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第5章 家族の物語
第7話
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遅くなってすみません
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非公式の会談がお開きになった後、俺は雷光隊の詰め所にある執務室に移動してラウルから留守中の報告を受けた。定期的に報告が届いていたので、それほど時間がかからずに済んだのはありがたかった。それでも、皇都の自宅に帰り着いたのは夜が更けてからだった。
「ただいま。遅くなった」
「お帰りなさいませ」
遅い時間にもかかわらず、サイラスだけでなくリタもウーゴも俺を出迎えてくれた。
「お部屋の準備は万端に整えてございます」
明日の昼にはオリガ達を乗せた船が皇都に到着する。俺は午前中に雷光隊全員での鍛錬があるので、夜遅い時間だが彼等が整えてくれた部屋を見て回る事にした。
「お父上とお母上のお部屋は1階の客間にご用意いたしました。ビアンカとベティーナ母子は2階、そして坊ちゃまのお部屋は奥様のご要望通り、主寝室の隣にご用意いたしました」
サイラスの先導で家の中を見て回る。さすがというべきか、彼の仕事に抜かりは無かった。
「レーナ、ヤスミーン、モニカの3人はリタとウーゴが住んでいる離れに部屋を用意してあります。それから、皆様のご滞在中はブランドル家から応援が来ていただけることになりました」
「それは、助かるね」
「レーナ、ヤスミーン、モニカの指導も手伝って下さるそうです」
オリガ付きの侍女になるということで、グレーテル様も並々ならぬ気合の入れようらしい。お手柔らかに……と言いたいところだけど、無理だろうなぁ。
「最後に、使っていない倉庫の一つをお父上の工房代わりに使って頂こうと、ウーゴが改修しました」
「え? そこまでしてくれたの?」
出来るだけアジュガの家と同じように寛いでもらえるようにして欲しいと要望したが、まさか工房まで用意してくれているとは思わなかった。
「慣れない場所ではご自宅の様に寛がれるのも難しいかと思われます。ですので、空いたお時間はお好きな事をしていただければ、少しでも過ごしやすくなるのではないかと考えました」
「ありがとう」
どうしよう。彼等の心遣いがものすごく嬉しい。感謝を伝えたいのだけど、出てきたのはありふれた言葉だけだった。
「礼には及びません、旦那様」
サイラスによると、自分達の仕事をしたにすぎないらしい。リタもウーゴも同意する様にうなずいている。俺は本当に果報者だと改めて思った。
翌日の昼、鍛錬を早めに切り上げた俺は、家族を出迎えるために船着き場に赴《おもむ》いていた。少し遅れたかと焦ったが、ちょうど船が到着したところだった。
「ルーク」
カミルを抱いたオリガが船から降りてくる。昨年は外洋船でひどい船酔いに見舞われたけど、今回は川船ということもあって大丈夫だったようだ。
「お疲れ。おいでカミル」
「あー」
俺の姿を見て、カミルが抱っこをせがむように手を伸ばしてくる。可愛良いじゃないか。思わずそのプニプニの頬をつついていた。そんな風に息子と戯《たわむ》れている間に船からみんなが降りてくる。小さな子もいるので、間に休憩を入れながらの長い船旅だったが、みんな元気そうだ。
「ここが皇都か……」
「とんでもない所に来ちまったねぇ」
父さんと母さんは船着き場からでも見える皇都の光景に驚き、若い侍女候補の3人は興奮を隠せない様子ではしゃいでいる。ビアンカはベティーナを抱っこしたまま唖然として皇都の高い建物を眺め、ラファエルさんご夫妻は急に不安になったのか、「ここにいても大丈夫なのか」と呟いている。
「ルーク、私達は先に行くわね」
「悪いな。また遊びに来てくれ」
「はい、また改めてうかがいます」
ジーン卿は迎えに来たリーガス卿と共に手配していた馬車に隙あれば逃げ出そうとする子供達を乗せて、この夏の間宿舎として借りている家へ向かった。実は俺の家と近所なので、その内遊びに行かせてもらう約束をしていた。
「お迎えに上がりました」
「間違いではないのか?」
ドレスラー家と入れ違いに本宮に滞在するラファエルさんご夫妻の迎えの馬車が来る。サイラスが丁重にもてなす様にと本宮の元後輩に一言伝えたからか、思った以上に立派な馬車が現れてお2人は気後れした様子でしり込みしていた。
「さ、どうぞお乗りください」
迎えに来た侍官も困っていたので、俺がお2人に手を貸して馬車に乗せた。恐々と言った様子で座席に座ったのを確認すると、また挨拶にうかがうと声をかけて扉を閉めた。
「すごい立派な馬車だねぇ。陛下がお乗りになる馬車かい?」
馬車に驚いていたのはラファエルさんご夫妻だけではなかった。母さんも感心した様子で馬車を見送っている。
「あれは公式な客を迎えるための馬車だね。陛下や皇妃様がお乗りになるのはもっとすごいよ」
「そうなのかい?」
そんな会話をしている間に荷物の運び出しも終わっていた。あんな立派な馬車を見た後で何だか申し訳なくなってくるが、我が家が手配した馬車に皆を案内する。でも乗り心地は悪くないはず。
大人数なので今日は2台用意し、1台目には父さんと母さんにオリガとカミル、そしてビアンカとベティーナに乗ってもらい、2台目には侍女見習の3人と彼女達のお目付け役としてガブリエラとフリッツが乗り込んだ。俺は護衛として付いてきてくれたマティアスと共に騎馬で並走する。
「わー、見て見て!」
「本当、すごーい」
「こっちもすごいよ」
1台目の馬車は静かだが、2台目は何とも騒がしい。ガブリエラが窘めているが、大人しくなるのは一瞬だけで、侍女見習3人の興奮は納まらない。
「身を乗り出すなよ? 危ないから大人しく座っていなさい。また機会を作って町に行けるようにするから」
2台目の馬車に馬を寄せ、そう声をかけると「はーい」というしおらしい返事が返って来た。賑やかなおしゃべりは続いていたが、座っていてくれるなら構わない。ガブリエラが申し訳なさそうにしていたが、苦笑して気にするなと返しておいた。
ほどなくして馬車は自宅に着いた。騒がしかった侍女見習たちも貴族の邸宅が立ち並ぶ区画に入ると、その重厚な雰囲気に気後れしてきたのか言葉数が少なくなっていた。
そして馬車が玄関に横付けされる。先ずは1台目の馬車からベティーナを抱いたビアンカがマティアスの手を借りて降りる。父さんと母さんが同様にマティアスの手を借りて続き、最後のカミルを抱いたオリガだけは俺が手を貸した。その間に2台目に乗っていた一同も馬車から降りていたのだけど、オリガとガブリエラ以外は呆けた様子で屋敷を見上げていた。
「本当に、ここがそうなのかい?」
「うん。ようこそ皇都の我が家へ。父さん、母さん」
そう言ってオリガと一緒に玄関の扉を開けて父さんと母さんを招き入れる。玄関にはサイラスとリタとウーゴ、そしてブランドル家から応援として派遣された使用人が並んで待ってくれていた。
「お帰りなさいませ、旦那様、奥様。そしてようこそおいでくださいました、若様、大旦那様、大奥様」
盛大な出迎えに今度こそ父さんと母さんが固まる。急に大旦那様とか大奥様とか言われてびっくりしたのだろう。ともかく疲れているだろうから少し休んでもらうために、オリガと一緒に2人を部屋へ案内することにした。ちなみにカミルは馬車の中で眠ってしまい、そのままオリガの腕の中で健やかな寝息を立てている。うん、この子は本当に肝が据わっている。
「こ、こんな豪華な部屋を使うのかい?」
母さんはそう言うが、屋敷全体の雰囲気からそう見えているだけに過ぎない。サイラスも2人の事を分かってくれているので、この部屋にある調度品は使いやすいものを重視して選んでくれている。落ち着けば2人にも分かるはずだ。戸惑っている2人にともかく旅装を解くように言って、俺達は一旦客間から離れた。
客間を出た俺達は、カミルを寝かせるために2階の子供部屋に向かった。扉を開けると、明るい色調で統一されたかわいらしい部屋が目に飛び込んでくる。
「まあ、かわいい」
部屋に満足したらしい彼女は早速寝台にカミルを寝かせると、部屋の中を見て回る。調度品も玩具の類も品のいいものばかりが集められている。
「短期間なのによくここまで準備できたわね」
「実はグレーテル様からの贈り物らしい」
「まあ……」
昨夜、サイラスから聞いた種明かしを伝えると、彼女も驚いた様子だった。俺達が養子とはいえ子供を授かったことを殊の外喜んでくれているらしい。しかも、実の父親は彼女も気にかけていたウォルフだ。ブランドル公も一緒になって、お祝いに力が入ってしまったらしい。
「この子を連れてお礼にうかがわないといけないわね」
「そうだな」
子供用の寝台の中でカミルはすやすやと眠っていて起きる気配がない。彼も生まれて初めての長旅で疲れているのかもしれない。ともかく今日はゆっくり休ませてあげよう。
「先ずは陛下と皇妃様にご挨拶して、それからブランドル公御夫妻。サントリナ公からも来てくれと言われているし、アスター卿やリーガス卿の所へも行かないと……」
こうして上げていくと夏至祭前に済ませておかないといけない予定が詰まっている。その合間に雷光隊の鍛錬もしないといけないし、落ち着きのない侍女候補3人の面倒も見ないといけない。そして何よりも父さんと母さんを気疲れさせない程度にもてなすという最大の使命があった。
「微力ながら私もお手伝いしますわ」
「頼もしいよ」
微力だなんてとんでもない。彼女が居れば百人力だ。愛しい妻の肩を抱き寄せ、共に息子の寝顔を眺めながらこれから続く賑やかな日常に思いをはせた。
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アジュガご一行の皇都珍道中は続く
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非公式の会談がお開きになった後、俺は雷光隊の詰め所にある執務室に移動してラウルから留守中の報告を受けた。定期的に報告が届いていたので、それほど時間がかからずに済んだのはありがたかった。それでも、皇都の自宅に帰り着いたのは夜が更けてからだった。
「ただいま。遅くなった」
「お帰りなさいませ」
遅い時間にもかかわらず、サイラスだけでなくリタもウーゴも俺を出迎えてくれた。
「お部屋の準備は万端に整えてございます」
明日の昼にはオリガ達を乗せた船が皇都に到着する。俺は午前中に雷光隊全員での鍛錬があるので、夜遅い時間だが彼等が整えてくれた部屋を見て回る事にした。
「お父上とお母上のお部屋は1階の客間にご用意いたしました。ビアンカとベティーナ母子は2階、そして坊ちゃまのお部屋は奥様のご要望通り、主寝室の隣にご用意いたしました」
サイラスの先導で家の中を見て回る。さすがというべきか、彼の仕事に抜かりは無かった。
「レーナ、ヤスミーン、モニカの3人はリタとウーゴが住んでいる離れに部屋を用意してあります。それから、皆様のご滞在中はブランドル家から応援が来ていただけることになりました」
「それは、助かるね」
「レーナ、ヤスミーン、モニカの指導も手伝って下さるそうです」
オリガ付きの侍女になるということで、グレーテル様も並々ならぬ気合の入れようらしい。お手柔らかに……と言いたいところだけど、無理だろうなぁ。
「最後に、使っていない倉庫の一つをお父上の工房代わりに使って頂こうと、ウーゴが改修しました」
「え? そこまでしてくれたの?」
出来るだけアジュガの家と同じように寛いでもらえるようにして欲しいと要望したが、まさか工房まで用意してくれているとは思わなかった。
「慣れない場所ではご自宅の様に寛がれるのも難しいかと思われます。ですので、空いたお時間はお好きな事をしていただければ、少しでも過ごしやすくなるのではないかと考えました」
「ありがとう」
どうしよう。彼等の心遣いがものすごく嬉しい。感謝を伝えたいのだけど、出てきたのはありふれた言葉だけだった。
「礼には及びません、旦那様」
サイラスによると、自分達の仕事をしたにすぎないらしい。リタもウーゴも同意する様にうなずいている。俺は本当に果報者だと改めて思った。
翌日の昼、鍛錬を早めに切り上げた俺は、家族を出迎えるために船着き場に赴《おもむ》いていた。少し遅れたかと焦ったが、ちょうど船が到着したところだった。
「ルーク」
カミルを抱いたオリガが船から降りてくる。昨年は外洋船でひどい船酔いに見舞われたけど、今回は川船ということもあって大丈夫だったようだ。
「お疲れ。おいでカミル」
「あー」
俺の姿を見て、カミルが抱っこをせがむように手を伸ばしてくる。可愛良いじゃないか。思わずそのプニプニの頬をつついていた。そんな風に息子と戯《たわむ》れている間に船からみんなが降りてくる。小さな子もいるので、間に休憩を入れながらの長い船旅だったが、みんな元気そうだ。
「ここが皇都か……」
「とんでもない所に来ちまったねぇ」
父さんと母さんは船着き場からでも見える皇都の光景に驚き、若い侍女候補の3人は興奮を隠せない様子ではしゃいでいる。ビアンカはベティーナを抱っこしたまま唖然として皇都の高い建物を眺め、ラファエルさんご夫妻は急に不安になったのか、「ここにいても大丈夫なのか」と呟いている。
「ルーク、私達は先に行くわね」
「悪いな。また遊びに来てくれ」
「はい、また改めてうかがいます」
ジーン卿は迎えに来たリーガス卿と共に手配していた馬車に隙あれば逃げ出そうとする子供達を乗せて、この夏の間宿舎として借りている家へ向かった。実は俺の家と近所なので、その内遊びに行かせてもらう約束をしていた。
「お迎えに上がりました」
「間違いではないのか?」
ドレスラー家と入れ違いに本宮に滞在するラファエルさんご夫妻の迎えの馬車が来る。サイラスが丁重にもてなす様にと本宮の元後輩に一言伝えたからか、思った以上に立派な馬車が現れてお2人は気後れした様子でしり込みしていた。
「さ、どうぞお乗りください」
迎えに来た侍官も困っていたので、俺がお2人に手を貸して馬車に乗せた。恐々と言った様子で座席に座ったのを確認すると、また挨拶にうかがうと声をかけて扉を閉めた。
「すごい立派な馬車だねぇ。陛下がお乗りになる馬車かい?」
馬車に驚いていたのはラファエルさんご夫妻だけではなかった。母さんも感心した様子で馬車を見送っている。
「あれは公式な客を迎えるための馬車だね。陛下や皇妃様がお乗りになるのはもっとすごいよ」
「そうなのかい?」
そんな会話をしている間に荷物の運び出しも終わっていた。あんな立派な馬車を見た後で何だか申し訳なくなってくるが、我が家が手配した馬車に皆を案内する。でも乗り心地は悪くないはず。
大人数なので今日は2台用意し、1台目には父さんと母さんにオリガとカミル、そしてビアンカとベティーナに乗ってもらい、2台目には侍女見習の3人と彼女達のお目付け役としてガブリエラとフリッツが乗り込んだ。俺は護衛として付いてきてくれたマティアスと共に騎馬で並走する。
「わー、見て見て!」
「本当、すごーい」
「こっちもすごいよ」
1台目の馬車は静かだが、2台目は何とも騒がしい。ガブリエラが窘めているが、大人しくなるのは一瞬だけで、侍女見習3人の興奮は納まらない。
「身を乗り出すなよ? 危ないから大人しく座っていなさい。また機会を作って町に行けるようにするから」
2台目の馬車に馬を寄せ、そう声をかけると「はーい」というしおらしい返事が返って来た。賑やかなおしゃべりは続いていたが、座っていてくれるなら構わない。ガブリエラが申し訳なさそうにしていたが、苦笑して気にするなと返しておいた。
ほどなくして馬車は自宅に着いた。騒がしかった侍女見習たちも貴族の邸宅が立ち並ぶ区画に入ると、その重厚な雰囲気に気後れしてきたのか言葉数が少なくなっていた。
そして馬車が玄関に横付けされる。先ずは1台目の馬車からベティーナを抱いたビアンカがマティアスの手を借りて降りる。父さんと母さんが同様にマティアスの手を借りて続き、最後のカミルを抱いたオリガだけは俺が手を貸した。その間に2台目に乗っていた一同も馬車から降りていたのだけど、オリガとガブリエラ以外は呆けた様子で屋敷を見上げていた。
「本当に、ここがそうなのかい?」
「うん。ようこそ皇都の我が家へ。父さん、母さん」
そう言ってオリガと一緒に玄関の扉を開けて父さんと母さんを招き入れる。玄関にはサイラスとリタとウーゴ、そしてブランドル家から応援として派遣された使用人が並んで待ってくれていた。
「お帰りなさいませ、旦那様、奥様。そしてようこそおいでくださいました、若様、大旦那様、大奥様」
盛大な出迎えに今度こそ父さんと母さんが固まる。急に大旦那様とか大奥様とか言われてびっくりしたのだろう。ともかく疲れているだろうから少し休んでもらうために、オリガと一緒に2人を部屋へ案内することにした。ちなみにカミルは馬車の中で眠ってしまい、そのままオリガの腕の中で健やかな寝息を立てている。うん、この子は本当に肝が据わっている。
「こ、こんな豪華な部屋を使うのかい?」
母さんはそう言うが、屋敷全体の雰囲気からそう見えているだけに過ぎない。サイラスも2人の事を分かってくれているので、この部屋にある調度品は使いやすいものを重視して選んでくれている。落ち着けば2人にも分かるはずだ。戸惑っている2人にともかく旅装を解くように言って、俺達は一旦客間から離れた。
客間を出た俺達は、カミルを寝かせるために2階の子供部屋に向かった。扉を開けると、明るい色調で統一されたかわいらしい部屋が目に飛び込んでくる。
「まあ、かわいい」
部屋に満足したらしい彼女は早速寝台にカミルを寝かせると、部屋の中を見て回る。調度品も玩具の類も品のいいものばかりが集められている。
「短期間なのによくここまで準備できたわね」
「実はグレーテル様からの贈り物らしい」
「まあ……」
昨夜、サイラスから聞いた種明かしを伝えると、彼女も驚いた様子だった。俺達が養子とはいえ子供を授かったことを殊の外喜んでくれているらしい。しかも、実の父親は彼女も気にかけていたウォルフだ。ブランドル公も一緒になって、お祝いに力が入ってしまったらしい。
「この子を連れてお礼にうかがわないといけないわね」
「そうだな」
子供用の寝台の中でカミルはすやすやと眠っていて起きる気配がない。彼も生まれて初めての長旅で疲れているのかもしれない。ともかく今日はゆっくり休ませてあげよう。
「先ずは陛下と皇妃様にご挨拶して、それからブランドル公御夫妻。サントリナ公からも来てくれと言われているし、アスター卿やリーガス卿の所へも行かないと……」
こうして上げていくと夏至祭前に済ませておかないといけない予定が詰まっている。その合間に雷光隊の鍛錬もしないといけないし、落ち着きのない侍女候補3人の面倒も見ないといけない。そして何よりも父さんと母さんを気疲れさせない程度にもてなすという最大の使命があった。
「微力ながら私もお手伝いしますわ」
「頼もしいよ」
微力だなんてとんでもない。彼女が居れば百人力だ。愛しい妻の肩を抱き寄せ、共に息子の寝顔を眺めながらこれから続く賑やかな日常に思いをはせた。
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アジュガご一行の皇都珍道中は続く
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