未熟な悪魔を保護しました

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

文字の大きさ
上 下
37 / 212
2章【未熟な社畜をギャップ証明しました】

25

しおりを挟む



「──おはよう、月君」
「──センパイの肝臓、マジでどうなってるんスか?」


 出勤して、すぐ。俺より少し後に事務所へとやって来た月君が、半歩後退した。


「スペックか? バージョンか? とにもかくにも、オレたちとあまりに違いすぎる……!」


 月君は頭を抱えて、今にもその場に崩れ落ちてしまいそうだ。

 どうやら、俺が飲み会明けに似つかわしくない顔色や態度をしているから困惑しているらしい。なんだか、申し訳ない。


「元から二日酔いはしないタイプなんだよね」
「それにしたっておかしいですよ、センパイの内臓」
「うーん、そうかな?」


 確かに、カワイがいなかった時はもう少し気怠さみたいなものがあったかもしれない、かも? 自分の体調にそこまで関心がないから、あまり思い出せないけど。

 でも、なにはともあれ今の俺がここまでスッキリとしているのはカワイとゼロ太郎のおかげだ。早速、月君に『俺の実力ではない』と説明しよう。


「あぁでも、昨日は帰ってからカワイとゼロ太郎に介抱してもらったからかな? いつもより、スッキリしてるかも」
「あー、いいッスねー。介抱してもらえると、ヤッパリ変わりますもんね」

「そうだね。本当に、感謝で頭が上がらないよ」
「なんだかんだでセンパイ、悪魔──じゃなくて。カワイ君といい感じに暮らせてるスね。良かった良かった」


 納得してくれたらしく、月君は後退姿勢からやっと戻ってくれた。
 俺の隣のデスクに鞄を置き、それから月君はペコリと頭を下げる。


「改めまして、センパイ。おはようございます」
「あははっ、律儀だね。おはよう、月君」


 さて、今日は急ぎの仕事もないし、のんびりと作業をしようかな。きっと月君も、似たようなことを考えていただろう。

 だからこそ俺たちは、この数秒後……。


「追着係長、追着係長! 大変です、大変です~っ!」
「えっ、なになにっ? どうしたのっ?」


 駆け寄ってきた女性職員の言葉により、震撼するのであった。


「──課長と部長、二日酔いでお休みみたいなんですっ! それで二人が『明日までに終わらせないといけない事業関係の書類作成、追着係長に頼んでおいてくれ』って~っ!」
「「──嘘でしょっ?」」


 どうしてっ? ヤッパリ俺の内臓、どこか異常なのっ? 隣に座る月君も、俺と揃って同じ感想を口にした。


「確かに課長と部長、昨日はいつもより飲んでましたよね。休みたくなるほどの二日酔い、分かる気がするッス」
「そうですね。明日までに終わらせないといけない書類に構っていられないほど、重たい二日酔いになりそうな気はします……」


 チラリ。月君と女性職員が、俺を見る。


「「──尊敬します、本当に……」」
「──だったらそのバケモノを見るような目やめてっ?」


 ちなみに、後ほど。ゼロ太郎に「こうなる確率、昨日の段階で何パーセントだった?」と確認したところ……。


[──九十七パーセントの演算でしたが、それがなにか?]
「──お願い、報連相して……」


 あぁっ、もうっ! これだから飲み会は嫌いなんだよぉ~っ!




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました

海野幻創
BL
【イケメン庶民✕引っ込み思案の美貌御曹司】 貞操観念最低のノンケが、気弱でオタクのスパダリに落とされる社会人BLです。 じれじれ風味でコミカル。 9万字前後で完結予定。 ↓この作品は下記作品の改稿版です↓ 【その溺愛は伝わりづらい!気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました】 https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/33887994 主な改稿点は、コミカル度をあげたことと生田の視点に固定したこと、そしてキャラの受攻です。 その他に新キャラを二人出したこと、エピソードや展開をいじりました。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

拾った駄犬が最高にスパダリ狼だった件

竜也りく
BL
旧題:拾った駄犬が最高にスパダリだった件 あまりにも心地いい春の日。 ちょっと足をのばして湖まで採取に出かけた薬師のラスクは、そこで深手を負った真っ黒ワンコを見つけてしまう。 治療しようと近づいたらめちゃくちゃ威嚇されたのに、ピンチの時にはしっかり助けてくれた真っ黒ワンコは、なぜか家までついてきて…。 受けの前ではついついワンコになってしまう狼獣人と、お人好しな薬師のお話です。 ★不定期:1000字程度の更新。 ★他サイトにも掲載しています。

皇帝にプロポーズされても断り続ける最強オメガ

手塚エマ
BL
テオクウィントス帝国では、 アルファ・べータ・オメガ全階層の女性のみが感染する奇病が蔓延。 特効薬も見つからないまま、 国中の女性が死滅する異常事態に陥った。 未婚の皇帝アルベルトも、皇太子となる世継ぎがいない。 にも関わらず、 子供が産めないオメガの少年に恋をした。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹
BL
王都から遠く離れた辺境の地に、狼様と呼ばれる城主がいた。狼のように鋭い目つきの怖い顔で、他人が近寄ろう者なら威嚇する怖い人なのだそうだ。実際、街に買い物に来る城に仕える騎士や使用人達が「とても厳しく怖い方だ」とよく話している。そんな城主といろんな場所で出会い、ついには、なぜか城へ連れていかれる主人公のリオ。リオは一人で旅をしているのだが、それには複雑な理由があるようで…。 素敵な表紙は前作に引き続き、えか様に描いて頂いております。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

処理中です...