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第1章「始まり」
第25話「F級VSブルードラゴン」
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その瞬間、俺の脚は跳躍した。
【神様の悪戯により、『脚力増加・弱』を獲得しました】
まるで、自分の足が自分のものではなかったかのように加速した。
【神様の悪戯により、『脚力増加・強』を獲得しました】
今まで感じていたものとは全く違う。限界だと思っていた速度が子供のお遊戯だったかに思えるほどに速かった。
それでいて、頭の回転は普通だった。
いや、冷静と言った方がいいかもしれない。
それ以上か、これはもう冷静というレベルではない。
【神様の悪戯により、『神経伝達速度上昇・弱』を獲得しました】
【神様の悪戯により、『神経伝達速度上昇・強』を獲得しました】
自分の事だ、どれくらいおかしいかは分かっている。
さっきまで、こんな風に考えられなかったんだ。
黒崎さんの身のこなしについて行くのが精いっぱいだった。会話は本当に直感的に話してたし、人を躱すのでもうやっとだったんだ。
異常に速いのに、びっくりするほどに速いはずなのに、なぜか頭の中はいつもと同じ流れだった。
びっくりするほど遅い。
周りの景色も走馬灯のように遅い。
流れが見て取れる。
黒崎さんの表情の変化さえも見て取れる。驚いた顔、口と目を大きく開けている。
本当に、喜怒哀楽がしっかりしてたら可愛い人なのに。
どうしていっつもいい顔をしないのだろうか。
って、今は戦闘中だったな。
次々に獲得したスキルの力で俺の体は軽かった。
軽い身体を捻られて目の前の魔物に目を向ける。
見た目はドラゴン。
すると、黒崎さんがボソッと呟いているのが見える。
口の形は……ブルードラゴン?
そうか、確かBランクの迷宮区で出てくるドラゴンだ。体がブルーで視覚に優れている魔物だった気がする。
さっき戦ったディザスターウルフよりも硬い皮膚に甲鉄並みの硬度を持った鱗。かぎ爪は日本刀のように鋭く、一撃でも食らえば体が真っ二つに引き裂かれると言われているほど。
そんなやつが俺に気づいたのか、こっちを向いて睨んできた。
しかし、F級なのを知っているのか一瞥するなり黒崎さんの方に視線を移した。
まぁ、仕方ないと言われればそれまでだが、魔物にまで認められていないとは少し悲しいな。
空を飛翔する大きな体の魔物が翻る様に腰をくねらせて、口元を光らせた
何か、撃ち込んでくる。
それが見えても、いたって冷静でこぶしを握り締めて振りかぶった。
——そして。
ッズドン!!!!!!!
黒崎さんの背中を狙っていたそいつの顔面、右側の鋭い目を叩き潰す様に一打。
驚いた。ここでも気づきがあった。
なんて言ったって体が軽い、軽すぎる――だというのに拳に乗った力は驚くほどに重い。
あくまでも俺の感覚の話で質量的に重いとかそう言うことを言いたいわけじゃないが、明らかに何かが違った。
力が増す。視界が揺れるように炸裂して、まるで重力に引っ張られるかのように飛翔していた巨体が地面に落ちていく。
凄まじい勢いで叩きつけられ、コンクリートが割れる。
ガガガガガガッ!!!
土を抉る重機のような音が響き渡った。
シュっと地上に降りて着地を決める。
やはり、そう簡単にやられる魔物ではないらしく、残っている方の目で睨みつけられた。
ぼろぼろと殴られた場所の皮膚が零れ、目から血が流れていたのが見えて、ドスドスっと音を立てながら立ち上がる。
しかし、そんな奴を前に、俺の後ろにいた黒崎さんが声を上げた。
「だ、大丈夫なのっ——⁉︎」
「えっ……いやまぁ、大丈夫ですけど……」
「え……ほ、ほんとなの?」
「ほんとも何も――っと!?」
会話してると後ろからドラゴンブレスが襲ってきた。
スンでのところでかわし、地を跳ねて、周り蹴りを顔面に炸裂させる。
——グァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!
長い悲鳴を上げた。
「それで……本当か何かって」
「あ、あなたっ——」
黒崎さんの目は夢を見ている様で、俺に忌避するような視線を向けていた。
普段の俺なら悲しくなるがこの時もひどく冷静で、自分が怖くなる。
きっと、嘘ついてたと思われたんだろうな。
こんな力、先に言いなさいよって思ってるんだろう。
まぁ、嫌にもなるか。
あとで、しっかり謝っておこう。
——ギギギギギギギ!!!!
そう思っていると今度はドラゴンが地面を引きづる様に飛び上がった。
空中に上がり、俺の攻撃を避けるつもりなのか。
まったく、小賢しい真似をしてくる。
それなら、俺だって飛んでやればいいんじゃないか。
【神様の悪戯により、『跳躍』を獲得しました】
【神様の悪戯により、『剛翼』を獲得しました】
怒涛のスキル獲得。
跳躍に剛翼。
飛ぶことを思い描いていると、背中に硬い翼が生え始めた。
それでいて、脚も妙に軽い。
そうか、これで飛べるのか?
物は試しよう。
試すべきだろう。
足に力を入れて地面を蹴る、すると体が驚くほどに飛びあがった。
まさに、飛翔。
すると、背中が勝手に動く。剛翼が空を切る様に動き、俺はドラゴンの空飛ぶ速さに食らいついていた。
「っいけるな!」
ぶんぶん加速して避けようとするドラゴンの翼を掴んで、拳を振りかざし一打。
バランスが崩れて、そこをつくように連打する。
ボコボコになった翼で飛ぶことはできず、ドラゴンは地面に落ちていった。
「最後に一発かな」
そして、とどめの一発。
俺は急降下爆撃の如く体を捻らせてドラゴン目がけて一直線。
重力も加えた拳を顔面に叩きつけた。
——————ッドン!!!!!!!!
凄まじい衝撃音が鳴り響き、ドラゴンの目の光が失われ——絶命した。
「……やった、か」
血液が身体を回っていく感覚に襲われて、俺はその瞬間「生」を実感した。
そう、この日。
俺はF級の探索者として初めてドラゴン系の魔物に勝った人間になったのだった。
「——あなた、一体何者なのよっ」
「……あははは」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
〇ブルードラゴン(B)
攻撃力:1520/1000
防御力:1200/1000
魔法力:929/1000
魔法抵抗力:890/1000
敏捷力:890/1000
精神力:798/1000
【スキルリスト】
『神託予見』『知覚向上』『魔物特性』『高速移動lv.1』『自信向上』『極寒性気色悪』
『周辺探知』『跳躍』
『剛翼』『脚力増加・弱』
『脚力増加・強』『神経伝達速度上昇・弱』『神経伝達速度上昇・強』←new!
【神様の悪戯により、『脚力増加・弱』を獲得しました】
まるで、自分の足が自分のものではなかったかのように加速した。
【神様の悪戯により、『脚力増加・強』を獲得しました】
今まで感じていたものとは全く違う。限界だと思っていた速度が子供のお遊戯だったかに思えるほどに速かった。
それでいて、頭の回転は普通だった。
いや、冷静と言った方がいいかもしれない。
それ以上か、これはもう冷静というレベルではない。
【神様の悪戯により、『神経伝達速度上昇・弱』を獲得しました】
【神様の悪戯により、『神経伝達速度上昇・強』を獲得しました】
自分の事だ、どれくらいおかしいかは分かっている。
さっきまで、こんな風に考えられなかったんだ。
黒崎さんの身のこなしについて行くのが精いっぱいだった。会話は本当に直感的に話してたし、人を躱すのでもうやっとだったんだ。
異常に速いのに、びっくりするほどに速いはずなのに、なぜか頭の中はいつもと同じ流れだった。
びっくりするほど遅い。
周りの景色も走馬灯のように遅い。
流れが見て取れる。
黒崎さんの表情の変化さえも見て取れる。驚いた顔、口と目を大きく開けている。
本当に、喜怒哀楽がしっかりしてたら可愛い人なのに。
どうしていっつもいい顔をしないのだろうか。
って、今は戦闘中だったな。
次々に獲得したスキルの力で俺の体は軽かった。
軽い身体を捻られて目の前の魔物に目を向ける。
見た目はドラゴン。
すると、黒崎さんがボソッと呟いているのが見える。
口の形は……ブルードラゴン?
そうか、確かBランクの迷宮区で出てくるドラゴンだ。体がブルーで視覚に優れている魔物だった気がする。
さっき戦ったディザスターウルフよりも硬い皮膚に甲鉄並みの硬度を持った鱗。かぎ爪は日本刀のように鋭く、一撃でも食らえば体が真っ二つに引き裂かれると言われているほど。
そんなやつが俺に気づいたのか、こっちを向いて睨んできた。
しかし、F級なのを知っているのか一瞥するなり黒崎さんの方に視線を移した。
まぁ、仕方ないと言われればそれまでだが、魔物にまで認められていないとは少し悲しいな。
空を飛翔する大きな体の魔物が翻る様に腰をくねらせて、口元を光らせた
何か、撃ち込んでくる。
それが見えても、いたって冷静でこぶしを握り締めて振りかぶった。
——そして。
ッズドン!!!!!!!
黒崎さんの背中を狙っていたそいつの顔面、右側の鋭い目を叩き潰す様に一打。
驚いた。ここでも気づきがあった。
なんて言ったって体が軽い、軽すぎる――だというのに拳に乗った力は驚くほどに重い。
あくまでも俺の感覚の話で質量的に重いとかそう言うことを言いたいわけじゃないが、明らかに何かが違った。
力が増す。視界が揺れるように炸裂して、まるで重力に引っ張られるかのように飛翔していた巨体が地面に落ちていく。
凄まじい勢いで叩きつけられ、コンクリートが割れる。
ガガガガガガッ!!!
土を抉る重機のような音が響き渡った。
シュっと地上に降りて着地を決める。
やはり、そう簡単にやられる魔物ではないらしく、残っている方の目で睨みつけられた。
ぼろぼろと殴られた場所の皮膚が零れ、目から血が流れていたのが見えて、ドスドスっと音を立てながら立ち上がる。
しかし、そんな奴を前に、俺の後ろにいた黒崎さんが声を上げた。
「だ、大丈夫なのっ——⁉︎」
「えっ……いやまぁ、大丈夫ですけど……」
「え……ほ、ほんとなの?」
「ほんとも何も――っと!?」
会話してると後ろからドラゴンブレスが襲ってきた。
スンでのところでかわし、地を跳ねて、周り蹴りを顔面に炸裂させる。
——グァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!
長い悲鳴を上げた。
「それで……本当か何かって」
「あ、あなたっ——」
黒崎さんの目は夢を見ている様で、俺に忌避するような視線を向けていた。
普段の俺なら悲しくなるがこの時もひどく冷静で、自分が怖くなる。
きっと、嘘ついてたと思われたんだろうな。
こんな力、先に言いなさいよって思ってるんだろう。
まぁ、嫌にもなるか。
あとで、しっかり謝っておこう。
——ギギギギギギギ!!!!
そう思っていると今度はドラゴンが地面を引きづる様に飛び上がった。
空中に上がり、俺の攻撃を避けるつもりなのか。
まったく、小賢しい真似をしてくる。
それなら、俺だって飛んでやればいいんじゃないか。
【神様の悪戯により、『跳躍』を獲得しました】
【神様の悪戯により、『剛翼』を獲得しました】
怒涛のスキル獲得。
跳躍に剛翼。
飛ぶことを思い描いていると、背中に硬い翼が生え始めた。
それでいて、脚も妙に軽い。
そうか、これで飛べるのか?
物は試しよう。
試すべきだろう。
足に力を入れて地面を蹴る、すると体が驚くほどに飛びあがった。
まさに、飛翔。
すると、背中が勝手に動く。剛翼が空を切る様に動き、俺はドラゴンの空飛ぶ速さに食らいついていた。
「っいけるな!」
ぶんぶん加速して避けようとするドラゴンの翼を掴んで、拳を振りかざし一打。
バランスが崩れて、そこをつくように連打する。
ボコボコになった翼で飛ぶことはできず、ドラゴンは地面に落ちていった。
「最後に一発かな」
そして、とどめの一発。
俺は急降下爆撃の如く体を捻らせてドラゴン目がけて一直線。
重力も加えた拳を顔面に叩きつけた。
——————ッドン!!!!!!!!
凄まじい衝撃音が鳴り響き、ドラゴンの目の光が失われ——絶命した。
「……やった、か」
血液が身体を回っていく感覚に襲われて、俺はその瞬間「生」を実感した。
そう、この日。
俺はF級の探索者として初めてドラゴン系の魔物に勝った人間になったのだった。
「——あなた、一体何者なのよっ」
「……あははは」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
〇ブルードラゴン(B)
攻撃力:1520/1000
防御力:1200/1000
魔法力:929/1000
魔法抵抗力:890/1000
敏捷力:890/1000
精神力:798/1000
【スキルリスト】
『神託予見』『知覚向上』『魔物特性』『高速移動lv.1』『自信向上』『極寒性気色悪』
『周辺探知』『跳躍』
『剛翼』『脚力増加・弱』
『脚力増加・強』『神経伝達速度上昇・弱』『神経伝達速度上昇・強』←new!
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