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3章【大乗的にはなれない、威圧的なアルファ】
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しおりを挟む首を、隠すのかどうか。
矢車はつまんだメンマを、箸に強弱をつけてムニムニと潰し、弄ぶ。
「ん~……考えたこともないですねぇ。たぶん、このままだと思いますよぉ? ……って言うか、そんなのセンパイに――」
――あくまでも、他人事。
――矢車の、そんな態度が。
「――隠せ」
――松葉瀬は、気に食わなかった。
ラーメンのつゆに、メンマがポチャリと落ちる。
予想外の言葉に、矢車は目を丸くした。
松葉瀬は一瞬だけ、矢車に視線を向ける。
が、すぐに逸らした。
「……センパイ、その……今のって?」
「耳にメンマでも詰まってんのかテメェは」
「いや、何て言ったのかは聞こえましたけど……それって、何だか独占欲みたいじゃないですか……」
「あァ?」
何故か必要以上に動揺している矢車の反応に、松葉瀬は苛立ちを募らせる。
「お前、ラーメン食いながら寝てたのかよ。笑えねェ冗談言うな、ボケが」
不快感を露わにしながら、松葉瀬は矢車を睨んだ。
「テメェは俺のサンドバッグだろォが。なのに、テメェがド淫乱メスビッチのままでいてみろ。趣味のわりィアルファがテメェを気に入って、番にするかもしれねェだろ。……そうしたら、俺は誰で憂さ晴らししたらいいんだよ」
コップの中に入っていた水を、松葉瀬は一気に呷る。
矢車は、なにを言われたのか理解が追い付いていないのか……黙ったままだ。
松葉瀬も黙ると、二人の耳には他の客が発する声しか聞こえない。
そうしてお互いに黙っていること、数秒。
先に口を開いたのは、矢車だった。
「……じゃあ、今のボクはセンパイのモノってことですか。……ふふっ」
まさかの、笑顔。
さすがにそれは予想外だったのか、松葉瀬は眉間の皺を深くする。
「なに笑ってんだよ、気持ちわりィ」
「く、ふふっ。……すみませぇん」
笑顔の矢車は、沈んでしまったメンマを、もう一度つまむ。
「オメガだからとか、番だからとかじゃなくて……ボクがフリーで、ボクがボクだからこそ、センパイのモノでいられるんだなぁって思ったら……人権侵害だし、最悪でサイテーな気分です」
「テメェは、本当に――」
「だけど、悪くないなぁって……」
メンマが、矢車の口に放り込まれる。
その口を見ていると、松葉瀬は言い様の無い苛立ちを覚えた。
「……サッサと食って帰るぞ、ヘンタイ」
そう言い、松葉瀬は立ち上がる。
テーブルに置かれていた伝票を、握って。
「あはっ! センパイ、ごちそうさまでぇす!」
「その代わり、後でボコる」
「えぇ~? 残業の邪魔したからですかぁ?」
会計を済ませようとしている松葉瀬の背中を見て、矢車は慌てて帰宅の準備をする。
矢車が隣に並んだときにはもう、松葉瀬は二人分の会計を終えていた。
わざとらしく悲しそうな表情を浮かべた矢車を見ず、松葉瀬は歩き出す。
「昼休みから溜まってんだよ。責任もって痛めつけられろや」
結局、矢車の思う壺な気もした松葉瀬だったが……どうでもよくなってしまった。
矢車のペースを無視して歩き出す松葉瀬に対して、矢車は一言だけ……「サイテー」と囁く。
恍惚とした笑みを、浮かべながら。
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