Blood Demon~崩壊~

ハーマ

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眠り

永遠の眠り

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クロード視点

クロード「…………」

シューフェストの死後  数日かけて墓を作り、その中にシューフェストを埋めたクロードは、ぼーっとした表情で墓を見ていた

クロード  後味の悪い処刑だったな………

最後の最後で愛する人と会えたのは良かったが………クロードには何分後味の良くない処刑だった

クロード  リューが来てから少しだけ瞳に光が戻ったが………結局「生きたい」という意欲は戻ってこなかった

墓に花を添えながらクロードはそんなことを思う………シューフェストの光はとうの昔に奪われていて………生きる意欲すらも奪われてしまっていた

クロード  せめて………次の生では良き明日を紡げるように………

クロードは持ってきていたヴァイオリンを肩に持ち、静かに響き渡る音を奏でる

アールシキール「…………」

クロード  届いてくれ………この想い………

クロードは演奏をしながら静かに涙を流していた………嘘と真実の狭間で苦しみ続けた兄へと………幸福を願いながら………

アールシキール「………(嘘と真実の狭間の中で………彼は苦しみながらも思いを突き通した………その敬意を払おう)」

そしてアールシキールもまたシューフェストへ敬意を払った……

クロード「………どうか次の生では良き明日を紡いで欲しい………」

クロードはそう言い残して魔城へと帰った………

ミリュン「クロード様!」

クロード「ミリュン?どうしたんだ?」

ミリュン「ミーファ様が!」

城に帰ってきたら帰ってきたでミリュンが慌ただしくクロードを呼び、クロードが大急ぎでミーファの元へと行く

クロード「姉さん!!」

ミーファ「クロー………ド…………?」

クロード「痛みとか吐き気は?」

ミーファ「特にないけど………何があったの?」

クロード  姉さんは普通の人間だ………魔力を直接浴びていなくとも………この城にいるだけで魔力を微量ながら浴びてしまう………

ミリュン「突然倒れたのです  お怪我はありませんか?」

ミーファ「大丈夫  ちょっと頭がフラフラするくらい」

クロード  姉さんが眠りにつくのも後数日といったところか………

クロードはミーファが倒れた理由を知っていた………普通の人間であるミーファにとって魔城そのものが毒で………既に身体に毒が周り知らずの内に生命力を奪っている

クロード「…………」

ミーファ「クロード?大丈夫?」

クロード「え?ああ  大丈夫だよ」

クロードは知らずの内に苦しそうな顔をしていた………ミーファがそれを心配したがクロードは大丈夫だと言う

クロード「ミリュン  姉さんを頼む」

ミリュン「はい」

クロードはミリュンにミーファを任せ、自分の応接室へ行き椅子に座る

クロード「…………」

クロウド「王政は既に崩壊をしております」

クロード「分かっている」

クロードはクロウドの言葉にそう返したが、頭を抱えたままほとんど身動きをしない

クロード「あの国は既に壊れていた………シューフェストが騎士である時点で………何もかもおかしい………本来王子であるはずの彼の身元を知っているにも関わらず………国は彼を「王子」とは言わなかった………彼が抱えてきた痛みも苦しみも………国は理解していなかった………最も近くにいながらリューンですら………気が付かなかった………リューなら気がついていたのかもしれない………だが若き日に別れたまま………何も知らずに眠り続けていた………処刑される日に漸く目の覚めた彼も………愛した人を自分で処刑したんだ………精神的なショックは計り知れない………ミーファはシューフェストの死のショックで、その身を蝕む毒の存在に気がついてしまった………兄を失った妹ももう長くはない………ミーファは「姫」として呼ばれていたのに………シューフェストは1度として「王子」とは呼ばれなかった………彼が騎士としての力を失った時から………彼は「王子」と認められなくなった………いつから苦しみ続けていたのか………計り知れない戦闘能力を持て余し………誰にも認められることなく………最後には死を望み………処刑という形でその生涯に幕を下ろした………」

クロウド「…………」

クロード「誰よりも国を愛し護り続けてきた男の最後が………「処刑」………苦しめるだけ苦しめて全員目を逸らした………!彼からの救助信号は何度だって出ていたはずだ………!!なぜ国は彼を護ろうとはしなかった………!!!」

クロードの声に応じて部屋が少しずつ壊れていく………それはクロードがシューフェストの過去を知り、その苦しみを誰よりも理解したからこその怒りだった

クロード「ミーファは後数日で眠りにつく  その時が攻め時だろう」

クロードのその低く唸るような声にクロウドは静かに頷いた………




~数日後~

ミーファ「クロード」

クロード「ここにいるよ  姉さん」

ミーファ「………私リューンに嘘をついたの………兄さんのこと」

クロード「その嘘はもうバレてる  リューンも知ってる」

数日後  もう起き上がれなくなり、ベッドで横になるしかなかったミーファにクロードは言う

クロード「姉さん  ゆっくり休みなよ  もう開放されたんだよ  姉さんも兄さんも」

ミーファ「クロード………」

クロード「いつかまた会える日が来るのを待ってる  だから今はもう休んで?」

ミーファ「クロード………………」

クロードは優しく今にも眠りそうなミーファに言う………「もう休んでいいんだよ」と………

ミーファ「また………会える………?」

クロード「きっと会えるよ」

ミーファ「………その時はまた………一緒にご飯を食べよう………………」

クロード「愛してる  姉さん」

クロードのその言葉を聞いたミーファは優しく微笑み、そのまま瞼を閉じて二度と目が覚めることは無かった………

クロード「…………」

そしてミーファをシューフェストの隣の墓に埋めたクロード………クロードはミーファの死で人の心を失っていた………残ったのは溢れんばかりの人間への恨みと国民への怒り………しかし国民は既に人間ではなくなっていて………心の内に秘めた怒りはもう誰に当てることは出来ない

クロード  兄さんも姉さんも最後は眠るかのように死んだ………

シューフェストは愛する人の手で笑いながら死に………ミーファは微笑みながら眠るように死んだ………2人にとってその死に方が最も望ましく………クロードが選んだ「処刑」だった………

クロード  心を失ったのは寧ろ良かったのかもしれない………

かつては銀色に輝いていた心は黒く染まり………兄に突き放されながらも、後に壊れきっていた心は修復されたが………色は黒へと変わり戻らなかった………

















クロードが人の心を失うと同時に………クロードの心のかつての色は深い眠りについた………
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