【完結】離婚されたけど、新しい旦那さま方に捕まりました~巨人族の夫たちに溺愛されてます

浅葱

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118.気になっていたこと

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 イトの世話係としてアローを雇ってもらったのはいいのだけれど、少々居心地が悪い。
 イトは最初夫たちを怖がっていたが、三日もすれば少しずつ慣れた。
 授乳の際に僕と一緒にいるということもあるのだろう。
 柔らかめとはいえ、もうごはんを食べているからお乳は栄養補助のようなものだという。でも僕が本当の親だからいくらお乳を飲んでもいいんだよと言い聞かせたら、言葉はまだわからないものの何かを感じ取ったらしい。ごはんの後もそうなのだけど、おやつの時間とか、寝る前もお乳を飲みたがるようになった。
 それがもう嬉しくて愛しくて、いっぱい飲ませてしまう。

「おっき、おっきー!」

 と、今は清明チンミンに肩車をしてもらってご機嫌である。アローはイトの世話係だから当然一緒にいる。
 アローはちょっとでも隙があると、僕を見ている。夫たちのように、僕を愛しくてならないという目で。
 そういえば、ずっとこんな視線を感じていた気がする。僕はトラッシュに夢中で、なんだろうと思うことはあってもアローに想われているなんて考えたこともなかった。
 我ながら思い込みが激しいと反省する。
 そういえばトラッシュがそういう風に誘導していたと言っていたような……。
 今僕たちは館の庭園にいた。僕は偉明ウェイミンの腕に抱かれている。その腕にそっと触れた。

「旦那さま」
「リューイ、如何か?」
「その……気になることがあるのですが……アローに聞いてもよろしいでしょうか?」
「ああ、我も一緒に聞いていい事柄であるならば」
「はい、もちろんかまいません。でも、もしかしたら旦那さまを不快にさせてしまうかも……」

 だって聞きたいのは、国にいた時のことだからだ。

「そなたはそのようなことを考える必要はない」

 偉明はそうきっぱりと言った。そんな偉明をとても好ましく思う。でも僕が心配しているのは、夫たちを嫌な気持ちにさせることだけじゃない。そのことによって夫たちが僕に愛想をつかせてしまうのではないかということだった。
 我ながら自分のことばかりしか考えていなくて嫌になる。

「リューイ、如何かしたのか?」

 腕の中にいるせいか、僕がためらっていることに気付かれてしまった。

「その……ぼ、僕……」
「言いづらいことなれば、我の耳元でこっそり伝えてくれ」
「あっ……!」

 身体を縦抱っこのようにされて、戸惑った。でもその方が偉明の顔が近くなってどきどきしてしまう。僕は偉明の首に腕を回して、ぎゅっと抱きしめた。

「……嫌われたくないんです……旦那さまに」
「……何故私がそなたを嫌うと?」
「だって……僕が以前想っていた相手の話なんて、嫌じゃないですか?」

 アローに聞こえないように小声でこそこそと話す。偉明はククッと喉の奥で笑った。

「……なんとそなたはかわいいのか……今すぐ押し倒したいぐらいだが、それは我慢しよう。我らがそなたを嫌うことなど万に一つもあるはずがない。もしそなたに好ましからざる行動があれば叱ることはあるだろうが、絶対に手放すことはない故安心せよ」
「……わ、わかりました……」

 頬が熱くなる。夫たちのストレートな物言いには未だに慣れなくて困ってしまう。

「アローとやら、妻がそなたに聞きたいことがあるそうだ」
「かしこまりました」

 館の侍従が清明とイトの近くに移動する。何かあった時すぐに対処ができるようにだ。冷静な表情か、もしくは感情を押し殺したような表情しかしない侍従長の顔が蕩けている。侍従長は子供が好きみたいだ。
 僕が夫たちに何も言わなかったせいで僕は”天使”になってしまった。それで夫たちにはより愛してもらえるようになったけど、もうこの先子を成すことができないことを思うと胸が痛んだ。
 でもこれは僕が招いたことだからしかたない。
 アローが偉明と僕に近寄り、手が届かないぐらいの位置で立ち止まった。そして僕を見てから拱手し、目を伏せた。
 アローも今ではこちらの衣服を着ている。髪は長くないから僕のように結ってはいないし、巨人族の人たちの中で見ると小さいのだけど、それでも頼りなくは見えなかった。

「リューイ」

 偉明に促されて、僕はハッとした。そうだ、僕はアローに聞きたいことがあったのだった。

「聞きたいことがあるんだ」
「はい、なんなりと」
「その……ここにイトを連れてきてくれた時に、トラッシュが、その……アローがトラッシュを想っているように? 僕に見せてた、のかな? なんか、誘導してたって言ってたよね? それって、どういうことだったのかなって思って……」

 うまく聞けなくて、以前と同じような話し方になってしまった。

「……はい、そのことでしたか」

 アローは思い出したのか、とても嫌そうな顔をした。その表情を見て、なんで僕はアローがトラッシュを好きだなんて誤解してしまったのかと思った。

「……トラッシュ様はリューイ様の心を弄んでいたのです。リューイ様がいらっしゃる時は私にトラッシュ様と腕を組むように言ったり、絶対に自分を優先するようにや、自分を見るようにと言っていましたので。……そうしなければ両親の賃金を減らすなどと言われていましたから聞かないわけにはいきませんでした」
「あ……」

 そういえばアローの両親もトラッシュの屋敷に勤めていたのだった。

「あ、あの……今はご両親は……」
「トラッシュ様が私と結婚したいと言いだしたことで、大旦那様と奥様に私が脅されていたことが露見したのです。それでトラッシュ様にそのような権限はないと、両親の賃金を減らすようなことは絶対にないと確約していただけました。ですが、私ももっと早くそのことを大旦那様に伝えるべきだったと今は後悔しています……」

 ほっとした。
 アローの両親に影響がないならばよかった。

「そう、だったんだ……」
「……情けない話です。恋している人ひとり、私は守れませんでした」

 アローは自嘲した。

「……家族でトラッシュの家に仕えていたんだからしょうがないよ」

 僕にはそう言うことしかできなかった。
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