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それから私はハリーと一緒にいることが増えた
もともと王都にいたころは副官であるエリックといっしょにいることが多かった私だから、誰かとこうしてバディを組むみたいなことはさほど抵抗はなかった
ただ、思う
ハリーは優しい
外見が十代の頃と同じで変わらない私を、きちんと年上として扱ってくれる
私よりハリーの方が年上に見えるのに
『姉さま』と人前でも私をそう呼んでくれる
弟がいたらこんな感じなんだろうか・・・
私は時々そう思う
そして
いやいるじゃん!
私に弟いるじゃん!
と思いなおす
そしてそのたびに
18歳の頃に、11歳の弟から言われた
『アリシア、俺にとってお前が姉だったことなど一度もない』
という言葉を思い出す
・・・あの時私は
『姉上と呼びなさい』
そう言ったけれど、弟はじっと私を見つめて
『ダメだ』
とだけ言った
『僕』から『俺』へと一瞬で変わった一人称
有無を言わさない口調
さっきまでの口調と全然違う口調で
今までの素直な弟は、全部嘘だった、それがわかる、はっきりと
私は『ダメだ』という言葉を放った弟に何か言いたくて、でも、何も言えなかった
逆らえなかった
私の身長は、11歳の弟に、7歳も年下の弟に、追い越されつつあった
私とほぼ同じ目線の弟はじっと私と見つめていた
私を戒めるような目で見つめていた
私はその目に逆らえなかった
まるで私が間違っているみたいな気がした
何も言えないで、まるで、叱られているような気持ちがした
気づくと、私は泣いていた
『アリシア』
弟の手が私に触れそうにした
『触らないで!』
私はその手を拒絶した
私は弟の手が怖かった
その手が私に優しく触れる、まるで壊れ物に触れるみたいに私に触れる、
私はそう予感した、だから、怖かった
・・・ハリーの目も、時々怖い、と正直思う
でも、ハリーはあの子とは違う
ハリーの目が時々怖いのは、彼もやっぱり男の子だからだろう
私が彼の目を怖いと思うのは仕方ないことなんだと思う
負けたくない気持ちなんだろうきっと
剣士として、私に勝ちたいのだろう、きっと
私は公爵邸ではなく、騎士の寮にほとんどいる
白い結婚とはいえ、これだけ自由にさせてもらって本当に申し訳ないけれど
伯父様は私の好きなようにしなさい、と言ってくれる
なので私は結局その言葉に甘えている
寮は男女に分かれて離れている
寮に戻るとき以外は、私は男性の騎士団の方にいる
寮に戻っても、大体無視されるし、私も無視するから
だから、私は時間ぎりぎりまで、ハリーと一緒にいるようになっていた
ハリーは私に付き合ってくれた
剣でも、買い物でも、お酒でも
お酒なら私も少しは飲める
「ハリー、あなた、こんなに毎日毎日私に付き合ってくれて、それは嬉しいんだけど、自分のことは大丈夫なの?」
ハリーはよく見るとあんまり酔ってない
私はもう自分でもわかるくらい酔っている
でもまだ大丈夫なふりをする
「え?僕ですか?僕は大丈夫ですよ姉さま」
ハリーはにっこりと私に答える
大丈夫だろうとは思う
この子は良くできた子だ
伯父様の子たちの中でも特に伯父様の血を一番濃く受け継いでいる、と皆が言うし、私もそう思う
もともと王都にいたころは副官であるエリックといっしょにいることが多かった私だから、誰かとこうしてバディを組むみたいなことはさほど抵抗はなかった
ただ、思う
ハリーは優しい
外見が十代の頃と同じで変わらない私を、きちんと年上として扱ってくれる
私よりハリーの方が年上に見えるのに
『姉さま』と人前でも私をそう呼んでくれる
弟がいたらこんな感じなんだろうか・・・
私は時々そう思う
そして
いやいるじゃん!
私に弟いるじゃん!
と思いなおす
そしてそのたびに
18歳の頃に、11歳の弟から言われた
『アリシア、俺にとってお前が姉だったことなど一度もない』
という言葉を思い出す
・・・あの時私は
『姉上と呼びなさい』
そう言ったけれど、弟はじっと私を見つめて
『ダメだ』
とだけ言った
『僕』から『俺』へと一瞬で変わった一人称
有無を言わさない口調
さっきまでの口調と全然違う口調で
今までの素直な弟は、全部嘘だった、それがわかる、はっきりと
私は『ダメだ』という言葉を放った弟に何か言いたくて、でも、何も言えなかった
逆らえなかった
私の身長は、11歳の弟に、7歳も年下の弟に、追い越されつつあった
私とほぼ同じ目線の弟はじっと私と見つめていた
私を戒めるような目で見つめていた
私はその目に逆らえなかった
まるで私が間違っているみたいな気がした
何も言えないで、まるで、叱られているような気持ちがした
気づくと、私は泣いていた
『アリシア』
弟の手が私に触れそうにした
『触らないで!』
私はその手を拒絶した
私は弟の手が怖かった
その手が私に優しく触れる、まるで壊れ物に触れるみたいに私に触れる、
私はそう予感した、だから、怖かった
・・・ハリーの目も、時々怖い、と正直思う
でも、ハリーはあの子とは違う
ハリーの目が時々怖いのは、彼もやっぱり男の子だからだろう
私が彼の目を怖いと思うのは仕方ないことなんだと思う
負けたくない気持ちなんだろうきっと
剣士として、私に勝ちたいのだろう、きっと
私は公爵邸ではなく、騎士の寮にほとんどいる
白い結婚とはいえ、これだけ自由にさせてもらって本当に申し訳ないけれど
伯父様は私の好きなようにしなさい、と言ってくれる
なので私は結局その言葉に甘えている
寮は男女に分かれて離れている
寮に戻るとき以外は、私は男性の騎士団の方にいる
寮に戻っても、大体無視されるし、私も無視するから
だから、私は時間ぎりぎりまで、ハリーと一緒にいるようになっていた
ハリーは私に付き合ってくれた
剣でも、買い物でも、お酒でも
お酒なら私も少しは飲める
「ハリー、あなた、こんなに毎日毎日私に付き合ってくれて、それは嬉しいんだけど、自分のことは大丈夫なの?」
ハリーはよく見るとあんまり酔ってない
私はもう自分でもわかるくらい酔っている
でもまだ大丈夫なふりをする
「え?僕ですか?僕は大丈夫ですよ姉さま」
ハリーはにっこりと私に答える
大丈夫だろうとは思う
この子は良くできた子だ
伯父様の子たちの中でも特に伯父様の血を一番濃く受け継いでいる、と皆が言うし、私もそう思う
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