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本編・取り違えと運命の人
005 選択 ②
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「ジュリエッタ……」
ささやかれた次の瞬間、軽くついばむようなキスを落とされる。び、び、びっくりした!
「ジュリエッタ、目、まんまる……」
リカルドさんがふにゃりと笑う。
「だ、だ、だって! いきなり、するから……!」
「だって、したかったから……」
そう言うと、リカルドさんはゆっくりと私を抱きしめた。うわ……!
「ねえ、ジュリエッタ。一つお願いがあるんだけど」
しばらく私を抱きしめたままじっとしていたリカルドさんが、小さな声で言う。
「な、なんですか?」
「……名前、呼んでほしい…………」
身体越しにリカルドさんの鼓動が伝わってくる。かなり早い。どきどきしてるの、私だけじゃないんだ。思わずリカルドさんの顔を見上げる。
「呼んでないの、バレてました……?」
「うん。いつ、呼んでくれるかなって、ちょっと、期待してた……」
あ……。あんなに笑顔の人に、こんなさびしげな顔をさせてしまった……。これまでの満面の笑みとのギャップに、なんだかひどく胸が痛んだ。
「ご、ごめんなさい。ごめんなさい! その、嫌とかじゃなくて……。私、男の人と付き合ったことなくて、そういうの慣れてないから、なんか……恥ずかしかったんです」
しばしの沈黙ののち、リカルドさんが一言。
「リカルド」
「うぇ?」
「リカルド。言ってみて」
「リカ、ルド」
「続けて」
「リカル、ド。……リカルド」
「へへっ、呼んでもらっちゃった!」
リカルドさんはとっても嬉しそうに笑った。そして、もう一度私を抱きしめる。
「……今日、初めて会ったからさ。まだ無理っていうなら、もちろんそれでもいいんだ」
耳元でささやくように言われて、どきどきする。
「でも、俺は、一目で君のこと、大好きになってしまった。できれば、したい」
「え……っと」
「その、今日、よければ…………もう一度、名前呼んで」
ぎゅっと抱きしめられているから、リカルドさんの顔は見えない。でも、きっと、さっきみたいに、さびしげな顔をしてるんだと思う。声が、身体が、震えてる。
嫌だな。リカルドさんには、ずっと笑顔でいてほしい。あの、おひさまみたいな笑顔で。そんな思いが込み上げてきて、えーい、女は度胸! ともう一度、お風呂場のテンションに戻る。
「……私の相手、もの静かで大人な感じの人がいいかなあ、あまりにも元気なタイプだと、なに話していいかわかんないし、と、思っていました。だから、最初は、なんだかテンション高くて、どうしようかと」
ははは、と力ない笑い声が聞こえる。
「でも、一緒にいるとなんだかいつのまにか時間が過ぎてるし、とても気配りが細やかな人だって気づいたの。『まだ無理っていうなら、それでもいい』とか、逃げ道まで用意してくれたりして。わざわざそんなこと言わずに、始めてしまったっていいはずなのに」
笑い声が止まってしまった。かまわず続ける。
「そんな、おひとよしとなら、きっと大丈夫って思ったの…………リカルド」
この時から、私の中で、彼の名前が呼び捨てに変わったから、きっとターニングポイントだったんだと思う。
「ジュリエッタ……」
かすれた声が聞こえたので、顔を見ようと少し身体を動かすと、リカルドの力が抜けて、解放された。
「拒まれるかなって、思った」
「拒まなかったわ」
リカルドが少し赤くなって呆けてるので、顔を両手で挟み、私からそっとキスをした。した後、恥ずかしくなって、つい下向いちゃったけど。
「……女の子にここまでしてもらって、勇気出ないとか、男がすたるなあ」
ゆっくりと、リカルドから押し倒される。
「お許しを得たので。嫌だったら、言ってね」
この期に及んで、また、逃げ道を作ってくれちゃうリカルドに、くすりと笑ってしまう。
「やっぱり、ジュリエッタ、笑った方がいい」
そう言うとリカルドは軽くキスを落として、夜着のボタンを少しずつ外してくれる。
リカルドの愛撫は、とても繊細だった。大切に大切に、壊れ物を扱うように、丁寧に私の身体にふれてくれて、少しあった破瓜の不安は霧散した。
ささやかれた次の瞬間、軽くついばむようなキスを落とされる。び、び、びっくりした!
「ジュリエッタ、目、まんまる……」
リカルドさんがふにゃりと笑う。
「だ、だ、だって! いきなり、するから……!」
「だって、したかったから……」
そう言うと、リカルドさんはゆっくりと私を抱きしめた。うわ……!
「ねえ、ジュリエッタ。一つお願いがあるんだけど」
しばらく私を抱きしめたままじっとしていたリカルドさんが、小さな声で言う。
「な、なんですか?」
「……名前、呼んでほしい…………」
身体越しにリカルドさんの鼓動が伝わってくる。かなり早い。どきどきしてるの、私だけじゃないんだ。思わずリカルドさんの顔を見上げる。
「呼んでないの、バレてました……?」
「うん。いつ、呼んでくれるかなって、ちょっと、期待してた……」
あ……。あんなに笑顔の人に、こんなさびしげな顔をさせてしまった……。これまでの満面の笑みとのギャップに、なんだかひどく胸が痛んだ。
「ご、ごめんなさい。ごめんなさい! その、嫌とかじゃなくて……。私、男の人と付き合ったことなくて、そういうの慣れてないから、なんか……恥ずかしかったんです」
しばしの沈黙ののち、リカルドさんが一言。
「リカルド」
「うぇ?」
「リカルド。言ってみて」
「リカ、ルド」
「続けて」
「リカル、ド。……リカルド」
「へへっ、呼んでもらっちゃった!」
リカルドさんはとっても嬉しそうに笑った。そして、もう一度私を抱きしめる。
「……今日、初めて会ったからさ。まだ無理っていうなら、もちろんそれでもいいんだ」
耳元でささやくように言われて、どきどきする。
「でも、俺は、一目で君のこと、大好きになってしまった。できれば、したい」
「え……っと」
「その、今日、よければ…………もう一度、名前呼んで」
ぎゅっと抱きしめられているから、リカルドさんの顔は見えない。でも、きっと、さっきみたいに、さびしげな顔をしてるんだと思う。声が、身体が、震えてる。
嫌だな。リカルドさんには、ずっと笑顔でいてほしい。あの、おひさまみたいな笑顔で。そんな思いが込み上げてきて、えーい、女は度胸! ともう一度、お風呂場のテンションに戻る。
「……私の相手、もの静かで大人な感じの人がいいかなあ、あまりにも元気なタイプだと、なに話していいかわかんないし、と、思っていました。だから、最初は、なんだかテンション高くて、どうしようかと」
ははは、と力ない笑い声が聞こえる。
「でも、一緒にいるとなんだかいつのまにか時間が過ぎてるし、とても気配りが細やかな人だって気づいたの。『まだ無理っていうなら、それでもいい』とか、逃げ道まで用意してくれたりして。わざわざそんなこと言わずに、始めてしまったっていいはずなのに」
笑い声が止まってしまった。かまわず続ける。
「そんな、おひとよしとなら、きっと大丈夫って思ったの…………リカルド」
この時から、私の中で、彼の名前が呼び捨てに変わったから、きっとターニングポイントだったんだと思う。
「ジュリエッタ……」
かすれた声が聞こえたので、顔を見ようと少し身体を動かすと、リカルドの力が抜けて、解放された。
「拒まれるかなって、思った」
「拒まなかったわ」
リカルドが少し赤くなって呆けてるので、顔を両手で挟み、私からそっとキスをした。した後、恥ずかしくなって、つい下向いちゃったけど。
「……女の子にここまでしてもらって、勇気出ないとか、男がすたるなあ」
ゆっくりと、リカルドから押し倒される。
「お許しを得たので。嫌だったら、言ってね」
この期に及んで、また、逃げ道を作ってくれちゃうリカルドに、くすりと笑ってしまう。
「やっぱり、ジュリエッタ、笑った方がいい」
そう言うとリカルドは軽くキスを落として、夜着のボタンを少しずつ外してくれる。
リカルドの愛撫は、とても繊細だった。大切に大切に、壊れ物を扱うように、丁寧に私の身体にふれてくれて、少しあった破瓜の不安は霧散した。
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