36 / 95
3章 即興間奏
第34音 天資英邁
しおりを挟む
【天資英邁】てんしえいまい
生まれつき才知が非常に優れている事。
=================
ルネア達はその占い師の家の前まで来た。
周りの風景に馴染んだ色をした家で、小さく質素。
「どうぞ?」
まめきちはそう言って扉を開けた。
中は真っ暗だった。
「児童園の園長室もこのくらい暗いですよね?」
ルネアが聞くと、まめきちは言う。
「私は単に明るいのが嫌いなだけだけど、こっちはただの演出さ。」
そう言って部屋の明かりのスイッチを入れた。
すると青いライトが点き、星のついたモビールから青い光が反射する。
光は天井や床に拡散し、ゆらゆらとうごめいた。
そのモビールは天井に多く飾っており、イルミネーションの様に輝いていた。
壁は全て青い布で覆われ、その壁には幾つか鳩時計が設置されている。
一同がその光景に感嘆の声を上げていると、奥の布がめくれた。
そこから出てきたのは、肌が見えない衣装を着た人間。
顔までも隠しており、服装はまるで占い師。
その時、鳩時計が鳴り出した。
扉が開き鳩が出ると思われたが、そこからは夜光星が出てくる。
夜光星の石は微かに光を放ちながらも、床にゴトっと落ちた。
みんなはその夜光星を見ていると、占い師は言う。
「わざわざ遠くからありがとう、【占い師】です。」
占い師は深々とお辞儀をするので、一同は挨拶をした。
挨拶を終えると占い師は自分が出てきた布をめくり、布の裏にあった扉をみんなに見せる。
「ここは占い室なので、こちらへ」
そう言われ、みんなは隣の部屋に移る事に。
こちらは普通の部屋で、カーテンが開けられ、昼の光がしっかり入っている。
「暑くねぇのか?そんなカッコして。」
テノが占い師に聞くと、占い師はクスッと笑った。
「暑いですよ。
でもどこかのヒートテックを着用したバリトン合唱団員くんより涼しいです。」
占い師はそう言ってアールの事を見ると、アールは反応して相手の顔を見る。
テノは笑っていたが、次に驚く。
「え!?なんで知ってんだテメェッ!」
アールは答えなど気にしておらず聞いた。
「今日は何の用で私達を?」
それにまめきちは笑うと言う。
「たまにはピクニックもいいだろう?みんなと仲良く出来たかな?」
一同はその理由にブーイングを放つと、ルネアは部屋の隅の机を見つめた。
その机の上には写真立てがあり、三人で撮られたものだった。
一人は占い師、もう一人は緑の長い髪を持つ女性、そして最後は橙色の髪を持つ男性だ。
「これは?仲の良いお友達ですか?」
占い師は微笑むと言う。
「ええ」
シナも一緒に見に行くと、笑顔になる。
「この女性、すっごく綺麗。」
それを聞いたまめきちは言った。
「みんな驚かないでくれ。
写真の女性はね、このサグズィを作った者なんだよ。」
『えぇーっ!?』
一同は驚いてしまうと、占い師は苦笑。
ルネアは思わず言った。
「サグズィを作った女性って…女神『ツィオーネ』の事ですよね!?
そんな女神と写真撮っちゃってる占い師さん何者!?」
占い師は答えようともしないので、ノノが呟く。
「サグズィで祀られる女神様の事じゃな。今はどこにいるんじゃ?」
それを聞かれた占い師は黙ってしまった。
まめきちはそれに答える。
「今はサグズィを捨てて消息を絶っている。
争いが嫌いな人間だったもので、争いの多いサグズィに居られなくなったんだと。」
「平和主義ですかぁ~」
ルネアが言うと、ラムも言った。
「神様でさえ居られなくなるほどの争いなんだ…!」
それに対し、まめきちは言う。
「神様って言うと語弊があるかもね。
サグズィは魔法の力で大地を浮かせているだけだからね、強大な魔法力を持った女性というわけだ。」
一同は納得すると、占い師は話を逸らせたいのか言った。
「ま、昔話はそこまでにして、みんなを占ってあげる!私の占いは必ず当たるよ。」
たまにはいいものだと思ったのか、みんなは占いを体験してみる事になった。
アールはみんなが占いをしている間、外に出ていた。
理由は単純で、おにぎりを食べたいから。
近くの切り株に座って、みんなが食べきれなかった残りのおにぎりをパクパク。
アールは言わずもがな食べる事が好きで、ダニエルの料理が一番のお気に入り。
ダニエルの料理は、彼の鋭い五感によって絶品に仕上げられる。
だからこそダニエルの料理が好きで、いつも残さず食べてしまうのがアールなのだ。
「おいし…」
アールは呟くと、黙ってもぐもぐ。
内心、この食べ物を独り占めできて嬉しいのだろう。
アールはおにぎりを食べながら考えた。
(それにしてもさっきの占い師…私がヒートテックを着てる事を言い当てた……まさかな。)
「アールくん?」
突然、背後から占い師の声が聞こえた。
アールは占い師の顔を見ると、占い師は笑う。
「美味しそうなおにぎりだね。私も一つ頂いていいかしら?」
アールは咄嗟にバッグを突き出すと、占い師はおにぎりを貰った。
「君は本当に不器用だね。」
その言葉にアールは眉を潜める。
「先程私について言い当てましたが、まめきちさんから私達の事を聞かされているのですか?
それに…みんなの占いは…」
占い師はふふっと笑うと言った。
「君が食べてる間に終わったよ。今は室内でティータイム。
それに言い当てたのは、別にまめきちから聞いた話じゃない。」
アールはその言葉に首を傾げると、占い師は言う。
「私はただの占い師ではない。
未来を見る能力を持った占い師。そう、誰かに似てない?」
アールは驚きを隠せず呟いた。
「…ルネア…?」
「そう!彼は未熟だけど、私はちゃんと自分の意志で見る事ができるよ。
だから本当は頑張っている君達にヒントを与えたい所だけど…大親友にダメって言われたんだ。」
「大親友…?まめきちさんですか?」
「彼は私の言う大親友の、親友。」
占い師はそう言うと、顔にかかった薄い布の下におにぎりをもっていって食べた。
「美味しい!」
「…そんな事を私に言ってどうする気ですか?」
「え?美味しい事?」
「違います…。」
アールは呆れると、占い師は笑う。
「タメでいいよ。
…私はまめきちに言われたんだ、もし明るい未来があると言うならば彼らにヒントを与えてくれってさ。」
アールがその言葉に反応すると、占い師は続けた。
「君は自分の正体を、真実を知っているかい?
あと、まめきちの正体とか。
なんで君を避ける真似ばかりするんだろうね、一体何が目的なんだろうね…とか。」
「それがヒントですか?」
「まあね。」
それをなんと、ルネアに聞かれていた。
ルネアは外の空気を吸いたくて外に出たのだが、偶然にも聞いていた。
占い師はアールに聞く。
「君が今一番知りたい事は?」
アールは黙り込むと、暫く考えてから言った。
「まめきちさんの目的。あの人は何を考えているかわからない。
あの人だけは、何を調べても答えにたどり着かない。
…もしあの人が私の邪魔をするようならば…」
占い師は笑う。
「大丈夫!君の作戦の邪魔はしないよ。
君がね、失敗した時にだけ作戦を決行するんだ彼は。」
「失敗?」
アールが聞くと、占い師は頷いた。
「トドメを刺したい奴がいるんだって、君の中に。」
「私の…?」
アールは自分の手を見つめると、首を傾げてしまう。
「モンスターの星の歴史でも調べたらどうかな?
そこに答えがあると思うよ!」
占い師はそう言うと、アールは占い師を見る。
(モンスター…魔物の歴史か…)
アールはペルドの事を想像していると、占い師は家に帰ってしまう。
アールは占い師を睨んだ。
(伊達にラムの友をやってきたわけではない…だからわかる。
あの占い師…女口調を頑張って使っているが男だ…。
一体なぜ性別を偽っているのだろう…。)
ルネアは占い師がやってくるので驚いていると、占い師はルネアとすれ違い様に言った。
「ドラゴンの種族は【契約】によって主を手に入れる。
…もっと調べてみて。」
ルネアはその言葉にボーっとすると考えた。
(契約…?アールさんにはまだ秘密があるって事かな…)
ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*
帰り道での話、ラムはみんなに言う。
「あの人、ルネアと同じ能力を持ってた。力もルネアより遥かに高い。」
「どういう事!?」
シナが聞くが、ラムはわからないのか首を横に振った。
リートは呟く。
「占い師さん…ルネアの先祖様なのかな?
でも、ルネアはプロノス家の王族でしょ?」
ルネアは心当たりがあるのか言葉を詰まらせた。
言うか迷ったが、ルネアはやがて言う。
「あの、僕は養子なんですよ…。」
『養子!?』
みんなのハモリにルネアは圧倒されつつ頷く。
「それにあの占い師さんについて…僕ちょっと心当たりがあります。」
一同は黙って聞くと、ルネアは続けた。
「四百年前、親の先祖は未来を言い当てる占い屋に会ったのだと。
その時に、四百年後に現れる捨て子を拾うように言われたらしいんです。
そのお陰で、僕は拾われて王子をやっているわけらしいんですが…
小さい頃に聞かされた話です。僕の興味を惹くための嘘かなって最近は思っていたけど、もし違ったら…。」
その話に、一同はただならぬ理由があると感じた。
その日の夕方。
占い師は外で空を見上げながら呟いた。
「ツィオーネ…」
すると背後から、一人の男性の声が聞こえてきた。
「何だって?」
「うわっ!」
その声に占い師は驚くと、真後ろの男性に言った。
「やめてくれよ!」
そこには、橙色のショートヘアの男性がいた。
中世のパーティー服を身に纏っていた。
「スロクルはツィオーネ好きだもんね。」
ほんわかした笑顔で男性は言った。
それに対し、占い師は焦りつつも言った。
「ああ!本名言わないで!ツィオーネの事も!」
その男性はクスクス笑いながらこう言った。
「私の事も話しちゃうんだからいいじゃないか」
「仕方ない。このままだと事態は最悪な方向に。そんな事になれば、君もまた嫌な思いするよ。
…別に覚えてるんでしょ。」
その言葉に男性は黙り込んだ。
それから少し寂しそうに呟く。
「そうだね。同じ過ちは見たくないな」
そこに、まめきちが現れた。
「ならば早いうちにヤツを仕留めなければ」
しかし占い師はそれに敵対するように言った。
「待って!それはアールくんが可哀想。
僕はもう少し考えるべきだと思うよ!」
男性は苦笑いで二人を止めた。
「いやいや、ツィオーネとの約束を守ろう。
手伝いは必要最低限。
見守っていこうよ、ね?」
その言葉に、占い師は少し考えた。
それから言う。
「そう…だね」
しかしまめきちは鼻で笑った。
「私は君等と同等ではいないから、自由にしてもいいんだよね?」
それに対し、占い師は眉を潜めた。
男性は占い師の肩に手を乗せ、静かに「しーっ」と言うのだった。
占い師は溜息をつくと言った。
「帰る。」
そう言って男性の手を振りほどくと、さっさと立ち去る占い師。
男性は思わず苦笑。
「そんなに私が嫌いかぁ…」
既に夕方で、空が暗くなり始めていく中、
占い師スロクルは家に帰っていったのであった。
生まれつき才知が非常に優れている事。
=================
ルネア達はその占い師の家の前まで来た。
周りの風景に馴染んだ色をした家で、小さく質素。
「どうぞ?」
まめきちはそう言って扉を開けた。
中は真っ暗だった。
「児童園の園長室もこのくらい暗いですよね?」
ルネアが聞くと、まめきちは言う。
「私は単に明るいのが嫌いなだけだけど、こっちはただの演出さ。」
そう言って部屋の明かりのスイッチを入れた。
すると青いライトが点き、星のついたモビールから青い光が反射する。
光は天井や床に拡散し、ゆらゆらとうごめいた。
そのモビールは天井に多く飾っており、イルミネーションの様に輝いていた。
壁は全て青い布で覆われ、その壁には幾つか鳩時計が設置されている。
一同がその光景に感嘆の声を上げていると、奥の布がめくれた。
そこから出てきたのは、肌が見えない衣装を着た人間。
顔までも隠しており、服装はまるで占い師。
その時、鳩時計が鳴り出した。
扉が開き鳩が出ると思われたが、そこからは夜光星が出てくる。
夜光星の石は微かに光を放ちながらも、床にゴトっと落ちた。
みんなはその夜光星を見ていると、占い師は言う。
「わざわざ遠くからありがとう、【占い師】です。」
占い師は深々とお辞儀をするので、一同は挨拶をした。
挨拶を終えると占い師は自分が出てきた布をめくり、布の裏にあった扉をみんなに見せる。
「ここは占い室なので、こちらへ」
そう言われ、みんなは隣の部屋に移る事に。
こちらは普通の部屋で、カーテンが開けられ、昼の光がしっかり入っている。
「暑くねぇのか?そんなカッコして。」
テノが占い師に聞くと、占い師はクスッと笑った。
「暑いですよ。
でもどこかのヒートテックを着用したバリトン合唱団員くんより涼しいです。」
占い師はそう言ってアールの事を見ると、アールは反応して相手の顔を見る。
テノは笑っていたが、次に驚く。
「え!?なんで知ってんだテメェッ!」
アールは答えなど気にしておらず聞いた。
「今日は何の用で私達を?」
それにまめきちは笑うと言う。
「たまにはピクニックもいいだろう?みんなと仲良く出来たかな?」
一同はその理由にブーイングを放つと、ルネアは部屋の隅の机を見つめた。
その机の上には写真立てがあり、三人で撮られたものだった。
一人は占い師、もう一人は緑の長い髪を持つ女性、そして最後は橙色の髪を持つ男性だ。
「これは?仲の良いお友達ですか?」
占い師は微笑むと言う。
「ええ」
シナも一緒に見に行くと、笑顔になる。
「この女性、すっごく綺麗。」
それを聞いたまめきちは言った。
「みんな驚かないでくれ。
写真の女性はね、このサグズィを作った者なんだよ。」
『えぇーっ!?』
一同は驚いてしまうと、占い師は苦笑。
ルネアは思わず言った。
「サグズィを作った女性って…女神『ツィオーネ』の事ですよね!?
そんな女神と写真撮っちゃってる占い師さん何者!?」
占い師は答えようともしないので、ノノが呟く。
「サグズィで祀られる女神様の事じゃな。今はどこにいるんじゃ?」
それを聞かれた占い師は黙ってしまった。
まめきちはそれに答える。
「今はサグズィを捨てて消息を絶っている。
争いが嫌いな人間だったもので、争いの多いサグズィに居られなくなったんだと。」
「平和主義ですかぁ~」
ルネアが言うと、ラムも言った。
「神様でさえ居られなくなるほどの争いなんだ…!」
それに対し、まめきちは言う。
「神様って言うと語弊があるかもね。
サグズィは魔法の力で大地を浮かせているだけだからね、強大な魔法力を持った女性というわけだ。」
一同は納得すると、占い師は話を逸らせたいのか言った。
「ま、昔話はそこまでにして、みんなを占ってあげる!私の占いは必ず当たるよ。」
たまにはいいものだと思ったのか、みんなは占いを体験してみる事になった。
アールはみんなが占いをしている間、外に出ていた。
理由は単純で、おにぎりを食べたいから。
近くの切り株に座って、みんなが食べきれなかった残りのおにぎりをパクパク。
アールは言わずもがな食べる事が好きで、ダニエルの料理が一番のお気に入り。
ダニエルの料理は、彼の鋭い五感によって絶品に仕上げられる。
だからこそダニエルの料理が好きで、いつも残さず食べてしまうのがアールなのだ。
「おいし…」
アールは呟くと、黙ってもぐもぐ。
内心、この食べ物を独り占めできて嬉しいのだろう。
アールはおにぎりを食べながら考えた。
(それにしてもさっきの占い師…私がヒートテックを着てる事を言い当てた……まさかな。)
「アールくん?」
突然、背後から占い師の声が聞こえた。
アールは占い師の顔を見ると、占い師は笑う。
「美味しそうなおにぎりだね。私も一つ頂いていいかしら?」
アールは咄嗟にバッグを突き出すと、占い師はおにぎりを貰った。
「君は本当に不器用だね。」
その言葉にアールは眉を潜める。
「先程私について言い当てましたが、まめきちさんから私達の事を聞かされているのですか?
それに…みんなの占いは…」
占い師はふふっと笑うと言った。
「君が食べてる間に終わったよ。今は室内でティータイム。
それに言い当てたのは、別にまめきちから聞いた話じゃない。」
アールはその言葉に首を傾げると、占い師は言う。
「私はただの占い師ではない。
未来を見る能力を持った占い師。そう、誰かに似てない?」
アールは驚きを隠せず呟いた。
「…ルネア…?」
「そう!彼は未熟だけど、私はちゃんと自分の意志で見る事ができるよ。
だから本当は頑張っている君達にヒントを与えたい所だけど…大親友にダメって言われたんだ。」
「大親友…?まめきちさんですか?」
「彼は私の言う大親友の、親友。」
占い師はそう言うと、顔にかかった薄い布の下におにぎりをもっていって食べた。
「美味しい!」
「…そんな事を私に言ってどうする気ですか?」
「え?美味しい事?」
「違います…。」
アールは呆れると、占い師は笑う。
「タメでいいよ。
…私はまめきちに言われたんだ、もし明るい未来があると言うならば彼らにヒントを与えてくれってさ。」
アールがその言葉に反応すると、占い師は続けた。
「君は自分の正体を、真実を知っているかい?
あと、まめきちの正体とか。
なんで君を避ける真似ばかりするんだろうね、一体何が目的なんだろうね…とか。」
「それがヒントですか?」
「まあね。」
それをなんと、ルネアに聞かれていた。
ルネアは外の空気を吸いたくて外に出たのだが、偶然にも聞いていた。
占い師はアールに聞く。
「君が今一番知りたい事は?」
アールは黙り込むと、暫く考えてから言った。
「まめきちさんの目的。あの人は何を考えているかわからない。
あの人だけは、何を調べても答えにたどり着かない。
…もしあの人が私の邪魔をするようならば…」
占い師は笑う。
「大丈夫!君の作戦の邪魔はしないよ。
君がね、失敗した時にだけ作戦を決行するんだ彼は。」
「失敗?」
アールが聞くと、占い師は頷いた。
「トドメを刺したい奴がいるんだって、君の中に。」
「私の…?」
アールは自分の手を見つめると、首を傾げてしまう。
「モンスターの星の歴史でも調べたらどうかな?
そこに答えがあると思うよ!」
占い師はそう言うと、アールは占い師を見る。
(モンスター…魔物の歴史か…)
アールはペルドの事を想像していると、占い師は家に帰ってしまう。
アールは占い師を睨んだ。
(伊達にラムの友をやってきたわけではない…だからわかる。
あの占い師…女口調を頑張って使っているが男だ…。
一体なぜ性別を偽っているのだろう…。)
ルネアは占い師がやってくるので驚いていると、占い師はルネアとすれ違い様に言った。
「ドラゴンの種族は【契約】によって主を手に入れる。
…もっと調べてみて。」
ルネアはその言葉にボーっとすると考えた。
(契約…?アールさんにはまだ秘密があるって事かな…)
ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*
帰り道での話、ラムはみんなに言う。
「あの人、ルネアと同じ能力を持ってた。力もルネアより遥かに高い。」
「どういう事!?」
シナが聞くが、ラムはわからないのか首を横に振った。
リートは呟く。
「占い師さん…ルネアの先祖様なのかな?
でも、ルネアはプロノス家の王族でしょ?」
ルネアは心当たりがあるのか言葉を詰まらせた。
言うか迷ったが、ルネアはやがて言う。
「あの、僕は養子なんですよ…。」
『養子!?』
みんなのハモリにルネアは圧倒されつつ頷く。
「それにあの占い師さんについて…僕ちょっと心当たりがあります。」
一同は黙って聞くと、ルネアは続けた。
「四百年前、親の先祖は未来を言い当てる占い屋に会ったのだと。
その時に、四百年後に現れる捨て子を拾うように言われたらしいんです。
そのお陰で、僕は拾われて王子をやっているわけらしいんですが…
小さい頃に聞かされた話です。僕の興味を惹くための嘘かなって最近は思っていたけど、もし違ったら…。」
その話に、一同はただならぬ理由があると感じた。
その日の夕方。
占い師は外で空を見上げながら呟いた。
「ツィオーネ…」
すると背後から、一人の男性の声が聞こえてきた。
「何だって?」
「うわっ!」
その声に占い師は驚くと、真後ろの男性に言った。
「やめてくれよ!」
そこには、橙色のショートヘアの男性がいた。
中世のパーティー服を身に纏っていた。
「スロクルはツィオーネ好きだもんね。」
ほんわかした笑顔で男性は言った。
それに対し、占い師は焦りつつも言った。
「ああ!本名言わないで!ツィオーネの事も!」
その男性はクスクス笑いながらこう言った。
「私の事も話しちゃうんだからいいじゃないか」
「仕方ない。このままだと事態は最悪な方向に。そんな事になれば、君もまた嫌な思いするよ。
…別に覚えてるんでしょ。」
その言葉に男性は黙り込んだ。
それから少し寂しそうに呟く。
「そうだね。同じ過ちは見たくないな」
そこに、まめきちが現れた。
「ならば早いうちにヤツを仕留めなければ」
しかし占い師はそれに敵対するように言った。
「待って!それはアールくんが可哀想。
僕はもう少し考えるべきだと思うよ!」
男性は苦笑いで二人を止めた。
「いやいや、ツィオーネとの約束を守ろう。
手伝いは必要最低限。
見守っていこうよ、ね?」
その言葉に、占い師は少し考えた。
それから言う。
「そう…だね」
しかしまめきちは鼻で笑った。
「私は君等と同等ではいないから、自由にしてもいいんだよね?」
それに対し、占い師は眉を潜めた。
男性は占い師の肩に手を乗せ、静かに「しーっ」と言うのだった。
占い師は溜息をつくと言った。
「帰る。」
そう言って男性の手を振りほどくと、さっさと立ち去る占い師。
男性は思わず苦笑。
「そんなに私が嫌いかぁ…」
既に夕方で、空が暗くなり始めていく中、
占い師スロクルは家に帰っていったのであった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる