堕ちる犬

四ノ瀬 了

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お前らは上の奴らのちんぽしゃぶってるだけで出世だもんな。

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「気を落とすなよ。あたしも昔そういうことあったからなァ。」

後部座席の似鳥とバックミラー越しに目があった。1.5人分占領し、高級ブランドのスウェットを履き、足を大きく開いている。あんなもの誰が買うのだろうと思っていたが、こういう人間には需要があるのだ。

「で、どうなったんです?その人」
「そりゃあ、死んだよ。俺が埋めた。見えるだろうあのハゲ山」

似鳥目線の先、ビル群の向こう側に歪な形をした山がそびえていた。山の東側は崩れ岩がむき出しになり、西側はうっそうとした森になっていた。

美里は過去に川名のジャガーにひとり乗せられ、森の奥の工事現場を見させられたことがあった。そこには大きな穴とこんもり積まれた土砂、重機が置かれたままになっており昼間だというのに誰もいなかった。

繁華街に入ると山は見えなくなった。店の前で似鳥を下ろすと、バタバタと派手な装いの女が3人出てきて彼の腕に絡みつく。似鳥が車のガラス越しにこちらを笑顔で見ているので、窓を開けた。

「明日は別件の仕事でそっちにはいかないけど、ちゃんと餌やっとけよ。体力持たないと話にならんからな。」
「わかりました。」

似鳥は親指を立てて、店の中に消えていった。スーパーによりいくらか簡素な食料を買いまとめた。地下には調理器具はないが、確か簡素なコンロがどこかにあったはずだ。

事務所に戻り、車を車庫に入れた。
霧野のもとに戻る前に川名に一言でも報告をいれなければと、食料品の入った袋を抱えたまま、事務所の階段をあがるドアのほうに身体を向ける。そこには藤堂とその配下の島崎、斎藤が立っていた。

藤堂は派手な柄シャツにスラックスを履いており、島崎と斎藤はスーツだが派手な靴とインナーシャツを着ていた。

美里と霧野は、東郷組傘下の川名組組長である川名の直属の配下であるが、藤堂達はそうではない。
川名の配下の1人である宮下の構成員である。彼らは何かと年齢が近く立場が異なる二人を敵視することがあった。

美里は組では年齢がかなり若いほうであったが、藤堂の方が一歳年上であった。立場的には美里のほうが上であるが、ほとんど年齢が変わらないこともあり、なにかと礼儀もなくつっかかってくるのであった。美里はすぐカッとしてすぐ彼らの挑発に乗ってしまい、常々嫌な気持ちを味合わされてきたが、霧野は彼らをあしらうのがうまく藤堂達が一杯喰わされていた。

「美里、野はどうした。」

「知らねぇよ、俺に聞くな。いいからそこをどけよ。」

「知らないだ?制裁受けてるんだろ?」

藤堂は歪んでとび出た犬歯をむき出しにして笑った。
品のない笑い方に顔面に1発いれてやりたかったが、美里は黙って彼らを見据え、目を細めた。

今回の件、事情を知っている人間は限られている。川名がこの件に宮下達を絡ませるとは思えなかった。

「何のことだ、さっぱりわからない。」

「お前は今日、野と組長と出かけた。しかし、帰ってきたのは組長とお前と野じゃなくて、あの変態ジジイらしいじゃねえか。斎藤が見てたんだよ。それからお前が動く死体袋を運んでた……、となると中身は何だ?」

「……」

うかつだった。完全に自分のポカだ。

「このことはまだ俺たち三人しか知らないが、噂広めてやってもいいんだぜ。」
「妙な噂を流すのはやめろ。わかったから、いったんそこをどいてくれ、組長に買い物頼まれてんだよ。10分後に戻るから。」

苦しい言い訳だった。藤堂も馬鹿にした表情で目の前に立ち塞がったままだ。

無理やり三人の間に肩を押し込み、ドアノブに手をかけると、後ろから藤堂の大きな手が臀を思い切り掴んできた。
「こっちの制裁受ける奴は、お前以来だな美里。」
「……」
「いいよなお前らは、上の奴らのちんぽしゃぶってるだけで出世だもんな。」

美里は抱えていた袋をガレージの床に投げつけると、藤堂に殴りかかった。藤堂は察していたか、あっさりとよけカウンターを美里の腹部に叩き込んだ。美里がよろけたところを島崎と斎藤に羽交い絞めされ、続けざまにボディブローを二発食らった。

「おい、何やってる」

いつからいたのかガレージの中に川名が立っていた。下まで下げられていないシャッターをくぐって様子を見にきたようだった。

島崎と斎藤はすぐさま美里から身体を離した。
腹を抑えながら、川名のほうを上目遣いで見た。呼吸を整えようと意識すればするほど呼吸がうまくできない。それでも腹から声を絞り出した。

「……なんでもありません。じゃれてただけです。」 

「組長!」
藤堂が前に歩み出た。余計なことを言うなと肩に手をかけようとするが、藤堂はそれをよけて川名に近づいた。
「斎藤が美里が野を運んでるの見たっていうんですけど、本当ですか?」

川名はしばらく黙って威圧的な目で美里たちを見下ろしていたが、スーツのポケットに突っ込んでいた右手をだし、口元を触った。

「本当だが、それを知ってるのはお前らだけか?」
「はい」
藤堂は、川名の圧に押されたのか最初の勢いより委縮していた。

「で?聞きたいことはそれだけか?」
「俺たちも何か手伝えることがあれば、」
「ない」
川名ははっきりと強い口調でそう言った後、口元をゆがめた。笑っているつもりだろうか。

「が、君たちにはこのことは黙っていて貰わないもと困るんだが、君たちはまさか俺を脅してるの?」

ガレージの温度が5度くらいいっきに下がったように感じられた。流石の藤堂たちも声が出せないようで、背後に立つ斎藤が耐え切れず喉の奥から妙な声を出した。

「冗談冗談、そんなわけないよな。見に来たければ美里に言って一日くらい来ればいい、お前たちの望みはそれだろう。その代わりこのことは内密にしろ。」

川名は笑いながらそういったが、棒読みの笑い声であった。それから藤堂、島崎、齋藤の3人の目を1人ずつじっと見据えた。
「もし何か妙な噂が私が知るより先に出まわったら一番最初にお前を疑うし、殺す。いいな。」

藤堂たちは深々と頭を下げた。
「美里、お前は一緒に来い。」
ぶちまけた食料品をそのままに川名について、ガレージを出た。振り向くと藤堂と斎藤はまだ頭を下げており、島崎が食料品を拾い集めていた。

地下への階段は一度事務所の外に出て、別のドアから入りなおさねばならない。川名は地下に行くつもりでガレージの前を通り、美里たちの喧嘩に気が付いたようだった。

「お前、なにをやってる」
川名はこちらのほうを見もせずに言った。
「すみません、誰も見ていないかと」
「そんなことは聞いていない。野ならもっとうまくやるぞ。」

腹を殴られた時よりも余程痛い言葉だった。
川名から報告をせかされ、歩きながら状況を説明した。川名は「そいつは酷い、肉屋はやはり肉屋だ」と言って目を細めた。

地下へ降りる階段は暗く湿っていた。階段には明かりがないため、美里がライターを出して先導した。



霧野は、美里が去った時のままの姿勢で、部屋に臥せっていた。
最初こそ意識して締めていなければ挿入された異物をおしだしてしまいそうであったが、徐々に身体が順応し、むやみに姿勢を変えたり力んだりしなければ問題なくなっていた。
 それでも裂傷部の激しい痛み、異物感や圧迫感は残り、恥ずかしさ、排泄による生理的な快楽と凄まじまい屈辱感が不快感を増大させる。

川名は自分をどうする気なのだと考えれば考えるほどわからなくなった。川名の異常性は付き合いが深くなるほどよく理解していたというのに。

身元がバレたらその時は死ぬと思えと散々警視や木崎に言われてきた。一般的な拷問や電気拷問についての対応策は学んでいたがこの仕打ちだ。
一日で色々な事がおきすぎる。

誰かが階段を下ってくる音がする。足音は2人だ。鍵が回される金属音とギギギという音と共に足音が中に入ってきた。足音の主は黙ってこちらに近づいてくる。美里の香水の匂いと川名の煙草の匂い。
よりにもよって川名にこの姿を見られるのは屈辱であった。

「霧野、お前なんて姿なんだ。それで日本の平和の為に働く警察官か?ウチの事務所の便所の方が100倍綺麗で使えるぞ、なぁ美里。」

「そうですね。」

川名の革靴が目と鼻のすぐ先にやってきた。顔を上げると川名がこちらを覗き込んでいたが、ライトの影になってこちらからは表情が見えない。しかし、川名は何が面白いのか喉の奥でクックと笑った。

「美里、こいつの口を自由にしてやれ」

口に噛まれていた布が外され、だらだらとヨダレが垂れ、顎をつたい床を汚した。溜まっていたヨダレが犬のように止まらない。

「アイツに何回出された?」

「……」
最初の尋問として最低の部類ではないだろうか。こんなことをして何の目的がある?

「霧野、質問に答えろ。別に警察の秘密を聞こうとしてるわけじゃないんだよ。素直に答えた方が身のためだぞ。」

「数えていない……」
自分の声が異常なほどかすれて弱々しいことに驚いた。

「そうか、じゃあ次から正確に数えるようにしろ。今回は大体でいい。体感で言え。」

「……10回は……」

「そうか、それは良かったな。お前は今まで全ての仕事において、俺を欺き裏切り続けたわけだが、これは裏切りのない綺麗な仕事だ。楽しめたか?」

「……」
霧野は歯を食いしばり、舌打ちをして川名から目を背けた。

「楽しめたか?素直な感想を聞いている。他意は無い。次に俺に2回以上同じ質問させるようなことがあったら、一日中まわさせるぞ。お前のことが「好き」な奴は多いみたいだからな。」

「楽しめるわけないだろ…!何の意味がある、こんなこと……!」

「ははは、お前まだそんな口が聞けたか。薬やらせないのは正解だったな。美里、こいつの前に膝立ちになれ。」

川名がしゃがみこみポケットからナイフを出した。霧野がそれを睨みつけると、川名は霧野の背中にナイフを押し付けた。

プツ、と音がして後ろに回されていた手首が自由になったと同時に首筋にナイフをぴったりとつけられた。切っ先があたり、表面の皮膚にくいこんでいる。体をゆっくりと起こして四つん這いの姿勢になった。ナイフは当てられたまま、目の前に膝立ちになった美里の下半身がある。

「霧野、俺がお前に何をして欲しいかわかるな?お前は優秀だからな。」

「……こんなことして、何が楽しい。」
横目で川名を見るとパンツの下で一物がはっきりと隆起していた。

「何が楽しいか?楽しいに決まっている。裏切り者の粛清は、はらわた煮えくり返るほど腹立たしく、同時に楽しくてたまらないよ。お前も現場にいたことがあっただろう。間接的にはお前もやっていたことだ。」

「だからといって、なぜ俺にこんなことを…」  

「この仕打ちがお前が最も嫌がることで、俺が最もやりたいことだからだ。お前は生きてここから抜け出すことを目標にしているからまだそんな強気でいられるのだろうが俺の目的はお前の心を折ることだ。」

「……」

「理解出来たか?理解できたらお前がやるべきことをやるんだ。まだ、死にたくないだろ?」

霧野は俯きながら美里のベルトを外しパンツを下ろした。川名はナイフを引っ込めると立ち上がり、打ち捨てられたパイプ椅子を立たせ、霧野と美里から見える位置に座った。

整えられた陰毛の中から半ば勃起したペニスがあらわれ、鼻先を掠めた。似鳥と違い体臭のない美里でも、性器からは生々しいにおいが放たれる。

美里の手が顔にあたり、彼とは思えない丁寧な手つきで両手で頬を触られた。それから小指が口の中に探るように入ってくる。

唇にペニスの先端が当たると、右頬を触れていた手が後頭部まで頭を撫でるように移動し、ゆっくりと前方に押される。

口内に入ったソレは徐々に固く大きくなり口内を犯すには充分な形になった。 ぎこちなく舌を動かしていると、頭を持たれ前後に軽くゆらされた。歯が当たっている時は、小指の先でその部分を弾かれる。
 
美里に導かれるようにペニスを口に含んでいると、口内の獣の臭さが増し、美里が息を荒らげた。 
それでも刺激が足りないのか、強くペニスを喉の奥まで押し付けられ苦しさに何度も嘔吐くことになる。嘔吐くことにより蠕動する喉は美里を喜ばせた。

「ん、…いい、イきそう、お前もしごけよ……」
美里の言葉を聞き流していると、乱暴にペニスが引き抜かれ顔を捕まれ目線をあげられた。彼の表情は口元は笑っていて目元は怒っていた。それは両方とも本物の感情のようであった。

「ん?なんだ?急に俺の言うことは聞けなくなったのか?お前にそんな権利があるのか…?川名さんどうします?俺が殺していいですか?」

川名は椅子から立ち上がると拳銃を取り出し、美里の向かい側、つまり霧野の後ろにしゃがみ、彼の臀にはめられたプラグに触れた。霧野は痛いのか軽く悲鳴をあげたが、川名は容赦なくそれを引き抜いた。同時に溜まっていた精液がどろどろと吐き出され床と共に川名の革靴を汚した。

「内臓破裂させてみよう。これ一回やって見たかったんだよね。」
拳銃の先端が霧野の空いた臀に突きたてられた。
「10……9……」
霧野は再度美里の萎えかけていた陰系を咥え込み、右手で自身の一物に触れた。体が異様なほど緊張し、汗が吹きでた。
「早く美里をイカせてやれ。」
拳銃の先が臀の入口を擦り続けていた。

美里は容赦なく霧野の口内を塞ぎ蹂躙し、喉の奥深く差し込んだまま射精した。霧野はゴホゴホとペニスをくわえたまま咳き込んだが、行き場を失った精液は喉の奥や鼻の中に紛れこみ涙を誘発させた。
口の端からは一筋伝っている。

美里の勃起は出したばかりだと言うのにすぐには収まりそうもなかった。良い気分だった。

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