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番外編・取り違えと運命の人 小話集
195 取り違えられた二人のその後 ⑤ (その2 おっちゃん再び・3)
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「ジュリエッタはあなたが来るのをとても楽しみにしてるんです」
「え……?」
おっちゃんは眉根を寄せて、困惑した表情を浮かべる。いつもの陽気さが感じられない。
「俺も、あなたとお会いできるの、いつも、とても嬉しいです」
俺がそう言うと、おっちゃん、ぽつりとつぶやいた。
「そんな風に言ってもらったの、久しぶりだな……」
「え?」
今度は俺が驚く番だ。むしろ好かれるタイプだろう、おっちゃん。
「なにか、あったんですか?」
とりあえず訊ねてみると、
「……息子の嫁さんから、どうも嫌われちゃってなあ」
おっちゃんが苦笑しつつ話してくれる。
「うちの息子にはもったいないくらい家柄のいい教養のあるお嬢さんでな。内気な息子がようやく嫁さん見つけてきたもんだから、嬉しくて、ついかまいすぎちゃったんだろう。息子から『どうも緊張するみたいだから、家に来るの、もう少し控えてくれないか』って頼まれちまって……。息子の嫁さん、ちょっと嬢ちゃんに似たタイプなもんだから……」
だから、来るのが迷惑だろうと思ってしまったのだろうか。
「来てくださいよ! 俺達は来てほしいです! あの他人に臆病なジュリエッタが、自分から声かける人なんて他にいないし、あなたが来た日は、毎回、その後ごきげんなんです」
「……そうなのか?」
「ええ。だから、親友の依頼だからじゃなくて、俺達に会うために来てください! 時間がおありなら、今度は家でお茶でも飲んでってほしいです!」
あなたは、本当に貴重な存在だから。そんな思いを込めて訴える。
少しの沈黙の後、おっちゃんは口を開き、こう言った。
「嬢ちゃんが、幸せいっぱいな顔してる訳がわかったよ。ルーカ、お前、いい男だな」
「……そりゃ、なんたって、自慢の夫ですから」
違いない、とおっちゃんは破顔した。
「あの、今更ですけど」
「なんだい?」
「あなたのお名前って、なんですか?」
おっちゃんはいつも長居をしないから、つい、聞きそびれていたのだ。
「……俺は、アントニオだ」
「アントニオさん、これからもどうぞよろしく!」
手を差し出すと、アントニオさんはニヤリと笑って、がしっと握ってくれた。
「おう! これからもよろしくな!」
そう言うと、アントニオさんは笑顔で去っていった。
「え……?」
おっちゃんは眉根を寄せて、困惑した表情を浮かべる。いつもの陽気さが感じられない。
「俺も、あなたとお会いできるの、いつも、とても嬉しいです」
俺がそう言うと、おっちゃん、ぽつりとつぶやいた。
「そんな風に言ってもらったの、久しぶりだな……」
「え?」
今度は俺が驚く番だ。むしろ好かれるタイプだろう、おっちゃん。
「なにか、あったんですか?」
とりあえず訊ねてみると、
「……息子の嫁さんから、どうも嫌われちゃってなあ」
おっちゃんが苦笑しつつ話してくれる。
「うちの息子にはもったいないくらい家柄のいい教養のあるお嬢さんでな。内気な息子がようやく嫁さん見つけてきたもんだから、嬉しくて、ついかまいすぎちゃったんだろう。息子から『どうも緊張するみたいだから、家に来るの、もう少し控えてくれないか』って頼まれちまって……。息子の嫁さん、ちょっと嬢ちゃんに似たタイプなもんだから……」
だから、来るのが迷惑だろうと思ってしまったのだろうか。
「来てくださいよ! 俺達は来てほしいです! あの他人に臆病なジュリエッタが、自分から声かける人なんて他にいないし、あなたが来た日は、毎回、その後ごきげんなんです」
「……そうなのか?」
「ええ。だから、親友の依頼だからじゃなくて、俺達に会うために来てください! 時間がおありなら、今度は家でお茶でも飲んでってほしいです!」
あなたは、本当に貴重な存在だから。そんな思いを込めて訴える。
少しの沈黙の後、おっちゃんは口を開き、こう言った。
「嬢ちゃんが、幸せいっぱいな顔してる訳がわかったよ。ルーカ、お前、いい男だな」
「……そりゃ、なんたって、自慢の夫ですから」
違いない、とおっちゃんは破顔した。
「あの、今更ですけど」
「なんだい?」
「あなたのお名前って、なんですか?」
おっちゃんはいつも長居をしないから、つい、聞きそびれていたのだ。
「……俺は、アントニオだ」
「アントニオさん、これからもどうぞよろしく!」
手を差し出すと、アントニオさんはニヤリと笑って、がしっと握ってくれた。
「おう! これからもよろしくな!」
そう言うと、アントニオさんは笑顔で去っていった。
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