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2章【未熟な社畜をギャップ証明しました】
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しおりを挟む「──おはよう、月君」
「──センパイの肝臓、マジでどうなってるんスか?」
出勤して、すぐ。俺より少し後に事務所へとやって来た月君が、半歩後退した。
「スペックか? バージョンか? とにもかくにも、オレたちとあまりに違いすぎる……!」
月君は頭を抱えて、今にもその場に崩れ落ちてしまいそうだ。
どうやら、俺が飲み会明けに似つかわしくない顔色や態度をしているから困惑しているらしい。なんだか、申し訳ない。
「元から二日酔いはしないタイプなんだよね」
「それにしたっておかしいですよ、センパイの内臓」
「うーん、そうかな?」
確かに、カワイがいなかった時はもう少し気怠さみたいなものがあったかもしれない、かも? 自分の体調にそこまで関心がないから、あまり思い出せないけど。
でも、なにはともあれ今の俺がここまでスッキリとしているのはカワイとゼロ太郎のおかげだ。早速、月君に『俺の実力ではない』と説明しよう。
「あぁでも、昨日は帰ってからカワイとゼロ太郎に介抱してもらったからかな? いつもより、スッキリしてるかも」
「あー、いいッスねー。介抱してもらえると、ヤッパリ変わりますもんね」
「そうだね。本当に、感謝で頭が上がらないよ」
「なんだかんだでセンパイ、悪魔──じゃなくて。カワイ君といい感じに暮らせてるスね。良かった良かった」
納得してくれたらしく、月君は後退姿勢からやっと戻ってくれた。
俺の隣のデスクに鞄を置き、それから月君はペコリと頭を下げる。
「改めまして、センパイ。おはようございます」
「あははっ、律儀だね。おはよう、月君」
さて、今日は急ぎの仕事もないし、のんびりと作業をしようかな。きっと月君も、似たようなことを考えていただろう。
だからこそ俺たちは、この数秒後……。
「追着係長、追着係長! 大変です、大変です~っ!」
「えっ、なになにっ? どうしたのっ?」
駆け寄ってきた女性職員の言葉により、震撼するのであった。
「──課長と部長、二日酔いでお休みみたいなんですっ! それで二人が『明日までに終わらせないといけない事業関係の書類作成、追着係長に頼んでおいてくれ』って~っ!」
「「──嘘でしょっ?」」
どうしてっ? ヤッパリ俺の内臓、どこか異常なのっ? 隣に座る月君も、俺と揃って同じ感想を口にした。
「確かに課長と部長、昨日はいつもより飲んでましたよね。休みたくなるほどの二日酔い、分かる気がするッス」
「そうですね。明日までに終わらせないといけない書類に構っていられないほど、重たい二日酔いになりそうな気はします……」
チラリ。月君と女性職員が、俺を見る。
「「──尊敬します、本当に……」」
「──だったらそのバケモノを見るような目やめてっ?」
ちなみに、後ほど。ゼロ太郎に「こうなる確率、昨日の段階で何パーセントだった?」と確認したところ……。
[──九十七パーセントの演算でしたが、それがなにか?]
「──お願い、報連相して……」
あぁっ、もうっ! これだから飲み会は嫌いなんだよぉ~っ!
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