リクゴウシュ

隍沸喰(隍沸かゆ)

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イルヴルヴ

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 アシャはそれから聖茄とあの小屋で暮らした。最初は床や壁が血まみれで聖茄がにっこりと微笑んできてその心情はなんなのかとビクビクしていた。アシャは小屋を清掃したが、こびり付いた血の跡は取れそうになかった。
「もう食べちゃえば?」
「そうだな……この血液だけ仲間外れは可哀そうだ」
 アシャは血の付いた壁や床の板を食べて、その後うまく小屋を修繕出来ずアラ族の者たちに手伝ってもらった。
「その子供がオロ族の……」
「すまない。君たちは私を慕ってくれているが、聖茄はヴァラヴォルフの敵だった。今後関わらない方がいいだろう」
「嫌です!!」
「は?」
 彼らのことを気遣って提案したと言うのに、わがままが返ってきて呆れ返るどころか驚いた。
「嫌って君……」
「私たちだって人を喰らい命を奪っています。食べる対象が違うだけですよ。我々には責められません」
「そうか……私もそうだったよ」
 アシャはルイスと別れてから自分を化け物だと思って生きてきた。聖茄もそうで、彼等もそうだった。
 柵はアシャの様子を見てから言った。
「人間の血が飲める祭りが開かれます。来ますか?」
「いかないさ。私は何でも食べられる。君たちが生きることの方が最優先だ」
「姫えええええええええ!!」
「どうした気でも狂ったか」
 しかしよくよく考えれば、柵たちが聖茄の存在を許そうと、聖茄は彼らを許すのだろうか。聖茄から聞いた話、彼は人間がどうも嫌いらしい。
「聖茄は平気か?」
 そう聞くと、柵がビクつく。仲良しになるには時間がかかりそうだな。
「私は人間が嫌いなだけだ。これからは化け物の味方でいるさ」
「そうか……」
 君が人間を憎む理由が分かった気がする。彼らは私たちを化け物と呼び、突き放した。私は何故人間と共に過ごせる日を望んだのだろう。
 私が、人間、だったから……だろうか。
 君もいつか、人間を受け入れられる日が来るだろうか。
 いつかそんな日が来るといいな。
 だがそんな日が来た時、君は大いに戸惑うかもしれないな。
 彼等を守ろうとする力が暴走しなければいいが。
 アシャが聖茄の頭を撫でると、聖茄は首を傾げた。
 それから数か月が経ち、聖茄はアラ族に認められるようになっていった。
「姫ええええ!! 聖茄様ああああああ!!」
「どうした柵」
 小屋には相変わらずアラ族がやって来る。
「狩りに行ってまいりました! どうぞお召し上がりください!!」
 こうやってアラ族たちが食べ物を持ってくるので、アシャは狩りに出かけられずにいた。外を歩き回りたいのだが……。
「聖茄。狩りに出かけないか?」
 柵を無視してそう言うと、聖茄は目を輝かせる。相変わらず無表情だが何となく彼の気持ちが読めるようになってきた。
「行こうアシャ」
「人は食うなよ」
「…………」
 そこは返事をしてくれ聖茄!!
 ついてくるアラ族を放って置いて聖茄とアシャが木の実を集めたり、動物の狩りをしたりしていた時だった。
「柵、身を隠せ!!」
 大気の揺れを感じ取り、アシャは聖茄を脇に抱え疾走した。
 ゴゴゴゴと地響きが鳴り続け、遥か上空に巨大な都市の姿をとらえる。
 ユヤが来てしまった。
 無人島にはフェリーなんて便利なものが来ず、島から逃げられなかった。そもそも鹿児島市が滅び、ユヤの地上への破壊行為は続き、行く当てなどなかったのだ。
 ユヤは光線を発射する。大地に焼け焦げた跡が残り、施設だった地下の大きな穴にも光線が放たれた。
 ユヤは山頂ギリギリまで降りてきて、橋を下ろし、地下へ繋げる。多くの研究者らしき人々が地下へ入って行く。多くの施設が緑龍子の光線の力で回復していた。
 聖茄とアシャは小屋に身を潜め。アラ族たちもユヤを警戒してか、来なくなった。
 平和な日々はいつもあっという間に崩れ去っていく。
 今度こそ。今度こそ、平穏な日々を過ごしたい……。
 頼むから。私たちを引き裂かないでくれ。
 アシャと聖茄は数日間。小屋の中で大人しく過ごす日々を送った。
 半月ほど経った頃だった。ついに、平穏を崩しにやってきた者が現れた。
「6号。聖茄くん。帰ろう」
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