堕ちる犬

四ノ瀬 了

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ほら見ろ、また吠えて誘っているだろ。はしたないメス犬だ。

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「いいところに来た。ノア、お前のお嫁さんが来ているよ。」

川名は一歩後ろに下がって、彼のためのスペースを開けた。ノアは空いたスペースに四肢を折りたたむようにして座って、舌を出して霧野の方を澄んだ瞳で見あげた。以前は可愛らしいと思って愛でた頭だった。誰よりも散歩時の運動量を確保して遊ばせたつもりだ。

ノアのリードを握っていたのは久瀬だった。久瀬は車内を覗き、そこに積まれた霧野を発見してクマの色濃い目を細めた。

「お前も来てたのか。こんなところで何してるんだ?来ればよかったのに。」

霧野は久瀬のくらだぬ挑発にイラつきはしたが、ノアの存在に比べれば大したものではなかった。
それよりも、香ばしい香りが気になり自然と口の中に涎が溢れ出た。久瀬の手から紙袋がぶら下がっており、そこに中に何か入っているのだ。霧野の胃がまた軽く顫動し音を立てた。上から摂取した物より下から摂取した物の方が多く胃がムカついているのに、食欲があるとは。栄養が不足して頭が上手く働かない。

川名がノアの頭を撫でながらすぐ横にしゃがみこんだ。彼は自身の頭を彼の犬の方に近づけながら、視線は霧野の方を捕らえ続け、囁いた。

「相変わらず発情がやめられないらしい、ノア、手伝ってやれよ。」

川名がノアの背中を押した。ノアが身を乗り出し、車内に乗り込んで霧野の股ぐらに鼻先を埋め始めた。鋭い牙を持った裂けたような口が大きく横に開いていき、そこから触手のような舌が大きく垂れさがり、ぴちゃ、ぴちゃ、と涎を垂らした。
「う゛……」
触手が器用に霧野のムッチリとした双臀の上を線を描きながら走り、霧野の二つの球体を猫が捕らえたネズミを可愛がるように舐め嬲りまわす。

「ふっ………ふぐぅう゛っ………」
「クンニされてよがっていますね。」

霧野が久瀬を睨みつけるより前に、熱い息を吐きだす鼻先が、上下に、探るように動き出し、陰嚢から蟻の門渡り、裂け目まで器用に舐めまわした。

霧野の久瀬の方を向きかけた視線がぶれ、車の天井の方を向いた。触手が後門の入口を探るように舐めたて、門戸をクチュクチュと叩かれたせいで、その扉は求めるように触手の下できゅうきゅうと締まった。

いつからか、霧野が犬と交わり乱れる様子を、遠巻きに眺める者達が現われた。霧野は人の気配を感じてはいたが、狭い車内に閉じ込められ責め立てられている状態で、状況が把握できない。また把握したところで余計に恥をかくだけだった。組でどこかを貸切る時、そこは組の土地と同じ、治外法権の土地となるのだ。

霧野は股を開き、外の皆に様子を見せびらかしながら、その羞恥と、物理的な刺激によってゾクっゾクっと下半身から厭な快楽が押し寄せるのを感じていた。

「くう゛ぅ……っ」

本能しか存在しない彼の無垢な丸い瞳が、霧野の性器と顔を交互に見つめながら、今度は霧野の一物に器用に舌を絡めさせ、上下にぐちぐちぐちぐちと舐めはじめた。予測不可能な動きで、巻き付くように性器を絡め取られ、獣の濃い粘膜に覆われた男の尊厳が青筋たてて一気に大きくなり、血管を浮かせ、それだけが意志を持ったかのように跳ねた。
一体どこでしつけられたのかノアの責めは悪い物ではないのだった。霧野はノアのその人外の顔、獣の顔をじっと見ては気分を萎えさせようとした。股間が蒸れ、獣同士の臭気を発し始める。その時、川名が立ち上がった。

「もっとしっかり抱き合え。お前の伴侶だぞ。」

彼は霧野の自由になっている右脚を持ち上げ、ノアの身体に絡ませて手を離した。霧野の右脚がノアの背中から腰の辺りにかけてを抱いた。霧野は屈辱感と不快感にたまらず足を剥がしたかったが、さっきの脅しの手前、そんなことをすれば「不要な脚」と言われて何をされるかわからなかった。

「そうだ、そうやって抱き留めろ。それがお前の妻としての務めだ。それくらいちゃんとやれ。」

「んっ、ん…くぅ…、ん」

「鳴いてないで、もっとしっかり抱かないか。」

バチンッと太ももの裏辺りの肉を平手で叩かれノアを抱く脚に力が入る。
霧野の脚の指先にまで力が入り、丸まっていた。

敏感になった皮膚と獣の皮膚が互いの動きでこすれあい、霧野は不快な気持ちよさに一瞬だけ目を閉じ、獣に犯され感じているという現実からの逃避を始めた。爛れた夢の断片を取り出し、右脚で抱きとめた黒い獣を夢の中の人間の彼に重ね合わせかけたのだ。しかし、良くないことだ、どうかしてる、と再び目を開いたところで、川名が、霧野の夢を打ち砕くのを手伝うように声を上げた。

「ノア。そんな汚い物食うんじゃないぞ。お前が去勢をやってやるつもりか?うまくできるかな?」

ノアが上目遣いにこちらを見ながら、一心不乱に霧野の雄を口の中に入れ、先ほどより強く甘噛みしていた。去勢の恐怖に霧野の物の勢いがみるみるなくなって、身体が強張り動けなくなった。

「まったく、さっき散々餌やったのに。お腹壊してもしらないぞ。」

ノアが喉の奥で切なげに声を震わせて口を離し、小さくなった霧野の雄を、自分が産んだ子供を舐める雌犬のように執拗に舐め回し始めた。舌遣いと振動がくすぐったく霧野の塞がれた口から、萎えたペニスとは反対に甘い声が漏れ、再び雄は欲望に忠実に復活し始める。

「マジかよお前。この状況で勃つか?ビョーキだよビョーキ。人間より犬のがいいのか?」

かがみ込んだ久瀬が半笑いで霧野を見下ろしていた。違う!違う!と頭の中で叫びたてたが身体が止まってくれない。霧野が久瀬から目を逸らしたその時、同時に、久瀬の手の中のリードが緩み、ノアが霧野の上まで身をつるつると滑り込ませ、霧野の足の間でマウンティングでもするように上に跨った。そこに一本の巨大な獣の生の肉塊がはみ出しているのを発見し、霧野は悲鳴を上げた。

「あっ!、こら!!」

久瀬がリードを引くのが遅く、犬のグロテスクな一物が再び霧野の後孔に入りかけ、彼がもがくのも虚しく、ぐち……!と、1度大きく中に押し込まれた。

身体を裂かれる衝撃と長時間の責め苦のトラウマが、群生する花が一斉に開花したかのように頭に蘇ってくる。そこには確実に人間相手では味わえない狂った快楽も存在し、あまりのことに記憶を飛ばすほどに、霧野の身体に性の衝撃を植え付けていた。それゆえ、強烈な嫌悪感と痛みを伴っても、大きくされた獣が萎えず、反り返り揺れ続けた。

川名の言葉も忘れて、霧野は身をよじらせソレを抜こうと身体を動かすが、ノアが普段じゃれてかかるのと同じように楽し気に息を弾ませながら、また一歩二歩と前進した。ぬめる舌ですっかりほぐされ、嬲られて濡れそぼった菊座に紅い肉鉾がずるりずるりと押しこまれていく。彼に人の心は無い。

「んんんんんん゛っ!!!!うぐぅ゛ぅぅ!!!」
「悪い悪い、霧野、すぐどけるから、っ」
「……。」
川名は黙って様子を眺めていた。

久瀬は所詮愛玩動物である川名の犬が霧野を舐めはしても、挿入して犯すことまでは想像していなかった。焦ってノアのリードを引くが、ノアの力が強く、久瀬の細腕による引きではどうにもならず、まるで「綱引き」のような状態になってしまう。

「ああ゛!くそっ、めんどくさい、いい加減にしろよっ」

綱引きの状態になったことで、本来ではあれば膣の奥深くにて、抜けないようバルーンのごとく大きくなる仕様の人外の特殊な一物、そのバルーンがきつくすぼまった神経の張りつめた敏感な肉の入口付近を、みちみち!!と、はち切れんばかりに大きく拡張し始めていた。

「!!、ぐおぉ、っ!う゛うううっ!!!ーーーーんんんんん゛っーー!!!」

久瀬が焦ってリードを引くせいで、余計に入口部分に肥大した異形の肉鉾がとどまり続け、肉と肉を擦れ合わせながら行ったり来たりし、ごりごりと大きく拡張させていった。

霧野が戒めの縄を限界まで引き絞りながら、身体をそらせ、震わせ、殺されかけた獣の唸るような悲鳴を上げていた。発達し輪ゴムの束のような締りのある淫肉をぐりぐりと無理に拡張、永遠と思える時間いつまでも前後に刺激され続けるのだ。相手は人間でなく、機械に近い、いやそれよりもっとタチが悪い。

霧野の雄は裂ける痛みと恐怖による一瞬の萎えをみせたものの、慣れてくると浅ましく怒張を再開し、柔軟なゴムのような肉門が観念したかのようにノアの万力ペニスに吸い付き始めた。叫びの中に単純な恐怖と痛みだけでは説明出来ない鳴き声が混ざりこんでいたのだった。

久瀬がその気迫に圧倒されて言葉を失っているのに対して川名は表情もかえず煙草に火をつけた。

「悦んで吠えている。いい音だ。」
「……。」
「久瀬、お前、俺が一番好きな音楽は何かと聞いてきたな。」
霧野が一層声を上げた。
「これが答えに近いな。」
川名はそう言って目を伏せ何か考えるように、じっと下を見ていた。いや、聴き入っているのかもしれない、と久瀬は思った。
「そうですか、」
「お前は素晴らしい奏者だ。音楽の夢をそのまま追っていても成功したんじゃないか?お前には才能があったよ。」
「……」

川名の音楽趣味は、ある種の衝動を抑えるのに役立っていた。音楽とはそういうものだ。彼はしばらく音を鑑賞してたが、音色が徐々に小さくなってくると、吸い終えた煙草を地面に捨てもみ消した。

久瀬が二条の車に足をかけ、ほとんど全体重をかけるようにしてノアを引き離す。ノアの爪が霧野の皮膚に突き立って右脇腹から太ももにかけて楽譜のような血の四重線を作りながら、ようやく、ぎゅぷぷ…と音を立てながら赤黒い一物が抜けた。発射していないため、普段格納されているはずの奇虫の様なノアの赤い肉塊が堂々と反り立って、太陽に照らされて濡れていた。

「疲れた……もう、持ってられない、」

久瀬が猫背気味の肩で息をしながらボヤき、川名にリードを「すみませんが……」と手渡した。久々に「楽器を演奏した」せいで、腕が異様に疲れていた。彼にはノアが凶悪な化け物に見え始めていた。ノアは今まで久瀬に対して徹底して無関心であり、暴れもしないがなつきもしない、ニュートラルな姿勢をとってその本性を見せたことがなかったのだった。

美里が、久瀬に対して「死体の一部をどうしたかって?確か川名さんがノアにあげてたけど。」と淡々と言っていたことが思い出される。彼は川名が不在の部屋の中で彼の机を拭いていた。
「何。あんな大きいの入らないだろ。」
美里が手を止めて何か思い出すように、視線を机から床の方に向けた。
「小分けにして冷蔵庫に入れて置いたはずだから残りも大丈夫だと思うけど。」
つまらない冗談を言っていると思ったがそうではないのだ。

川名という男であれば犬にそういう仕込みをしても何らおかしくはない。久瀬は一度目元を覆って状況を整理し、感情を鎮め急速に冷静になった。すぐに、ノアのことが化け物でもなんでもなく自分達と何ら変わらぬ生き物だと認識できるようになった。

川名がリードを受け取るとノアは嘘のように大人しく車から降りて、川名の足に身を寄せるのだった。毛が付くのもお構いなしに鼻先と頭をすりつけ口を開き、川名を見上げていた。川名がその頭を撫でると耳が寝て、またピンっと立つ。

久瀬は川名を横目で見て強い口調で言った
「二条さんの車ですからね、これは。あの人犬嫌いでしょう。中に入れさせちゃ駄目ですよ。」
川名の手がノアの首元を撫で始めた。
「誤解してるな。逆だよ逆。アイツが犬を嫌いなわけじゃない、アイツが犬に嫌われるんだ。特にノアは全くアイツのことを信用してないから、1度手酷く噛み付いて5針も縫わせているし。唯一アイツに噛みつけるんじゃないのかお前。」
川名の指がノアの小さな頭骨をカリカリと撫でる。
「何が悪いんですかね。にしても酷い格好ですねコレ。おい……恥ずかしくないのか?」

呼ばれた霧野だが短時間とはいえ、ノアにまさぐられ、奥まで突かれ、肉の入口を人間ではありえない強度で拡張されて視線を虚ろにさせていた。

開きっぱなしの後孔から、ノアのペニスによって肉の奥から掻き出された白い夜露が漏れ出た。ノアによって汚された証である赤い血が混ざりあい、赤と白のマーブルになったヨーグルト汁が、こぽ、こぽ、と奇妙な音を立てている。人ではないもののペニスで入口を大きく無理に拡張され、久しぶりに軽く裂けたのだった。

「久瀬、また誤解してるな。こいつはひとり大人しくしてることができず、勝手に一人で発情してわざわざ自分でドアを派手に蹴り開き、犯されつくして紅く腫れた小穢い犬性器をわざわざ俺に晒し、まるでもっと犯してくれと言わんばかりに見せつけてきたんだぜ……。だからわざわざこうして慰めてやったんだ。犬に恥ずかしいなんて概念ある訳ないからな。そうだろ。」

うつろっていた霧野の濡れた瞳がようやく川名の方を向き、一瞬の光を取り戻して睨みつけた。

「う゛うう……」
「ほら見ろ、また吠えて俺達を誘っているだろ。はしたないメス犬だ。ノアの方が余程品がいいよな。」
「はは、そうですね。」

霧野は川名の言葉責めに身を濡らしながら、再び自由な方の足をゆらゆらと揺らした。縄の継ぎ目はもう解けないし、隠れようにも自分で大きく開いたドアには到底足が届かない。開けてしまったことが今になって悔やまれてくる。先に縄を何とかすべきだったのに。また選択を間違えた。いつまで選択を間違え続けるのだろう。

「おい、犬。さっきから悔しそうな声上げてるが、こんな風に責められても時折下半身がびくついてとまらんじゃないか。素晴らしい変態ヤクザだな。」
「う゛うぅ……っ」
「吠えたな。お前は俺が憎いか。俺はお前が憎いぞ。俺に逆らった人間がどんな目にあわされるのか、お前は見てきたはず。それなのに……、……、本当にお前は愚かだ。こんなに愚かな生き物は見たことがない。」

返事の代わりにまた、裂傷し腫れた肉の間からピンク色の濃い液がびちゃびちゃとだらしのない滑稽な音を立てて滲み出ていった。

嫌だ、止まれ、と思って括約筋を使って必死に締めても勝手に、余計に漏れ出てきてしまう。二条に抑えつけられ昼夜問わず肉剣で幾度も貫かれ続け、ノアに太い楔を打ち込まれ、身体に最低限の力さえ残っていないのだった。

嫌だ嫌だとはっきりと思い身をよじるほどに、身体から汁がこぼれ羞恥に顔と瞳の奥が熱くなる。
お漏らしの様子を川名と久瀬とノアがじっと黙って眺めており、霧野のプライドをさらに傷つけて呼吸を乱れさせた。

「ん……ふうっ、ふぅ……」
「また汚して。駄目だろハル、人の車の中で粗相をしては。また肛門を焼くか?ん?」

霧野が首を横にふる。赤らんだ目の中に羞恥心、それから怯えと憎しみが宿ってはいたが、川名はそこに反省の色がないととらえ、じっとりと目を細めて微笑んだ。

「おい、俺の鞄を寄越せ。」

久瀬の配下の者が走った。そして、川名の鞄のひとつを彼に手渡した。川名が代わりにノアのリードを彼に渡し、鞄の中から30センチ程度の細い棒を取り出した。光を全て吸収するような漆黒の色合い、持ち手となる部分に蔦の絡まったような傭洒な彫物が施され、下の方に一輪華の彫刻が咲いていた。

彼は右手でそれを持ち、左手で太陽の元で輝く銀の凶器を撫でた。

「ちょうど今日仕上がったケインだ。良いだろう。持ち手の彫物は俺がデザインした。打擲部の重みも、強さも、お前仕様に強くしてもらった。これは遊びなどではないからな。お前の懲罰用だ。」

ケイン、それは棒状の鞭の一種だ。同じく棒状の乗馬鞭等に比べ、遊び、しなりが少ない教育棒である。小さく軽量であるため、持ち運びが容易だが、扱う者の力に関係なく、どっしりと骨身に染みる重い打撃を与えることができる。それゆえ過去の歴史の中でこの形状の鞭は特に、教育用として家庭に学校に置かれた。皮膚を弾くというより、身体の芯まで深く刺すように打つ。硬く冷たい先端を被対象者の皮膚にあて、指示をしたり焦らすこともできる。打ち方しだいでは、乗馬鞭などより綺麗に痕が残った。

川名はケインに沿わせていた手を離すと、冷えた先端を霧野の臀の付近に押し当てた。

「ん……」
「排泄は決められた場所でするものだと分からないのか。」

振り上げられたケインが霧野の刺青の華の上に横1文字にあたり、肉を弾くピシっ!という音とともに華びらの上にじわじわと赤みをつけた。強烈な痛みと共に尻の奥の快楽の芯を揺らされる邪な快感に、霧野がこらえるように悶絶する中、川名はケインを降り下ろし、霧野の堪える声を聴きながら、執拗に同じ個所ばかり狙って打ち続けた。霧野が痛みになれたのを判断すると急に別の場所に鞭を打ち込み気合を入れた。

「今、脚をとじかけたかな。」

霧野が返事の代わりに震える脚をいやいやと躊躇いつつも大きく開かせた。彼の身体の脈打つような淫靡な反応を川名は機械的に見続けた。

「排泄など、ノアだって1歳にもならないうちにできるようになったのにお前はなぜ出来ない。本当に駄犬だ。こんなの見た事ないよ。1歳児未満だ。それで?一歳児未満、犬未満のお前は一体何だ?一体何に使えるって言うんだよ。俺に教えてくれないかな。」

繰り返される罵倒と打撃によって白かった華がピンクづき始めた。くぐもった悲鳴が上がる。どこか遠くから笑い声が聞こえた。霧野は再び他の人間の前で尻を打たれ罵られていることを感じ始めていた。

「美里の奴はお前に舐めさせてばかりで排泄訓練もまともにさせてないのか?こんなに人に見られて、折檻されてもとまらないとは。」

打たれ、罵られ、少しずつ霧野のこらえ具合がゆるまり、悲鳴が悲鳴らしくなりはじめた。繰り返される羞恥と痛みの組み合わせによって、頭の中がかき乱され、反抗的だった目つきに若干の揺らぎがで始める。

「そういえば、お前は地下室のドアの前でも粗相をしたらしいじゃないか。お漏らしばかりして。」
「う゛っ、くぅぅ……」

霧野の揺らいでいた目つきが川名の方に向いた。高い声をあげてはいるが、やはり元々の特徴ある目元が吊りあがり、ふぅふぅと口から漏れ出る犬の如き息は悔しそうに湿って、屈服の姿勢に今一つ足りない。

川名はしばらく鞭を手の中で弄びながら霧野を冷たく見降ろし続けた。しばらくして、霧野が終わりなのか?と一瞬目つきの鋭さを緩め、安堵の視線を見せたところで、その鞭が正確に濡れた菊の狭間、その肉を打ち抜いた。

野太い、途切れ途切れのくぐもった悲鳴があがり、霧野の目の前には光が幾度かチカ付いて、下腹部の燻っていた精の溜まった感じが、肉門の入口を着火剤にして肉の芯を激しく揺らされ、次々と中で爆発、中を激しく滾らせ、蠕動させる。

彼は、頬から耳の端まで紅く染め、玉のような汗を流しながら、狂乱の声を上げ、気がつけば濃いスペルマを発射させ、さらに身を濡らしていた。鞭の矛先が容赦なく滾った雄の象徴にも向けられた。小気味の良い音と共に打たれた肉がぶるんと一段と大きく揺れ、頭の中が真っ白な光で満たされて、発火、痛みが股間を中心に全身に染みわたり、慟哭する。対して、氷のように冷めた瞳が霧野を見降ろしていた。

「一体お前はさっきから何をやってる。上から下から。」

川名はつづけて二度三度とやはり正確に淫華の位置を鞭打ち抜き、彼の顔から知性の欠片が消えるまでそうして恥部を打ち続けた。猛る鳴き声が森の中でよく響きわたっていった。何も知らない人間が今この付近を訪れれば、人でない何かが森の中で飢え、叫び狂っていると錯覚しただろう。

「こうして直接問題のある部位を躾けてやってもわからないらしい。頭の鈍い。」

いつのまにか、肉筒全体がじんじんと外から中から痛み気持ちよくなり、そこは蕾の様に一層紅く腫れ果てた。尻の打たれた打撲の跡が浮き出、刺青の白い華が桃色に咲きほこる。雄にも幾筋もの蚯蚓腫れが巻き付いて、先端をヒクつかせて、歓喜の涙に濡らしていた。

霧野の表情は苦悶と悦楽の表情の間をうつろい続け、物を考える余裕が失われていった。

肉体と精神の大きな責めの刺激に、思考を手放した分身体が勝手に悦び、叱られながら、彼はまた臀の下を大きく濡らしてしまった。そうして、大きくなった性の印を皆に見せつけながら、大きな一撃を食らい鳴く。痛くてたまらないはずなのに、そのサイクルを繰り返せば繰り返すほどに波は大きくなった。後孔だけからでなく、ペニスからの滴りもいつの間にか止まらなくなっていた。

「ん゛んんっ!ぅぅぅくぅ……ん」
「お前また漏らしたな。下半身を馬鹿みたく反応させるなマゾホモ犬。」

言われて収まるものでもなく、大きくなった印を隠すことも許されず、顔を覆うこともできず、一人だけ、狭い空間で悶え続けた。

尻の肉と菊門の周辺を中心として、幾本も新しい淫靡な赤線が付き、外の風で軽く撫でられるだけで、強く感じるほどになっていった。誰が何をしたというわけでもないのに、勝手に身が震え、よじれて、逃げようにも戒めによるその刺激さえ……。

「んっ、ん……ふ…」
「お漏らしだけじゃなく、わざわざノアと交尾までさせてやったのにまだ発情もやめられないとは、呆れた。汚らしい……。二条も下にペットシーツでも引いておけばいいものの、こういうところは雑だからな、理解ができない。おい、誰かこっちに来い。」

川名が呼びかけると、遠くから様子を見ていた久瀬の配下の宮下がやってきた。
「はい。」
「いくら聞かせてやっても、この雑魚犬はお漏らしがとまらないようだ。可哀想だから、なんでもいいから栓をしてやれ。」
「はい、しかし、なんでもいいと言われても……」
宮下はポケットを探り周囲を見渡したが、強いていえば太めの木の枝が目立つくらいである。

「仕方がないな。俺の私物をあんな穢れたゴミ溜めに挿れるなどありえないが……」
川名はジャケットの奥に手を突っ込み、黒い折りたたみ式携帯を取り出す。

「これでも突っ込んでおいてやれ。」

それは霧野の業務用携帯であった。しっかり充電され、電源がついており、着信があったらしく緑色のランプがちかちかと光っていた。

宮下は携帯を受け取ると、嫌がるそぶりも愉しむそぶりも見せず、まるで何か軽作業でもするように淡々と霧野の下半身、穢れ濡れた穴とその周囲を指でまさぐり始めた。

「う゛っう、く!」

唸りながら、格下の宮下に対して若干の抵抗を見せた霧野だが、心身ともに疲れきった状態でうまく抵抗できず、脚が空を切る。身体を動かした拍子に右脚が宮下の腰のあたりに、ぽん、と軽く当たった。

「こらっ、おとなしくしろ!」

宮下に叱られ、人から触ってもらえなかった勃起したペニスをきゅっと握られてしまい、霧野は思わず声を漏らして目付きをとろんとさせてしまう。

「んん……、ん」

そうして、甘い声を出しながら、すんなりと身体に携帯電話を埋め込まれてしまった。熟れ開いた肉の隙間から、緑のランプが明滅して覗いていた。濡れた肉が縦に開いて、ぎちっぎちっと黒い機械が締め付けられて、ぴくぴくと動いていた。川名は口元に手を当ててその様子を見下げた。

「ケツの中が光って見えてるぞ。蛍か?滑稽だな。勝手にひり出すなよ。出したらもう一個別のを挿れてやる。」
「うっ、うぅ……」

霧野は濡れた光のない目で妬ましげに川名達を見ていたが、異物を挿入されたことで身体がまたそれを感じ取り、呼吸をうわずらせ始めた。鞭で淫らな感性と身体の奥に仕込まれた淫乱の芯を刺激された余熱で身体がじん、じん、と勝手に高まっていた。身体がじんじんと温まって血流が良くなっているはずなのに、淫乱の血が回れば回るほど頭が働かなくなっていく。

携帯を入れられた羞恥、昂った肉の奥深くで携帯がなるかもしれないというヒリヒリした緊張が余計に身体を熱く、滾らせるのだった。朦朧とし、視界がかすみ始め、股間に猛烈な熱い感じが訪れ、期待し、強く握るように携帯を肉で抱きしめ、肉穴の周囲の筋肉に連動した内腿の筋がまるで今にもイキ果てるかのようにビクンビクンと震え始めた。

「ふぅ……っ、ふ……ぅ」
「おい、何をまた勝手に感じてる。お前何されてるのかわかってるのか?あさましいよお前は。」

川名はケインの先で再び霧野の内腿や臀をなぞり始めた。

「ん…っ、ん……」
「どうして、お前はお漏らしをする時はココを締められないのに、」

ケインの先か紅く濡れそぼり敏感の極致に達した柔らかい門の周辺を、触れるか触れないかの程度の触りで、つつつ、と、撫でまわし、霧野の喉から切迫した声が漏れ出、溜まっていた涙の一筋がこぼれた。下半身の触りのことで身体も頭もいっぱいになって何も考えられない。

「突っ込まれた時は締められる。頭で考えてから身体を動かせばいいのに、お前は人の皮をかぶった犬だから、本能的にそれができないんだ。これが動かぬ証拠だ。お前が奴らから与えられた仕事に大失敗したのもそういうことだ。お前は今後自分の頭で何も考える必要はない。悩むことも無いんだ。どうだ、嬉しいか。」

コツ、コツ、とケインの先が異物を軽く突いた。仕上がった身体に優しい刺激は毒で、霧野の皮膚に鳥肌を立たせ感じさせて甘えた声を出させた。それをこらえようとするせいで、余計に出た時の声が甘ったるい物になるのだった。

「どうせ……異常な状況であればあるほどイイんだろお前。よくわかるよ。お前はそういう奴だからな。」

川名はひとしきりケインをはわせて遊んだ後、懐から黒く光沢のあるペンを取りだし、それを霧野の開いた後孔に突き立て、奥までねじ込んだ。霧野は、反射的にがうがうと声を上げて拒絶したが、やはり抵抗はぬるく、ペンは濡れた淫肉と携帯の隙間に簡単にハマりこみ、ガチガチと音を立てた。

「くひぅぅ……」
「可愛い雌犬声出せるじゃないか。お前に特別に俺の私物をやろう。犬は罰だけでは学習しないらしいから飴をやるんだ。悦べ。インクがちょうどさっき切れたゴミだが、お前にとっては宝物だな。おウチに持って帰っていいからそこに挿れて好きに使って遊ぶといい。玩具がなくて退屈だったろ。」
「……、……。」
霧野は息をひゅうひゅうとたてながら、視線をうつろわせた。歪んだ視界の中でペンのヘッドが見え、わずかに残った理性が、なんともいえない屈服感に声を上げる。

「大事にしろよ。おや、嬉しそうじゃないな。俺はお前に"悦べ"と言ったんだが。」

川名が再びケインを手の中で弄び始めたのが見え、霧野は朦朧とした意識の中、自然と股を大きく開いていた。頭の中を直接犯されるような声が再び響き始める。

「そうだな、よくわかってる。服従のポーズだな。お前は本能的に俺の悦ばせ方に詳しいみたいだ。芸はできるんだからさっさとお漏らしを治せよ。さもないと今後俺の車に乗せる時は常にオムツを掃かせてやらないといけなくなる。嫌だろう?お前のためにわざわざ一から躾けてやってるのだから、感謝しながら俺の鞭を受けろ。わかったな。」
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