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6:イルナの反省会
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王城――玉座の間。
「見事だった、ジーク。そしてイルナよ」
ジルス王が、悠然とそう言い放った。
「我が王国にとって重要な人物であるグレリオ・セベールの命が救われたのは、ジーク、お前のおかげだとラドルから聞いた。城下町へ無断で行ったことは罰に値するが……それでもお前は一人の命を救ったのだ」
「はい……!」
父親に褒められたことが嬉しくて、ついジークは声を弾ませてしまった。
「そして、対処が難しいとされる、かの暗殺蜘蛛の知識、授けたのはイルナだな?」
「……すみません。ジーク様が興味を持たれたのでつい……」
イルナが珍しくしょげたような顔をして頭を下げた。内心では、魔女だとバレるかもしれないとドキドキしているが、勿論顔には出さない。
「構わんぞイルナ。王者とは清濁併せ呑む者でないと、なれないからな。そういう知識は必要だ。そしてジークはそれを見事に会得していた……素晴らしいことだ。イルナ、君に任せて良かったと心から思っている。丁度今、セベール家には私から難しい依頼をしていてな。もしグレリオが死んでいれば……その話も消えていたかもしれない」
ジルスが、安堵の表情を浮かべた。
今後の軍事力に関わる依頼だけあり、今回の暗殺騒動は王の失策でもあった。まさかここまで直接的な手を出してくるとは想定していなかったからだ。
だが、息子とその教育係のおかげで助かったのだ。
まさか、早くも息子にこういった国政に関わることで助けられるとは思わず、予想外の成長に父親としても喜びも感じていた。
「グレリオが、すぐにジークへと直接お礼を言いたいと言っているが、身体が癒えるまで一ヶ月は掛かるそうだ。これも何かの経験だ。彼の体調が戻ったらお前の方からセベール家に出向くと良い。イルナ、付いていってくれるか?」
「勿論です」
「では、そういうことで」
「あの……私はまだ教育係でよろしいのですか? ジーク様の城下町探索を勧めたのも私です」
「分かっている。が、今回は不問とする……ふっ、次はバレないようにな」
最後の言葉を小声で囁くように言うと、ジルスは玉座から立ち上がり、退室した。
「……イルナ先生。僕、初めて褒められたよ! これも全部先生のおかげだ!」
「あー……うん……そうだね……」
「先生?」
「大丈夫……また後でね……」
「あ、はい!」
ふらふらとイルナは部屋から去ると、足早に王城の離れにある塔の上にある自室へと籠もった。
そして壁に頭をゴンと叩き付けた。
「なんでえええええ!? なんかジークが有能みたいになってるの!?」
「……嬉々としてアレコレ教えるからだよ……弟子じゃないんだから。毒のこととか暗殺のこととか」
スズメのザザがイルナの様子を見て、ため息をついた。
「私が褒められたのは良いとして、ジークまでなんか自信ついちゃってるし!? 虫好きゲテモノ王子から一気に陰陽併せ持つ有能王子に変わったじゃない!? というか一回聞いただけで覚えるなんてあの子記憶力良いわね。油断したあ」
「……そもそも城下町に行かせたのも悪手だよ。彼、なんか色んな知識をどんどん吸収してるよ。王城に閉じこもって勉強するよりよっぽど身になってる」
「それじゃ、駄目なのよおおお! もっと城下町で悪い友達作ってさ! 酒と薬に溺れるとかそういうのが良いの!」
「十二歳の男子がするわけないでしょ……」
「計画変更だわ……知識は今さら消せないから……次はせめて剣とかの訓練をさせないようにしましょう。そして弱っちい、非力な王子としてイメージダウンを図るのよ! 更に決闘かなんかで平民に負けて赤っ恥とか!」
「上手くいくかなあ……」
「今度は大丈夫よ! あとは適当に柄の悪い連中を使って、ジークに喧嘩をふっかけましょう。ふふふ、泣きべそかいて地面に這いつくばって、きっと自信をなくすはずよ!」
「まあ、頑張って~」
「あんたもやるのよ!」
「はいはい」
イルナの反省会はその日の朝まで続いたのだった。
「見事だった、ジーク。そしてイルナよ」
ジルス王が、悠然とそう言い放った。
「我が王国にとって重要な人物であるグレリオ・セベールの命が救われたのは、ジーク、お前のおかげだとラドルから聞いた。城下町へ無断で行ったことは罰に値するが……それでもお前は一人の命を救ったのだ」
「はい……!」
父親に褒められたことが嬉しくて、ついジークは声を弾ませてしまった。
「そして、対処が難しいとされる、かの暗殺蜘蛛の知識、授けたのはイルナだな?」
「……すみません。ジーク様が興味を持たれたのでつい……」
イルナが珍しくしょげたような顔をして頭を下げた。内心では、魔女だとバレるかもしれないとドキドキしているが、勿論顔には出さない。
「構わんぞイルナ。王者とは清濁併せ呑む者でないと、なれないからな。そういう知識は必要だ。そしてジークはそれを見事に会得していた……素晴らしいことだ。イルナ、君に任せて良かったと心から思っている。丁度今、セベール家には私から難しい依頼をしていてな。もしグレリオが死んでいれば……その話も消えていたかもしれない」
ジルスが、安堵の表情を浮かべた。
今後の軍事力に関わる依頼だけあり、今回の暗殺騒動は王の失策でもあった。まさかここまで直接的な手を出してくるとは想定していなかったからだ。
だが、息子とその教育係のおかげで助かったのだ。
まさか、早くも息子にこういった国政に関わることで助けられるとは思わず、予想外の成長に父親としても喜びも感じていた。
「グレリオが、すぐにジークへと直接お礼を言いたいと言っているが、身体が癒えるまで一ヶ月は掛かるそうだ。これも何かの経験だ。彼の体調が戻ったらお前の方からセベール家に出向くと良い。イルナ、付いていってくれるか?」
「勿論です」
「では、そういうことで」
「あの……私はまだ教育係でよろしいのですか? ジーク様の城下町探索を勧めたのも私です」
「分かっている。が、今回は不問とする……ふっ、次はバレないようにな」
最後の言葉を小声で囁くように言うと、ジルスは玉座から立ち上がり、退室した。
「……イルナ先生。僕、初めて褒められたよ! これも全部先生のおかげだ!」
「あー……うん……そうだね……」
「先生?」
「大丈夫……また後でね……」
「あ、はい!」
ふらふらとイルナは部屋から去ると、足早に王城の離れにある塔の上にある自室へと籠もった。
そして壁に頭をゴンと叩き付けた。
「なんでえええええ!? なんかジークが有能みたいになってるの!?」
「……嬉々としてアレコレ教えるからだよ……弟子じゃないんだから。毒のこととか暗殺のこととか」
スズメのザザがイルナの様子を見て、ため息をついた。
「私が褒められたのは良いとして、ジークまでなんか自信ついちゃってるし!? 虫好きゲテモノ王子から一気に陰陽併せ持つ有能王子に変わったじゃない!? というか一回聞いただけで覚えるなんてあの子記憶力良いわね。油断したあ」
「……そもそも城下町に行かせたのも悪手だよ。彼、なんか色んな知識をどんどん吸収してるよ。王城に閉じこもって勉強するよりよっぽど身になってる」
「それじゃ、駄目なのよおおお! もっと城下町で悪い友達作ってさ! 酒と薬に溺れるとかそういうのが良いの!」
「十二歳の男子がするわけないでしょ……」
「計画変更だわ……知識は今さら消せないから……次はせめて剣とかの訓練をさせないようにしましょう。そして弱っちい、非力な王子としてイメージダウンを図るのよ! 更に決闘かなんかで平民に負けて赤っ恥とか!」
「上手くいくかなあ……」
「今度は大丈夫よ! あとは適当に柄の悪い連中を使って、ジークに喧嘩をふっかけましょう。ふふふ、泣きべそかいて地面に這いつくばって、きっと自信をなくすはずよ!」
「まあ、頑張って~」
「あんたもやるのよ!」
「はいはい」
イルナの反省会はその日の朝まで続いたのだった。
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