堕ちる犬

四ノ瀬 了

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前みたく初日で使い物にならなくするなよ。

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美里が煙草を吸い終わるかどうかというとこで、携帯がなった。吸殻をドアの方に放り投げ、携帯を手に取った。川名からだ。

「はい、どうかされました?」
「終わったか?」
「似鳥さんがまだ終わってません」
「だろうな。スピーカーにしてくれ」

スピーカー音にして携帯を似鳥の方に向け通話音量を上げた。

「おい似鳥、言い忘れたが前みたく初日で使い物にならなくするなよ。」

似鳥は川名に聞こえるようにわかってますよォと声を上げた。わかっ、て、ます、よ、ォで息が切れ、声が途切れ途切れになっていた。美里はスピーカー元に戻し、再び電話を耳元に当てた。

「あいつ本当かよ」
「俺も見てるんで大丈夫っす、ヤバかったら止めます。」
「頼んだ。頼んだついでにもうひとつ頼んでいいか?」
川名のおまけの頼みがいちばん怖かった。今までの経験上ろくな頼みをされたことがない。

「……なんですか?」
「その女ついでにお前でバラしてくれ。業者に避ける経費がないんだわ」
視線を霧野から足元に横たわる女にずらした。女の頭から流れる血は固まり始めていた。

「まじですか?俺あんま得意じゃ……」
「無理ならお前の実費でなんとかしろ」
「……わかりました。」
「頼んだぞ」
電話は一方的に切れた。

「はぁ、まじかよ……」
美里は死体の足首を持ち、死体を移動させる。広いフロアの一角に床がタイル張りにされ排水溝とシャワー、天井から釣り下がるフックに解体用具や防護服が陳列されたエリアが併設されていた。

血がだいぶ固まっているおかげでほとんど床に引きずったあとは着いていないが、死体が置いてあった場所には肉の破片が残っていた。

霧野は後ろから犯されながら、目の前から上司の死体が運ばれていくのを呆然と見ていた。
抜かれると思うと貫かれることが永遠と繰り返される機械の一部にように思えた。
身体が熱くだるく、まともに思考ができなくなってきていた。いや、一時的に思考をやめ始めていたとも言えた。

それでも、木崎が殺されるところを、何も出来ずただ見ていただけだった自分に対する罪の意識は消えなかった。こうされているのはその罰なのだと思うと不思議なことに少しだけだが心が落ち着いた。木崎のためにも自分のためにも生きてここを出て、警察に戻らなければいけない。

霧野がそう決心したと同時に、頭をいっそう強く抑えられ、今までにない強い勢いで体を貫かれ、声にならない叫びを上げた。獣のような息遣いが首筋から耳元にかけてまとわりつく。

「このまま出すぞ」

身体を強く押さえつけられ、背中から抱き抱えられた。落ちかけ、悔しくも慰められていた意識が、殴られたかのようにはっきりとして、全身に鳥肌がたち大量の汗が溢れ出た。
意識せずとも身体に力が入り、全ての筋肉がなんとかならないかと暴れ回った。それさえも似鳥の嗜虐心をくすぐり、勢いが余計に強くなる。

「なんだ、まだまだ元気があるじゃないか。」

それから3ストロークで体内に大量の似鳥の精液が吐き出された。身体の中に埋め込まれていた異物の感覚が少しだけ弱まったと同時に霧野の身体も同時に弛緩した。

激しい恐怖、怒りや後悔といった感情を押しのけて、崖から突き落とされたような、今までに感じたことのない絶望感と急激な眠気に襲われる。使っていない筋肉を無理やり使った代償と現実感の無さに脳がブレーキをかけた。

美里は死体処理の準備をしながら霧野の様子を眺めていた。似鳥の勢いが弱くなったが、霧野はまだ彼の陰茎を身体に受け入れた姿勢のまま、太ももにはピンク色の液体が伝っていた。強く握られていた掌が少しだけ開いているのが見える。ようやく中に出されたなと美里は携帯の時計を見た。霧野があの状態にされてから1時間は越えていた。

似鳥がジャケットのポケットをさぐっている。ポケットから中に仕切りの着いたプラスチックケースを取り出した。そこには色とりどりの薬剤が入っていた。美里はぎょっとして思わず手を止めた。

「ちょっとちょっと、初回から薬はまずいっすよ。素人ですよそいつ。昨日まで仲良く喋ってたの忘れたんすか?」

「なんだお前、まさか裏切り者に情があるのかよ?」

あたりの空気が急速に冷めたように感じた。あの女を銃でうちぬいた直後の川名と同じあの雰囲気だ。

似鳥は川名といる時や美里と痴話話している時こそひょうきんで陽気なおっさんではあるが、本来の顔こちらなのだという気がした。

裏表がある人間が1番怖いことを美里は身をもって知っていた。
美里は取り繕うように平静を装って言った。

「違いますよ。さっき川名さんから電話きてたじゃないすか。1日で潰していいんですか?そんなんじゃ軽すぎますし簡単すぎる。」

空気が少しだけ弛緩した。

「あたしがやるのもダメか?」

「ダメに決まってます、あんた何時間持続させる気ですか?俺が川名さんに怒られるんですから勘弁してください。シラフだったら何発してもかまわないですから。それくらいなら、今のそいつでももちますよ。女だったらもうストップかけますが。」

似鳥は分かったのか分からないのかふざけた表情をして自分のペニスを引き抜いた。それから、いつの間に持っていたのか何かの薬剤を霧野の臀に親指で押し込んだ。霧野は指から逃れようしているのか力なく腰を動かしていたが、無意味な抵抗であった。

美里が何か言おうとする前に似鳥は再びローションで自分のペニスをしごきながら口を開いた。みるみるうちに彼のペニスは元の通りグロテスクな怒張を取り戻した。何もしてなくてもこれなのだ。

「心配なさんな。こいつは合法薬剤だ。君もよく飲むカフェインを凝縮したやつだよ。途中で飛ばれたりマグロになられてもこっちのやる気が失せるんで気休めさ。少しでも意識をはっきりさせてやるのさ。ほら、早くお前はお前の仕事に戻れよ。お揃いのカフェインが欲しければそこから勝手にとっていっていい。作業も捗る。」

霧野の開いていた拳が再び握られ、ぐったりしていた身体が再び意志を持ったかのように筋肉が硬直していた。

霧野がさっきと変わらないペースで陵辱されるのを横目に彼の上司を天井のフックに吊した。バラすのには半日程度かかるが、半日程度ならば余裕で似鳥は霧野を陵辱し続けるだろう。



部屋が広いおかげで多少は紛らわされているが血と性の匂いと強烈な体臭が辺り一面に漂っていた。

「気になるならこの薬を使っておいてやれ。店でもつかわしてるやつでよく効く。様子みてあのヤブを呼んでもいいけどね。まぁ明日までに治るなんてことは絶対にないがね。」

美里は似鳥から塗り薬を受け取る。霧野はうつぶせ膝立ちのままぐったりしている。臀はいくらか縦に裂けており、もしこれを医者に見せたらひと針縫っておきますか?と聞かれる程度には出血していた。
精液と血液が混ざったどろどろとした液体が音を立てながら霧野の身体から排出された。似鳥は衣服をみにつけながら巨体を揺らして笑った。

「あーあー、人前で粗相して、終わってんなぁ。」
「何発だしたんですか?」
「だいたい5、6回分くらいは出したな。」

身体の中にはまだ溜まっているだろう。
こういうものは直後に一気に流れ出ればいいものの、気持ち悪くらいに腹の中に留まる。

「どうします?このまま拡張しときますか?」 

美里は部屋の住みに積まれたアタッシュケースのうち1つを手に取った。

中にはサイズの異なるアナルプラグが複数入っていて、1番台から15番台まで番号が分けられている。1番小さなサイズは指二本分程度、1番大きなサイズは成人男性の拳×1.5ほどの直径があった。もっと大きなサイズのものもあるが、それは別のケースに入っている。

「そうだな、予想通りだが、最近やった素人の中では群を抜いてきついからなぁ。あたしなら無理やりいれちまうが、美里くんなんてまだ無理だろ。」

似鳥は頭を掻きながら霧野の臀を強く掴み、それから親指を中に入れて動かした。卑猥な音と共にまた精液が溢れ出た。

「ポリ公ヤるのは初めてじゃないが、こういう若くて肉付きのいいのは初めてだな。」

「そうすか」
詳細を聞けば小一時間は話し出すことがわかっていたので興味はあったが、今は興味のない振りをした。

アタッシュケースの中から1番太い部分の直径が5センチ程度あるプラグを取りだした。ローションの代わりに裂傷用の薬を塗った。似鳥の手が離れた穴に押し当てると、先端部分はあっさりと銜えこまれたが、太くなる部分になるとつっかえ、弱った体が軽く暴れ息を荒らげた。

「おい霧野。いい加減力抜けよ、入んないだろうがよ、もう1回似鳥のおっさんの咥えさしてもらうか?」

似鳥が後ろでがはがはと笑っている。
美里が力を入れると、唸りながらも霧野の身体が軽く弛緩したのがわかった。傷口が一瞬開いたが、太い部分を通過するとあとは簡単だった。

「最初から素直にそうすりゃいいんだよ」

身体が異物を拒否しているのと、体内に残った精液が出ようとするので、臀から出たプラグの底の栓の部分が不安定に動いていた。美里は立ち上がるとそこに革靴を履いた足を押し当て、何度か強く踏みつけた。その度に霧野が良い反応をするので、身体の奥の方に熱いものが渦巻いた。

「今から似鳥さん送ってくけどさぁ、コレ、ケツ締めて咥えとけよ。ここであった事は全部川名さんに報告することになってるからな。何があの人の琴線に触れるかわからねぇ。こんなつまらんことで殺されたくないだろ?」

美里は視線を霧野から部屋の隅に積み上げられた袋の塊に動かした。そこには等間隔にばらされパッキングされた霧野の女上司の身体が詰められていた。もし霧野をバラすことがあればそれは自分がやってもいいと思った。

足をどけ、髪をかきあげながら似鳥を見た。似鳥は頷くと地下室のドアの方へと歩いていく。
美里は霧野の身体を軽く抱きかかえ、わざと尻がドアのほうに向くようにした。

「ここの鍵持ってる人間は少ないが、誰か来るかもしれないなァ、もしかしたら味方かもしれない。そいつらが今のお前をみたらどう思うかな。」

霧野が膝立ちをやめ腰を落とそうとするので、委縮した陰嚢を握り、手の中ですりつぶすように動かした。
再び霧野の身体が元気を取り戻したかのように跳ねるのを眺めた。

「姿勢を崩すなよ。あれと同じになりたくないだろ。」

美里はわざとらしく、空いているほうの手で小分けされた死体の包みを指さしてから、手を開き陰嚢を解放する。
立ち上がり後ろから霧野を眺めた。律義に言うことを聞いて膝を立てたままにしている。その間にも放出された精液がプラグの隙間からにじみ出て床を汚していた。もうしばらく霧野のみじめな姿を眺めていたかったが、似鳥の後を追って地下室を出た。

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