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本編・取り違えと運命の人
027 リカルドの本当の誕生日 ①
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今日は俺の誕生日だ。自分から言うのは、なんだか祝えと強要しているようで気が進まないので、結局明かさなかった。だからジュリエッタはなにも知らない。
「可愛いなあ……」
ジュリエッタが無防備に眠っているので、そっと頬をなで、髪を指に絡める。愛しい女性が幸せそうに眠っている姿を自由に眺められるなんて、俺はほんとに幸せ者だ。
眠っているジュリエッタの唇をそっと奪い、にやにやしてしまう。ああ、もう、いつ見ても可愛い。ずっと眺めてたいな。
そんな俺の幸せを邪魔するように、目覚まし時計が容赦なく鳴り響いた。
ジュリエッタがゆっくり手を伸ばしてベルを止める。
「ん……おはよ……」
ジュリエッタは少し朝に弱い。でも、その気だるい感じが俺はとても好き。
「おはよう」
隙だらけのジュリエッタに再びキスを落とす。寝ぼけていたジュリエッタも少し眼が冴えた模様。
「な、なあに? どうしたの?」
「ん。なんかしたくなって。だめだった?」
「別にいいけど……」
「やった! お許しを得た!」
もう一度キスをし、ジュリエッタをゆっくり抱きしめる。
「うう? ほんと、朝からどうしたの?」
「んー、起きたらジュリエッタが隣にいるって、幸せだなあって、喜びをかみしめてた」
「……変なリカルド」
「変でいいよ」
変と思われるだけで、抱きしめてキスできるならいくらでも。朝からいちゃいちゃできるって、ほんと最高だな、なんて思いながら抱きしめ続ける。
「そろそろ朝ごはん作らないと」
ジュリエッタはそう言って、そっけなく俺の腕から抜け出す。
「あ!」
「なあに?」
「今日の服、リクエストしていい?」
「服って、私の?」
「そう。ジュリエッタの」
「いいけど、どれ?」
「ええと。水色の……」
ジュリエッタのクローゼットの左端にあるトップスを指さす。
「ああ、ちょっと女の子っぽすぎて、全然着てないやつ」
「もったいない! すっごく似合いそうなのに!」
「なんか、照れるんだもの」
「でも、俺、あれがいい!」
「……うーん、まあ、たまにはいいかな。タンスの肥やしになりかけてたし」
「わーい、やった!」
「それくらいでおおげさ……」
俺はジュリエッタのクローゼットの中身を全て知っている。それは、この家に来た翌日、職業を訊ねたところ、お針子と返ってきたからだ。
『じゃあ、可愛い服、いっぱい着てるんだね!』
わくわくしながら訊ねたのに。
『いいえ? 私自身は全然。服も安くてシンプルなの買うし』
瞬殺。普通、お針子さんって「服やおしゃれが好きで!」とかいう感じで志すものなんじゃないんですか? っていうか、服、買うの?
『私の場合、家業というか、両親も兄さんもみんな服飾系で、特に他にやりたいこともなかったから。センスもそんなにないし。あと、服は買った方がコストかかんない』
またまたご謙遜でしょー? と言うと、ジュリエッタは無言でクローゼットの中を見せてくれた。ガチでそっけない服ばかりで、俺はちょっとしょんぼりしてしまったのだった。
『服、プレゼントしたい!』
可愛い服を着たジュリエッタが見たいと心底思った俺は、思わずそう叫んでいた。
でも、ジュリエッタは。
『えー。クローゼット狭いし、服増えると管理とか整理とか面倒になるからいいよ』
サラリと断ってきた。凹む。
今日リクエストした服は、数少ない女の子らしい雰囲気のもの。似合いそうなのに、俺と暮らし始めてからまだ一度も着たことがなくて、すごく見てみたかったんだ。
ジュリエッタは、そのままでももちろんとても可愛い。でも、俺は、もっともっといろんなジュリエッタを見てみたいんだ。
「可愛いなあ……」
ジュリエッタが無防備に眠っているので、そっと頬をなで、髪を指に絡める。愛しい女性が幸せそうに眠っている姿を自由に眺められるなんて、俺はほんとに幸せ者だ。
眠っているジュリエッタの唇をそっと奪い、にやにやしてしまう。ああ、もう、いつ見ても可愛い。ずっと眺めてたいな。
そんな俺の幸せを邪魔するように、目覚まし時計が容赦なく鳴り響いた。
ジュリエッタがゆっくり手を伸ばしてベルを止める。
「ん……おはよ……」
ジュリエッタは少し朝に弱い。でも、その気だるい感じが俺はとても好き。
「おはよう」
隙だらけのジュリエッタに再びキスを落とす。寝ぼけていたジュリエッタも少し眼が冴えた模様。
「な、なあに? どうしたの?」
「ん。なんかしたくなって。だめだった?」
「別にいいけど……」
「やった! お許しを得た!」
もう一度キスをし、ジュリエッタをゆっくり抱きしめる。
「うう? ほんと、朝からどうしたの?」
「んー、起きたらジュリエッタが隣にいるって、幸せだなあって、喜びをかみしめてた」
「……変なリカルド」
「変でいいよ」
変と思われるだけで、抱きしめてキスできるならいくらでも。朝からいちゃいちゃできるって、ほんと最高だな、なんて思いながら抱きしめ続ける。
「そろそろ朝ごはん作らないと」
ジュリエッタはそう言って、そっけなく俺の腕から抜け出す。
「あ!」
「なあに?」
「今日の服、リクエストしていい?」
「服って、私の?」
「そう。ジュリエッタの」
「いいけど、どれ?」
「ええと。水色の……」
ジュリエッタのクローゼットの左端にあるトップスを指さす。
「ああ、ちょっと女の子っぽすぎて、全然着てないやつ」
「もったいない! すっごく似合いそうなのに!」
「なんか、照れるんだもの」
「でも、俺、あれがいい!」
「……うーん、まあ、たまにはいいかな。タンスの肥やしになりかけてたし」
「わーい、やった!」
「それくらいでおおげさ……」
俺はジュリエッタのクローゼットの中身を全て知っている。それは、この家に来た翌日、職業を訊ねたところ、お針子と返ってきたからだ。
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わくわくしながら訊ねたのに。
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でも、ジュリエッタは。
『えー。クローゼット狭いし、服増えると管理とか整理とか面倒になるからいいよ』
サラリと断ってきた。凹む。
今日リクエストした服は、数少ない女の子らしい雰囲気のもの。似合いそうなのに、俺と暮らし始めてからまだ一度も着たことがなくて、すごく見てみたかったんだ。
ジュリエッタは、そのままでももちろんとても可愛い。でも、俺は、もっともっといろんなジュリエッタを見てみたいんだ。
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