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「ワタクシは1人の女である前に、殿下に仕える臣下でございます。殿下を正しい道に導くことこそがワタクシに課せられた使命でございます」
世襲制で王子の地位にいる殿下と違って、ワタクシはワタクシの仕事をしなければ、むしろ婚約を破棄される正当な理由が出来てしまう。
「私は王子である前に人間だ! ずっと孤独だった...父上や母上は公務で忙しく、食事する時もいつも1人で...その癖、教育係が常に試験官の様に監視してきて、少しのミスも許されない! 学校のクラスメイト達は登下校で親が迎えに来るのに、私のところには召使いしか来ない! お祭りの日に家族で出かけて手を繋いで歩いたり、屋台でお菓子を買ったりしたこともないんだ!」
「それは...ワタクシも同じですが?」
クリスチナも幼い頃から孤独に耐えて来たから、ヴィルヘルムの気持ちはよく分かっていた。
「お前はそれでもいいのかもしれないが私は違うんだ! もっと、自分らしく、人間らしく生きたい!」
「学校の送り迎えのお話は子供学校時代のお話でございますね? 殿下が幼き頃は家庭教師の方が王宮に通っておりましたし。この国では子供学校時代に親が送り迎えする世帯は僅(わず)か5%です。そうした家は、裕福で時間もある特別な家であるといっていいでしょう。その他の国民は大変貧しく、時間もないため、多くの親御さん達は自分で送り迎えすることが出来ません。それどころか、代理で送り迎えする人間も雇えません。そもそも、学校に通えないという貧しい家庭も存在しております。親がいない子供だっているのです。
お祭りでお菓子を買ってもらえる家庭も同様です。貧しい家庭は買えず、大貴族は毒殺の恐れがあるため屋台のお菓子は口に出来ません。
毎日の食事に関しても、庶民は朝食はパンをかじるだけ、もしくは朝食を取らない家庭が多く、家族で食事をしていない割合は半数を超えております。昼食も、親御さんは職場、子供は学校でお弁当を食べるため別。夜だけは家族と一緒に食事が出来るという場合が多いですが、殿下も夜は晩餐会などで王太子夫妻と食事されているので同じですよね? その他の臣下や外国の来賓客が一緒に食事されるので、むしろ、賑やか食卓と言えるでしょう。そして、食が豊かな分、民よりも恵まれていると思われます」
「いや! それは違う! 食が豊かでも、精神が貧しいのだ! 無関心な大人が大勢い過ぎるとかえって孤独が増すのだ。そんな生活が普通だと、恵まれていると、私もずっと思って生きてきた。だが、エミリアに出会って、そうじゃないんだと気が付いたんだ! エミリアは私に寄り添って一緒にいてくれる! 貧しくても一緒にご飯やお菓子を分けあって食べるという幸せを教えてくれたんだ!」
「この女性と食事を分けあった!? 毒見役の毒見は行ったのですか!?」
「エミリアが作ってくれたんだ! そんなものは必要ない!」
「その...エミリア嬢は、第一王子派の身元の確かな方なのですか? それともエミリア嬢自身が毒見役の資格をお持ちで?」
「エミリアはどの派閥にも属してはいない! 貴族ではなく平民だからな! 派閥は関係ない! もちろん、毒見役などではない!」
ヴィルヘルムの言葉に、クリスチナは青くなった。悲鳴のような大きな声で叫ぶ。
「すぐに医者を呼んで! 殿下の健康の検査を!」
「必要ない!」
「必要です! 殿下! 平民の出身であるという事は、エミリア嬢は学校に特待生で入られた方ですね?」
「そうだ! エミリアは大変優秀で努力家なんだぞ!」
「でしたら、王家転覆、貴族没落を狙う革命派の工作員である可能性が考えられます。御身(おんみ)のために警戒して下さい!」
「何を馬鹿な事を言っているんだ! 私の健康状態は悪くなっていないし、エミリアが工作員なはずがない!」
「いいえ、毒は種類によって、ちょっとずつ長期間摂取することによって、効果を発揮するものもあるのです」
「変な言いがかりはやめて下さい! 私は毒なんて盛っていません! 私は殿下を愛しているのですから!」
エミリアの突然の発言に、クリスチナは目を丸くした。
世襲制で王子の地位にいる殿下と違って、ワタクシはワタクシの仕事をしなければ、むしろ婚約を破棄される正当な理由が出来てしまう。
「私は王子である前に人間だ! ずっと孤独だった...父上や母上は公務で忙しく、食事する時もいつも1人で...その癖、教育係が常に試験官の様に監視してきて、少しのミスも許されない! 学校のクラスメイト達は登下校で親が迎えに来るのに、私のところには召使いしか来ない! お祭りの日に家族で出かけて手を繋いで歩いたり、屋台でお菓子を買ったりしたこともないんだ!」
「それは...ワタクシも同じですが?」
クリスチナも幼い頃から孤独に耐えて来たから、ヴィルヘルムの気持ちはよく分かっていた。
「お前はそれでもいいのかもしれないが私は違うんだ! もっと、自分らしく、人間らしく生きたい!」
「学校の送り迎えのお話は子供学校時代のお話でございますね? 殿下が幼き頃は家庭教師の方が王宮に通っておりましたし。この国では子供学校時代に親が送り迎えする世帯は僅(わず)か5%です。そうした家は、裕福で時間もある特別な家であるといっていいでしょう。その他の国民は大変貧しく、時間もないため、多くの親御さん達は自分で送り迎えすることが出来ません。それどころか、代理で送り迎えする人間も雇えません。そもそも、学校に通えないという貧しい家庭も存在しております。親がいない子供だっているのです。
お祭りでお菓子を買ってもらえる家庭も同様です。貧しい家庭は買えず、大貴族は毒殺の恐れがあるため屋台のお菓子は口に出来ません。
毎日の食事に関しても、庶民は朝食はパンをかじるだけ、もしくは朝食を取らない家庭が多く、家族で食事をしていない割合は半数を超えております。昼食も、親御さんは職場、子供は学校でお弁当を食べるため別。夜だけは家族と一緒に食事が出来るという場合が多いですが、殿下も夜は晩餐会などで王太子夫妻と食事されているので同じですよね? その他の臣下や外国の来賓客が一緒に食事されるので、むしろ、賑やか食卓と言えるでしょう。そして、食が豊かな分、民よりも恵まれていると思われます」
「いや! それは違う! 食が豊かでも、精神が貧しいのだ! 無関心な大人が大勢い過ぎるとかえって孤独が増すのだ。そんな生活が普通だと、恵まれていると、私もずっと思って生きてきた。だが、エミリアに出会って、そうじゃないんだと気が付いたんだ! エミリアは私に寄り添って一緒にいてくれる! 貧しくても一緒にご飯やお菓子を分けあって食べるという幸せを教えてくれたんだ!」
「この女性と食事を分けあった!? 毒見役の毒見は行ったのですか!?」
「エミリアが作ってくれたんだ! そんなものは必要ない!」
「その...エミリア嬢は、第一王子派の身元の確かな方なのですか? それともエミリア嬢自身が毒見役の資格をお持ちで?」
「エミリアはどの派閥にも属してはいない! 貴族ではなく平民だからな! 派閥は関係ない! もちろん、毒見役などではない!」
ヴィルヘルムの言葉に、クリスチナは青くなった。悲鳴のような大きな声で叫ぶ。
「すぐに医者を呼んで! 殿下の健康の検査を!」
「必要ない!」
「必要です! 殿下! 平民の出身であるという事は、エミリア嬢は学校に特待生で入られた方ですね?」
「そうだ! エミリアは大変優秀で努力家なんだぞ!」
「でしたら、王家転覆、貴族没落を狙う革命派の工作員である可能性が考えられます。御身(おんみ)のために警戒して下さい!」
「何を馬鹿な事を言っているんだ! 私の健康状態は悪くなっていないし、エミリアが工作員なはずがない!」
「いいえ、毒は種類によって、ちょっとずつ長期間摂取することによって、効果を発揮するものもあるのです」
「変な言いがかりはやめて下さい! 私は毒なんて盛っていません! 私は殿下を愛しているのですから!」
エミリアの突然の発言に、クリスチナは目を丸くした。
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