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続編 第一章 初恋と再会 (怜一郎side)
続6.バーで軽く飲まないか
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目の前の天真さんは俺にピアノを教えてくれていた頃のように作り物みたいに美しい笑顔を浮かべている。10歳上だから36歳か、あの頃と何も変わらずやっぱり凛としたきれいな人だ。
凛と美しい顔立ちと、自信に満ちた「支配者」という雰囲気がたまらない。そう、天真さんは今でも俺の中でドタイプな男性なんだ。
「驚いた、まさか怜一郎とこんなところで再会するなんて。ふふ、君はあの頃のままだな」
天真さんこそ相変わらずきれいです……と思いながらも口から言葉が出ない。当時の「あの記憶」が蘇り、俺は妙な緊張で背中に汗をかいた。胸がドクドクと騒いでいる。俺は彼に微笑んで見せるだけで精一杯だった。
天真さんはマルチな才能の持ち主で、現在はピアニストとしてだけじゃなく画家としても活躍し、世界的に有名になっている。数年前からメディアでも取り上げられているのを日本にいた頃から俺も目にしていた。そういえば雑誌の記事を見た際にニューヨーク在住と書いてあったなと今になって思い出した。
天真さんの連れらしき男性が、俺たちの元へ近寄ってきた。
「天真、どうしたんだい?」
「古い知り合いさ。学生時代にアルバイトでピアノを教えていたときの教え子なんだ」
連れの男性に俺のことをそう説明した。天真さんは俺に男性のことを仕事仲間だと言った。
「店はもう閉店みたいだが、この後予定は?」
天真さんにそう聞かれて俺は胸が高鳴った。
「予定はないです」
「じゃあバーで軽く飲まないか? 店の外で待ってるよ」
嬉しくてたまらなかった。俺は店長に挨拶して店を出た。
天真さんは行きつけだというバーへ連れて行ってくれた。上品で洗練された静かな店だった。
「宝条ホールディングスの御曹司だった君が、まさかこの街のレストランでピアニストをしているなんて夢にも思わなかったよ」
彼のお気に入りだというカクテルを飲みながら俺たちは談笑した。
「色々あって、俺はもう親の会社にいられなくなったんです」
「……まあ、生きていれば色々なことがあるからね。でもよかったじゃないか、そのおかげでピアノを生業にできたんだから。当時、僕は君のピアノに対するなにかこう、特別な情熱みたいなものを感じていたからね。僕が君にピアノを教えていたのは何年前だ? 10年、いやもっとか……」
「20年になりますね。俺は当時小学校へ上がったばかりでしたから」
「そうだね、僕が当時高校生で大学へ進むタイミングでアルバイトを辞めたんだったね」
カランとグラスの中の氷が解けて音を立てた。
カウンター席の隣に座る天真さんの顔を俺はうっとりと眺めた。笑顔の仮面の下の冷徹な彼の本性はきっと当時のままだろう。彼のお仕置きを思い出して俺はめまいを感じた。
凛と美しい顔立ちと、自信に満ちた「支配者」という雰囲気がたまらない。そう、天真さんは今でも俺の中でドタイプな男性なんだ。
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天真さんこそ相変わらずきれいです……と思いながらも口から言葉が出ない。当時の「あの記憶」が蘇り、俺は妙な緊張で背中に汗をかいた。胸がドクドクと騒いでいる。俺は彼に微笑んで見せるだけで精一杯だった。
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「予定はないです」
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嬉しくてたまらなかった。俺は店長に挨拶して店を出た。
天真さんは行きつけだというバーへ連れて行ってくれた。上品で洗練された静かな店だった。
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彼のお気に入りだというカクテルを飲みながら俺たちは談笑した。
「色々あって、俺はもう親の会社にいられなくなったんです」
「……まあ、生きていれば色々なことがあるからね。でもよかったじゃないか、そのおかげでピアノを生業にできたんだから。当時、僕は君のピアノに対するなにかこう、特別な情熱みたいなものを感じていたからね。僕が君にピアノを教えていたのは何年前だ? 10年、いやもっとか……」
「20年になりますね。俺は当時小学校へ上がったばかりでしたから」
「そうだね、僕が当時高校生で大学へ進むタイミングでアルバイトを辞めたんだったね」
カランとグラスの中の氷が解けて音を立てた。
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