54 / 201
本編・取り違えと運命の人
053 お誕生日おめでとう ⑨
しおりを挟む
「お料理、びっくりするほどおいしかった……!」
「おいしかったね! さすが老舗。気に入ってくれた?」
「気に入るも気に入らないも、もちろんすごくよかった!」
「そっか。じゃあ、来年もここでお祝いしよう!」
「ええっ! いいの?」
「うん。ジュリエッタが気に入ってくれたなら、もちろん」
こともなげにリカルドは言い、にこにこ笑う。
「ええと、そろそろ帰りの馬車呼んでもらおうか」
リカルドがお店の人に頼もうとするので、あわてて止める。
「よかった! 帰りは馬車頼んでなかったんだね」
「うん。食べ終わる時間が読めなかったから」
「なら、歩いて帰りたい」
リカルドが不思議そうな顔をする。
「え? 結構距離あるよ?」
「ごはんいっぱい食べたから腹ごなしにちょうどいいし、それに」
「それに?」
「……誕生日とか、なんか記念日に、手をつないで歩くの、憧れだったの」
「ジュリエッタ……」
「だから、私のわがまま、叶えてくれる?」
「全然わがままじゃないよ。もちろん喜んで」
リカルドがにっこり微笑んで快諾してくれる。
よかった。手をつないで歩くことに憧れてたのは確かに本当だけど、これ以上リカルドにお金かけさせたくない。
「じゃあ、お嬢さん、お手をどうぞ」
支払いを終え、外に出てきたリカルドが手を差し出してくれる。私が手をちょこんと乗せると、そのままリカルドは私の手を握りこんで指を探り、恋人つなぎにした。
「ありゃ、エスコートっぽいのじゃないんだ」
「最初はエスコートっぽくしようかと思ったけど、恋人つなぎの誘惑に勝てなかった」
「あはは! うん。私も恋人つなぎがいい」
指が絡まってるの、なんだか気持ちもくすぐったくなる。
「なんだかすごく幸せな気分。ほんとにありがとう、リカルド」
リカルドの顔を見ながら微笑みかけると、また、リカルドの様子が変になる。
「うーん、おかしいな」
「? さっきから、どうしたの? なんかあった?」
「今日は、俺、ジュリエッタをお祝いする側のはずなのに、なんか、ことごとく、俺の方が喜ばされてる」
様子変だったの、そこに困惑してたんだ! 思わず笑ってしまう。
「もう……! それ、最高の誕生日プレゼントだよ! リカルド」
「あれ? また?」
ますます困惑の表情を深めるリカルドに、笑いが止まらなくなってしまった。
「ほんと嬉しい! ありがとうリカルド!」
微妙な表情を浮かべるリカルドとゆっくり歩いて家に帰るのは、本当に楽しくて、とても嬉しかった。だって、いつもリカルドからもらってばかりなのに、私がリカルドを喜ばせられたんだもの。
「おいしかったね! さすが老舗。気に入ってくれた?」
「気に入るも気に入らないも、もちろんすごくよかった!」
「そっか。じゃあ、来年もここでお祝いしよう!」
「ええっ! いいの?」
「うん。ジュリエッタが気に入ってくれたなら、もちろん」
こともなげにリカルドは言い、にこにこ笑う。
「ええと、そろそろ帰りの馬車呼んでもらおうか」
リカルドがお店の人に頼もうとするので、あわてて止める。
「よかった! 帰りは馬車頼んでなかったんだね」
「うん。食べ終わる時間が読めなかったから」
「なら、歩いて帰りたい」
リカルドが不思議そうな顔をする。
「え? 結構距離あるよ?」
「ごはんいっぱい食べたから腹ごなしにちょうどいいし、それに」
「それに?」
「……誕生日とか、なんか記念日に、手をつないで歩くの、憧れだったの」
「ジュリエッタ……」
「だから、私のわがまま、叶えてくれる?」
「全然わがままじゃないよ。もちろん喜んで」
リカルドがにっこり微笑んで快諾してくれる。
よかった。手をつないで歩くことに憧れてたのは確かに本当だけど、これ以上リカルドにお金かけさせたくない。
「じゃあ、お嬢さん、お手をどうぞ」
支払いを終え、外に出てきたリカルドが手を差し出してくれる。私が手をちょこんと乗せると、そのままリカルドは私の手を握りこんで指を探り、恋人つなぎにした。
「ありゃ、エスコートっぽいのじゃないんだ」
「最初はエスコートっぽくしようかと思ったけど、恋人つなぎの誘惑に勝てなかった」
「あはは! うん。私も恋人つなぎがいい」
指が絡まってるの、なんだか気持ちもくすぐったくなる。
「なんだかすごく幸せな気分。ほんとにありがとう、リカルド」
リカルドの顔を見ながら微笑みかけると、また、リカルドの様子が変になる。
「うーん、おかしいな」
「? さっきから、どうしたの? なんかあった?」
「今日は、俺、ジュリエッタをお祝いする側のはずなのに、なんか、ことごとく、俺の方が喜ばされてる」
様子変だったの、そこに困惑してたんだ! 思わず笑ってしまう。
「もう……! それ、最高の誕生日プレゼントだよ! リカルド」
「あれ? また?」
ますます困惑の表情を深めるリカルドに、笑いが止まらなくなってしまった。
「ほんと嬉しい! ありがとうリカルド!」
微妙な表情を浮かべるリカルドとゆっくり歩いて家に帰るのは、本当に楽しくて、とても嬉しかった。だって、いつもリカルドからもらってばかりなのに、私がリカルドを喜ばせられたんだもの。
0
お気に入りに追加
310
あなたにおすすめの小説
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
【完結】お義父様と義弟の溺愛が凄すぎる件
百合蝶
恋愛
お母様の再婚でロバーニ・サクチュアリ伯爵の義娘になったアリサ(8歳)。
そこには2歳年下のアレク(6歳)がいた。
いつもツンツンしていて、愛想が悪いが(実話・・・アリサをーーー。)
それに引き替え、ロバーニ義父様はとても、いや異常にアリサに構いたがる!
いいんだけど触りすぎ。
お母様も呆れからの憎しみも・・・
溺愛義父様とツンツンアレクに愛されるアリサ。
デビュタントからアリサを気になる、アイザック殿下が現れーーーーー。
アリサはの気持ちは・・・。
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる