26 / 73
26
しおりを挟む
しばらくすると美活の効果が現れた。
栄養が足りているので、食欲が減り、仕事時の甘味を自然とやめられた。代謝やお通じがよくなり、沢山食べているのに体重が減り、体が驚くほど軽くなる。肌荒れが治り、肌に潤いが出てきて、髪にも艶が出てきている。
驚いたのは、視力や嗅覚が良くなったことだ。頭の回転も良くなり、いつもよりも短時間で仕事がこなせる。
1番嬉しかったのは、綺麗になると、男女問わず、人と目が合うようになったことだ。皆が、ワタクシに笑顔を向けてくれるようになった。
今日のクリスチナは、ドレスの仮縫い(体型にピッタリ合う仕立てドレスには必要な作業)をするために、何十分もハイヒールで直立させらていた。
クリスチナは意識が朦朧とする中、ぼんやりと考えた。
自分は今まで、レディである事をサボっていたのね。
殿下には申し訳ない事をした。
有力貴族の御子息達や他国の王子のパートナー達は、皆、しっかりと手入れされており、光り輝くような美しさだった。
一方、ワタクシは手入れもされていなければ、素材も良くない粗悪品。
美しい他の女性に目が行くのは仕方がない事だったに違いない。
しかし...殿下は努力したワタクシを気に入って下さるだろうか? 多大なる予算と、多くの人々の力を借りた、この努力が無駄になったりしないだろうか?
このプロジェクトにかけた予算と労力が有れば、きっと貧しい民の命や生活を救えたはず...その命を差し置いて、何の成果も得られなければ、ワタクシは悪政をひく悪女である。
いや、大丈夫だ! 少し華やかな衣装を着て、軽くメイクしただけで、あんなに動揺されて、次回の公式行事のパートナー確認までされたのだ。たったあれだけのお洒落であそこまで効果が現れたのだから、これだけすればきっと、ワタクシに対する殿下の見方も変わるはず!
生まれつき美人な、あの女性(エミリア嬢)には敵わないかもしれないが、ワタクシを正妃に据え、エミリア嬢を愛人とすることに同意してくれるかもしれない。
悪女から国を守るため、民を守るため、女には女の戦い方がある。
どうか、美の女神よ! 力を貸して下さい!
どうか、少しくらいは、殿下がワタクシを女性として見てくれますように。
仮縫いを終えたデザイナーがクリスチナに声をかける。
「お疲れ様です。では以降、ボディサイズに変化がないようにお気を付け下さい」
すると、次の予定のために待機していたダイエットチームが猛抗議し始める。
「まだ、舞踏会までに2週間もあるのですよ!? これからまだまだサイズダウン出来るのに、痩せるなと仰りたいのですか!?」
これに服飾チームが反論する。
「前日にボディサイズを採寸してドレスを縫い直せっていうのですか!? コレクションや舞台みたいに距離のある場所で着るドレスではないのですよ!? 近距離で見られるドレスであり、男性と密着して踊るドレスでもあるのです! 前日に慌てて縫う事など出来ません! 今から縫わなくては!」
「でしたら、サイズ調節出来る編み上げドレスにすれば良いでしょ!? 美しく見せる事が目的なのに、公女様が美しくなるのを阻むだなんて本末転倒だわ!」
「私達の作るドレスはプレタポルテ(既成服)じゃないのですよ!? 貴婦人の着るオートクチュール(完全仕立て服)なんです! 庶民や太ったオペラ歌手が着る編み上げドレスだなんて、公女様に着せられないわ!」
「ローブ・ア・ラ・フランセーズのように編み上げを背中部分にして、羽織りのローブで隠したら?」
「仮装する仮面舞踏会じゃないのよ!? 王家主催の公式的な舞踏会なの! 公女様に時代遅れの古典的なドレスを着ろっていうの!? それに、もう、仮縫いまで終わってるのよ!? 今からデザインを変更したら、間に合わないわ! 生地だって糸だって最高級品だし、材料の入手には時間がかかるの! 刺繍だってお針子の皆と頑張ったんだから!」
「こっちだって、私達ダイエットチームとシェイプアップチーム、マッサージチームで頑張ってるのよ! 召し上がる食事の栄養計算から、献立のスケジュール、食材だって手配してるの! 公女様の健康にも関わる事なんだからね! 大事なのは公女様自身が美しく健康でいられることでしょ!?」
クリスチナは頭を抱えた。
デザイナーチームが用意してくれたドレスは、アール・ヌーヴォースタイルのドレスで、柔らかいレース生地が体にピッタリしたデザインで作られている。一部の隙もない完璧なデザインであるが故に、編み上げ部分を取り付けてしまえばデザインのバランスは崩れてしまう。
だが、殿下にワタクシ自身を美しいと思ってもらえなければ、この計画は意味をなさない。
自分の経験や考えが足りなかった所為で、皆の努力が水の泡のように消えてしまう。それどころか、諍いが起きて、互いに憎しみ合う関係に...上に立つ者の責任は重大だと分かっていたのに、疲れていた事を理由に、努力を惜しんでしまった。こんな事になるなら、下手なお洒落をせずにいつものワタクシでいれば良かった?
反省しても、もう遅い。すでに問題は起きてしまっている。一体、どうすればいい!?
頭がカッと熱くなって心臓がバクバクと音を立てている。
クリスチナは目を閉じて、ゆっくりと深呼吸をした。
脳に酸素を送って考えるのだ!
栄養が足りているので、食欲が減り、仕事時の甘味を自然とやめられた。代謝やお通じがよくなり、沢山食べているのに体重が減り、体が驚くほど軽くなる。肌荒れが治り、肌に潤いが出てきて、髪にも艶が出てきている。
驚いたのは、視力や嗅覚が良くなったことだ。頭の回転も良くなり、いつもよりも短時間で仕事がこなせる。
1番嬉しかったのは、綺麗になると、男女問わず、人と目が合うようになったことだ。皆が、ワタクシに笑顔を向けてくれるようになった。
今日のクリスチナは、ドレスの仮縫い(体型にピッタリ合う仕立てドレスには必要な作業)をするために、何十分もハイヒールで直立させらていた。
クリスチナは意識が朦朧とする中、ぼんやりと考えた。
自分は今まで、レディである事をサボっていたのね。
殿下には申し訳ない事をした。
有力貴族の御子息達や他国の王子のパートナー達は、皆、しっかりと手入れされており、光り輝くような美しさだった。
一方、ワタクシは手入れもされていなければ、素材も良くない粗悪品。
美しい他の女性に目が行くのは仕方がない事だったに違いない。
しかし...殿下は努力したワタクシを気に入って下さるだろうか? 多大なる予算と、多くの人々の力を借りた、この努力が無駄になったりしないだろうか?
このプロジェクトにかけた予算と労力が有れば、きっと貧しい民の命や生活を救えたはず...その命を差し置いて、何の成果も得られなければ、ワタクシは悪政をひく悪女である。
いや、大丈夫だ! 少し華やかな衣装を着て、軽くメイクしただけで、あんなに動揺されて、次回の公式行事のパートナー確認までされたのだ。たったあれだけのお洒落であそこまで効果が現れたのだから、これだけすればきっと、ワタクシに対する殿下の見方も変わるはず!
生まれつき美人な、あの女性(エミリア嬢)には敵わないかもしれないが、ワタクシを正妃に据え、エミリア嬢を愛人とすることに同意してくれるかもしれない。
悪女から国を守るため、民を守るため、女には女の戦い方がある。
どうか、美の女神よ! 力を貸して下さい!
どうか、少しくらいは、殿下がワタクシを女性として見てくれますように。
仮縫いを終えたデザイナーがクリスチナに声をかける。
「お疲れ様です。では以降、ボディサイズに変化がないようにお気を付け下さい」
すると、次の予定のために待機していたダイエットチームが猛抗議し始める。
「まだ、舞踏会までに2週間もあるのですよ!? これからまだまだサイズダウン出来るのに、痩せるなと仰りたいのですか!?」
これに服飾チームが反論する。
「前日にボディサイズを採寸してドレスを縫い直せっていうのですか!? コレクションや舞台みたいに距離のある場所で着るドレスではないのですよ!? 近距離で見られるドレスであり、男性と密着して踊るドレスでもあるのです! 前日に慌てて縫う事など出来ません! 今から縫わなくては!」
「でしたら、サイズ調節出来る編み上げドレスにすれば良いでしょ!? 美しく見せる事が目的なのに、公女様が美しくなるのを阻むだなんて本末転倒だわ!」
「私達の作るドレスはプレタポルテ(既成服)じゃないのですよ!? 貴婦人の着るオートクチュール(完全仕立て服)なんです! 庶民や太ったオペラ歌手が着る編み上げドレスだなんて、公女様に着せられないわ!」
「ローブ・ア・ラ・フランセーズのように編み上げを背中部分にして、羽織りのローブで隠したら?」
「仮装する仮面舞踏会じゃないのよ!? 王家主催の公式的な舞踏会なの! 公女様に時代遅れの古典的なドレスを着ろっていうの!? それに、もう、仮縫いまで終わってるのよ!? 今からデザインを変更したら、間に合わないわ! 生地だって糸だって最高級品だし、材料の入手には時間がかかるの! 刺繍だってお針子の皆と頑張ったんだから!」
「こっちだって、私達ダイエットチームとシェイプアップチーム、マッサージチームで頑張ってるのよ! 召し上がる食事の栄養計算から、献立のスケジュール、食材だって手配してるの! 公女様の健康にも関わる事なんだからね! 大事なのは公女様自身が美しく健康でいられることでしょ!?」
クリスチナは頭を抱えた。
デザイナーチームが用意してくれたドレスは、アール・ヌーヴォースタイルのドレスで、柔らかいレース生地が体にピッタリしたデザインで作られている。一部の隙もない完璧なデザインであるが故に、編み上げ部分を取り付けてしまえばデザインのバランスは崩れてしまう。
だが、殿下にワタクシ自身を美しいと思ってもらえなければ、この計画は意味をなさない。
自分の経験や考えが足りなかった所為で、皆の努力が水の泡のように消えてしまう。それどころか、諍いが起きて、互いに憎しみ合う関係に...上に立つ者の責任は重大だと分かっていたのに、疲れていた事を理由に、努力を惜しんでしまった。こんな事になるなら、下手なお洒落をせずにいつものワタクシでいれば良かった?
反省しても、もう遅い。すでに問題は起きてしまっている。一体、どうすればいい!?
頭がカッと熱くなって心臓がバクバクと音を立てている。
クリスチナは目を閉じて、ゆっくりと深呼吸をした。
脳に酸素を送って考えるのだ!
0
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
私が行方不明の皇女です~生死を彷徨って帰国したら信じていた初恋の従者は婚約していました~
marumi
恋愛
「あら アルヴェイン公爵がドゥーカス令嬢をエスコートされていますわ」
「ご婚約されたと噂を聞きましたが、まさか本当だとは!」
私は五年前までこの国の皇女エリシアだった。
暗殺事件に巻き込まれ、幼なじみで初恋の相手だった従者――アルヴェイン公子と共に命からがら隣国、エルダールへ亡命した。
彼の「必ず迎えに来る」その言葉を信じて、隣国の地で彼を待ち続けた……。
それなのに……。
やっとの思いで帰国した帝国の華やかなパーティー会場で、一際目立っているのは、彼と、社交界の華と言われる令嬢だった――。
※校正にAIを使用していますが、自身で考案したオリジナル小説です。
※イメージが伝わればと思い、表紙画像をAI生成してみました。
王女殿下のモラトリアム
あとさん♪
恋愛
「君は彼の気持ちを弄んで、どういうつもりなんだ?!この悪女が!」
突然、怒鳴られたの。
見知らぬ男子生徒から。
それが余りにも突然で反応できなかったの。
この方、まさかと思うけど、わたくしに言ってるの?
わたくし、アンネローゼ・フォン・ローリンゲン。花も恥じらう16歳。この国の王女よ。
先日、学園内で突然無礼者に絡まれたの。
お義姉様が仰るに、学園には色んな人が来るから、何が起こるか分からないんですって!
婚約者も居ない、この先どうなるのか未定の王女などつまらないと思っていたけれど、それ以来、俄然楽しみが増したわ♪
お義姉様が仰るにはピンクブロンドのライバルが現れるそうなのだけど。
え? 違うの?
ライバルって縦ロールなの?
世間というものは、なかなか複雑で一筋縄ではいかない物なのですね。
わたくしの婚約者も学園で捕まえる事が出来るかしら?
この話は、自分は平凡な人間だと思っている王女が、自分のしたい事や好きな人を見つける迄のお話。
※設定はゆるんゆるん
※ざまぁは無いけど、水戸○門的なモノはある。
※明るいラブコメが書きたくて。
※シャティエル王国シリーズ3作目!
※過去拙作『相互理解は難しい(略)』の12年後、
『王宮勤めにも色々ありまして』の10年後の話になります。
上記未読でも話は分かるとは思いますが、お読みいただくともっと面白いかも。
※ちょいちょい修正が入ると思います。誤字撲滅!
※小説家になろうにも投稿しました。
10回目の婚約破棄。もう飽きたので、今回は断罪される前に自分で自分を追放します。二度と探さないでください(フリではありません)
放浪人
恋愛
「もう、疲れました。貴方の顔も見たくありません」
公爵令嬢リーゼロッテは、婚約者である王太子アレクセイに処刑される人生を9回繰り返してきた。 迎えた10回目の人生。もう努力も愛想笑いも無駄だと悟った彼女は、断罪イベントの一ヶ月前に自ら姿を消すことを決意する。 王城の宝物庫から慰謝料(国宝)を頂き、書き置きを残して国外逃亡! 目指せ、安眠と自由のスローライフ!
――のはずだったのだが。
「『顔も見たくない』だと? つまり、直視できないほど私が好きだという照れ隠しか!」 「『探さないで』? 地の果てまで追いかけて抱きしめてほしいというフリだな!」
実は1周目からリーゼロッテを溺愛していた(が、コミュ障すぎて伝わっていなかった)アレクセイ王子は、彼女の拒絶を「愛の試練(かくれんぼ)」と超ポジティブに誤解! 国家権力と軍隊、そしてS級ダンジョンすら踏破するチート能力を総動員して、全力で追いかけてきた!?
物理で逃げる最強令嬢VS愛が重すぎる勘違い王子。 聖女もドラゴンも帝国も巻き込んだ、史上最大規模の「国境なき痴話喧嘩」が今、始まる!
※表紙はNano Bananaで作成しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる