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コノカ
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二人のダンスに見惚れていた会場の人々と同じように、彼女の笑顔に釘付けになっていた。
「鳥肌が立ったわ。もういい加減離してくれないかしら」
その笑顔に棘付きだと言うことも知らずに。
其れも蓮のアピールが押し付けがましい上、頑固過ぎて話になら無いからだった。
噺は少し遡る。
「俺が梁翼牡家を継いだ時は嫁に来てくれるか?」
「はあ?」
蓮はアリシアをじっと見詰めてさらっとプロポーズする。
「俺は自分が最低な奴だと知っている。幼い頃から自分を抑え込んで、そのストレスが爆発したのが7歳の頃だ。ヒステリックを起こして、物だけじゃなくキョウダイや親族を傷付けた。皆が俺の顔色を窺っているのことも知っている。ストレスとして溜め込まれていく。其れが嫌だった。俺はもう家族や仲間も、思い出の場所だって傷付けるのは嫌なんだ。でも君は違った。俺の顔色なんて窺う気もないし、俺の癇に障ることばかり言う」
「ねえ、聞いてる限りじゃ貴方のストレス溜めてないかしら?」
「君には口が開いてしまうんだ。他と平等に扱ってくれる君が特別なんだ。君といるとストレスなんて溜まらない。ムズ痒い気持ちだけが溜まっていく。でも其れは嫌なものではない。温かくて濃密で……君といると、落ち着く」
「……其れって、貴方の掃き溜めって意味よね?」
「愛していると言ってるんだ」
ぽかん、と口を開けるアリシアを見て、蓮がしてやったりと微笑んだ。
何処かで見下して自分自身を誇っているのに、アリシアを驚かせた自分に酔っている様にも見える。
その笑顔を見て、アリシアは嫌そうに眉を下げた。
「私は愛している人がいるの。他を当たってくれないかしら」
「俺が好きだと言えば大体の女は怖がって了承する。君のそう言う処が好きだ」
「貴方は特別な存在になった私を好きだと勘違いしているだけよ」
「其れはないな。貴様が本当は心優しいことを俺は知ってる。素直じゃなくて可愛らしい所もな」
「はあ?」
くっそ嫌そうな顔だな、と遠くで頭伎が呟いた。実は皆には内緒で抜け出して着いてきていたのだ。ウイルスはアリシアによって取り出されている為問題はないが、彼が来ていることはアリシアももちろん知らない。まあここで彼はどうでもいい存在だ、任務にも参加出来ないしアリシアの踊りの相手をすることも出来ないのだから。
「君が悪役を演じるのは、皆を守る為なんだろう? 俺は周囲の人の考えを読まなければならない環境で育った。最初は貴様のことなど理解したくもないと思っていたが、貴様が戦いの場で態々間違いの戦術を選ぶ理由が解った」
「貴方も何処かの美人さんとちっちゃい子供と同じくらい単純な頭の構造してるのね。私が何故貴方達を守ろうだなんて思うのよ」
「今迄君が殺してきた奴等は調べれば調べる程危険な奴等だった。君が喧嘩を売った奴等は、まだ回復のしようがある奴等だ。俺も含めてな。蕁は其れにいち早く気付いていたから君の友達になれたんだろう?」
「あのねぇ……私は──」
「俺達にとっての正解は君にとっては間違いだ。其れを正しているんだろう?」
「逆よ。私は貴方達がどうなろうと知ったことじゃないわ。だから貴方達の間違いの道を選ばせているだけよ」
「素直じゃないな。認めろ。其れはつまり、俺達に君の正解の道を強制しているってことだ」
「何故其様な面倒な事しなくちゃならないのよ。」
「蕁が貴様を素直じゃない子だとずっと連呼していた意味が漸く理解出来た」
蓮が可笑しそうに笑うと、アリシアも吊られて可笑しそうに笑った。其れに蓮が見惚れていると、アリシアは柔らかい表情でとんでもないことを口にする。
「貴方は嫌いだけど蕁は好きよ」
蓮はその笑顔の裏に自分の弟がいることを知って、胸が痛んだのを確かに感じた。
ダンスを止めて、蓮はアリシアの美しい瞳を見つめた。
「……君を愛している。こうやって踊れることも幸せだ。君に子供を生んで欲しい。そして暖かい家庭を築こう。結婚してくれ」
アリシアは蓮のうっとりした顔を見て、ふふ、と笑う。それにズキュンッと恋の矢が胸に刺さっているとも知らず、アリシアは幸せそうに笑った。そして、
「鳥肌が立ったわ。もういい加減離してくれないかしら」
と、冷たい声で告げたのだ。
「気持ちが悪過ぎてもう笑いしか出てこないわよ。他を当たってって言ってるじゃない。冗談じゃないわ」
「……やはり俺が嫌いか?」
「ええ。私は貴方の隣で一生顔色を窺う人生なんて嫌だわ」
「君は顔色なんて窺わないだろう?」
「私が貴方を好きになったとしたら、屹度窺うことをやめないわ。だって好きな人には優しくして欲しいもの」
「……アリ、シア」
頬を赤く染めて、驚いたようにアリシアを見つめる蓮。そんな蓮に優しい顔を向けるアリシアを見て、アリシアを知っている者達は呆然と立ち尽くしていた。
「愛している人には愛していて欲しいじゃない? 其れとも貴方は違うのかしら」
「お、俺は今口説かれているのか?」
「殺すわよ」
アリシアの冷たくなった顔を見て、誰もが安堵した中、一人だけ、じっとアリシアの姿を見つめ続ける。
「アリシア。俺も貴様が好きだ」
「結構よ。要らないわ」
「結婚式はいつにする?」
「何で急に結婚になるのよ。前提がないじゃない。貴方とお付き合いもしてもいないのに何故私が──」
「なら付き合おう」
「鳥肌が立ったわ。もういい加減離してくれないかしら」
その笑顔に棘付きだと言うことも知らずに。
其れも蓮のアピールが押し付けがましい上、頑固過ぎて話になら無いからだった。
噺は少し遡る。
「俺が梁翼牡家を継いだ時は嫁に来てくれるか?」
「はあ?」
蓮はアリシアをじっと見詰めてさらっとプロポーズする。
「俺は自分が最低な奴だと知っている。幼い頃から自分を抑え込んで、そのストレスが爆発したのが7歳の頃だ。ヒステリックを起こして、物だけじゃなくキョウダイや親族を傷付けた。皆が俺の顔色を窺っているのことも知っている。ストレスとして溜め込まれていく。其れが嫌だった。俺はもう家族や仲間も、思い出の場所だって傷付けるのは嫌なんだ。でも君は違った。俺の顔色なんて窺う気もないし、俺の癇に障ることばかり言う」
「ねえ、聞いてる限りじゃ貴方のストレス溜めてないかしら?」
「君には口が開いてしまうんだ。他と平等に扱ってくれる君が特別なんだ。君といるとストレスなんて溜まらない。ムズ痒い気持ちだけが溜まっていく。でも其れは嫌なものではない。温かくて濃密で……君といると、落ち着く」
「……其れって、貴方の掃き溜めって意味よね?」
「愛していると言ってるんだ」
ぽかん、と口を開けるアリシアを見て、蓮がしてやったりと微笑んだ。
何処かで見下して自分自身を誇っているのに、アリシアを驚かせた自分に酔っている様にも見える。
その笑顔を見て、アリシアは嫌そうに眉を下げた。
「私は愛している人がいるの。他を当たってくれないかしら」
「俺が好きだと言えば大体の女は怖がって了承する。君のそう言う処が好きだ」
「貴方は特別な存在になった私を好きだと勘違いしているだけよ」
「其れはないな。貴様が本当は心優しいことを俺は知ってる。素直じゃなくて可愛らしい所もな」
「はあ?」
くっそ嫌そうな顔だな、と遠くで頭伎が呟いた。実は皆には内緒で抜け出して着いてきていたのだ。ウイルスはアリシアによって取り出されている為問題はないが、彼が来ていることはアリシアももちろん知らない。まあここで彼はどうでもいい存在だ、任務にも参加出来ないしアリシアの踊りの相手をすることも出来ないのだから。
「君が悪役を演じるのは、皆を守る為なんだろう? 俺は周囲の人の考えを読まなければならない環境で育った。最初は貴様のことなど理解したくもないと思っていたが、貴様が戦いの場で態々間違いの戦術を選ぶ理由が解った」
「貴方も何処かの美人さんとちっちゃい子供と同じくらい単純な頭の構造してるのね。私が何故貴方達を守ろうだなんて思うのよ」
「今迄君が殺してきた奴等は調べれば調べる程危険な奴等だった。君が喧嘩を売った奴等は、まだ回復のしようがある奴等だ。俺も含めてな。蕁は其れにいち早く気付いていたから君の友達になれたんだろう?」
「あのねぇ……私は──」
「俺達にとっての正解は君にとっては間違いだ。其れを正しているんだろう?」
「逆よ。私は貴方達がどうなろうと知ったことじゃないわ。だから貴方達の間違いの道を選ばせているだけよ」
「素直じゃないな。認めろ。其れはつまり、俺達に君の正解の道を強制しているってことだ」
「何故其様な面倒な事しなくちゃならないのよ。」
「蕁が貴様を素直じゃない子だとずっと連呼していた意味が漸く理解出来た」
蓮が可笑しそうに笑うと、アリシアも吊られて可笑しそうに笑った。其れに蓮が見惚れていると、アリシアは柔らかい表情でとんでもないことを口にする。
「貴方は嫌いだけど蕁は好きよ」
蓮はその笑顔の裏に自分の弟がいることを知って、胸が痛んだのを確かに感じた。
ダンスを止めて、蓮はアリシアの美しい瞳を見つめた。
「……君を愛している。こうやって踊れることも幸せだ。君に子供を生んで欲しい。そして暖かい家庭を築こう。結婚してくれ」
アリシアは蓮のうっとりした顔を見て、ふふ、と笑う。それにズキュンッと恋の矢が胸に刺さっているとも知らず、アリシアは幸せそうに笑った。そして、
「鳥肌が立ったわ。もういい加減離してくれないかしら」
と、冷たい声で告げたのだ。
「気持ちが悪過ぎてもう笑いしか出てこないわよ。他を当たってって言ってるじゃない。冗談じゃないわ」
「……やはり俺が嫌いか?」
「ええ。私は貴方の隣で一生顔色を窺う人生なんて嫌だわ」
「君は顔色なんて窺わないだろう?」
「私が貴方を好きになったとしたら、屹度窺うことをやめないわ。だって好きな人には優しくして欲しいもの」
「……アリ、シア」
頬を赤く染めて、驚いたようにアリシアを見つめる蓮。そんな蓮に優しい顔を向けるアリシアを見て、アリシアを知っている者達は呆然と立ち尽くしていた。
「愛している人には愛していて欲しいじゃない? 其れとも貴方は違うのかしら」
「お、俺は今口説かれているのか?」
「殺すわよ」
アリシアの冷たくなった顔を見て、誰もが安堵した中、一人だけ、じっとアリシアの姿を見つめ続ける。
「アリシア。俺も貴様が好きだ」
「結構よ。要らないわ」
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「なら付き合おう」
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