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第三章 恋人ごっこをするなら、自覚しないと...
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しおりを挟む「…ンっ…。」
桂の唇から甘えるような吐息が零れる。
久し振りの行為に身体が悲鳴を上げるかと思っていたが、亮の丁寧な前戯のお陰で痛みらしい痛みをあまり感じる事無く、彼を受け入れる事が出来ていた。
亮は自分を深く受け入れさせると、胸の下の桂をジッと眺めた。
桂の唇が薄く開きそこから喘ぐ舌先が誘うようにチロチロと覗いている。亮は身体を沈めると、桂の耳朶を軽く噛む。
そのまま唇を首筋に這わせていった。無理な態勢で桂の中の亮が動く。その度に桂の中の敏感な箇所を擦り上げていった。
「あっ…ん…」
桂は自分を襲う快感の波に攫われまいと、必至に亮に縋りつく。
亮はそのまま唇を首筋から顎へ滑らせていくと、目当ての桂の唇に辿り着いた。そっと桂の下唇に自分のそれを重ねようとする。
亮の意図に気づいて桂はハッと身体を強張らせた。激しく彼の身体を両腕で突っ張って押しやり、顔を横に逸らす。
「っち…」
亮が腹ただしそうに舌を鳴らした。自分の胸を押す桂の両腕を乱暴に掴み取り頭の上に結い止める。
「…約束が…違う…」
快感で頬を薔薇色に染めた桂が、涙を浮かべた瞳で亮を詰った。クッと亮が喉の奥で笑う。
「あぁ…悪い。癖が出た。健志といつもキスしてたから…」
わざと強がって桂を傷つけるような事を言う亮。なのに少し傷ついたような顔をするが、桂には、なぜ亮がそんな顔をするのか分からない。
亮も自分がなんでこんなにキスを拒否されてショックなのか分からないのか、イラッとしたような顔をした。
亮はもう一度桂の首元にキスを落とすとキツク吸い上げ痕を付けて行く。点々と朱の痕が桂の体に散っていった。その度に桂の亮を受け入れている部分が彼自身を強く締め付けてしまう。
自分を締めつける感触に亮は顔を顰めると、しっかりと桂の腰を抱き寄せた。
「動くぞ…」
耳の中に舌を差し入れ、もう一度耳朶をカリッと噛むと欲望を顕にした声で囁く。
桂も自分の中の亮が熱く撓るのを感じて、下半身に集まっていく熱を逃がしたくて何度も頷いた。
「…ん…っ…」
桂の唇から熱い喘ぎが漏れるのと同時に亮は激しく腰を揺らし桂を抉っていった。
身体の相性はバッチリ…。それが桂を切なくさせるけど、あがらう術がないまま桂も亮に縋りつき、彼の激しい熱を受けとめながら快楽の海に溺れていったのだった。
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
「どこまでシツコイ男なのかしらね…」
リナの揶揄するような言い方に桂は顔を赤らめた。
「お前…そう言う下品な言い方するなよ…。彼は別にそう言う訳じゃ…」
リナが何を言いたいのかは良く分かっていた。
初めての夜を亮と過ごし、桂は朝早く自分のマンションへ帰って来ていた。偶然仕事帰りのリナとマンションの前で鉢合わせになった。
「お腹が空いた。朝ご飯食べたい」と騒ぐリナの為に桂は朝食の準備をしてやっていた最中の事だ。
桂の項や首筋、耳の裏、耳朶、果ては顎の下の柔らかい皮膚にまで執拗に付けられたキスマーク。
目ざとくなくても眼についてしまう情事の痕にリナがニヤニヤ笑いながら言ったのだった。
「随分熱い夜だったことで…」
リナが揶揄かう。
「煩い!リナ!そんな事言うと飯食わせねぇぞ。それにお前いい加減自分のマンション帰れよ!」
桂はますます顔を赤くしながら、リナを睨む。どうしてこんなに彼が自分に痕を付けたのか…。そんな事分かりはしない。
まるでキスさせなかった事を責めるかの様に、亮は執拗に桂にキスマークを付けて行ったのだ。
部屋に戻って鏡に映る自分の姿を見て桂はその事に気づいたのだった。いくらのんきな桂でも、さすがに大量の痕に困ってしまった。せめてもの救いは今日と明日、大学が休みだった事だった。
「かっちゃん…早くご飯。」
一人赤くなる桂を楽しそうに見詰めながらリナがねだった。
桂は料理の腕が良く、リナは彼の作る料理を有名なレストランの一流シェフが作る料理よりも美味しいと信じているのだ。
はいはい…桂が憂鬱そうにリナの前に朝食を並べていく。
金目鯛の煮付けに、小松菜とガンモの煮浸し。甘く焼いたダシまき卵。
野菜が不足しがちなリナの為にブロッコリーやカリフラワー、人参をメインにホットサラダを作ってやる。ヘルシーにエキストラバージンオイルと塩でドレッシングしてやった。
後は炊き立てのコシヒカリとあさりの味噌汁。
「ホラ…早く食えよ。そして少し寝ろ!」
いつもエンジン全開で仕事をし続ける親友を心配して桂はリナに言う。
ご飯を頬張りながらリナがニッコリと微笑んだ。その微笑を見て、リナが大分立ち直ったのを見て桂はホッとする。
リナは夜の街の女に似ず、恋愛に関しては奥手で一途なところがある。
彼女が稼ぐ莫大なお金を目当てに男が群がってくる。自分の愛する男は自分のお金が目当て…リナはそんな事分かっていても…それでも相手に献身的な愛情を注いでしまうのだ。
その姿は桂から見ても痛々しい時がある。
そしてその恋愛が終わりを迎えるたびに彼女は桂のマンションに転がり込んでくる。
彼女は自分の身分に見合った立派なマンションを恵比寿に持っていた。それこそ、桂の賃貸マンションとは比べ物にならないぐらいの高級マンションだ。
「こう言う時は、一人であの部屋にいたくないの…。ゴメンね。かっちゃん。甘えてばかりで…。」
そう言って少し寂しげな顔をしながら、いつも桂の部屋に心を癒しに来るのだ。
桂はその度に黙ってリナを部屋に迎い入れる。自分もまたリナに癒されていたからだ。
この都会で心を許しあい信頼しあえる親友が居る事に桂はいつも感謝していた。
そして…今も…。
リナは桂が不安定な関係を亮と初めてしまった事を心配してくれているのだ。
「かっちゃんも少し眠るでしょ?」
食事を全て平らげ、シャワーを浴びパジャマに着替えたリナが桂に訊ねる。
キッチンで食器を洗っていた桂がリナの声に顔を上げた。
「えー。俺どうしようかな…?あんまり眠くないし。」
「ダメ。かっちゃんも寝るのよ。」
リナが有無を言わさないとばかりに言う。ハイハイと桂が嘆息した。リナの魂胆はみえみえで…どうせ昨夜の亮とのデートの事を聞きたいに決まっているのだ。
桂は肩を竦めると、シンクに布巾を放り込み「今参ります。」と返事をしたのだった。
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