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165話「夏に白球〜前編〜⑦」
しおりを挟む八回裏、ワンアウト、ランナー一塁。打者、九番大賀。
実況「大賀、打ったァァ! ライトの頭を越える! 二塁ランナー甲柱、三塁も蹴るっ!」
実況「ホームインッ! 東咲高校、さらに一点追加! これで、6対4!! 大賀、タイムリーツーベース!」
大賀「しゃぁぁ!」
今本「ナイスバッチ、大賀ァァァ!!」
山上「てめぇぇ! 何打ってんだ、こんクソがぁぁぁ!! 今日は許してやんよ、こんクソがぁぁぁ!!」
福川「投打で大活躍だな、こんちくしょうがぁぁ!! 今日くらいは、調子乗っても許してやるぅぅぅ!!」
関(M)一年コンビの活躍で、さらに一点を追加した東咲高校。その後も、ツーアウトになるもヒットと四球で繋ぎ満塁のチャンスを作り、先程ホームランを放った四番、山上 剛ーーー
山上「だりゃぁぁぁぁぁ!!」
実況「打ったぁぁ! センター方向!」
張間「しゃぁぁぁ!! ダメ押しのもう一発ぅぅぅ!!」
打球の伸びは徐々に失われていき、フェンス手前でセンターのグラブに収まる。
張間「だぁぁぁぁ!! 惜しいぃぃぃ!! あと少しぃぃぃ!!」
間宮「でも、これで6対4...! 残るは九回だけ...も、もしかしたら...!」
張間「いけるいけるいけるぞぉぉぉぉ! あと、アウト三つ!! 絶対にいけるぞぉぉぉ!!」
関(M)四番で、さらに追加点...とは、ならなかったものの、二点のリードで最終回へと辿り着いた東咲高校。最終回は、一番からの好打順となったがーーー
実況「内角いっぱい、空振り三振っ!」
張間「よーしよしよし! いいよいいよ、大賀くーーーん!」
間宮「き、緊張してきた...! あと、二つ...!」
関(M)大賀くんの見事な投球で、先頭バッターを空振り三振に打ち取る。あとアウト二つ...だが、駒原高校も粘りを見せ、簡単には終わらせてくれない。
関(M)二番バッターが、ファールで粘りに粘り四球を勝ち取ると、続く三番がライト前に落ちるヒットを放つ。ワンアウト、一二塁...ここで、四打数三安打二打点と当たりに当たっている四番に打順が回る。
審判「ファール!」
実況「右にきれていきます、ファール! これでカウントツーツー! 一塁ランナー帰れば同点、ホームランで逆転となります、駒原高校! 三打席目にツーランホームランを放っている、四番松川! 対して、先程の対戦で三振を奪っている、一年大賀! さぁ、カウントツーツー...第五球...!!」
大賀「どらぁぁぁぁ!!」
勢いよく腕を振り抜き、ボールを投げ放つ。唸りを上げ真っ直ぐ突き進むボールは、打者の手元で急激に落下していく。
実況「落としたぁぁぁ! 空振り三振っ!! 松川、二打席連続三振!!」
大賀「しゃぁ!」
張間「よっっしゃぁぁぁぁ!! ナイスボール!! 最高やでぇぇぇぇ!! そのまま、いけぇぇぇぇ!!」
大賀(あと、あと一つで決勝だ...! あと、一つ...!)
実況「内角直球、ストライク! 148キロ!」
大賀(まだ球威は落ちてねぇ...疲れも全然ねぇ...! いける、いけるぞ...!)
実況「空振り! これでツーストライク、追い込んだ!」
大賀(駒原だろうがどこだろうが...俺が、俺たちが負けるわけねぇだろ...!)
審判「ボールッ!」
大賀(絶対に勝つ...勝つ、勝つんだ...! このチームなら、絶対に勝てる...ここでも、決勝でも、甲子園でも! 俺たちなら、どんな相手でもっ...!!)
金属の甲高い音が、大賀の耳に届く。
大賀「...は?」
実況「打ったァァァ!!」
大賀(お、おい...嘘だろ...?)
実況「レフト、下がる! 下がる!」
大賀(やめろ...やめろ、やめろやめろやめろ...!)
実況「入るか?入るか!?入るか!?!?」
大賀(入るな...入んじゃねぇ...入んじゃーーー)
大賀の願い虚しく、打球はフェンスの数センチ上を超えていき、レフトスタンドへと叩きつけられる。怒号のような歓声が、瞬く間に球場を包み込んでいく。
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