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3:ドラゴン式家屋清掃
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ディアと暮らすということで、ラルクはまず家の中の片付けと掃除からはじめることにした。
「あたしがやります! お任せあれ!」
そう張り切るディアに、ラルクが一抹の不安を抱きながらも任せると――
「まずは水洗い! とりゃああああ!」
ディアの魔法によって発生した水流が猛烈な勢いで家の中を巡っていく。
「次は乾燥! 風と炎を操って熱風を作って~」
まるで砂漠に吹くような熱のある乾いた風が吹き荒れ、家を中から乾燥。
「ちょっと焦げたところは樹木魔法で直して……できた!」
それはたった五分の出来事だった。その規格外な掃除のやり方に……ラルクは唖然とするしかなかった。
確かに中は綺麗になっており、汚れ一つない。
ただ、汚れどころか――中には何一つ残ってなかった。
「あ、いっぱいゴミが出ましたけど、どうします?」
水流でひとまとめに集めた、ディア曰く〝ゴミ〟――元々家の中にあった家具やベッドなど――を見て、ラルクはため息をつくしかない。
「それはゴミではないんだが」
とはいえ、そのほとんどがボロボロだったので買い換えないといけないとは思っていた。
「へ? そ、そうなんですか……あはは……ええっと元に戻そうかなあ」
慌てて、水でビシャビシャになったベッドを片手で持ち上げたディアだったが、それを見たラルクが首を横に振った。
「いや、もういい。新しいベッドを作ってもらおう。それらは処分する」
「……はい。すみません」
少し落ち込んだ様子のディアを見て、ラルクがどうしたらいいか分からずに、悩んだ結果――
「ディア。職人のところ行くがてら、村を案内しよう」
ラルクがそう提案する。すると、ディアがこくりと頷いた。
「じゃあ、これ処分します?」
ディアがゴミの山を指差した。
「できるのか?」
「もちろんです!」
ディアが右手を掲げると、これまでとは全く異なる性質の魔力が集まってくる。
百戦錬磨のラルクですら、思わず一歩下がってしまうほどの魔力。
全身に鳥肌が立つ。
「ほいっと」
しかしディアは当たり前とばかりにその魔力をゴミの山に放つと、それは黒い渦となりゴミの山を衝撃音と共に圧縮していく。
「それはまさか……重力を操っているのか」
竜は、その鱗の色で使える属性魔法が決まっている。例えば青色の鱗を持つブルードラゴンは雷や風、赤色の鱗を持つレッドドラゴンは炎や大地、などといった具合にだ。
しかし――中にはそのどれにも属さない禁忌魔法と呼ばれる魔法を操る竜がいるという。そういった竜は鱗の色に関係なく、ダークドラゴンと呼ばれていた。
重力魔法はエルフでも使える者がいない、稀少かつ難易度の高い魔法であり、当然禁忌魔法に含まれている。
ならばそれを扱えるディアは――ダークドラゴンということになる。
「そういえば、ダークドラゴンだと言っていたな」
「信じてなかったんですか!? それに竜の中でも重力魔法を使えるのはあたしとあたしの兄ぐらいですよ!」
「いや、すまん」
頬を膨らませて拗ねているディアの手の平の上には、圧縮されて球状に小さく固まったゴミが乗っている。
彼女がそれに炎の息を吹き掛けると、あっけなく消し炭となって、風と共に飛ばされていった。
「ゴミ処理完了っと」
「うーむ……」
ラルクは思わず唸ってしまう。あれほどの量のゴミとなると処理するのも一苦労だが、ディアがいればものの一分で終わってしまう。
竜の規格外な力は確かに危険というか、大雑把なところはあるが、上手く使うことができればかなり便利かもしれない。
そう思い始めたラルクだった。
「よし、なら村を案内しよう」
「はい! 人の世界は初めてなので色々教えてください!」
当然とばかりに腕を絡めてくるディアに、ラルクは思わず顔を逸らし顎ひげを掻いてしまう。何より右腕に当たっているディアの胸の柔らかい感触から全神経を逸らすのに必死だった。
ディアの見た目は十代後半ぐらいで少し幼い顔付きをしているが、身体は完全に大人のそれだった。
(こんな子と、一つ屋根の下で暮らすのか……)
なんてことを今更考えはじめるラルク。
ラルクとて、男。人並みには性欲もある。
しかしこれまで恋人を作らなかったのは、単純にずっと冒険者の依頼で帝国中を駆けずり回っていたせいもあるが、何よりも亡き幼馴染みのことをずっと引きずっていたからだ。
しかし復讐を果たしたと同時に、その気持ちも消えてしまった。
なのでその縛りもなくなった今……ラルクは自分が獣にならないかが心配になってきた。
そんな彼の思考を知ってか知らずか、ディアが蠱惑的な笑みを浮かべてこうラルクへと囁く。
「……ベッド、ダブルベッドにします?」
「しない」
ラルクが即答する。そんなことになれば、理性を抑える自信が全くなかった。
「ええ……なんでぇ」
信じられないとばかりの顔をするディア。
「そもそも部屋は別だ」
「それ寂しいですって~新婚なのに」
「新婚じゃない」
「新婚、みたいなもんですって」
なんて言っているうちに二人は村の外れ近くにあるラルクの家から、村の中心地にある広場にやってきた。
そこには各種施設とこの村唯一の酒場があり、村人達が集まって思い思いの方法で寛いでいる。
「結構人は多いんですね。こんな辺鄙な土地なのに」
活気のある様子を見たディアがそうラルクへそう感想を伝えた。
「この辺りで、人が住んでいる土地はここぐらいだ。だから漁師も、山の中に暮らす狩人もここを拠点にする」
「なるほど。あ、あの屋台から良い匂いが!」
フラフラと、広場の中心にある小さな銅像の周りにある屋台へと誘われるように近付くディアの頭を、ラルクが掴んだ。
「……後だ。先に家具職人のところに行くぞ」
「ふぁーい」
屋台を名残惜しそうに見つめるディアを引っ張って、ラルクが広場の北側にある家具職人の家へと入っていく。
その家の敷地内には工房があり、その中には木材を使った様々な家具が置いてあった。
それらをディアが興味深そうに見つめていた。
「……ダリウス、久しぶりだな」
ラルクがそう、工房内で木を削っている男へと声を掛けた。赤い髪を短く刈り上げたその男は、戦士とは違う体付きではあるが、ラルクと同じぐらいには筋肉質だ。
「おお! ラルクじゃねえか! 帰ってきたって噂は本当だったか。それに……そっちが例の」
家具職人のダリウスが、驚いたような表情を浮かべたあとにディアを見てニヤリと笑った。
「ラルクさんの妻のディアで――モゴモゴ!」
ラルクがディアの口を塞ぎ、顔を引き攣らせながら代わりに答える。
「……訳あってうちで世話することになった子だ。家の片付けをしていたんだが、家具は全部ダメになっていた」
「ふーん……なるほどねえ」
ダリウスがニヤニヤしたまま、ラルクとディアの様子を観察する。
ダリウスとラルクは、幼い頃から兄弟のような関係だった。ダリウスの方が年上で、ラルクには男兄弟がいなかったせいもあって、ラルクは彼を兄と慕っていた。
その関係は、二十年経った今でも変わらない。
「まあ、詳しい話は今度酒の席でじっくり聞こう。で、何が欲しい?」
ダリウスがそう聞くと、ラルクは少し考えた末にこう答えた。
「とりあえずベッドだな。棚やらテーブル、椅子もいるが……」
「ベッドか。当然ダブルベッドだよなあ、ディアちゃん?」
悪い笑みを浮かべながらダリウスが、ディアへと視線を向ける。
「もちろんです!」
ラルクの拘束から脱出したディアがそうダリウスへと答えるので、ラルクはため息をつく。
放っておくとこの二人はずっと調子に乗りそうなので釘を刺しておく。
「シングル二つだ。他にもまた頼むと思うがまずはその二つを」
「えー」
「えー」
ダリウスとディアが二人して口を尖らせるので、ラルクが視線に圧を込める。
「シングル二つだ」
「相変わらず堅物だな……そんなんだからミーレを」
そうダリウスが口にした瞬間、その場の空気がズシリと重くなる。
「……ダリウス。ミーレの仇は取った。十年掛かった」
そう口にしたラルクを見て、ダリウスが視線を天井に向けた。
「そうか。もう十年か」
その言葉の重み、流石のディアも口を出せずにいた。
「俺が……弱いばっかりに」
ラルクがそう言うも、ダリウスがそれを笑い飛ばした。
「はは……その話はなしにしよう。お前はもう今を生きていい。つーか、そんな可愛い子連れて帰ってきた時点でもう大丈夫なんだろうがな」
「いや、違う。彼女は……」
ラルクがどうディアについて説明したらいいか迷う。
当然、ディアの正体が竜だとは言えない。
この村は竜界との境界に近いため、竜の怖さをよく知っている。ディアのせいで村に騒ぎを起こすのは望むところではなかった。
しかしダリウスは肩をすくめると、ラルクへと言葉を投げた。
「それもどうでもいいさ。とりあえずベッド二つ、特急で作ってやる。引越祝いだ。格安にしてやる」
「助かる」
「気にすんな。しかしお前……金あんのか? 冒険者かなんかやってたって聞いてるから心配はしていないが」
そのダリウスの言葉を聞いて……ラルクが暑くもないのに汗を掻きはじめた。
「……マズい」
「……? どうしたんです、ラルクさん」
ラルクの様子がおかしいことに気付き、ディアがその顔を覗き込む。
「生活資金……棚の中にしまっていたんだ」
「取りに帰ります?……って、あっ」
ラルクは新生活用の資金を、家の中にある棚にしまっていた。
つまり――
「ああああああああああああああ!!」
ディアの悲痛な叫びが工房内に響く。
ラルクが、膝から床へと崩れ落ちた。
「金が……ない」
資金を入れていたその棚は――ゴミと称され……ディアによって圧縮、焼却されていたのだった。
「あたしがやります! お任せあれ!」
そう張り切るディアに、ラルクが一抹の不安を抱きながらも任せると――
「まずは水洗い! とりゃああああ!」
ディアの魔法によって発生した水流が猛烈な勢いで家の中を巡っていく。
「次は乾燥! 風と炎を操って熱風を作って~」
まるで砂漠に吹くような熱のある乾いた風が吹き荒れ、家を中から乾燥。
「ちょっと焦げたところは樹木魔法で直して……できた!」
それはたった五分の出来事だった。その規格外な掃除のやり方に……ラルクは唖然とするしかなかった。
確かに中は綺麗になっており、汚れ一つない。
ただ、汚れどころか――中には何一つ残ってなかった。
「あ、いっぱいゴミが出ましたけど、どうします?」
水流でひとまとめに集めた、ディア曰く〝ゴミ〟――元々家の中にあった家具やベッドなど――を見て、ラルクはため息をつくしかない。
「それはゴミではないんだが」
とはいえ、そのほとんどがボロボロだったので買い換えないといけないとは思っていた。
「へ? そ、そうなんですか……あはは……ええっと元に戻そうかなあ」
慌てて、水でビシャビシャになったベッドを片手で持ち上げたディアだったが、それを見たラルクが首を横に振った。
「いや、もういい。新しいベッドを作ってもらおう。それらは処分する」
「……はい。すみません」
少し落ち込んだ様子のディアを見て、ラルクがどうしたらいいか分からずに、悩んだ結果――
「ディア。職人のところ行くがてら、村を案内しよう」
ラルクがそう提案する。すると、ディアがこくりと頷いた。
「じゃあ、これ処分します?」
ディアがゴミの山を指差した。
「できるのか?」
「もちろんです!」
ディアが右手を掲げると、これまでとは全く異なる性質の魔力が集まってくる。
百戦錬磨のラルクですら、思わず一歩下がってしまうほどの魔力。
全身に鳥肌が立つ。
「ほいっと」
しかしディアは当たり前とばかりにその魔力をゴミの山に放つと、それは黒い渦となりゴミの山を衝撃音と共に圧縮していく。
「それはまさか……重力を操っているのか」
竜は、その鱗の色で使える属性魔法が決まっている。例えば青色の鱗を持つブルードラゴンは雷や風、赤色の鱗を持つレッドドラゴンは炎や大地、などといった具合にだ。
しかし――中にはそのどれにも属さない禁忌魔法と呼ばれる魔法を操る竜がいるという。そういった竜は鱗の色に関係なく、ダークドラゴンと呼ばれていた。
重力魔法はエルフでも使える者がいない、稀少かつ難易度の高い魔法であり、当然禁忌魔法に含まれている。
ならばそれを扱えるディアは――ダークドラゴンということになる。
「そういえば、ダークドラゴンだと言っていたな」
「信じてなかったんですか!? それに竜の中でも重力魔法を使えるのはあたしとあたしの兄ぐらいですよ!」
「いや、すまん」
頬を膨らませて拗ねているディアの手の平の上には、圧縮されて球状に小さく固まったゴミが乗っている。
彼女がそれに炎の息を吹き掛けると、あっけなく消し炭となって、風と共に飛ばされていった。
「ゴミ処理完了っと」
「うーむ……」
ラルクは思わず唸ってしまう。あれほどの量のゴミとなると処理するのも一苦労だが、ディアがいればものの一分で終わってしまう。
竜の規格外な力は確かに危険というか、大雑把なところはあるが、上手く使うことができればかなり便利かもしれない。
そう思い始めたラルクだった。
「よし、なら村を案内しよう」
「はい! 人の世界は初めてなので色々教えてください!」
当然とばかりに腕を絡めてくるディアに、ラルクは思わず顔を逸らし顎ひげを掻いてしまう。何より右腕に当たっているディアの胸の柔らかい感触から全神経を逸らすのに必死だった。
ディアの見た目は十代後半ぐらいで少し幼い顔付きをしているが、身体は完全に大人のそれだった。
(こんな子と、一つ屋根の下で暮らすのか……)
なんてことを今更考えはじめるラルク。
ラルクとて、男。人並みには性欲もある。
しかしこれまで恋人を作らなかったのは、単純にずっと冒険者の依頼で帝国中を駆けずり回っていたせいもあるが、何よりも亡き幼馴染みのことをずっと引きずっていたからだ。
しかし復讐を果たしたと同時に、その気持ちも消えてしまった。
なのでその縛りもなくなった今……ラルクは自分が獣にならないかが心配になってきた。
そんな彼の思考を知ってか知らずか、ディアが蠱惑的な笑みを浮かべてこうラルクへと囁く。
「……ベッド、ダブルベッドにします?」
「しない」
ラルクが即答する。そんなことになれば、理性を抑える自信が全くなかった。
「ええ……なんでぇ」
信じられないとばかりの顔をするディア。
「そもそも部屋は別だ」
「それ寂しいですって~新婚なのに」
「新婚じゃない」
「新婚、みたいなもんですって」
なんて言っているうちに二人は村の外れ近くにあるラルクの家から、村の中心地にある広場にやってきた。
そこには各種施設とこの村唯一の酒場があり、村人達が集まって思い思いの方法で寛いでいる。
「結構人は多いんですね。こんな辺鄙な土地なのに」
活気のある様子を見たディアがそうラルクへそう感想を伝えた。
「この辺りで、人が住んでいる土地はここぐらいだ。だから漁師も、山の中に暮らす狩人もここを拠点にする」
「なるほど。あ、あの屋台から良い匂いが!」
フラフラと、広場の中心にある小さな銅像の周りにある屋台へと誘われるように近付くディアの頭を、ラルクが掴んだ。
「……後だ。先に家具職人のところに行くぞ」
「ふぁーい」
屋台を名残惜しそうに見つめるディアを引っ張って、ラルクが広場の北側にある家具職人の家へと入っていく。
その家の敷地内には工房があり、その中には木材を使った様々な家具が置いてあった。
それらをディアが興味深そうに見つめていた。
「……ダリウス、久しぶりだな」
ラルクがそう、工房内で木を削っている男へと声を掛けた。赤い髪を短く刈り上げたその男は、戦士とは違う体付きではあるが、ラルクと同じぐらいには筋肉質だ。
「おお! ラルクじゃねえか! 帰ってきたって噂は本当だったか。それに……そっちが例の」
家具職人のダリウスが、驚いたような表情を浮かべたあとにディアを見てニヤリと笑った。
「ラルクさんの妻のディアで――モゴモゴ!」
ラルクがディアの口を塞ぎ、顔を引き攣らせながら代わりに答える。
「……訳あってうちで世話することになった子だ。家の片付けをしていたんだが、家具は全部ダメになっていた」
「ふーん……なるほどねえ」
ダリウスがニヤニヤしたまま、ラルクとディアの様子を観察する。
ダリウスとラルクは、幼い頃から兄弟のような関係だった。ダリウスの方が年上で、ラルクには男兄弟がいなかったせいもあって、ラルクは彼を兄と慕っていた。
その関係は、二十年経った今でも変わらない。
「まあ、詳しい話は今度酒の席でじっくり聞こう。で、何が欲しい?」
ダリウスがそう聞くと、ラルクは少し考えた末にこう答えた。
「とりあえずベッドだな。棚やらテーブル、椅子もいるが……」
「ベッドか。当然ダブルベッドだよなあ、ディアちゃん?」
悪い笑みを浮かべながらダリウスが、ディアへと視線を向ける。
「もちろんです!」
ラルクの拘束から脱出したディアがそうダリウスへと答えるので、ラルクはため息をつく。
放っておくとこの二人はずっと調子に乗りそうなので釘を刺しておく。
「シングル二つだ。他にもまた頼むと思うがまずはその二つを」
「えー」
「えー」
ダリウスとディアが二人して口を尖らせるので、ラルクが視線に圧を込める。
「シングル二つだ」
「相変わらず堅物だな……そんなんだからミーレを」
そうダリウスが口にした瞬間、その場の空気がズシリと重くなる。
「……ダリウス。ミーレの仇は取った。十年掛かった」
そう口にしたラルクを見て、ダリウスが視線を天井に向けた。
「そうか。もう十年か」
その言葉の重み、流石のディアも口を出せずにいた。
「俺が……弱いばっかりに」
ラルクがそう言うも、ダリウスがそれを笑い飛ばした。
「はは……その話はなしにしよう。お前はもう今を生きていい。つーか、そんな可愛い子連れて帰ってきた時点でもう大丈夫なんだろうがな」
「いや、違う。彼女は……」
ラルクがどうディアについて説明したらいいか迷う。
当然、ディアの正体が竜だとは言えない。
この村は竜界との境界に近いため、竜の怖さをよく知っている。ディアのせいで村に騒ぎを起こすのは望むところではなかった。
しかしダリウスは肩をすくめると、ラルクへと言葉を投げた。
「それもどうでもいいさ。とりあえずベッド二つ、特急で作ってやる。引越祝いだ。格安にしてやる」
「助かる」
「気にすんな。しかしお前……金あんのか? 冒険者かなんかやってたって聞いてるから心配はしていないが」
そのダリウスの言葉を聞いて……ラルクが暑くもないのに汗を掻きはじめた。
「……マズい」
「……? どうしたんです、ラルクさん」
ラルクの様子がおかしいことに気付き、ディアがその顔を覗き込む。
「生活資金……棚の中にしまっていたんだ」
「取りに帰ります?……って、あっ」
ラルクは新生活用の資金を、家の中にある棚にしまっていた。
つまり――
「ああああああああああああああ!!」
ディアの悲痛な叫びが工房内に響く。
ラルクが、膝から床へと崩れ落ちた。
「金が……ない」
資金を入れていたその棚は――ゴミと称され……ディアによって圧縮、焼却されていたのだった。
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