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第三膜 寝取られ撲滅パーティ編

五十四射目「ユリィちゃんは泳ぎたい」

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 ぱちゃぱちゃぱちゃぱちゃ……

 森の中に、可愛らしい水音が響いていた。
 盲目の少女ユリィが、川の中で水泳に、挑戦しているのだ。
 夕暮れ前の穏やかな空、水の澄んだ天然のプールだ。

 俺は、ユリィの両手を握って、彼女を支えている。
 彼女は、ゴーグルなしで、顔を地面につけながら、バタバタバタと、一生懸命足を動かしている。
 目が見えないとは思えない程、上達の速度が速い。

「プハァァ!!」

 ユリィは、苦しそうに、水面から顔を上げた。
 まだ、息継ぎは出来ない。
 両足を地面に付けて立ちあがり、ぜーぜーと息を切らしている。

「はぁ……はぁ……ごほっ……はぁはぁ……」

 当然、彼女は、水着も着ていない。
 彼女の白いワンピースは、水で半透明に透けていて、肌にべっとりと纏わりつき、中の肌色がうっすらと見えていた。

「大丈夫!? ユリィちゃん? いいよっ、うまく泳げてたよっ」

 俺の隣、新崎直穂にいざきなおほが、心配そうに、ユリィに話しかけていた。
 直穂なおほが泳ぎを教え、俺はユリィのサポートをする。
 直穂なおほの水泳のコーチングは、無茶苦茶分かりやすかった。
 流石、学校の先生を目指しているだけはある。
 体育の先生も完璧だな、直穂なおほは運動もそこそこ出来る。
 俺も直穂なおほに、大人の保健体育を教えて貰いたい……

 彼女も薄着姿で、全身水浸しであった。
 ショートパンツと、透けたTシャツ……
 肌に張り付いたシャツは、彼女の身体のラインを、ピッタリとなぞっていた…

「はぁ………はぁ… 大丈夫ですっ! 次は行宗ゆきむねさんみたいに、魚を捕まえたいです……」

 ユリィには疲れが見えるが、まだまだやる気のようだ。
 息を切らしながらも、声色は明るい。
 楽しんでくれているようで、こちらも嬉しくなる。

 因みに俺は、13匹の魚を捕まえおわっている。
 俺は、レベル52の召喚勇者だ。
 水の中でも、かなり自由に動き回れる。
 俺の身体には、【自慰マスター〇ーション】スキルなしでも、素手で魚を捕まえられる程の、身体能力が備わっていた。


「それはいいね。でも、少し日陰で休もうか。泳ぎっぱなしで疲れてない?」
「分かりましたっ」

 直穂なおほの提案で、俺達は川から上がり、大きな岩の上へと腰掛けた。

 座る順番は、左から直穂なおほ、ユリィ、そして俺だ。
 俺と直穂なおほは、それぞれユリィの、左手と右手を握っていた
 目の見えないユリィは、常に誰かに触れられていないと、不安になってしまうそうなのだ。
 思い返せばリリィさんも、ずっとユリィの手を繋いでいて、傍を離れることはなかったな。
 
 大岩の上は、じんわりとした暑さがあった。
 気候は夏、熱帯雨林といったところか。
 絶好の水泳日和である。
 直穂も、この暑さには、分厚いマントを脱いでくれた。
 お陰で、直穂なおほの身体のラインを、ハッキリと見る事ができるのだが。

「リリィちゃんと和奈かずな、大丈夫かなぁ……」

 直穂なおほが、ぽつりとそう言った。
 リリィさんは、浅尾あさおさんと共に、今夜寝られる場所を作ってくれている。
 一方の俺達は、川で遊んでいるのだが……

「お姉さまに関しては、心配無用ですよ……」
「同意だな、ユリィも凄いけど、リリィさんは凄すぎる……。俺なんかより、ずっと年上な気がするよ……」

 リリィさんは、魔法に知識量、言葉遣いまで、まるで非の打ちどころがないのだ。
 もし、洞窟で彼女と出会っていなかったらと考えると、ゾッとする……
 俺は、洞窟から出られずに、【天ぷらうどん】から、直穂なおほ浅尾あさおさんを助ける事も出来ないのだから。
 だから、彼女を心配する必要はないだろう。
 きっと、素晴らしいログハウスを作ってくれる筈だ。








「あの、お二人の顔を触ってもいいですか?」

 しばしの静寂のあとで、ユリィさんは遠慮がちに、そんな事を口にした。

「顔を触る? なんで??」
「お二人の、顔のかたちを知りたいのです。触っていいですか??」

 ユリィはそう言った。
 そうか、ユリィは目が見えないから、俺達の顔を知らないのだ。
 それは、可哀そうだな……
 お母さんの顔も、お姉さんの顔も知らない。
 好きなアニメだって、見られないじゃないか。

「もちろんいいよ、ほら、これが私っ」

 直穂なおほは、ユリィの小さな手を、自身の頬っぺたに当てた。
 ユリィは、直穂なおほの顔に、優しく手を這わせた。

「こ……これが俺の顔だ……少しひげが伸びてるかもしれんないが……」

 俺も、そう断ってから、ユリィさんの手を俺の顔へと乗せた。
 決して、自慢できる顔立ちではない……
 それに、髭剃りのない異世界では、髭が少し伸びてしまっていた。

「ありがとうございます」

 ユリィさんは微笑むと、俺と直穂なおほの顔を、柔らかな手触りで確かめていく……
 互いの吐息が聞こえるほど、至近距離だ。

 左どなりの直穂なおほの黒髪が、俺の頬っぺたをくすぐった。
 直穂なおほの方をふと見ると、ちょうど彼女と目が合った。
 水の滴るいい女。黒く光るクリクリとした瞳……
 俺は、息が止まりそうだった……
 洞窟の暗がりでキスした時とは違う。
 彼女は、日光に照らされて、艶めかしく輝いていた。
 あぁ……抱きしめたい……

「ふふっ……二人とも、顔が熱いですよ……深く、愛し合っているのですね……」
「ふぇぇ?」

 ユリィさんの言葉を聞いて、直穂なおほは顔を真っ赤にして、黒髪の中に顔を隠した。
 俺は、極度の興奮状態だった。
 なんだこの可愛い生き物は!!
 この人が、俺と愛し合っているだなんて、未だに信じられない話だ。
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