【完結】婚約破棄と言われても個人の意思では出来ません

狸田 真 (たぬきだ まこと)

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「つまり、浮気の事実はないと?」

「もちろんです! ですから、罰金の金貨100枚はヴィル王子が払うべきだと思うんです! だけど、クリスチナ様の許可がないとお金が出せないって言うから今日はお願いに来たの! ね? 許可してくれるでしょ? ついでに、素敵な男性を紹介して頂けません?」

 殿下は浮気なんてしていなかった! ワタクシにヤキモチを妬いて欲しかっただけだったんだ!

「ちょっと、クリスチナ様、泣いてるの!? やだぁ、私の所為じゃないですよね? 悪いのはヴィル王子だから...」

 クリスチナはエミリアに言われて、自分の瞳が涙で潤んでいる事に気が付いた。だが、自分がどういう感情でそうなったのかは分からなかった。

 浮気されていなかったことは嬉しい。だが、浮気ではないのに婚約破棄を宣言されるなんて事があるだろうか? ヤキモチ? 嫌われているの間違いではなく?

「だけど、許してあげて下さい! あの人、クリスチナ様のこと大好きなんですよ~! ついでに、私のお金の事も許してください!」

「許すも何も、ワタクシは全て殿下の御心に従うだけでございます。ですが、エミリア嬢の罰金が不当に請求されたものなのでしたら、再審要求をされてはいかがでしょうか? 殿下の命令に従ってやむを得ず行った芝居なら、エミリア嬢は罰金の支払いをしなくてよくなるはずです」

「命令されたわけじゃなかったんだけど、友達だったら助けてあげるのが普通でしょ!?」

「申し訳ありませんが、ワタクシはいささか混乱しております。殿下はワタクシの嫉妬心を煽ってどうされるおつもりだったのでしょうか? エミリア嬢が殿下をお助けされたのは、どんな理由に共感されたからなのですか?」

「だから! ヴィル王子がクリスチナ様の泣いて縋る姿が見たいって言うから、嫉妬心を煽ったりする芝居をしただけなんです! 理由はよく分からないけど、クリスチナ様の気持ちを試したかったんじゃないですか? お2人の関係の構築を手伝うなんて、私って、めっちゃいい友達じゃないですか?」

 なるほど、そうだとしたら、あの突拍子もない女王になる発言も頷ける。普通に考えたら、あの頭の悪い発言を、学園で特待生だった才女がするなど有り得ない。

 しかし、ワタクシの気持ちを確かめるためだけに、あんな大それた事を!? 本当に!?

「確かに素晴らしい友情ではありますが、その理由では、やはり罰金は免れないと思います。エミリア嬢は殿下の子供じみた行動に協力せず、諌(いさ)めるべきでした」

「そんな!? でも、クリスチナ様も悪いんですよ! クリスチナ様が愛情表現をしないから、ヴィル王子が愛されているのか不安になっちゃったんです!」

「ワタクシ達は政略結婚でございます。愛は関係ないかと...」

「はぁ!? 政略結婚なんかじゃないですよ!? ヴィル王子はクリスチナ様と一緒にいたいから、クリスチナ様が他国のオッサン王子に嫁ぐことが決まっていたのに、横取りして婚約したんだから!」

「殿下が? ワタクシと結婚したかった?」

_________
狸田真より

 作品紹介のあらすじに政略結婚って書いてるじゃん! って思われた読者の方申し訳ありません。あらすじはクリスチナ視点でした。(土下座)
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