【R18】取り違えと運命の人

テキイチ

文字の大きさ
上 下
29 / 201
本編・取り違えと運命の人

028 リカルドの本当の誕生日 ②

しおりを挟む
 約束(?)通り、ジュリエッタは俺がリクエストした水色の服を着てくれて、朝食を作りに台所へ向かった。いきなりのリクエストにも対応してくれて、ジュリエッタ、ほんと優しいな。その間、俺も着替えたり、出勤前の持ち物最終チェックをしたりする。

「ごはんできたよー」

 ジュリエッタが声をかけてくれる。

「ほーい!」

 ジュリエッタのごはんで一日が始まるって、ほんとに幸せだ。にやにやするのを抑えきれない。いそいそと食卓へ向かう。

「今日もすっごくおいしい……!」
「それは、ありがとう」

 俺の言葉にジュリエッタが照れて少し赤くなってる。可愛い。
 おいしいごはんがたくさんあって、作ってくれたのが愛しいジュリエッタで、向かい合って一緒に食べられて、しかも俺のリクエストした服を着てくれてるし、めちゃくちゃ似合ってて可愛くて、嬉しくてたまんない、とか、ほんともう、幸せすぎてどうしよう。

「なにかあった?」
「え?」
「すごくにこにこしてる」

 ははは、やっぱり顔の緩みは隠せないんだ。

「うん、いいことあった!」
「ふうん? よかったね?」

 腑に落ちないけどまあいいか、みたいな感じで、ジュリエッタは食事に戻る。

「じゃ、行ってきます!」

 そろそろ出ないと間に合わない時間。名残惜しいけど、職場へ向かうことにする。

「行ってらっしゃい」

 笑顔でジュリエッタが見送ってくれる。ああ、可愛いなあ。愛しさが込み上げて、思わず抱きしめてキスを落としていた。

「……リカルド?」
「やっぱりこの服、すごく似合うよ。とても可愛い」
「え、と……ありがとう」

 ジュリエッタ、照れて赤くなってる。ますます可愛い。

「じゃ、ほんとに行ってきます!」

 俺はほとんどスキップせんばかりに、職場へと向かっていた。



 午前中一心不乱に働いて昼休み。現場近くの定食屋でごはんを食べ、残りの時間をぼんやり過ごす。誰にも誕生日を告げていないから、今日お祝いされることはない。考えてみると、毎年、俺、いろんな人にお祝いされてたんだな。どの誕生日も楽しい思い出ばかりだ。

 祝われる日ではない、誕生日の本質とは。ふと、そんなことが頭をよぎる。

 今、俺はものすごく幸せで、この幸せは生まれてきたからこそ享受できるもので。幸せだと感じられるのも生きているからで。そう考えると、父ちゃんと母ちゃんに感謝しかない。

 そっか、感謝する日なんだ。命をさずけてくれて一生懸命育ててくれた父ちゃんと母ちゃんに。いろいろと勉強を教えてくれた先生に。俺ら一家を見守ってくれた故郷の町のみなさんに。こっちに来るまで遊んでくれた友達に。そして、愛しいジュリエッタに。誰が欠けても今の俺はない。

 俺は今、小さい頃からの憧れだった大工として働いている。毎日充実してて、とても楽しい。仕事があって、それが自分の好きな、ずっとやりたかったことなのは、本当に幸せだと思う。これが天職だったなら、とても嬉しい。

 俺の思考を遮るように、サイレンが鳴る。

「あ、もう、時間だ。戻らなきゃ」

 午後からもがんばろう、そう思いを新たにして、持ち場へと向かった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。

恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。 パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

淡泊早漏王子と嫁き遅れ姫

梅乃なごみ
恋愛
小国の姫・リリィは婚約者の王子が超淡泊で早漏であることに悩んでいた。 それは好きでもない自分を義務感から抱いているからだと気付いたリリィは『超強力な精力剤』を王子に飲ませることに。 飲ませることには成功したものの、思っていたより効果がでてしまって……!? ※この作品は『すなもり共通プロット企画』参加作品であり、提供されたプロットで創作した作品です。 ★他サイトからの転載てす★

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

騎士団長のアレは誰が手に入れるのか!?

うさぎくま
恋愛
黄金のようだと言われるほどに濁りがない金色の瞳。肩より少し短いくらいの、いい塩梅で切り揃えられた柔らかく靡く金色の髪。甘やかな声で、誰もが振り返る美男子であり、屈強な肉体美、魔力、剣技、男の象徴も立派、全てが完璧な騎士団長ギルバルドが、遅い初恋に落ち、男心を振り回される物語。 濃厚で甘やかな『性』やり取りを楽しんで頂けたら幸いです!

パーキングエリアに置いていかれたマシュマロボディの彼女は、運ちゃんに拾われた話

狭山雪菜
恋愛
詩央里は彼氏と1泊2日の旅行に行くハズがくだらないケンカをしたために、パーキングエリアに置き去りにされてしまった。 パーキングエリアのフードコートで、どうするか悩んでいたら、運送会社の浩二に途中の出口に下ろすと言われ、連れて行ってもらう事にした。 しかし、2人で話していく内に趣味や彼に惹かれていって… この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

処理中です...