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第5章 家族の物語
第8話
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父さんと母さんの皇都滞在は恐る恐ると言った様子で始まったけれど、それぞれが好きな事をして過ごすうちに落ち着きを取り戻していた。ウーゴが用意した工房に父さんは感激し、毎日入り浸ってアルベルト殿下のお祝いにするからくり玩具の調整をしていた。一方の母さんはオリガやリタと一緒に台所に立ったり、裁縫したりして過ごしている。やはり何かをしていると落ち着くのかもしれない。
そして皇都に到着して5日後の午後、俺達一家はアルベルト殿下にお目通りするべく、正装に身を包んで本宮北棟に向かっていた。到着して少し間を開けて下さったのは、慣れない場所へ来た両親や幼いカミルに皇妃様がご配慮して下さったためだった。
「私達までおうかがいして大丈夫かね?」
本宮に向かう馬車の中、緊張の面持ちで、母さんは今日何度目か分からない確認をしてくる。
「大丈夫だよ。皇妃様が直々に父さんと母さんにも会いたいって言っているから」
これももう何度目か分からない返答をしながら父さんを見ると、緊張のあまり蒼白な顔で微動だにしていなかった。そんな父さんが気の毒に思ったのか、オリガは抱いていたカミルを父さんに預ける。
「あー」
カミルがペタペタと大好きなじいじの顔を触ると、父さんは少しだけぎこちない笑みを浮かべていた。それが楽しいのか、更に顔中をペタペタと障る。そんな2人の姿に母さんも少しだけ口元をほころばせた。
「アジュガで会った通りのお優しい方だから、何も心配いらないよ」
向かいに座る父さんの腕からカミルを抱き上げると、嬉しいのか声を上げて笑っている。みんなで揃って出かけるのが楽しいのかもしれない。我が家で一番の大物を予感させる息子のおかげで父さんと母さんの緊張がほんの少しほぐれた様子だった。
そうしているうちに馬車は門を抜けて更に本宮の奥へ進み、北棟へ到着した。先ずは俺が馬車から降り、父さんと母さんが降りるのを手伝う。そして最後に降りてくるオリガからカミルを預かり、片腕で息子を抱えながらオリガに手を差し出して降りてくるのを手伝った。
「ようこそお越しくださいました」
出迎えてくれたのは、この秋で現役を退くオルティスさんだった。大人数で出迎えないのは、緊張すると予測される俺の父さんと母さんに配慮して下さった結果の様だ。
「お久しぶりです」
「御一家は奥でお待ちでございます」
そう言ってオルティスさんは俺達を奥へ促す。緊張して表情が強張っている父さんと母さんは互いにがっしりと手を繋いで進み、俺はカミルを抱いたままオリガの手を引いてその後に続いた。
「ビレア家の皆様がご到着なさいました」
案内されたのはいつもの居間だった。これだけで陛下と皇妃様が俺達を最大限にもてなそうという気持ちが伝わってくる。返事があり、俺達はその部屋の中へ通される。
「良く来てくれた」
恐れ多い事にご一家が立ち上がって俺達を迎えて下さった。陛下とは仕事で昨日もお会いしたばかりだが、他の方々とお会いするのは久しぶりだ。皇妃様はご出産後の経過も順調なご様子でお元気そうだ。姫様はまた一層美しくなられた気がする。そして陛下に近しい人の間ではエル坊と呼ばれているエルヴィン殿下は随分と背が伸びで大きくなっていた。以前の様に飛び出してこないところからもご成長がうかがわれる。
中でもお元気そうな皇妃様のお姿に、傍らに立っているオリガは安堵の息をこぼしている。何しろエル坊の出産の後は随分と回復が遅れて体調を崩していたから、今回もオリガは随分と心配していた。手紙でのやり取りはしていたが、直接会うのはほぼ1年ぶり。お仕えする様になってからこんなに長く離れていたのは初めてだったから、なおの事心配だったのだろう。
「オイゲン殿もイルゼ殿もよく来てくれた」
「どうぞ、お座りください。大したおもてなしは出来ませんが、ゆっくりして行って下さると子供達も喜びます」
「も、もったいないお言葉です」
歓待して下さる陛下と皇妃様に父さんも母さんも恐縮しながらも勧められた席に着いた。そんな2人にエル坊が近寄っていく。どうやら自分の宝物を見せているらしく、場の空気が和んでいく。
「お久しぶりでございます、陛下、皇妃様。長くお傍を離れて申し訳ありませんでした」
父さんと母さんがエル坊と和んだところで、オリガが前へ進み出て陛下と皇妃様に頭を下げる。そんな彼女に皇妃様はそっと近づくと彼女の手を握った。
「謝らないで、オリガ。私達の方こそ、いつもあなた達に自分の都合を押し付けてばかりだわ。だから、気にしないで欲しいの」
「そうだな。2人には返しきれない恩がある。もっとわがままを言っても構わないぞ」
陛下もそう仰るが、もう十分良くしていただいている。放って置くとまた手に余るものを押し付けられるので、謝意を伝えてこの話を終わらせる。
「ルーク、オリガ、どうかあなた方の大切な宝物をご紹介して下さいな」
皇妃様も俺の気持ちを汲んで下さった様子で、俺の腕の中にいるカミルに小竜を通じてだが視線を向けて話題を変えて下さった。
「息子のカミルです」
抱いていたカミルを床に降ろすと、彼は皇妃様の顔を見上げる。そしてぴょこんと頭を下げた。
「まあ、かわいい。ちゃんとご挨拶が出来るのね。私は貴方のお父様とお母様の友達のフレア・ローザと申します」
皇妃様は自らそう名乗られると、良くわからずにきょとんとしているカミルを抱き上げる。
「カミル・ディ・ビレアにダナシア様のご加護がありますように」
恐れ多くもカミルは皇妃様直々に祝福をしていただいた。俺達は感謝して頭を下げ、皇妃様からカミルを引き取った。
「今度は私達の新しい宝物をご紹介しますね」
皇妃様がそう仰ると、部屋の隅に置かれたゆりかごから姫様が赤子を抱いて連れて来られた。姫様を労い、絹のおくるみに包まれた黒髪の赤子を受け取った皇妃様は私達にその赤子を紹介して下さった。
「息子のアルベルトです。カミル君といいお友達になれると嬉しいわ」
カミルにアルベルト殿下を見せると、興味津々と言った様子でその寝顔をのぞき込んでいる。自分より小さな子を見るのは初めてだから、きっと珍しいのかもしれない。
その後オルティスさんの熟練の技によって淹れられたお茶を皆で堪能し、一息ついたところで今回お祝いとして持参したからくり玩具のお披露目となった。何故か俺達の護衛も兼ねて付いて来たラウルとシュテファンがそれを部屋に運び込み、用意して頂いた台に設置する。そして父さんがからくりの覆いを外し、最終確認を始める。
「少し離れた方が良く見えるよ」
エル坊はもう興味津々で台にかじりつくが、さすがに危ないので俺が抱えて引きはがす。ちゃんと言い聞かせればわかってもらえるのは、これもまた成長した証かもしれない。
「なかなか凝った造りをしているな」
「ツヴァイクの木工職人達が手伝ってくれました」
陛下が感心されたように台座にも取手にも細やかな細工が施され、隊列を組んで動く木製の動物達も手の込んだ造りになっている。これにはエル坊だけでなく姫様も待ちきれないと言った様子だった。そんな2人にオリガはクッションを用意して台から少し離れた場所に置いた。その位置ならば不意に手を伸ばしても触ることが出来ないだろう。
「それでは、始めます」
最終確認を終えた父さんがそう言うと、俺が抱っこしていたカミルが手を叩き、つられて他の人も拍手をする。また緊張してきたのか、顔が強張って来た父さんに母さんが「しっかり」と声をかけた。
カタカタ……カタタン……カタカタ……チリン
父さんが取手を回し、木製の動物達の行進が始まる。御一家を始め、一緒に見ているオルティスさんもなぜかちゃっかり居座っているラウルとシュテファンもその様子にくぎ付けとなる。今回のは今までで一番凝った造りになっていて、最後尾を行進する小竜が1周すると小さな鐘を鳴らす仕掛けが施されている。
「ねぇ、もう一回やって!」
エル坊は気に入ったのか、何度もおねだりしてくる。気を良くした父さんはそれに応えて取手を回し続けた。しかし、腕が疲れてきたのか、途中からはラウルが代わりに取手を回していた。
「楽しい玩具をありがとう」
「喜んで頂けて町のみんなも喜びます」
「皆に礼を伝えておいてくれ」
「分かりました」
エル坊だけでなく、みんなに喜んでもらえて一安心する。ただ、贈った相手のアルベルト殿下は眠っていたし、これを見て喜ぶようになるのはまだ先だけれど。
「エド、このからくりを皆にも見てもらいましょう」
「そうだな。夏至祭の間、保育室へ持って行ってみよう」
近頃はことあるごとに側近の子供達も保育室に集まる。その為、部屋を新しくして専用の庭まで作られていた。夏至祭の時には大人達が飛竜レースや武術試合を観戦している間、子供達はそこで過ごしてもらう事になっている。このからくり玩具を皆で楽しんでもらえたら俺達も嬉しい。
「そろそろ終わりにしましょう」
「え~ もっと見たい」
さすがにラウルも腕が疲れてきたようだ。何度も試作を重ね、すぐには壊れないように作られているが、何事にも限度はある。
「わがままを言ってはダメですよ。今日はこれで終わりにしましょう」
皇妃様がそう言って窘めて下さったおかげで、ようやくラウルも取手を回す作業から解放された。
「今日は来てくれて感謝する。今作っていると言う新作も機会があったら見せてくれ」
からくり玩具を気に入って下さった陛下は別れ際に父さんの手を取って謝意を伝えて下さった。自分達が作り上げたものを評価してもらえ、いつの間にか緊張も解けた父さんと母さんは満足した様子で帰りの馬車に乗り込んだ。
こうして父さんと母さんの初めての本宮北棟訪問は無事に終了したのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
エド 「これでわんぱく共も少しは大人しくしているだろう」
侍官 「ところでこの取手は誰が回すのですか?」
エド 「護衛の誰かにやらせよう」
侍官 「お子様方の要望を聞いていたらきりがないのでは?」
エド 「回数を決めるか」
侍官 「納得なされますでしょうか?」
エド 「後は……鍛錬だと思えばいい」
こんなやり取りがあったとかなかったとか……。
そして皇都に到着して5日後の午後、俺達一家はアルベルト殿下にお目通りするべく、正装に身を包んで本宮北棟に向かっていた。到着して少し間を開けて下さったのは、慣れない場所へ来た両親や幼いカミルに皇妃様がご配慮して下さったためだった。
「私達までおうかがいして大丈夫かね?」
本宮に向かう馬車の中、緊張の面持ちで、母さんは今日何度目か分からない確認をしてくる。
「大丈夫だよ。皇妃様が直々に父さんと母さんにも会いたいって言っているから」
これももう何度目か分からない返答をしながら父さんを見ると、緊張のあまり蒼白な顔で微動だにしていなかった。そんな父さんが気の毒に思ったのか、オリガは抱いていたカミルを父さんに預ける。
「あー」
カミルがペタペタと大好きなじいじの顔を触ると、父さんは少しだけぎこちない笑みを浮かべていた。それが楽しいのか、更に顔中をペタペタと障る。そんな2人の姿に母さんも少しだけ口元をほころばせた。
「アジュガで会った通りのお優しい方だから、何も心配いらないよ」
向かいに座る父さんの腕からカミルを抱き上げると、嬉しいのか声を上げて笑っている。みんなで揃って出かけるのが楽しいのかもしれない。我が家で一番の大物を予感させる息子のおかげで父さんと母さんの緊張がほんの少しほぐれた様子だった。
そうしているうちに馬車は門を抜けて更に本宮の奥へ進み、北棟へ到着した。先ずは俺が馬車から降り、父さんと母さんが降りるのを手伝う。そして最後に降りてくるオリガからカミルを預かり、片腕で息子を抱えながらオリガに手を差し出して降りてくるのを手伝った。
「ようこそお越しくださいました」
出迎えてくれたのは、この秋で現役を退くオルティスさんだった。大人数で出迎えないのは、緊張すると予測される俺の父さんと母さんに配慮して下さった結果の様だ。
「お久しぶりです」
「御一家は奥でお待ちでございます」
そう言ってオルティスさんは俺達を奥へ促す。緊張して表情が強張っている父さんと母さんは互いにがっしりと手を繋いで進み、俺はカミルを抱いたままオリガの手を引いてその後に続いた。
「ビレア家の皆様がご到着なさいました」
案内されたのはいつもの居間だった。これだけで陛下と皇妃様が俺達を最大限にもてなそうという気持ちが伝わってくる。返事があり、俺達はその部屋の中へ通される。
「良く来てくれた」
恐れ多い事にご一家が立ち上がって俺達を迎えて下さった。陛下とは仕事で昨日もお会いしたばかりだが、他の方々とお会いするのは久しぶりだ。皇妃様はご出産後の経過も順調なご様子でお元気そうだ。姫様はまた一層美しくなられた気がする。そして陛下に近しい人の間ではエル坊と呼ばれているエルヴィン殿下は随分と背が伸びで大きくなっていた。以前の様に飛び出してこないところからもご成長がうかがわれる。
中でもお元気そうな皇妃様のお姿に、傍らに立っているオリガは安堵の息をこぼしている。何しろエル坊の出産の後は随分と回復が遅れて体調を崩していたから、今回もオリガは随分と心配していた。手紙でのやり取りはしていたが、直接会うのはほぼ1年ぶり。お仕えする様になってからこんなに長く離れていたのは初めてだったから、なおの事心配だったのだろう。
「オイゲン殿もイルゼ殿もよく来てくれた」
「どうぞ、お座りください。大したおもてなしは出来ませんが、ゆっくりして行って下さると子供達も喜びます」
「も、もったいないお言葉です」
歓待して下さる陛下と皇妃様に父さんも母さんも恐縮しながらも勧められた席に着いた。そんな2人にエル坊が近寄っていく。どうやら自分の宝物を見せているらしく、場の空気が和んでいく。
「お久しぶりでございます、陛下、皇妃様。長くお傍を離れて申し訳ありませんでした」
父さんと母さんがエル坊と和んだところで、オリガが前へ進み出て陛下と皇妃様に頭を下げる。そんな彼女に皇妃様はそっと近づくと彼女の手を握った。
「謝らないで、オリガ。私達の方こそ、いつもあなた達に自分の都合を押し付けてばかりだわ。だから、気にしないで欲しいの」
「そうだな。2人には返しきれない恩がある。もっとわがままを言っても構わないぞ」
陛下もそう仰るが、もう十分良くしていただいている。放って置くとまた手に余るものを押し付けられるので、謝意を伝えてこの話を終わらせる。
「ルーク、オリガ、どうかあなた方の大切な宝物をご紹介して下さいな」
皇妃様も俺の気持ちを汲んで下さった様子で、俺の腕の中にいるカミルに小竜を通じてだが視線を向けて話題を変えて下さった。
「息子のカミルです」
抱いていたカミルを床に降ろすと、彼は皇妃様の顔を見上げる。そしてぴょこんと頭を下げた。
「まあ、かわいい。ちゃんとご挨拶が出来るのね。私は貴方のお父様とお母様の友達のフレア・ローザと申します」
皇妃様は自らそう名乗られると、良くわからずにきょとんとしているカミルを抱き上げる。
「カミル・ディ・ビレアにダナシア様のご加護がありますように」
恐れ多くもカミルは皇妃様直々に祝福をしていただいた。俺達は感謝して頭を下げ、皇妃様からカミルを引き取った。
「今度は私達の新しい宝物をご紹介しますね」
皇妃様がそう仰ると、部屋の隅に置かれたゆりかごから姫様が赤子を抱いて連れて来られた。姫様を労い、絹のおくるみに包まれた黒髪の赤子を受け取った皇妃様は私達にその赤子を紹介して下さった。
「息子のアルベルトです。カミル君といいお友達になれると嬉しいわ」
カミルにアルベルト殿下を見せると、興味津々と言った様子でその寝顔をのぞき込んでいる。自分より小さな子を見るのは初めてだから、きっと珍しいのかもしれない。
その後オルティスさんの熟練の技によって淹れられたお茶を皆で堪能し、一息ついたところで今回お祝いとして持参したからくり玩具のお披露目となった。何故か俺達の護衛も兼ねて付いて来たラウルとシュテファンがそれを部屋に運び込み、用意して頂いた台に設置する。そして父さんがからくりの覆いを外し、最終確認を始める。
「少し離れた方が良く見えるよ」
エル坊はもう興味津々で台にかじりつくが、さすがに危ないので俺が抱えて引きはがす。ちゃんと言い聞かせればわかってもらえるのは、これもまた成長した証かもしれない。
「なかなか凝った造りをしているな」
「ツヴァイクの木工職人達が手伝ってくれました」
陛下が感心されたように台座にも取手にも細やかな細工が施され、隊列を組んで動く木製の動物達も手の込んだ造りになっている。これにはエル坊だけでなく姫様も待ちきれないと言った様子だった。そんな2人にオリガはクッションを用意して台から少し離れた場所に置いた。その位置ならば不意に手を伸ばしても触ることが出来ないだろう。
「それでは、始めます」
最終確認を終えた父さんがそう言うと、俺が抱っこしていたカミルが手を叩き、つられて他の人も拍手をする。また緊張してきたのか、顔が強張って来た父さんに母さんが「しっかり」と声をかけた。
カタカタ……カタタン……カタカタ……チリン
父さんが取手を回し、木製の動物達の行進が始まる。御一家を始め、一緒に見ているオルティスさんもなぜかちゃっかり居座っているラウルとシュテファンもその様子にくぎ付けとなる。今回のは今までで一番凝った造りになっていて、最後尾を行進する小竜が1周すると小さな鐘を鳴らす仕掛けが施されている。
「ねぇ、もう一回やって!」
エル坊は気に入ったのか、何度もおねだりしてくる。気を良くした父さんはそれに応えて取手を回し続けた。しかし、腕が疲れてきたのか、途中からはラウルが代わりに取手を回していた。
「楽しい玩具をありがとう」
「喜んで頂けて町のみんなも喜びます」
「皆に礼を伝えておいてくれ」
「分かりました」
エル坊だけでなく、みんなに喜んでもらえて一安心する。ただ、贈った相手のアルベルト殿下は眠っていたし、これを見て喜ぶようになるのはまだ先だけれど。
「エド、このからくりを皆にも見てもらいましょう」
「そうだな。夏至祭の間、保育室へ持って行ってみよう」
近頃はことあるごとに側近の子供達も保育室に集まる。その為、部屋を新しくして専用の庭まで作られていた。夏至祭の時には大人達が飛竜レースや武術試合を観戦している間、子供達はそこで過ごしてもらう事になっている。このからくり玩具を皆で楽しんでもらえたら俺達も嬉しい。
「そろそろ終わりにしましょう」
「え~ もっと見たい」
さすがにラウルも腕が疲れてきたようだ。何度も試作を重ね、すぐには壊れないように作られているが、何事にも限度はある。
「わがままを言ってはダメですよ。今日はこれで終わりにしましょう」
皇妃様がそう言って窘めて下さったおかげで、ようやくラウルも取手を回す作業から解放された。
「今日は来てくれて感謝する。今作っていると言う新作も機会があったら見せてくれ」
からくり玩具を気に入って下さった陛下は別れ際に父さんの手を取って謝意を伝えて下さった。自分達が作り上げたものを評価してもらえ、いつの間にか緊張も解けた父さんと母さんは満足した様子で帰りの馬車に乗り込んだ。
こうして父さんと母さんの初めての本宮北棟訪問は無事に終了したのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
エド 「これでわんぱく共も少しは大人しくしているだろう」
侍官 「ところでこの取手は誰が回すのですか?」
エド 「護衛の誰かにやらせよう」
侍官 「お子様方の要望を聞いていたらきりがないのでは?」
エド 「回数を決めるか」
侍官 「納得なされますでしょうか?」
エド 「後は……鍛錬だと思えばいい」
こんなやり取りがあったとかなかったとか……。
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