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後日譚・取り違えたその後の二人

114 その闇に射す光 ②

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「痛覚ないってことは、ちょっと乱暴にしてもいいんだよな?」

 行為の始まりは、はっきりいってサイテーだった。

「好きに、すれば」

 ルーカの下衆な言葉に、傷つかなかった訳じゃない。けれど、彼からは禍々しさも刺々しさも相変わらず感じないし、なによりやっぱり好感を抱いてしまっていたから、身体をゆだねることにした。嫌いな男から無理やり犯されるより、ずっとマシだもの。

 覚悟を決めていても、いざルーカのものが入ってきた時は、あまりの衝撃に身を固くしてしまった。
 痛い!
 私が初めて味わった痛覚は、破瓜の痛みだった。
 初めての痛みが、好意を抱いている男から女にされるためのものだなんて、ある意味幸せかもしれない。そう割り切ろうとした時、ルーカが声を掛けてきた。

「ジュリエッタ……? お前、強がってるけど、処女か? そんで、痛覚、つながってる?」

 心配そうに見つめてきて、いたたまれない気持ちになる。

「申告してくれてりゃ、もっと優しくしてやったのに」

 下衆なら、最後まで下衆であればいいのに。

「ごめんな」

 いろいろ言っていたルーカが、ポツリと謝ってきた。
 どういう、意味だろう。私への愛がないことに対してだったら、言葉にして思い知らされるのは、かえってつらいな、とぼんやり思う。

「初めてなんだし、もっとロマンティックな感じがよかったよな」

 予想外の言葉にびっくりして、思わずルーカを見た。

「ここまでの時間はもう巻き戻せないし、俺あんまりそういうムード作りうまくねーけど、今から少しでも素敵な時間になるようにがんばってみる」

 ルーカは、困惑とか憐みではなくて、これはなんとかすべきという意欲にあふれた表情を浮かべていた。

 単に性欲の捌け口として消費するでもなく、憐みを装いながら見下すのでもなく、まるで恋人のように、私をちゃんと初めての女の子として扱おうとしてくれてるんだ。そのことに少し心が温かくなったと同時に、妙な実直さになんだかおかしくなってしまって、思わず笑ってしまった。

「笑うと可愛いな、お前」

 初めて見たルーカの優しい顔。思わず見とれてしまうと、キスが降ってきた。ふれるだけだったキスが、繰り返されるうちにどんどん深まっていって、すごくどきどきする。今の状況は、たぶん、私が夢見ていた初めてのシチュエーションに近い。大好きな人の愛情を感じながら優しく丁寧に抱かれたらいいな、なんて叶いっこない夢。もちろんルーカに私への愛情なんてないけど、他はほぼ揃ってる。

「いっぱい、キスして……」

 せめて、今だけでも、私に錯覚させてほしい。そんな願いを込めてつぶやいた。
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