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33.”天使”でもかまわない?

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 夫たちは、偉明ウェイミンの話を黙って最後まで聞いてくれた。
 沈黙はほんの少しの間だったけど、僕にはものすごく長く感じられた。
 部屋の長椅子で横抱きにされたまま偉明にぎゅっとしがみつく。彼は僕が”天使”だと知っても甘く抱いてくれているけど、他の夫たちの反応がわからないから怖かった。偉明に優しく抱きしめ返してもらえてほっとした。

「リューイはかわいくてたまらぬな」

 胸がいつも以上に甘く疼いた。

「……それで”仕置き”ですか」

 明輝ミンフイの言葉に震えた。どんなことをされてしまうのだろうと、怖いと思うのに身体が期待しているみたいだ。

「ああ。睡眠時間の確保は必要だが、寝るまでおまんこをかわいがるつもりだ」
「偉明グァ、もしや奥まで開いたのですか?」

 浩明ハオミンがよくわからないことを聞く。

「これからだ。リューイが啼いて善がってくれれば嬉しいのだが」

 偉明に、髪に口づけられてまた震えた。

「偉明哥、これからはリューイのおまんこを好きなだけ味わえるという理解でよろしいですか?」

 清明チンミンの声は弾んでいた。

「”天使”の体質や、禁忌については明日改めて調べる。そなたたちもしっかり調べておけ。リューイを愛している者以外は抱くことはまかりならぬ」
「承知しました。大切にいたします」
「承知しました。たっぷりかわいがりましょう」
「わかりました。これ以上ないほど愛します」

 三人共よどみなくそう答えた。上から明輝、浩明、清明の順である。僕は呆気にとられた。

「……ど、どうして……」
「何が疑問なのか、わからないのだが?」

 偉明にぎゅっと抱きしめられてわななく。

「偉明哥、リューイと私たちでは育ってきた環境や常識が違います。認識の擦り合わせをした方がいいのではないでしょうか」

 明輝にそう言ってもらえて助かった。
 僕の国でも複数の夫と一人の妻や、夫一人に対して妻が複数という結婚形態は認められているが、”天使”という存在は忌避される傾向にある。
 夫一人で”天使”を養うのはたいへんだからだろう。結果として娼館に売られたり、好事家に買われたり、”森”の魔物に捧げられたりするのが多いと聞かされてきた。だから僕たちはまず童貞を捨てようとするのだということを話した。

「”天使”を養うのは確かにたいへんかもしれませんが……隣国でそこまで”天使”が忌避されているとは知りませんでした。もっと遠くの大陸では確か王が”天使”だと聞いたことがありますし」

 浩明は目を白黒させた。

「……そうですね。遠くの国の王は”天使”だという話は僕も聞いたことがあります」

 だからといって”天使”が厄介な存在であるということに変わりはない。なにせ子は成せないし、尻穴以外は弱いからちょっとした怪我でも死んでしまう可能性があるのだ。
 ただし、”天使”の体液や尻穴の具合は極上なので、高級娼夫を扱う娼館や、金を唸るほど持っている好事家は欲しがる傾向にある。そして”森”の奥に住む魔物もまた”天使”を欲しがると言われている。
 つまり”天使”の存在は限られた層以外には求められないし、子を成せないが故に結婚相手には向かない。
 だから僕は放逐されてしまうのではないかと恐れたのだけど……。

「他の家の考え方は私にもわからぬが、私たちが求めたのはそなたの国の経産夫だ。リューイはそれに合致しているだけでなくとてもかわいい。こればかりは我らの好みの問題だな」

 偉明が僕の首元をくすぐりながら言う。片腕で抱き寄せられているだけなのに、がっしりと固定されていて身じろぐのも難しい。
”天使”になってしまったということも好みの問題で片付けられてしまった。

「そうですね。私たち兄弟は同じ巨人族には食指が動かないのです。もっと小さくて、リューイの国の人たちぐらいの方に欲情するのです」

 明輝もさらりとそんなことを言う。

「リューイの国の方々はどんなに背が高くても私たちの国の者たちより背が低いです。そういう方々を抱きたいとずっと思っていましたが、身体が小さいということは私たちを受け入れるのもたいへんでしょう」

 浩明がうっとりしたように続けた。

「だから妻として求めるのは経産夫である必要があった。そこまではリューイもわかっているはずだ」

 清明に確認されて頷いた。

「我らより小さく、我らのイチモツを受け入れられる妻を求めてはいたが、そこに子どもまでは求めていない。もちろん子ができたらできたでいいとは思うが、できなくてもかまわぬのだ。わかってくれるか?」

 偉明にダメ押しのように耳元でそう囁かれて、また震えた。

「は、はい……」
「だから、そなたが”天使”になったのは私にとって喜ばしいことだ。もちろん、童貞であったことを言わなかったのは許しがたいが……そなたの話からすると、我らに嫌われたくなかったからなのだろう?」
「……はい、そうです……」

 目が潤んできた。ここで泣いてはいけないと思う。
 童貞だと話して、すぐに僕が童貞を捨てられればそれでかまわないが、もし誰かを用意されたとしても童貞を捨てられるとは限らない。それで夫たちに軽蔑されたり、放逐されたくはなかった。
 だって僕はもう、前の夫のことなんて忘れていて、偉明たちを愛しているから。

「もっといろいろ話し合えばよかったのですね。リューイがかわいすぎて抱くことしか考えられませんでした」

 明輝がため息をつく。

「リューイがけなげにも私に抱かれてくれるのが嬉しくて……明輝哥と同じです」
「貴方が私のイチモツで感じているのがかわいすぎて、約束を何度か守れはしなかったが……許してくれるだろうか」

 浩明と清明の言葉も甘くてもうどうしたらいいのかわからない。だが夫たちは聞き流すことはしなかった。

「……清明、約束を守れなかったとはどういうことだ?」
「……あ……」

 清明が偉明たちに睨まれる。どうしようと思った。
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