堕ちる犬

四ノ瀬 了

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お前の舌雑巾でピカピカになるまで磨きあげろよ。

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事務所の奥の方から誰かの笑い声が、怒声が響いている。背後から美里の視線を感じながら階段を降りていった。自席に戻るのは久しぶりだが、以前と何も変わらずに席は用意されたままになっていた。

椅子を引いて座る。自分の体重のせいで体内の異物が奥に食い込んで、中を擦りあげた。嫌だと思って少し姿勢を崩すだけでさらに腸壁をごりごりと刺激、引っ掻きまわす。
「うう゛……」
身体に力が入らなくなってくるので、姿勢を崩して机に肘をつく。顔を半分隠すように左手を当て、PCの電源をつけた。身体が汗で湿ってくる。

「くそ……頭おかしいんだよ…‥」

何故こんな目に遭っているのか未だに理解できない。尊厳を壊す?とっくにそんなもの壊れた。
これ以上何を壊すというのか。腹が立ってきて、身体に力が入ると中の物がずぶずぶと中を抉って、頭の中をとろけさせ、集中力がなくなってくる。

息が上がるのを抑えながら、ジップロックの中から、くしゃくしゃになった紙を取り出し、中を解読しようと試みた。何とか読めるには読める。表ソフトを立ち上げた。過去の宴会で使った組員の会費精算用の表を改良して、手元にある物と同じ物を作る。溜まっていたらしいメールの通知が気になった。

無心になって、ゲームの得点を打ち込んでいく。打ち込むたびに、身体が嫌な記憶を思い出し、早く済ませたいのだが、字が歪み、解読に時間がかかる。さっきから独り言が止まらない。話す相手がいないからだ。一週間まともな会話をしていない。異常な会話ばかりさせられ、理性が無くなりそうだ。

「なんで俺が、こんなこと……」
「お前、なんか変だよ。」

顔を覆っていた手を外し、声のする方を見ると美里が湯気の立ったマグカップを持って向かい側の席に座っていた。視線を外してまた顔を半分覆って、右手で打ち込みを続けた。

「無視か?」

彼がキャスター付きの椅子に座ったまま、こちらにやってきた。身体が触れ合うほど近くに椅子を寄せ一緒になって机に頬杖をついて、画面を覗き込んでくる。マグカップを持つ方の手首に細い銀のブレスレットが光っており、口をつけるたびにチャリチャリと軽い音を立てた。死んだような目で画面を見ているその様子と言い、既視感のある光景だった。

「おい、何とか言えよ。口まで人間辞めたか?」

甘い香水と珈琲の香りが鼻をくすぐった。首元に手首と同じような線の細い銀のアクセサリーがぶら下がって揺れていた。彼が表を見ながら「へぇ~」とわざと関心を装ったような声を出した。

「合計値は?」
「……。まだ、打ち込み終わってない。」
「お、やっと喋ったな。それが一番面白いんだろうが。早くやれ。『備考欄』に誰のが一番良かったかも書けよ。面白れぇから。」
「…うるせぇな、黙ってろ。」

美里はにやにやと馬鹿にしたように笑うだけで、何も言い返してこなかった。川名もそれに近いことも霧野に命じて、褒美に外に出してやると言ったのだった。彼に連れられての外出は地獄だった。しかし、地下に閉じ込められ続けている方が、絶望的で発狂ものだ。

「外……。」

外に出ることを諦めたわけではなかった。何か目標がないと神経がもたない。

外に出るとは、つまり、二重生活の前の元の正常な暮らしに戻ることだ。可能なら神崎の下でまた働くのがいい。別に出世しなくてもいい、高望みはしない。しかし、その前に自分を苦しめ、木崎を葬ったこいつらを根こそぎ、罪をでっちあげてでも逮捕してやる。どさくさに紛れて殺してやってもいい。できるだけ最悪な方法で殺してやる。

再び得点表を見た。体の部位によって得点に差をつけるのはどうか、つまり手だったら×1、口だったら×1.5……とそこまで考えていると、どんどん変な気分になって空いた性欲の穴を刺激してくる。これは夢なんじゃないのか。何故女を見たわけでもなく、並んだ数字を見ているだけで、身体が反応するんだ。

霧野が悶々としながら仕事をしていると、「澤野」としての役目を求めて、真実を知らない人間たちがやってきては彼に挨拶をしたり、話しかけたりして去っていった。大半が途中で霧野の違和感に気が付き「大丈夫か」といたわるのであった。その度もっと具合が悪くなった。

特に「澤野」をしたって話しかけてくる人間に対して、前以上に冷たい態度をとってしまう。最早彼は消えたのだ。そして、彼らのような人間が最も怖い。



美里は、霧野を横で監視しながら、組んだ足の先を霧野のふくらはぎのあたりに這わせていた。時々足の下で筋肉がぴくぴくと痙攣していた。

「具合が悪そうだな。顔面も熱があるように紅潮しているぞ。早々に引き上げて休むか?お前の寝床も整えてある。お前の体液やら誰かの体液やらで腐っていた毛布を洗っておいてやったからな。はやくお家に帰りたいだろ。」

霧野の後ろについて歩いている時に、彼が何をされているかおおよそ悟っていた。歩き方でわかる。毎日やられでもしていない限りは、慣れるまで歩き方がどれだけ頑張っても不自然になるものだ。

後ろから手で触って確認してやろうかと何度か思ったが、本人が美里に対して気づかせまいと無意味な努力をして頑張っている姿を見ているのも悪くないと思い黙っていた。

実際、息遣いや、目線、潤みなどの様子が安定せず、淫靡に誘うような風情をだしているのに、本人はまだばれていないと思っているのか、平然とこらえたフリをしていた。あまりの馬鹿さ加減が愛おしかった。今まで散々他人をコケにし欺いていた、詐欺のプロのくせに身体の異常に負けている。

「まだ大丈夫だ。」
「そうか。」

全く大丈夫そうに見えないが、本人がそういうならいいだろう。霧野は少し黙った後、眉を下げ横目で恥ずかしそうにこちらを見てきた。なんだ?と思っていると視線を下げて口を開いた。

「トイレに行きたい。」
今更そんなことで恥じ入るとは驚きで笑えてくる。確かにもともとそういう人間だ。服を着せ、席に座らせてやったことで理性が戻ったのだろうか。理性がぶっ飛んだ姿をあれだけ見せられた後では何もかも滑稽だ。

「ふーん、大便か?」
「変態か、そんなのどっちだって」

机の下で霧野の脚の沿わせていた脚を引き、踵で椅子のフレームを強く蹴りあげた。
彼は一声鳴いて、声を出した瞬間に、テーブルの上に置いていた文房具いれを手で床に勢いよく払い落とした。すさまじい音を立てて文房具が床に散らばって彼の声を掻き消した。一瞬周囲の目がこちらに向いたが、すぐに無関心に離れていく。

「ふざけるなよ……」
「は?どうしたんだよ。やっぱりお前、おかしいよ。」

彼はこちらを睨みつけながら立ち上がり、床に散らばった文房具を拾い始めた。
床に這いつくばって文房具を拾っている彼のパンツの裂け目から紫色の女物の下着が見えている。川名もいい趣味しているなと思いながらマグカップに口をつけると背後に気配を感じた。

誰かがポケットに手を突っ込んだまま立っていた。ポケットから出ている左手の親指には太い指輪が嵌っているのが見え、視線を上げると、ぴょんぴょんと跳ねて少し長めの黒髪の先が目につく。眠そうな半目の下から特徴的な大きな黒目がこちらを見ていた。今日は瞳の中の異常なギラつきはない。

「なんだ、もう元気になったの。流石だね。」
隣に立った竜胆の視線は美里と同じように霧野の尻に向かっていた。
「いい趣味してんね。」
「俺の趣味じゃねぇ。」

霧野が拾い上げた文房具を手に立ち上がり、竜胆の存在に気が付いた。あからさまに嫌な顔をしてすぐに目をそらして椅子に座った。竜胆は霧野の背後に立ち、椅子の背もたれに手を置いて、PCモニターを覗き込む。

「……。」
霧野は打ち込む手をやめて、下を向いていた。
「ああ、この前の奴。本当に自分で打ち込まされてやんの、どんな気持ちでやってんだよ、それ。」

竜胆は、背もたれに置いていた右手を離したかと思うと、何の前触れもなく霧野の口と鼻のあたりを覆った。手の下で霧野がむせかえり、手首を掴んで剥がそうとすると無邪気に笑いながら、より強く手を押し付けていた。

机の底板や脚に霧野の脚が当たってマウスが揺れる。美里はPCの画面の上で暴れまわるマウスカーソルを目で追いながら竜胆に話しかけた。

「なにしてんだよ。」
「さっき屋上でヤッてきたばっかで、俺と女の臭いですごくてね。お前も嗅ぐか?」
「嗅ぐわけねぇだろ、馬鹿にしてんのか?」

マウスカーソルの動きが鈍くなる。霧野は竜胆の手首を掴んではいるが、ほとんど抵抗できていない。暴れると自身の身体も同時に刺激されてしまうのだ。

彼は、顔を真っ赤にさせて息が苦しいのと臭いがキツイのか、ふうふう言いながら目に涙をためていた。しばらくしてから、竜胆が霧野の耳元に口をつけて「どうだ、ハルちゃん、スケベな気分になってきたかよ。」と囁いた。手の下で霧野が何か唸って首を振っていた。

「あはは、嘘つけよ。早速気分出して、ちょっと勃ってない?可愛いじゃん。美里、コレ今使っていい?」

竜胆の大きな黒目が美里の方を向いた。霧野がもごもごしながら縋るように美里を横目で見据えている。竜胆に霧野を使われるのは面白い気分ではないが、自分が見ている前ならまあいいかと思えた。

「すぐ済むなら、まあいい。一応真面目に仕事させてから戻せと言われてんだ。あと、俺も付き添うのが条件だ。」

霧野がこちらを睨みつけながら何か必死に唸っているのを見ると、余計にまあいいかと思えた。竜胆は一瞬だけ何か考えるそぶりをして、大きな黒目で美里を見下げて微笑んだ。

「いいよ。その条件で。」

彼は霧野の顔から手を外し、霧野のジャケットの端の方で手を拭い、彼が振り退ける前に手を離した。

霧野は直接顔に触れるのが嫌なのか猫のように手首の内側で顔をこすっていたが、それでもしばらく臭いがとれないようで嫌な顔をしていた。しかしすっかりムラついたのか軽く息があがり、ますます傍から見ると怪しい。美里は椅子から立ち上がり、霧野を見降ろした。

「じゃ、便所行こうぜ。そういえばお前も行きたかったんだろ。ついでにさせてやる。」

彼は威嚇する犬のような歯をむき出しにした顔を一瞬だけ美里に見せ、PC画面をロックしながら黙って立ち上がった。



暗めの木目調で統一された壁に、黒い床、仕切られた個室が5個、向かい側に小便器が4個並んでいる。一見奇麗だが年期も入っており、掃除も三日に一度程度である。細かいところを見れば老朽化や汚れが目につく。トイレの外廊下には竜胆の舎弟がひとり立たされている。

「どっちがしたいんだ?個室使いたいか?」
「小、どっちでもいい。」
「じゃ、一番奥の小便器使ってしていいぞ。その後身体を竜胆に渡せ。」

霧野が小便器の前に立ってから後ろを振り向くと、ドアの付近で竜胆が煙草を吸っており、美里がポケットに手を突っ込んですぐ後ろに立っていた。

自分の身体から放射線を描いて尿が排出され、張り付く視線は気になるものの、久しぶりにまともなトイレででき、スッキリした。一人であれば、這って寝たまま、壁の隅の方でするしかなく、下半身につたい、臭いも何もかも不快だった。大については、腸内洗浄の時に一緒に出ていたため問題がなかった。問題がないわけではないのだが。最後まで出し切ると、人間に戻ったような感じがした。

「流すなよ。」
美里の刺すような声と共に、足音が近づいてきた。
「まさか、お前がタダでそんなの使えると思ってねぇだろうな。お前自身が便所なんだから。」

彼は霧野のすぐ横で覗き込むように霧野を見て、軽く微笑んだまま下を指さした。嫌な予感がした。

「人間辞めたその口で便所掃除だ。奇麗に全部舐め、飲めよ。便所掃除も立派な仕事だからな。その間に後ろから竜胆に使ってもらえ。時短だ、お前の得意なマルチタスクだぜ。いいだろう。」
「……」
「嫌そうだな。トイレで脳漿ぶちまけた場合、ある意味掃除が楽だから俺は別にいいけどな。ホースで排水溝に流せるぜ。」

あまりのことに、頭の奥の方がキリキリしてきて、何も言えないでいると、美里はこちらの表情を見ながら、さらに微笑み始め、今度は濁った便所の底を見「汚ぇ、随分いっぱい出したな。」と言った。

「できないなら、事務所の全部の便器に対してやらせるぞ?そういうことなら、川名さんも別に何時間かけて働かせてもいいというだろうな。何日かに分け、少しずつやるでもいいぞ。」
「……わかった、やるよ。……変態が。」
「変態?変態はてめぇだろ?」

やると言っても感情がついていかない。床に膝をつくと流石に抵抗感がすさまじく、手を床に着くとさらにキツイ臭いが鼻をつき、便器の冷たさを感じた。

自分の出した物もそうだが、それ以前にあらゆる組員たちが使い、出したものの臭い、それを打ち消すための洗剤の臭い、など口に入れていい臭いではない。臭いだけでなく、ここまで間近に便器を見ることがない。そもそも普通のトイレ掃除自体やった記憶がないのだ。それを……。

美里が霧野の頭の方、煙草を吸い終えた竜胆が尻の方に立っていた。
「できないか?」
頭の上に重みが加わり、美里が靴を載せて体重をかけてきたのがわかった。
「うっ……」
せめて器に入っている尿ならまだ我慢できる。そう思ってしまうほど抵抗感がある。
「はやく。これと同じことを、便所全部分、あと30回程度やりたいか?つきあってやるぞ。」

抵抗してはいけない、もっと酷いこと、他の便所も舐めろと言われる、そのまま頭を降ろしてしまえ。と思いつつ生理的に拒絶、心の底のプライドがそれを拒絶、身体が震え、全力で抵抗していた。美里が黙ってさらに体重をかけ、殆ど顔が便器、尿につきかけている。上からため息が聞こえた。

「竜胆。もういいよ、使えよ。そしたら嫌でも力も抜けんだろ。」
「じゃ、そうさせてもらう。ハルちゃん、観念してさっさとそいつに口づけしな。便器が便器にキスするだけと思えばいんだよ。」

無遠慮に竜胆の手が霧野のベルトとパンツを降ろし、小さな下着と太いディルドが二人の面前に現れた。

「なんだよこれは。お前の趣味?」
「ちがう……」
便器に声が反響した声が一層くぐもっていた。
「抜いていいの?コレ。」
下着の上からぐりぐりと指でディルドがおしこまれ、思わず声が出てしまう。
「う゛ぁっ、やめろよ‥…いいから、抜いてくれ。自分で、外すのは、ダメだと言われてるんだ。」

屈辱と羞恥で震えて、一層力がうまく入らなくなる。もうほとんど顔と便器が接着しかけ、舌を出せば少し顔を動かせば便器につく。何度か口を開いて試そうとしてもやはり抵抗があり、情けない声が出て、どんどん息だけがあがっていった。

指が下着にひっかけられ、ずりさげられていった。太腿のあたりまで下ろされた下着は霧野には小さいため、紐のようにパンパンに伸びて太腿の間に卑猥な橋を作った。勢いよくディルドが抜かれたと同時に身体の力が抜け、顔面がそのまま自身の出した尿の中に押し付けられた。

「ん゛ううう!!!」

頭の上でぐりぐりと革靴の底がこすりつけられ全く頭が上がらない。舐めるどころか呼吸も苦しく、必死に暴れ、呼吸すると自分の尿が口に鼻に入ってきて溺れる。

「う゛っ、くぅ‥…」
 頭を動かして呼吸できる位置に顔を動かし、口を開けた。はあはあと息をしていると自分の髪から汚物が雫になって垂れ、ぴちゃぴちゃと音を立てていた。

「はあ~、やっとついたな。」
目線を上にあげようとしても、美里の脛あたりまでしか見えない。しかし彼の視線はしっかりこちらを向いているのがわかった。

「ざまあみろ。早く舐めないと、脚どけてやらんぞ。自分の出した小便で窒息死したいのか?お前はすぐに死にたがるからな。最終的なお前の死因が何か楽しみだぜ。それで今度は皆で博打でもするか?誰がどうやってお前を殺すかの博打だ。もちろん俺は俺に賭けるよ。自殺だけはすんなよ、つまんねーからな。おとなしくやればどけてやるから、やれよ。」

観念して舌を出し、目をきつく閉じて何も考えないようにしながら舌を這わせ始めた。便器の冷たさと尿のぬるさが気持ちが悪い。一瞬の何の味もしないと思ったが、少し遅れてすさまじい尿の苦みと臭いが口を犯し始め、吐き気をこらえた。

美里にまで音が聞こえるように、必死に舐めたてていると、頭の上の物が軽くなり、姿勢をただして掃除を続けた。
今だけ耐えろ。そうして一心不乱にしていても、ときおり理性が顔を出し、また、自分を守るために下半身にあの嫌な感覚がやってきてしまう。こんなことをして感じたくない。

「その調子だ。ちょうど掃除をしたのが二日前らしいからな。いい具合の汚さだ。」

ハアハアと息が荒くなると、顔面の穴と言う穴から何かが出て、代わりに誰かの小便やらなにやらの臭いと洗剤の臭いでいっぱいに満たされていった。体液が小便器の中身と置き換えられていくようだ。腰のあたりに手が回された感じがあり、体が強張った。

「あはは、ハルちゃん、俺がなんにもしてないのに、便所に顔突っ込んで舐めて、こんなに勃たせちゃって。可愛いんだ。」

肉棒を強く掴まれ、ようやく自分が勃起してしまっていることに気が付いた。
「う゛う、‥…よせ、」
付け根のあたりを強く握らる感じがして、2、3度とこすり上げられた。
「こんなでかくして。男はわかりやすくていいな。これからはずっとこうして可愛がってやるよ。」

やめろと口からでかかった先から舌が便器を這いまわり、言葉を話すのをやめた。言葉を話すと人間になってしまう。人間はこんなことしない。自分は物、便器。
後ろから今度は中に指が入ってきてそれが左右に肉を押し広げた。

「うっ……」
「また拡がって、軽く縦割れして、こんなのマンコじゃん。」

拡がっていた指が閉じられ、腹の方に向かってにゅるにゅると何度か動かさて、的確に中の滾る箇所をこりこりと引っ掻いた。

「く…っ、ぉ…、なんで」
「さっきまで全く同じことしてたからね。それに、チンポでぶち抜いてやった時も同じとこ好きで喘いでたろ。あんだけやりゃわかるよ。」

指が引き抜かれてすぐ、あてがわれたことも分からないほどスムーズに、後ろから勢いよく熱い塊が打ち込まれ、身体が大きく二、三度跳ねた。熱い塊が中で脈打ち、身体が答えるように脈打って止まらない。
「お゛ぉ……」
「いれただけだぜ、まだ。」
挟まれた痛みに麻痺して無感覚になっていたはずの乳首が更に充血したのか、再びずきずきと刺激を始め、下半身の快楽を増幅させる。中で生の、本物の熱く硬い雄がゆっくりと嬲るように勢いよく動かされ始めた。

「あ゛あ……っ!!……んん…ふ…」

「あんだけして、縦割れしてるくせにちゃんとキツイじゃんね。ああ、便器舐めてるからそうなるのかな?」

「おいマゾ犬、悦んで喘いで楽してんじゃないぞ。掃除はどうしたよ?」

下半身は一定の速度で穿たれ続け、出来上がった身体はすぐに発情した。ギリギリまで引き抜かれ、一気に入れられるたびに、脳天まで着かれたような痺れる刺激が貫通した。
「ん゛っ!!、ふっ、ぁ」
そのまま口を開けていると、身体が突かれた振動で勝手に動くのでモップのように舌が便器の上を這いまわってびしゃびしゃと音を立て顔中が濡れ汚れ臭った。

顔から頭から喉まで本物の汚物で犯され、尻から腸までを本物の雄で犯され、この組全員の男の小便のかけられた汚物を口に入れさせられていると思うと、もう頭がどうになかりそうだ。何よりそれで勃起しているのが最悪だった。そう思えば思うほど身体が惨めに発情してしまい、知らない声を上げて泣いた。
このトイレは上から下までカタギまで誰だって使う。下っ端以下、否、人間以下の掃除用具だ。

「お前は汚らしい便器を舐め、その上後ろからガン掘りされ悦ぶ変態マゾ警官だ。お前の口は上も下もそうやって使うのが一番いいんだ。明日から便所掃除は全部お前がやればいいんじゃないのか?嬉しいだろ。今のようにチンポを惨めにおっ勃ててできるんだから。」

「んっ……すげぇ締まったぞ今。ハルちゃんは本当に最低のマゾ雄だな。マゾの女もいいが、雄は締まりに迫力があっていいね。侮辱されて暴力的に食らいついてくる。ご褒美やるよ。わかりやすいクリチンポ扱いてやる。」

竜胆の手が滾りきった霧野の肉棒をこすりあげ、一層獣じみた声が上がった。矢に射抜かれた虎が逃げ込んだ洞窟の中で荒げ立てる声のようだった。

「う……っ、…まわしてやった時よりいいんじゃないのか?マゾな雄とヤるとこんななのか?持久力も回復力もあるし壊れにくい、最高の肉だな。」

そのまま一心不乱にとにかく舐めて、突かれていた。先に自分の方が到達してしまい、トイレの床に盛大にぶちまけ身体から力が抜けていった。
目の前が二重三重になって顔に垂れている温かい液が、涎なのか小便なのかもよくわからず、はへはへと荒い呼吸が脳を浸して、それでも頭の上の脚も後ろの肉棒も、身体を勝手に占有し、責め立て続ける。

「お゛っ!、…ぐ……ぅ」

「おい!!一人だけ良くなって、へたってんじゃねぇぞゴミ!腰が落ちてきてんだよ……、まだまだ、頑張らなきゃ、ダメじゃないか。俺をもっとよくさせなきゃ。」

「便所に顔突っ込んだまま、勝手に無駄射ちしてへたりやがったな!犬、お前の仕事は終わってねぇんだから、しっかり頑張れよ。何のための舌だ。便所舐めるための舌だろうが!」

「んっ、ぃ…‥」
「「返事は。」」

再び美里に強い力で頭を押さえつけられ、連動するように強い力で竜胆に後ろから突かれた。頭の中が真っ白になり、身体ががくがく震えた。イッたというのにまた自分の中の肉の管が扇動して、襲い掛かってくる獣の形を意識するようにまとわりついて、感じ始めた。断続的に声が漏れ出、がうがうと知らない声が出た。

「‥‥はい、が、んばり、ます……」
「そうだな、便器だってまだ汚ねぇんだから。お前の舌雑巾でピカピカになるまで磨きあげろよ。お前は今後一生俺たちの下で働くんだから、それくらいできねぇとな。」
「ハルちゃんは淫乱の天才だからな…、まだまだ余裕だろ。がんばれがんばれ、ハルちゃんのマンコ」

竜胆が子供をあやすように頑張れ頑張れと言いながら中に一物を突っ込んできて、耐えられない。一穿ちされる度にくぐもった声が獣のようにあさましく漏れ出、開いた口内が汚水で穢された。

便器を磨くことで口の中に溜まっていた涎を出したり、飲み込んだりしているうちに、最早味がよくわからなくなり、便所と自分の境い目さえよくわからなくなっていった。下半身も熱く乱れ、自分と竜胆の境い目がよくわからなくなっていった。自分の境界が薄れていき、何も辛いことを感じなくなってくる。

「あっ……イキそ、……ハルちゃん、出すよ、いいかな。」

竜胆の言葉を無視して機械になって便所を舐めていると尻を平手で打たれて、目が覚めた。すべての境い目がはっきりしてくる。それでも竜胆の物が動き続ける。そのようなことを聞いてほしくなく、便所のように黙って出して使って欲しかった。

「あ゛あっ…‥うう……」
「無視すんじゃねぇ!いいよ、くらい、言えよ!‥‥っ、犬!」
「う゛っ…‥、…‥いい、…出せ……!」

それから間もなく、中で竜胆の熱い物が勢いよく出され中を汚し、引き抜かれていった。ぽっかり空いた穴はまだ熱く求めるような音を立て湿り、濡れていた。頭の上の靴がどかされたかと思うと顔の下に入り込んできて、霧野の顔を上に向かせる。霧野の視線の先で影った美里の顔がじっとこちらを見降ろして意地悪な笑みを浮かべた。

「汚ぇ顔。」
「……。」
「そういう顔がお前には良く似合うぞ。もっとよく見せてみろ。」
しばらくの間輪郭をゆっくりと靴先がなぞって、最後に喉のあたりを軽く蹴り上げ、離れていった。

穢れた雫が音を立てて便所と床に落ちていく。空いた穴、客がいなくなり空室となった娯楽の穴に竜胆の親指が軽く突っ込まれて、ねちねちと音を立てていた。

「栓、しておいてあげよっか?俺ので受精しろよ。」
疲れ果てた竜胆の声は吐息が混じり、まるで喘いでいるようないやらしさがあった。
「……じゅせい?……できるわけ…‥」
「なんだ?精液がまだ足りないの?でも、残念ながら、俺は、もう今日無理だ。お前が来るとわかってたら、女との予定も、薬のタイミングもずらしたのにな。」

親指が引き抜かれ、代わりに冷たいものが同じ位置に食い込み始めた。

「いっ、いい……それは、もう…‥」
「せっかくだから、元に、もどしておくよ。そうすれば、出してやったものも零れないし、しばらく俺のを味わっている気になれるだろ?」

中まで最初と同じようにディルドが戻され、下着も戻されてしまった。

「んっ……うう…‥」
「早速締め付け始めて、可愛いな~。」

本物とやったばかりで余計に出来上がった器官の中で、それは無機質な物体ではなく、凶悪な雄としての存在感をもっており、意志とは関係なく身体がそれに食らいつき、いやらしい気持ちをかき立てた。

「俺も小便したくなってきたな。」
美里が上でそう言ってベルトを外す音が聞こえた。嫌だと思って身体を動かそうとすると脇腹を強く蹴られ「じっとしてな、そこで死にてぇか!」とののしられる。

「美里、俺も出そうだ。」
「あ、そう。お前とクロス小便するなんて最悪だが今だけならいいぞ。こいつに立場をわからせてやるためだからな。」

2人の気配が左右すぐ近くに来たかと思うと、熱い液体が左右から勢いよく頭の上にかけられていった。
「うぅ……」
じょぼじょぼと頭の後ろに直撃した汁は首筋、顔をつたって、一部は衣服に染みを作り、多くは穢れた水の塊として霧野の顔面を濡らし便器の中に落ちていった。体が強張って、指先が床に削るようにたてられ、震えていた。
頭全体を穢して流れていく汚物と一緒に、自分の魂の一部も壊れ削られ、流されていくようだ。魂が削られ場所にはまるのは、何だろうか。顔全体がさらに生暖かい臭いと苦みで満たされ、あまりのことに声も出せず、打ちひしがれて、音が止むのを待ち続けた。
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