傾国の魔女、王子の教育係になる ~愚王に仕立てようと育てたらなぜか有能になったんだけど、どうして……

虎戸リア

文字の大きさ
6 / 11

6:イルナの反省会

しおりを挟む
 王城――玉座の間。

「見事だった、ジーク。そしてイルナよ」

 ジルス王が、悠然とそう言い放った。

「我が王国にとって重要な人物であるグレリオ・セベールの命が救われたのは、ジーク、お前のおかげだとラドルから聞いた。城下町へ無断で行ったことは罰に値するが……それでもお前は一人の命を救ったのだ」
「はい……!」

 父親に褒められたことが嬉しくて、ついジークは声を弾ませてしまった。

「そして、対処が難しいとされる、かの暗殺蜘蛛の知識、授けたのはイルナだな?」
「……すみません。ジーク様が興味を持たれたのでつい……」

 イルナが珍しくしょげたような顔をして頭を下げた。内心では、魔女だとバレるかもしれないとドキドキしているが、勿論顔には出さない。

「構わんぞイルナ。王者とは清濁併せ呑む者でないと、なれないからな。そういう知識は必要だ。そしてジークはそれを見事に会得していた……素晴らしいことだ。イルナ、君に任せて良かったと心から思っている。丁度今、セベール家には私から難しい依頼をしていてな。もしグレリオが死んでいれば……その話も消えていたかもしれない」

 ジルスが、安堵の表情を浮かべた。

 今後の軍事力に関わる依頼だけあり、今回の暗殺騒動は王の失策でもあった。まさかここまで直接的な手を出してくるとは想定していなかったからだ。

 だが、息子とその教育係のおかげで助かったのだ。

 まさか、早くも息子にこういった国政に関わることで助けられるとは思わず、予想外の成長に父親としても喜びも感じていた。

「グレリオが、すぐにジークへと直接お礼を言いたいと言っているが、身体が癒えるまで一ヶ月は掛かるそうだ。これも何かの経験だ。彼の体調が戻ったらお前の方からセベール家に出向くと良い。イルナ、付いていってくれるか?」
「勿論です」
「では、そういうことで」
「あの……私はまだ教育係でよろしいのですか? ジーク様の城下町探索を勧めたのも私です」
「分かっている。が、今回は不問とする……ふっ、次はバレないようにな」

 最後の言葉を小声で囁くように言うと、ジルスは玉座から立ち上がり、退室した。

「……イルナ先生。僕、初めて褒められたよ! これも全部先生のおかげだ!」
「あー……うん……そうだね……」
「先生?」
「大丈夫……また後でね……」
「あ、はい!」

 ふらふらとイルナは部屋から去ると、足早に王城の離れにある塔の上にある自室へと籠もった。

 そして壁に頭をゴンと叩き付けた。

「なんでえええええ!? なんかジークが有能みたいになってるの!?」
「……嬉々としてアレコレ教えるからだよ……弟子じゃないんだから。毒のこととか暗殺のこととか」

 スズメのザザがイルナの様子を見て、ため息をついた。

「私が褒められたのは良いとして、ジークまでなんか自信ついちゃってるし!? 虫好きゲテモノ王子から一気に陰陽併せ持つ有能王子に変わったじゃない!? というか一回聞いただけで覚えるなんてあの子記憶力良いわね。油断したあ」
「……そもそも城下町に行かせたのも悪手だよ。彼、なんか色んな知識をどんどん吸収してるよ。王城に閉じこもって勉強するよりよっぽど身になってる」
「それじゃ、駄目なのよおおお! もっと城下町で悪い友達作ってさ! 酒と薬に溺れるとかそういうのが良いの!」
「十二歳の男子がするわけないでしょ……」
「計画変更だわ……知識は今さら消せないから……次はせめて剣とかの訓練をさせないようにしましょう。そして弱っちい、非力な王子としてイメージダウンを図るのよ! 更に決闘かなんかで平民に負けて赤っ恥とか!」
「上手くいくかなあ……」
「今度は大丈夫よ! あとは適当に柄の悪い連中を使って、ジークに喧嘩をふっかけましょう。ふふふ、泣きべそかいて地面に這いつくばって、きっと自信をなくすはずよ!」
「まあ、頑張って~」
「あんたもやるのよ!」
「はいはい」

 イルナの反省会はその日の朝まで続いたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

氷のメイドが辞職を伝えたらご主人様が何度も一緒にお出かけするようになりました

まさかの
恋愛
「結婚しようかと思います」 あまり表情に出ない氷のメイドとして噂されるサラサの一言が家族団欒としていた空気をぶち壊した。 ただそれは田舎に戻って結婚相手を探すというだけのことだった。 それに安心した伯爵の奥様が伯爵家の一人息子のオックスが成人するまでの一年間は残ってほしいという頼みを受け、いつものようにオックスのお世話をするサラサ。 するとどうしてかオックスは真面目に勉強を始め、社会勉強と評してサラサと一緒に何度もお出かけをするようになった。 好みの宝石を聞かれたり、ドレスを着せられたり、さらには何度も自分の好きな料理を食べさせてもらったりしながらも、あくまでも社会勉強と言い続けるオックス。 二人の甘酸っぱい日々と夫婦になるまでの物語。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...