スノードロップに触れられない

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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3章【大乗的にはなれない、威圧的なアルファ】

3

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 女性職員の言っていた通り、矢車はオメガだ。

 しかし、その前に……矢車は【小生意気な後輩】という前提がある。

 松葉瀬にとっては、惹かれる理由なんて欠片もないのだ。

 それなのに、あの女性職員たちは前提に【オメガ】を置いた。

 根本的な考え方から、女性職員とは違う。

 それがどうしたって、松葉瀬には許せなかったのだ。


(あのクソヤローもそうだ。アイツ、俺が腹を立てるって確信しながらちょっかいかけてきやがったな……ッ)


 ゴミを叩きつけたくなったが、それは我慢。

 この怒りを、苛立ちをどこに向けるか。松葉瀬は一瞬だけ思案する。

 普段なら、迷うことなく矢車だ。

 しかし……今日はその気になれなかった。


(仕事、するか)


 腹癒せに矢車を犯すことに、松葉瀬は罪悪感を抱いたりしない。

 けれど、今日に限ってはそうしたくない理由があるのだ。


(誰が、あのガキの思う通りに動いてやるかよ……ッ)


 ゴミを捨てた後、松葉瀬は自分のデスクに戻る。

 そこにはもう、女性職員も……矢車もいない。


(なにが悲しくて休憩時間にも仕事をしなくちゃならねェんだか)


 そうは思っても、なにかに没頭してしないと仮面が剥がれ落ちてしまいそうだった。

 椅子に座った後、松葉瀬はチラリと、矢車のデスクに視線を向ける。

 すると、楽しそうに松葉瀬を眺めている矢車と、目が合った。

 矢車は松葉瀬と目が合うと、自分のスマホを掲げ、指でトントンと叩く。

 その合図を眺めた後、松葉瀬は自分のスマホに視線を落とした。


『休憩時間、まだ残ってますよ? ちなみに、ボクの準備はオッケーです』


 スマホには、一通のメッセージ。

 差出人は……当然、矢車だ。


(ビッチが)


 返事をせず、松葉瀬はスマホをポケットにしまう。

 そのまま矢車のデスクには目を向けず、松葉瀬は残っていた仕事に着手した。

 苛立ちは、一向に収まらない。

 だが、少しだけ。

 矢車に向かって中指を立てなかった自分を、松葉瀬は褒めたくなった。






 それから、数時間後。

 終業時間を越えた事務所で、松葉瀬は残業をしていた。

 すると、同僚や上司との雑談を終えたらしい矢車が、松葉瀬に近寄る。


「センパイ、今日も残業ですかぁ? ヤッパリ、期待のアルファさんって凄いですね……うっとりしちゃうなぁ」
「いや、俺なんてまだまだ若輩者だよ」


 わざとらしいウザ絡みをしてくる矢車には目もくれず、松葉瀬は仕事を続行。

 まだ、事務所には自分たち以外の職員がいる。

 松葉瀬は、素の自分を出すわけにはいかないのだ。

 その事情を全て知っている矢車は、心底愉快そうに吹き出した。


「ぷっ、くっ、ふふ……っ!」


 キーボードを叩く指に、力がこもる。


(絶対殺す……ッ)


 今は怒りを耐えて、仕事に没頭しよう。

 そう決心した松葉瀬の背後に、矢車は回る。

 そしてそのまま……矢車は、松葉瀬の体に腕を回した。




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