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72.説明なんてとてもできない

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 伸ばした手を取られて、きつく長に抱きしめられた。嬉しい。とても嬉しくて涙がまたぶわっと溢れた。

「ど、どうしたんだっ!?」

 長が狼狽えている。

「あー、長様が泣かしてるー。いけませんねー」
「うっせ、カヤテ、うっせーっ!」

 長は時々こうやって子どもみたいになる。僕は涙をこぼしながら笑った。

「ウイ?」
「ご、ごめんなさ……」
「謝るなっ! どうし、たんだ……?」

 長の声がしりすぼみになる。珍しいなって思った。それと同時に途方に暮れた。悲しくなってしまった理由が理由だけに、どう説明したらいいかわからなかったのだ。

「う、うまく言えない、です……あの……」

 言わないで済む方法はないかと思ったけど、そうしたらリンドルが誤解されたままになってしまうから困る。

「長様は聞き方が悪いのですよ。言いづらいことは甘くとろかせて聞き出せばいいのです。長様ができないのでしたらこの私が……ふがごっ!」
「えええええ」

 カヤテが僕の側に近寄ってきてそんなことを言いながら触れようとした途端、バチーン! とすごい音がした。どうやら長がカヤテを手で叩いて吹っ飛ばしたようだった。

「許しもなく勝手に俺の嫁に触るんじゃねえっ!」

 すごい声だった。本当なら僕もこんな声を聞いたら怯えてしまうだろう。でも今は長の腕の中に閉じ込められているから、びっくりはしたけど平気だ。長に「俺の嫁」と言われたのがとても嬉しい。

「……し……失礼しました」

 だらだらと鼻血を出しながらカヤテがその場に座った。アズがさっと布を出し、カヤテは平然とした様子でそれを受け取って顔を拭いた。拭き終えたカヤテの顔が元に戻っていたからきっと治癒魔法を使ったのだろう。カヤテは鬼といっても混血だから魔法が使えるようだった。(以前も使っていたような気がする)
 カヤテの怪我が治ったことで僕はほっとした。そうしてから長の手が気になった。
 ええと、確か右手で……。
 僕は長の右手を取り、傷ついてないかどうか眺めた。よかった、なんともないみたいだ。
 長が片手で僕をぎゅっと抱きしめてくれた。

「旦那さま……?」
「……何かわいいことしてやがる……」

 呆れたような声だったけど、抱きしめてくれたから大丈夫だと思った。

「旦那さまの手は……傷ついてないかなって……」
「だからなんだこのかわいいのはああっ!」

 長は叫ぶように言ったかと思うと、僕を布団に押し倒し口づけてきた。

「んんっ……ぁっ……」

 キスしてくれるの嬉しい、嬉しい。本当は長の舌に応えたいのに口腔内を蹂躙されてかなわない。また目尻に涙が浮かんだ。
 でも好きって気持ちは伝えたいから首に両腕を絡めてキスを受けた。
 甘い。とっても甘いよお。

「んっ、んっ、んっ……!」

 口づけを受けながら足を開かされ、尻穴に長の指が当てられた。キスされながら尻穴をいじられちゃうと快感が逃がせないからとても困る。でも逆らうなんて選択肢はなかった。

「んんんっ……!?」

 つぷつぷと太くて長い指が二本尻穴を穿った。途端に甘くなって尻穴がきゅううううん! と締まってしまう。長はそんな僕の身体の反応に気をよくしたのか、すぐに根元まで納めてしまいぐちゅぐちゅと動かし始めた。
 甘いよお、甘くて甘くて溶けちゃうよお。
 前立腺をいじられなくても中に入れられただけで感じてしまうから、いじられるのがたまらない。中は指だけじゃなくてよく舐め舐めされてしまうけど、本当はイチモツでいっぱいにされるのが好きで……ってそうじゃなくて。
 このままえっちしちゃうのかなって思ったけど、そうは問屋が卸さなかった。僕のおなかがぐーっと鳴ったのだ。

「これから昼食です」

 リンドルがさらりと言う。

「んっ……」
「ああ、そうか。……そうだったな……」

 口づけが解かれ、尻穴から指も抜かれた。それを長が当たり前のようにしゃぶる。とてもいたたまれなかった。

「飯食って休んだらおまんこいっぱい可愛がってやるからな?」

 抱きしめられてそう囁かれ、僕はまた尻穴がきゅんとするのを感じた。

「……はい」

 恥ずかしくて、でも嬉しくて僕はどうにか返事をした。
 さっき泣いた理由を追及されなくてよかったと思った。
 でもそれは今聞かれなかっただけの話で。

「で、なんで泣いてたんだ?」

 食休みを経てキスをされ、今度は乳首を舐めしゃぶられながら追及されてしまった。

「んっ、あっ、あっ、あんっ……!」

 もう片方の乳首をぎゅっと摘ままれて背がのけ反ってしまう。
 乳首、だめ。本当に、だめ。

「ほら、答えろよ。それとも”お仕置き”されたいのか? ん?」

 咥えながら言われるから、時々歯が当たってびくびく震えてしまう。

「あっ、あっ、そんなぁっ……だって、だってぇ……」
「だって、なんだ?」
「……あんっ、甘くてっ、かんじすぎっ、だからぁっ……あんっ……」
「うん、それで?」
「感じすぎ、て……死んじゃう、かもって……」
「……それで?」

 涙がぽろぽろこぼれる。乳首そんなにいじられたら取れちゃう。すんすんと鼻が鳴る。

「死んじゃった、ら……旦那さま、が……あんっ……ほかのひと、抱くのかなって……」

 涙がぶわっと溢れた。

「ほかのひと、やっ……旦那さまぁっ……」

 長は無言で僕の乳首をちゅううううっ! と吸った。

「あぁあんっ……!」
「えーと、つまり……いっぱい抱かれて感じすぎると死ぬかもしれない。死んだら長殿が他の人を抱くかもしれない。それは嫌だ、という解釈でよろしいですか?」

 リンドルがまとめてくれて、僕はコクコクと頷いた。

「……天使っつーのはヤリまくると死ぬのか?」

 長が僕の乳首をくにくに揉みながら聞いた。気持ちいいからいじらないでほしい。

「愛情なくただの性欲処理として使えば早死にするとは聞いています。もちろん怪我をさせて治療をしなければすぐに死にますね」
「……今の状態は?」
「長殿がウイ様を大事にしていることはわかります。私はウイ様を愛していますし、快感しか与えておりません。このままでしたら早死にするようなことは絶対にありえません」

 リンドルがきっぱりと答えた。
 よかったと思った。
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