32 / 73
32
しおりを挟む
少し遅れて、計画のために手紙をやり取りした紳士達も集まってくる。
「今日のクリスチナ様は何て美しいのでしょう!」
「どうか、一緒にダンスを!」
今まで、クリスチナが人生で聞いたことがなかったような言葉が並ぶ。多くの人々からのお世話に、クリスチナは自信が回復してくるのを感じた。
「皆様のような素晴らしい方々に、お声掛け頂き嬉しく思います。是非、後ほど、ご一緒させて下さい」
やっぱり美しくなった自分を殿下に見てもらおう!
クリスチナが視線を泳がせると、近付いて来ていた、ヴィルヘルムと目が合う。
不機嫌そうなしかめっ面のまま、ヴィルヘルムはエミリアを連れてやって来た。
「ひ、久しぶりだな。元気だったか?」
「はい。殿下もお元気そうで何よりでございます」
クリスチナは鼓動がはやくなる胸を押さえながら、期待と不安の混じる眼差しをヴィルヘルムに向ける。
綺麗だと仰って下さる? それとも醜い女だと思われる?
「今日は随分と華美な格好をしているんだな? 贅沢はしないんじゃなかったのか? それに随分と立派な方々と一緒にいるじゃないか?」
「立派な」というのは、皮肉の言葉である。ヴィルヘルムはふんぞりかえって、男達を品定めするように見回す。
どの男も大したことない男ばかりだ。不細工で貧乏そうな男や太ったオッサンばかりじゃないか。あの1番マシにみえる男は、先日、浮気がバレて婚約破棄されたクズ男じゃないか? それに、確か、あっちの男は借金がある遊び人。
これなら、間違いなく私が選ばれるはずだ。
「ここにお集まりの皆様は、国を憂う素晴らしい方々で、本当に立派でいらっしゃいます。そんな皆様に敬意を表すため、ワタクシも恥ずかしくない装いをさせて頂きました」
クリスチナは、自分の計画が上手くいっていることを喜んでいた。
殿下は確かに『華美』と仰った! 初めて、容姿を褒めてもらえた! しかも、狙い通りに立派な男性達に嫉妬している!
クリスチナは表情のコントロールをするのを忘れ、心からの笑顔を浮かべた。
努力して良かった!
だが、ヴィルヘルムは反対に不機嫌になった。
どうして今日はこんなに綺麗なんだ!? 私と婚約している間は、ずっとお洒落しなかったのに! 何故、笑っている!? 作り笑顔ではない、本当の笑顔で! 私と婚約破棄して、他の男達に求婚されるのが、そんなに嬉しいのか!? フリードリヒとの結婚は議会で拒否したらしいから、本命は別の男か? 国を憂う素晴らしい方!? ふざけるな! どいつも、こいつも、労せず美味い汁を吸いたいような奴ばかりだ! こんな男達よりも、私が劣っている馬鹿だとクリスチナは思っているのか!?
こんな奴ら...クリスチナのことを愛してなんかいないのに! 私が1番、クリスチナを愛しているのに! こんな男達と並んで求婚したら、私の愛までが、偽物のようになってしまう!
だが、クリスチナが選ぶのは、迷惑をかける私ではなく、迷惑をかけない偽物なのだ。
「私の浮気を疑っていた癖に、やっぱり、お前が浮気をしたかったようだな」
ヴィルヘルムは求婚者の輪から外れて庭に出てしまった。
クリスチナは困惑した。
何故、私が浮気? 確かに、自分に話しかけてくれる方を募集して、モテているように見せかける工作はしたが、社交界の皆様のいる前で、少し話したくらいでは浮気など成立するはずもない。むしろ、浮気しているのは殿下じゃないのだろうか? 今日もこうして、エミリア嬢をエスコートして、堂々と浮気されているのに...
クリスチナが首を傾げているとエミリアが笑顔で近付いて来た。
「クリスチナ様、もう、お聞きになったと思いますが、先日、私が女王になりたい云々と言った話は、お芝居だったんです。ヴィル王子が、クリスチナ様にヤキモチ妬いて欲しいから私は頼まれた通りに発言しただけで、私と王子の間には何もなかったんですよ!」
「お芝居?」
「そうなんですよ! 私は王子の命令に従っただけ! それなのに、議会の方々ったら、風紀を乱したとか、議会を混乱させたとか、詐欺だとか言って、私に罰金を要求してきて、金貨100枚も払えっていうんですよ!? おかしくありません?」
(城仕えの女中の月給が金貨10枚程度)
周囲の人々はエミリアの言葉で、婚約破棄の宣言がクリスチナの言った通り、試練であったのだと、しきりに納得した。
「エミリア嬢、ご相談にのりますので、こちらへいらして下さい」
クリスチナは周囲の目を気にして、エミリアを連れてテラスに移動した。
「今日のクリスチナ様は何て美しいのでしょう!」
「どうか、一緒にダンスを!」
今まで、クリスチナが人生で聞いたことがなかったような言葉が並ぶ。多くの人々からのお世話に、クリスチナは自信が回復してくるのを感じた。
「皆様のような素晴らしい方々に、お声掛け頂き嬉しく思います。是非、後ほど、ご一緒させて下さい」
やっぱり美しくなった自分を殿下に見てもらおう!
クリスチナが視線を泳がせると、近付いて来ていた、ヴィルヘルムと目が合う。
不機嫌そうなしかめっ面のまま、ヴィルヘルムはエミリアを連れてやって来た。
「ひ、久しぶりだな。元気だったか?」
「はい。殿下もお元気そうで何よりでございます」
クリスチナは鼓動がはやくなる胸を押さえながら、期待と不安の混じる眼差しをヴィルヘルムに向ける。
綺麗だと仰って下さる? それとも醜い女だと思われる?
「今日は随分と華美な格好をしているんだな? 贅沢はしないんじゃなかったのか? それに随分と立派な方々と一緒にいるじゃないか?」
「立派な」というのは、皮肉の言葉である。ヴィルヘルムはふんぞりかえって、男達を品定めするように見回す。
どの男も大したことない男ばかりだ。不細工で貧乏そうな男や太ったオッサンばかりじゃないか。あの1番マシにみえる男は、先日、浮気がバレて婚約破棄されたクズ男じゃないか? それに、確か、あっちの男は借金がある遊び人。
これなら、間違いなく私が選ばれるはずだ。
「ここにお集まりの皆様は、国を憂う素晴らしい方々で、本当に立派でいらっしゃいます。そんな皆様に敬意を表すため、ワタクシも恥ずかしくない装いをさせて頂きました」
クリスチナは、自分の計画が上手くいっていることを喜んでいた。
殿下は確かに『華美』と仰った! 初めて、容姿を褒めてもらえた! しかも、狙い通りに立派な男性達に嫉妬している!
クリスチナは表情のコントロールをするのを忘れ、心からの笑顔を浮かべた。
努力して良かった!
だが、ヴィルヘルムは反対に不機嫌になった。
どうして今日はこんなに綺麗なんだ!? 私と婚約している間は、ずっとお洒落しなかったのに! 何故、笑っている!? 作り笑顔ではない、本当の笑顔で! 私と婚約破棄して、他の男達に求婚されるのが、そんなに嬉しいのか!? フリードリヒとの結婚は議会で拒否したらしいから、本命は別の男か? 国を憂う素晴らしい方!? ふざけるな! どいつも、こいつも、労せず美味い汁を吸いたいような奴ばかりだ! こんな男達よりも、私が劣っている馬鹿だとクリスチナは思っているのか!?
こんな奴ら...クリスチナのことを愛してなんかいないのに! 私が1番、クリスチナを愛しているのに! こんな男達と並んで求婚したら、私の愛までが、偽物のようになってしまう!
だが、クリスチナが選ぶのは、迷惑をかける私ではなく、迷惑をかけない偽物なのだ。
「私の浮気を疑っていた癖に、やっぱり、お前が浮気をしたかったようだな」
ヴィルヘルムは求婚者の輪から外れて庭に出てしまった。
クリスチナは困惑した。
何故、私が浮気? 確かに、自分に話しかけてくれる方を募集して、モテているように見せかける工作はしたが、社交界の皆様のいる前で、少し話したくらいでは浮気など成立するはずもない。むしろ、浮気しているのは殿下じゃないのだろうか? 今日もこうして、エミリア嬢をエスコートして、堂々と浮気されているのに...
クリスチナが首を傾げているとエミリアが笑顔で近付いて来た。
「クリスチナ様、もう、お聞きになったと思いますが、先日、私が女王になりたい云々と言った話は、お芝居だったんです。ヴィル王子が、クリスチナ様にヤキモチ妬いて欲しいから私は頼まれた通りに発言しただけで、私と王子の間には何もなかったんですよ!」
「お芝居?」
「そうなんですよ! 私は王子の命令に従っただけ! それなのに、議会の方々ったら、風紀を乱したとか、議会を混乱させたとか、詐欺だとか言って、私に罰金を要求してきて、金貨100枚も払えっていうんですよ!? おかしくありません?」
(城仕えの女中の月給が金貨10枚程度)
周囲の人々はエミリアの言葉で、婚約破棄の宣言がクリスチナの言った通り、試練であったのだと、しきりに納得した。
「エミリア嬢、ご相談にのりますので、こちらへいらして下さい」
クリスチナは周囲の目を気にして、エミリアを連れてテラスに移動した。
0
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
王女殿下のモラトリアム
あとさん♪
恋愛
「君は彼の気持ちを弄んで、どういうつもりなんだ?!この悪女が!」
突然、怒鳴られたの。
見知らぬ男子生徒から。
それが余りにも突然で反応できなかったの。
この方、まさかと思うけど、わたくしに言ってるの?
わたくし、アンネローゼ・フォン・ローリンゲン。花も恥じらう16歳。この国の王女よ。
先日、学園内で突然無礼者に絡まれたの。
お義姉様が仰るに、学園には色んな人が来るから、何が起こるか分からないんですって!
婚約者も居ない、この先どうなるのか未定の王女などつまらないと思っていたけれど、それ以来、俄然楽しみが増したわ♪
お義姉様が仰るにはピンクブロンドのライバルが現れるそうなのだけど。
え? 違うの?
ライバルって縦ロールなの?
世間というものは、なかなか複雑で一筋縄ではいかない物なのですね。
わたくしの婚約者も学園で捕まえる事が出来るかしら?
この話は、自分は平凡な人間だと思っている王女が、自分のしたい事や好きな人を見つける迄のお話。
※設定はゆるんゆるん
※ざまぁは無いけど、水戸○門的なモノはある。
※明るいラブコメが書きたくて。
※シャティエル王国シリーズ3作目!
※過去拙作『相互理解は難しい(略)』の12年後、
『王宮勤めにも色々ありまして』の10年後の話になります。
上記未読でも話は分かるとは思いますが、お読みいただくともっと面白いかも。
※ちょいちょい修正が入ると思います。誤字撲滅!
※小説家になろうにも投稿しました。
10回目の婚約破棄。もう飽きたので、今回は断罪される前に自分で自分を追放します。二度と探さないでください(フリではありません)
放浪人
恋愛
「もう、疲れました。貴方の顔も見たくありません」
公爵令嬢リーゼロッテは、婚約者である王太子アレクセイに処刑される人生を9回繰り返してきた。 迎えた10回目の人生。もう努力も愛想笑いも無駄だと悟った彼女は、断罪イベントの一ヶ月前に自ら姿を消すことを決意する。 王城の宝物庫から慰謝料(国宝)を頂き、書き置きを残して国外逃亡! 目指せ、安眠と自由のスローライフ!
――のはずだったのだが。
「『顔も見たくない』だと? つまり、直視できないほど私が好きだという照れ隠しか!」 「『探さないで』? 地の果てまで追いかけて抱きしめてほしいというフリだな!」
実は1周目からリーゼロッテを溺愛していた(が、コミュ障すぎて伝わっていなかった)アレクセイ王子は、彼女の拒絶を「愛の試練(かくれんぼ)」と超ポジティブに誤解! 国家権力と軍隊、そしてS級ダンジョンすら踏破するチート能力を総動員して、全力で追いかけてきた!?
物理で逃げる最強令嬢VS愛が重すぎる勘違い王子。 聖女もドラゴンも帝国も巻き込んだ、史上最大規模の「国境なき痴話喧嘩」が今、始まる!
※表紙はNano Bananaで作成しています
新婚初夜に『白い結婚にしてほしい』と言われたので論理的に詰めたら夫が泣きました
ささい
恋愛
「愛人がいるから、白い結婚にしてほしい」
政略結婚の初夜にそう告げた夫ルーファス。
妻カレンの反応は——
「それ、契約不履行ですよね?」
「あなたの感情論、論理的に破綻してますよ?」
泣き落としは通じない。
そして初夜の翌朝、夫は泣いていた。
逃げ道は全部塞がれ、気づけば毎日論破されていた。
これは、論破され続けた夫がなぜか幸せになる話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる