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後日譚・取り違えたその後の二人
115 その闇に射す光 ③
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翌朝、目覚めると私はベッドに一人残されていた。
隣にルーカがいないのは、思いのほかショックだった。幸せな気持ちで眠りについたのに、それはにせものだと現実をつきつけられたようで。もしルーカが戻ってこなかったとしても、元の状態に戻るだけで、おかしくなんかないのに。
「……起きよう」
考えても仕方ない。起き上がろうとふとシーツを見ると、破瓜の印で赤く染まっている。
元の状態とは、もう違うよ。
少し胸を締め付けられるような気持ちを味わいながら、シーツを外し、洗濯籠に投げ込む。
ぼんやりとシャワーを浴び、黒い服を身につける。昨日白い服を着たから、単なる順番だけど、なんだか喪に服するようで、気分が沈んだ。
昨日の残りでも食べればいいのだろうけれど、食欲なんか全然わかない。
なにをしていいかわからず、リビングのテーブルに着き、ぼんやりしているとひょっこりあらわれたルーカが、笑いながら声を掛けてきた。
「ようやく起きたのか、ねぼすけ」
「で、出かけるなら、ちゃんと知らせてからにしなさいよね!」
しまった。気が抜けたからか、思わずどなりつけるように言ってしまった。あわててルーカを見る。気にしてないのか、笑顔はむしろ深まっていて、ほっとする。
「悪い悪い。あんまりぐっすり寝てたから。町に出て、いろいろ用事済ませてきた」
「用事?」
「婚姻届出したり、住民票移したり、ギルドに登録したり、買い物したり」
「こ……婚姻届?」
予想外の言葉に、びっくりする。
「手続きいるだろ。魔法球があれば本人承諾済とみなされるから、俺一人でできることはやっといた」
「そ、そう……」
本当に、いいの? 私とずっと一緒にいるって、簡単に決めてしまって。そんな言葉が喉まで出かかるけど、訊ねる勇気なんて出ない。
「起きたらいなかったから、やり逃げされたとでも思った?」
にやにやした表情から察するに、ルーカは冗談で言ったのだろうけど、図星で二の句がつげない。私があまりにも黙っていたから、ルーカも察したのだろう。にやにや笑いが消え、ふてくされたような表情に変わった。
「……失礼な。俺、やり逃げとかしねーし。今までも、同意の上でしかしたことないし、彼女がいる時は彼女としかしねーよ」
それはきっと本当にそうなのだろう。ルーカが不実な人間だったら、もっと禍々しいオーラを纏っているだろうし、あんなに丁寧に抱いたりもしないと思う。でも、それと私とずっと一緒にいるかどうかは、全く別の話で。
「……バカ。婚姻届とか出したら、もう私としかできないじゃない」
つい、そんな言葉を口にしてしまう。私を配偶者にするって、他の女の子との可能性捨てちゃうってことなのに。
「まあ、そうだな。お前がやらせてくれんならな」
ルーカは、それの一体なにがおかしいんだ? と言わんばかりの表情で、飄々と皮肉を返してきた。
隣にルーカがいないのは、思いのほかショックだった。幸せな気持ちで眠りについたのに、それはにせものだと現実をつきつけられたようで。もしルーカが戻ってこなかったとしても、元の状態に戻るだけで、おかしくなんかないのに。
「……起きよう」
考えても仕方ない。起き上がろうとふとシーツを見ると、破瓜の印で赤く染まっている。
元の状態とは、もう違うよ。
少し胸を締め付けられるような気持ちを味わいながら、シーツを外し、洗濯籠に投げ込む。
ぼんやりとシャワーを浴び、黒い服を身につける。昨日白い服を着たから、単なる順番だけど、なんだか喪に服するようで、気分が沈んだ。
昨日の残りでも食べればいいのだろうけれど、食欲なんか全然わかない。
なにをしていいかわからず、リビングのテーブルに着き、ぼんやりしているとひょっこりあらわれたルーカが、笑いながら声を掛けてきた。
「ようやく起きたのか、ねぼすけ」
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しまった。気が抜けたからか、思わずどなりつけるように言ってしまった。あわててルーカを見る。気にしてないのか、笑顔はむしろ深まっていて、ほっとする。
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「用事?」
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「こ……婚姻届?」
予想外の言葉に、びっくりする。
「手続きいるだろ。魔法球があれば本人承諾済とみなされるから、俺一人でできることはやっといた」
「そ、そう……」
本当に、いいの? 私とずっと一緒にいるって、簡単に決めてしまって。そんな言葉が喉まで出かかるけど、訊ねる勇気なんて出ない。
「起きたらいなかったから、やり逃げされたとでも思った?」
にやにやした表情から察するに、ルーカは冗談で言ったのだろうけど、図星で二の句がつげない。私があまりにも黙っていたから、ルーカも察したのだろう。にやにや笑いが消え、ふてくされたような表情に変わった。
「……失礼な。俺、やり逃げとかしねーし。今までも、同意の上でしかしたことないし、彼女がいる時は彼女としかしねーよ」
それはきっと本当にそうなのだろう。ルーカが不実な人間だったら、もっと禍々しいオーラを纏っているだろうし、あんなに丁寧に抱いたりもしないと思う。でも、それと私とずっと一緒にいるかどうかは、全く別の話で。
「……バカ。婚姻届とか出したら、もう私としかできないじゃない」
つい、そんな言葉を口にしてしまう。私を配偶者にするって、他の女の子との可能性捨てちゃうってことなのに。
「まあ、そうだな。お前がやらせてくれんならな」
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