【R18】取り違えと運命の人

テキイチ

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番外編・取り違えと運命の人 小話集

157 結婚しました ①

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リカルドがやってきた翌日の話。

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「ジュリエッタ。今日なんか予定ある?」

 いろいろ洗濯をして、遅めの朝食をとっていると、リカルドから話しかけられた。

「ううん。特には」
「だったら、案内してほしいんだけど、いい?」
「案内?」

 この町の観光でもしたいのかしら。わざわざ案内するほど大きな町でもないけど。

「役所と職安に行きたいんだ。なるべく早く働き始めたいし、平日に事務手続きをいろいろ済ませておきたくて」

 まさかの現実的なご提案。

「確かに、これから俺も働くからって言ってた、ね……」

 言われたシチュエーションと、朝のいちゃいちゃができなくなるという文脈だったのを思い出し、固まってしまう。

「ジュリエッタ?」

 私を見て、リカルドが小首をかしげる。

「わかった。役所と職安、行こう」
「ありがとう! 住民票移して、俺、きちんとこの町の住人になる!」

 にっこにこの笑顔で答えられた。

「すごい笑顔だけど、住民票移すのが、そんなに楽しみなの?」
「うん!」

 事務手続きをこんなに楽しみにできるなんて、奇特な。

 それにしても職安かあ。リカルドはそもそもなにで生計を立てている人なんだろう。疑問に思ったので、率直に訊ねてみることにした。

「ちなみに、リカルドの職業はなんなの?」
「大工!」
「大工……」

 なるほど、ガテン系。がっしりした体型に納得した。

「うん。家の修理とかあったら遠慮なく言ってね!」
「ありがとう。助かる」

 たいていのことは自分でやる方だけど、家の修理はさすがにできないので、とても助かるし、働く気バリバリの人で安心した。

「ジュリエッタの職業はなに?」

 今度はリカルドが私に訊ねてくる。

「私? 私はお針子。婦人服を専門に縫ってる」
「へええ!すごい!じゃあ、可愛い服、いっぱい着てるんだね!」

 リカルドが目を輝かせて言う。職業の話だったはずなのに、私自身の、服?

「いいえ? 私自身は全然。服も安くてシンプルなの買うし」
「え?」

 リカルドが腑に落ちない様子で私に問う。

「お針子さん、だよね?」
「うん」
「おしゃれに興味、ないの?」
「私の場合、家業というか、両親も兄さんもみんな服飾系で、特に他にやりたいこともなかったから。センスもそんなにないし。あと、服は買った方がコストかかんない」
「……謙遜、だよね?」

 全然納得してない様子だったので、論より証拠とばかりに自室に連れて行きクローゼットを見せると、リカルドはえらくがっかりしていた。一体なにを期待してたんだろう。
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