!!
「初めてだったわよね。教えてあげる」
 お、教えてあげル?
「ま、待ってくレ、ちょ」
「素敵ね。まだ小さいけど将来大きくなるわ」
「何を言ってるのか分からナ――」
「あら分かるでしょう?」
 くすりと笑う彼女に、終わっタ……と少年は思った。
 初めての体験は彼に疲労を与え、また彼女のテクニックに狼狽を覚え彼はガタガタ身体を震わせていた。
「じゃあ、またね」
「え……? またがあるのカ……?」
「ええ」と答え、アリシアは「もういかなきゃ。次の人のところへ行くの。結構この部屋から遠いのよ」と言う。
「次の人?」
「貴方とは、お父様に相手しろと言われたからしてあげただけよ」
 生意気な女だな。
 とは思うが、これから関わりが深くなるだろうとも思う。
「俺は苒。君の名前は?」
「私はアリシアよ」
 彼女が出ていった頃にヒグナルが連れて行ったのは子供達がいる部屋だった。
「お前は苒だからゼのルームだ」
 途中でヒグナルと交代した顔に傷を負った若い男が言う。
 苒はゼのルームに入り、他の子もゼから始まる名前だと知った。

 アリシアの夢は記憶。彼と過ごした記憶、彼の記憶が胸の炎を騒がせる。

「人体発火?」
「そウ。身体の中で生成される熱を炎に変える。一瞬でその熱を外に出ス。それが今から君が行う実験ダ」
「どうしてこんなことする必要があるのよ? 私たちは子供を産めばいい。それだけでしょ。アリアのところに行ってくるわ。貴方の相手はもう終わったの」
 女の子同士でするのはここでは一般的なことだ。男同士は少ない、何故なら四六時中やらされる。少年の場合はそれがなく、アリシアただ一人を相手にしていた。
 彼女は十二歳、俺は十五歳だ。俺には腹違いのキョウダイが沢山いて、弟は二人、十三歳と七歳、妹は四人、十三歳と、十二が二人、十一歳。十一歳の妹は俺と同じ母親のもとに生まれた。
 父がコノカで母もコノカなのは十三歳と七歳の弟と同じで、寧ろ珍しがられていた。代わりに力が相当強く、すぐにでも頭領になれそうだった矢先に、攫われてしまった。と言うより着いてきてしまった。
 まあ、逃げる気満々だが。
 彼女は美しい、かわいい、ただ、ここに来るのが彼女だけだったからなのか。惹かれていった。だから彼女にも力を与えたい。チャンスは今しかない。
 彼女が出て行こうとした時に、その背に触れて自らの炎を流し込んだ。彼女はぼうっと突っ立ってから、はっとして後ろ――俺に振り返った。
「今の……貴方の記憶?」
「何?」
 体内から発生させる熱は記憶まで運ぶのカ?

 曖昧な夢は確かなものとなる。彼が私に人体発火の実験をした張本人だ。
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