155 / 208
パラサイト
幻覚
しおりを挟む
雅苗は、静かに私に微笑みかけていた。
長く感じたが、多分、一瞬の事だと思う。
私は、その笑顔の悲しさに胸がつかれる。
「尊行のメモ書きが机の2番目の引き出しにあります。それを読んでください。」
雅苗の言う事を私はきかなかった。
メモの代わりに私は、雅苗の頬へ手を伸ばした。
雅苗は悲しそうに私を見つめてはいたが、逃げようとはしなかった。
私の右の指は、彼女のほほを触れていた、が、感触はなかった。
「いつ…気づいたのですか?」
雅苗は、まるで私の指の感触に反応するように、せつなげに眉を寄せる。
「昔の君の姿を思い出した時に。私は、人の顔を覚えるのは苦手でね、高校の友人の顔すら忘れてしまうんだよ。
なのに、一度、イベントで知り合った少女を覚えてるなんて、おかしいんだよ。」
私は切なくなる。
雅苗は、泣きそうに笑って、私の左腕に自分の右腕を絡ませる。
「恋をした…とか、思いませんでしたの?」
「好きですよ。ウスバキトンボは、昔から大好きな虫の一つです。」
私は、あのイベントで私の頭に止まるウスバキトンボを思い出していた。
夏の青々とした稲の上を泳ぐように飛ぶトンボ…子供達の声。
私は、何かの幻覚を見ているのだと自覚していた。
雅徳(まさのり)さんの虫を媒体にしたガイア論を思い出していた。
これも…虫が運ぶ幻覚なのだろうか?
などと、感慨にふけってはいられなかった。
階段を荒々しく降りてくる足音がした。
それから、乱暴に戸を叩く音…そして、溶生(ときお)さんのよく響く怒声が私を呼んでいた。
「池上くん!はやく、雅苗から離れるんだっ。」
(○_○)!!
ビビった…そして、後ろに下がろうとしてひっくり返る。
「それは、雅苗ではない!ソイツは…」
「わ、若葉さん!す、すいません、私はっ…何も、
い、すぐでます。」
私はパニックになる。
疑われる
ボコられる
嫌われる
捕まるっ(>_<。)
どうしたら…
私はあたふたしながら、雅苗に鍵をくれるようにジェスチャーする。
そんな私に雅苗は、近づいて、私は不覚にも悲鳴をあげた。
雅苗は、尻餅をつく私に馬乗りになり、ゆっくりと左の耳に柔らかい唇を寄せてこう言った。
「私を…幻覚だって…意地悪を言ったのは、あなたよ。」
次の瞬間、私は気絶をした。
意識を取り戻した時には、暗い部屋に一人きりだった。
長く感じたが、多分、一瞬の事だと思う。
私は、その笑顔の悲しさに胸がつかれる。
「尊行のメモ書きが机の2番目の引き出しにあります。それを読んでください。」
雅苗の言う事を私はきかなかった。
メモの代わりに私は、雅苗の頬へ手を伸ばした。
雅苗は悲しそうに私を見つめてはいたが、逃げようとはしなかった。
私の右の指は、彼女のほほを触れていた、が、感触はなかった。
「いつ…気づいたのですか?」
雅苗は、まるで私の指の感触に反応するように、せつなげに眉を寄せる。
「昔の君の姿を思い出した時に。私は、人の顔を覚えるのは苦手でね、高校の友人の顔すら忘れてしまうんだよ。
なのに、一度、イベントで知り合った少女を覚えてるなんて、おかしいんだよ。」
私は切なくなる。
雅苗は、泣きそうに笑って、私の左腕に自分の右腕を絡ませる。
「恋をした…とか、思いませんでしたの?」
「好きですよ。ウスバキトンボは、昔から大好きな虫の一つです。」
私は、あのイベントで私の頭に止まるウスバキトンボを思い出していた。
夏の青々とした稲の上を泳ぐように飛ぶトンボ…子供達の声。
私は、何かの幻覚を見ているのだと自覚していた。
雅徳(まさのり)さんの虫を媒体にしたガイア論を思い出していた。
これも…虫が運ぶ幻覚なのだろうか?
などと、感慨にふけってはいられなかった。
階段を荒々しく降りてくる足音がした。
それから、乱暴に戸を叩く音…そして、溶生(ときお)さんのよく響く怒声が私を呼んでいた。
「池上くん!はやく、雅苗から離れるんだっ。」
(○_○)!!
ビビった…そして、後ろに下がろうとしてひっくり返る。
「それは、雅苗ではない!ソイツは…」
「わ、若葉さん!す、すいません、私はっ…何も、
い、すぐでます。」
私はパニックになる。
疑われる
ボコられる
嫌われる
捕まるっ(>_<。)
どうしたら…
私はあたふたしながら、雅苗に鍵をくれるようにジェスチャーする。
そんな私に雅苗は、近づいて、私は不覚にも悲鳴をあげた。
雅苗は、尻餅をつく私に馬乗りになり、ゆっくりと左の耳に柔らかい唇を寄せてこう言った。
「私を…幻覚だって…意地悪を言ったのは、あなたよ。」
次の瞬間、私は気絶をした。
意識を取り戻した時には、暗い部屋に一人きりだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる